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第一章:川原と潮騒と謎の少女


「ここは・・・どこだ?」


寝起きの耳に聞こえてくるのは潮騒、顔に当たる風はほのかに塩っ辛い、気温は四月のそれといった感じで、寒さの中に早朝の朝日の太陽の暖かさを感じる。

明らかに自分の自室とは違った環境に戸惑いを感じた。


「いやいや、僕は昨日、将と呑んでいて・・・」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

~飲み会の帰り~


「いやー、久しぶりに呑んだな~」


ほんとに久しぶりに呑んだ。普段から就活の面接が入っていたりと急がしくしていたので、約半年ぶりに呑むお酒であった。

普段お酒を呑まないのはただ単に忙しいからと言うだけでなく、大学2年生のあの事件からなのだが・・・


「ん?・・・何だあれ?」


自宅へ帰る途中、町中を歩くよりもこの川沿いを歩くのが酔い冷ましにいいと思い、普段は通らない道を遠回りをして自宅へと向かっていた。その途中、川沿いの草むらに懐かしいものを見つけた”フラフープ”である。

懐かしさと酔いが重なり、無邪気にもそれを手に取り遊んでいた。小さい頃はこのまま永遠に回せそうな気がしていたが、さすがに今となってはそう長く続かない。10分ほど遊んだ後少し疲れたので、地面にそれを置き、近くのベンチに腰を落とす。


「明日からどうしようか?」


小さい頃はそんな不安など微塵もなかった。自分の進む道が間違っていないと確信もあった。しかしその確信も実社会の前では何の根拠もない蜃気楼のようなものであった。地道に積み上げてきたものが実は実態のない城だったとき、それはまさに裸の王様の気分であった。後悔が自身の胸の中を満たすうちに自然と瞳は潤いを帯びていた。その滴が地面に落ちたとき、先ほどまで遊んでいた”フラフープ”が光り出した。


「・・・なんだか舞台みたいだな・・・」


何の疑いもなくその光の中に足を踏み入れ、独壇場になった舞台に思いをはせる。

イメージは月明かりの中砂浜で佇む少女である。愛しのあの人から見放され、途方に暮れながら、先の見えない不安を嘆き悲しむような・・・


『あなたへの思いがこの潮騒のように胸を打ち続けるなら、私はいっそ、あなたのいない遠くへ行きたい・・・』


胸にてお当てて、台詞をつぶやく。

端から見れば痛いだけであるが、酔いがまだ覚めていないのと、舞台上での私はいつもと違う自分でいられるので周りの目など一切気にしない。それがスポットライトが当たっている状態ならなおさらである。


すると、どこからか潮の香りがしてきた、風も先ほどより少し暖かい気がした。自分のイメージはついに五感を刺激するまでに至ったかなどと考えていると、一気に疲れが身体を蝕み、目を閉じたまま仰向けに倒れた。

薄目を開けると満天の星空が広がっている。都会の星空がこんなに美しいとは思えないが、たぶん瞳を潤す水分のせいだと思いそのまま目を閉じるといつしか眠ってしまっていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「それで、起きたらこうなっていたわけだが・・・」


そこは明らかに自分の住んでいた近くの川原ではなく間違いなく海であった。

この潮騒はイメージではなく本物で、今自分は見知らぬ土地に足を踏み込んでいる。


「いったいどうなっているんだ?」


「あらら~それ使っちゃったんだ~」


ふと、後ろを振り向くと、そこには10歳ぐらいの少女がとても暑そうな黒いゴスロリの格好をしてこれまた黒い日傘をさしてで立っていた。

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