1-2誘拐
「あのー、どこまで連れてくんですか?」
「えーっと、少し遠く?」
「へー」
今ので納得したの?嘘だろおい。誘拐されてるんだぞ。
「ねぇ、ところでなんで暴れないの?」
「まーこれはこれでありかなと」
「へ⁉︎」
雨が降る外を眺めながら平然と答えた。
こんなことになる数時間前…
**********
「短い間でしたがおせわになりました」
「あぁ」
何が、『あぁ』だよ
「あー、これからどうしよう」
「菅原くんじゃないですか。また真面目に就職活動ですかぁ?頑張ってくださいね」
「三枝先輩どうもご丁寧にありがとうございます。より良い職場につけるように頑張りますね。それでは」
とびきり笑顔で返してやった。
元はと言えば、こいつにこき使われるは、明日までにプレゼン五個作ってこいとか、新人の俺にむちゃぶりしてきた事で失敗が増えて、上司に君はこの仕事向いてないんじゃないかなーとか言われて、結局クビって散々だな。
イライラしながらバンっと車のドアを閉め発進させた。
「そういえばいつもは外回りしてる時間だったなー。ってことはあの子も帰り道か、拝んで帰ろーっと」
あの子とは、最初見たのはおばあさんの荷物を持ってあげてたところかな。
今時珍しい高校生だなーから気になりだしたんだよねー。
そう言って自然に、彼女をよく見かける道へ運転して行った。
「あ、いた」
女子にしては珍しく真っ黒な傘をさしていた。
あー、話したいなー。いっそのこと、ちょっと連れ回したいなー。
なんて願望がふつふつと湧き上がってきた。
確かトランクに結束バンド入ってたよな。夜には返せばいいよな。
魔が差してしまった。
そのあとは、俺でも驚くほど冷静に行動した。
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と、今に至るわけで。これからどうしよう。
「あの、携帯貸してくれませんか?警察には連絡しないんで」
「え、あ、はい」
ホイと渡してしまった。
俺、馬鹿じゃね。ここで通報しない女子高生とかどこにいんだよ。
「明日まで連れ回しても大丈夫になりました、親には友達の家に泊まると言ったので。携帯ここ置いときますね」
いたわここに、警察に通報しない子。
「それとなんで私の名前知ってたですか?」
「前友達に呼ばれてるのをたまたま聞いて」
「用意周到ですね」
なんてこと言ってんだ俺。もうストーカーじゃん。
「俺のこと怖くないの」
「あなたは怖いと思いませんね。名前はなんなんですか?」
「幸一です」
「幸一さんを前、私見たことあるから怖くないんだと思いますよ」
「いつ⁇」
「ちょくちょく公園で休んでるところとか、子供達と遊んでるところとか、この前こけてるのたまたま見ました」
こけてるところ見られてるとか、カッコわりー。
「それでなんか悪い人じゃなさそうだからと、もう人生に飽きたのでこんなハプニング的要素は珍しくワクワクできるので暴れません。あと改めて小吹菜々です」
「よろしくね」
これを受け入れる彼女も彼女だが、その理由やら言ってることを信用してる俺も相当やばいな。
そんなこんなで雨の中、車はあの問題の場所に差し掛かったのだった。




