復讐の始まり『アリスト王国編』
「ふんふーん。ふふふふーん。ふんふーん」
ザグシュ。ザン。ドシュ。
「そーれっ」
キィィィィンドガシャーン
(つまんない。つまんない。つまんない。)
(ん...)
僕は左手にグングニルを持ち坦々と殺していた。
刺してはなぎ払い、貫いてはぶん投げる。黙々と殺すだけの作業をしていた。
(手応えがない。痛みがない。苦しんでない。叫び声の一つもない。あぁ......つまらない。)
(ん...全部消しちゃえばいーのに。)
(その方が早いかなー)
(ルナ。ロレンお願い。)
(えー。あの隣のヒゲ嫌い...)
(ふむ......まあいっか!ロレンなら大丈夫だよね)
僕はグングニルを真上に投げる。
グングニルは風を。雲を。空を引き裂きそして止まる。重力に身を委ねるように先端が下を向いたその時であった。
先端が真っ赤に燃え上がりグングニルが下に降下するにつれ灼熱の炎がグングニルを纏う。地面に突き刺さろうとする数メートル前だっただろうか。
「エンチャント」
グングニルが一瞬輝くと同時に衝撃波が発生する。
その衝撃波を追うようにものすごい爆風が周囲に襲いかかった。
何分たっただろうか。
グングニルを軸とした周囲には蒼い炎で埋め尽くされ視界が遮られる。
「あぁ...今夜の月は物凄い綺麗だ。......そう思わないかい?あっはっは」
僕は月を見ながら宙に舞っている僕の左腕を眺めて呟いた。
その時の僕の顔はどんなだったのだろうか?
「また会ったね。お姉さん?」
「キャハハッ。貴方に会うのはこれが最後よ?お別れの前に貴方の名前を聞いてあげるわ。」
「僕?僕の名前は......そう。...ウサギマルだ!」
(クスクスッ)
「ウサギマル......変な名前ね。最後に言いのこ」
「裁きの審判」
ルナの魔法によりクロノスのいた周囲が衝撃波に包まれる。
が。
「なにこれ面倒くさいー。まだお話してる最中な」
クロノスの身体が8つに切り刻まれた。
「僕の名はカリス。僕が相手になるよ!」
切り刻まれた身体は何事も無かったかのように元の姿に戻った。
「ちょっともうー。雑魚は引っ込んでもらえるかしら?「╋╋┻┳┻┫」」
ルナとカリスの上空に黒い大きな渦が現れた。渦は空を、雲を。空気を。周囲にある物体を呑み込もうとしている。
「┨┰┰┰┥」
ゼロの神滅法により渦が一瞬で消えてなくなる。
「はぁ...ほんと面倒くさいー。」
「開いたら閉じる。この世界で言う常識☆ってやつだよー?クロノスお姉さん?」
「その身体でまさか神滅法を使えると思わなかったわ。機会を伺って左腕を落としたのに...」
「大丈夫だよ。この痛みはクロノスお姉さんにあげるから!」
クロノスの顔色が変わった時遠くからものすごい怒声が響いた。
「ウッオオオオオオオオオオオオオォ」
「またなんなのほんとに。」
遠くから金色に輝く何かがものすごい勢いで近づいてきた。
「ぜーーロのあにきいいいい」
金色に輝くハンマーを持ったロレンは物凄い勢いで僕の方に向かってきた。
ロレンはそのハンマーを僕に向かって振り下ろしてきたのだ。
ハンマーが僕にぶつかると同時に突風が周囲を襲う。
「ロレン......」
「キャハハハハハ。誰だか知らないけどよくやったわ。下がりなさい!」
「はぁ?誰オバサン?何言ってるのかさっぱりわからねー」
「へっ?貴方私の味方じゃなくって?!」
ハンマーに打たれた僕は金色の輝きに包まれ、失われた左腕が元に戻った。
そうだ。トールハンマーは死者をも蘇らせる力があるのだ。
それをロレンは使いこなしていたのだ。
「あっはっは。ロレン!ロレン!!キミはやっぱり面白い!!!」
「ゼロの兄貴。すいません。身体が勝手に動いてしまって。」
「いやいや。ロレンは面白いよ。ほんと!!」
クロノスは何が起こったのか理解したのか、ようやく動き出した。
「╋╋╋╋╋╋┻┳┻......」
「ハアッ」
カリスが斬撃を放つがその斬撃はクロノスをすり抜けた。
「ブツブツうるせえあうらうらうらあ」
ロレンはハンマーで殴るがどの攻撃もすり抜けた。
(ルナすぐ戻るから!)
(ほい。)
「┝┥┰┝┥┳┝┥┛!!」
クロノスが言い終えると僕とロレンの身体に鎖が巻き付かれた。
「んだこれあ」
「それはタルタロス。もう貴方達と二度と会う事はないわ。ずっと閉じこめられていなさい!!」
「んあ?タルタルッス?」
「クロノスお姉さん!また後でね☆あはははは」
「ふん。さよなら╂┸」
僕とロレンは何かに呑み込まれその場から消えて無くなった。
僕達が立っていた場所には巻き付かれた鎖が落ちそして無くなった。
「ゼロ兄様あああああ」
カリスはルナから飛び降りクロノスに斬りかかっていた。
「無駄無駄......ってあれ?何をしたの?!なんで戻らないの?!?」
「ゼロ兄様......ゼロ兄様あ......ゼロ兄様ああああん」
「ったくうるさいなぁ...「┛┳┝┳┛╂┸」」
カリスの後ろに亀裂が入る。
「ゼロ兄様ああああああああああ」
カリスは魔剣ダーインスレイブを振り回す。亀裂ごと斬り裂いてしまう程だった。
「なんなのあんた。気持ち悪い...」
クロノスは理由がわからないがあれはヤバイと判断してしまった。関わったらいけないと。
「ゼロ兄様になにしたああああああ」
カリスの甲高い声が響きわたる。
カリスは両目が蒼く輝いていた。