1.朝食時の会話
火星第4プラント
ドッタはカルテを見ながら苦笑いをしていた
医者に濃死病と診断され余命半年と宣告された時分。
ドッタに与えられた選択肢は3つあった
一.治療をせずCTP強鎮痛剤を服用する
そうすれば濃死病の痛みを感じることもなく楽しく余生を過ごして行ける。
一.バルバット治療法で少しずつ少しずつ濃死菌を身体から取る
そうすれば勇気を持って病に立ち向かったと言え思える
ただ濃死菌はバルバット治療法では遅らせるのが精々だ
問題解決にはならない。
一.濃死菌のない場所へ移動し濃死病の沈静化をはかる
そうすれば身体から濃死菌が抜け本当の余命まで生きていけるだろう
問題は濃死菌は火星元来
つまり地球へ行かなければならない…
死の星と化した地球へ
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「そんな書き出しで良いのですか?アール婦人。」
「嗚呼、いいのよ私はこういった書き出しが好きなんの、後婦人は付けなくていいわ、それは前の話だもの」
「そうですかではアール、分かりました。」
彼女の書くSF小説に質問してきたのは彼女の家のアンドロイドである、それは7年前の事故で足が不自由なアールの介護をしてくれている
彼女は勝手にジョン・リックと読んでいる
「ねぇジョン朝食を作って貰えるかしら?」
「アール、そうおっしゃると思い既に出来上がっております。」
「そうありがと貴方はほんとに気が利くわね、嬉しいわ」
ジョンの思考では私は貴方の日頃の生活習慣から朝食時間を予測しただけと言いたかったが事実情報的発言はアールの希望により禁止されている
ジョンに車椅子を押してもらいながらダイニングに向かう時分、アントロイドは思考するのだろうかと不意にアールは思った
「ねぇ、貴方はアンドロイドは思考出来ると思う?」
「思考が事前情報からなる選択という意味ならあるいわ。」
「ですがこう考えることも出来ますよアール、人間もアンドロイドも情報帯を集積し選択出来る現代において随行システムであるものはすべて思考すると。」
ダイニングの卓につきアールはフォークとナイフで朝食をゆっくり口に運びながら前書こうとして途中でやめてしまったSF小説を思い出しながら言った
「でもそれらは随行義務を果たすためよね」
「でも人間は随行しない、何かを自分でしたいと考えてそれをする為の選択をするし自己利益や利他的なことを度外視した行動をするバカよね」
「それが人間です。僕はそこもとても素晴らしい美徳だと思っていますよ。」
「そうね、私はアンドロイドと関わらないからよく分からないわ、前の小説をやめてしまったのはそこにあるかもしれないわね」
「今日はアンドロイドショップを見に行きましょ」
彼女は知っているジョンがアンドロイドであることを
知っていることをまるで知らないことのようにジョンを人として扱っているのだ
「はい、そうですねアール婦人。」
ジョンはアールからの人といての扱いを心から嬉しく思っていた
アールとジョンはこの少し大きな家で暮らしている
アースコロニー・No7
(環境保証安全区画第7号中央ヨーロッパ基地)
で今までもそしておそらくこれからも
「婦人?」
「失礼しました。」
最初の小説はフィリップ・K・ディックを意識して書いています。
書いてから誤字脱字確認中に思ったのですがゲームのDETROIT見たいですね(今は)