始まりの終わりの始まり。
知識と記憶を得た少年。
少年の進む道が決まる。
ここは...?
あぁ...なるほど。
少年は全てを理解した。
ルナの魔法で僕に全ての知識が流れ込んできているからだ。
それにしてもこの光景はすごく綺麗だ。
真っ暗闇の中蒼い粒子が散りばめられていてその一つ一つが僕に流れ込んできているのだ。
気分はとてもよかった。
全ての言語から武術の知識、魔法の知識、一般的な事からどんな分野の事も理解できた。
むしろ驚くのが、過去の歴史から今に至るまで全てが流れ込んできている。
そして平行世界...その存在までも流れ込んできた。
そして自分の身に何が起こったのか、自分が何者なのか、それを理解してしまった。
「これはすごいな。神にでもなった気分だ。」
普通ならあり得ない情報量に潰されてしまうのだが、僕は僕でもあの子がいるから...だから平然としていられた。
あの子達の存在も全て理解している僕はにっこりと笑った。
そして
(ありがとう)
この言葉を伝えると蒼い粒子は大きな結晶になりそして割れた。
割れたと同時に元の現実に戻された。
「おかりー」
ルナがなぜかにやにやしてる。
僕は今の僕という自身をしっかりと理解するのに3秒もいらなかった。
「ただいま。そしてありがとう」
ルナに感謝の言葉をはっきりと伝えた。
そして僕はしゃがむと隣にいたあの子を抱きしめた。
何も言葉にしなかった。
しなくても伝わるのだから。
僕はキミでキミは僕。それ以外には何もない。それが今の僕なのだから。
「僕には名前がない。キミにも名前がない。名前がなくても構わないのだが、僕にはやりたい事ができた。だからそのために名前をつけようと思う」
「ナナっちはナナっちでいーじゃん?君はナナっちなんだからそのままでいーんじゃないの?」
「名前に固執するつもりはない。だけどキミは僕になったからこそ僕が名前を与えたいんだ。そして僕の名前はキミに決めて欲しい。」
ルナの言葉には無反応だったあの子は少年の言葉にはすごい反応した。
「お主の名前...考えるの...難しい。」
「んじゃあキミの名前はゼロと命名する。」
「ん。ありがと。名前なんて無かったから嬉しい。でもどうしてゼロ?」
「始まりにして終わり。つまり何もないんだ。だから全ての可能性を秘めてるって想いを込めたんだ。」
「ならお主もゼロ。我はお主だからな」
「そうなるか。でも悪くない。僕はゼロ。キミもゼロ。僕はゼロになれたこと。ゼロが僕になってくれたことに本当に感謝してる」
「いい加減離して?」
「悪い悪い。」
そっと抱きしめてた手を離すと涙を流しながら...照れ笑いをしてるゼロがいた。
そして僕も何故か泣いていた。でもゼロと違って透明ではなく、赤黒い涙であった。
少し落ち着く為にその場に座り込んだ。
そして僕の頭の中にある情報を探る。
僕はアリスト王国で生まれた人間みたいだ。
生物兵器を作る為の生贄であったらしい。
実験の途中過程で魔力暴走が起き突然変異が起き始めた。
僕の両目がオッドアイなのはそれが理由みたいだ。
魔力暴走が起きた失敗作は処分されるのだが、僕の突然変異のせいで防衛本能が働き処分できないどころか、かなりの被害をだしたみたいだ。
自分達には処分出来なくなった為ゼロの元に投げ出し処分を測ったようだ。
ゼロは名無しの王と呼ばれているドッペルゲンガーだ。
数百年前に突如存在し、各国が脅威となる存在を欲したがドッペルゲンガーは世界ごと消滅させる力をふるった。
その時に真魔王と呼ばれているルナがその力を抑えたみたいだ。
厄災とも呼ばれたこの事件はほとんどの人類、魔物を消滅させたが一部は生き残った。
そして神と呼ばれる存在が現れ世界が変わったらしい。
ゼロはそれ以来名無しの王と呼ばれ、必然的にその区域に近付くものがいなくなったみたいだ。
回想するのに2秒もかからなかった。
「改めてルナ様にご挨拶したいと思う。
僕はゼロ。ルナ様の魔法で知識を頂けた事を感謝致します。
このご恩をこの身をもってお返しさせて頂いてもよろしいでしょうか?」
「そうね。いつか返して貰うわ。」
「ではいつかお返しさせて頂きます。
つきましてはお返しするまでの間僕の旅にお付き合い頂けないでしょうか?」
「旅?何をするつもり?」
「まず僕はこの魔界を消します。ルナ様がお戻りになるまでは必要のない場所となりますので。尚お戻りになる際は復活をお約束します。
今の僕ならそれは容易い事です。
魔界を消した後はアリスト王国に向かいます。
そして僕は学校に通うつもりです。
人間界を消すのは容易い事ではありますが、それではつまらない。
僕を生み出してくれた事に感謝の念を込めて、慈悲ながら恐怖というものを与えながら滅ぼすつもりです。」
「ふむ。でもなんで学校なんだ?」
「知識を得たと同時に歴史も知り得ました。
今現状の事も把握しています。
その学校という場所は表向きは健全な教育。
ですが裏では生物兵器を作る為の人体実験に適した人間を育てており、尚且つ育成所となっております。
それを根絶やしにするのが目的です。」
「んで本音は?」
「僕の痛みを共感させるための暇潰しです。」
ゼロはニヤリとした。
「アリスト王国とやらを消した後はどうするのだ?」
「僕は人間界には興味ありません。
ですが良い暇潰しにはなるでしょう。
それと僕は色々な人種に会わなければならない。
僕は会った者の存在から潜在能力から魔法から全てをコピーする事ができる。
それを10倍に再現する事が可能だ。
だけど会わなければ意味がない。
記憶から読み取ったものでも足りなさすぎる。
力はあるにこしたことはない。
それに僕は7歳だ。そして僕は育つこともない。
そして僕が死んだらゼロも消える。
死ぬことは許されない。
しばらくは人間界にいつつ準備をしようと思っている。」
「ふむ。準備というのは?」
「神を消す力をつけるんだよ」
ルナはゼロの口元に指をたてると
「よく分かった。退屈はしなそうなのでついて行こう。
ただ意思疎通はルナにもかけてくれ。」
「感謝します。そしてこちらからお願いしたいと思っていたので助かります」
ゼロはルナの胸に手を当てた。
(これで門は開いたと思います。)
(わあ...ゼロっちといつでもお話できますぅ)
(ルナよ。本当についてくるのか?)
(ルナは神の世界に興味あるのですよ。)
この時初めてルナが悪い顔をした。
(僕はゼロとルナしかいない。これからもだ。
僕はこの旅を楽しもうと思う。
だからよろしくね)
(一つだけ約束してほしい。ゼロはゼロっち。だから強い。
ルナに会った時に既にルナ以上に強いはずだ。
だが不完全なのは忘れるなよ。
ゼロが死ねばゼロっちも死ぬ。
油断はするな。)
(心配してくれてありがとう。
そろそろ行こうか。)
「ゼロおいで」
ゼロは呼ばれるとゼロにそっと近寄った。
そして目をつむり軽い口づけをするとゼロの中に消えていった。
僕はルナに魔法をかけそして目をつむる。
僕の表情はやはり笑顔だった。
「始まりの終焉」
僕の魔法と同時に魔界は塵も残さず消えさった。
次話から彼の物語が始まります。