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得物の選択

 俺もカリーさんが今言った言葉は建前ではないかと訝しむ。


「たとえば駆くんみたいに負けん気が強そうな子や、武君みたいに身体の大きな子はパーティの前衛としてモンスターと近接して戦う役目に向いているかもしれない」


「まあな!」


 さっきまで反発していたはずの駆くんが気分良さげに胸を張る。この人、とんでもなく単純なのかもしれない。

 負けず嫌いでもなく、身体の大きさも普通の俺は前衛には向いてないのだろうか。


「でも、それだけじゃないのよ役割というのは。前に出るのが向いてないと思う人は後衛としてパーティの

補助や傷の手当。後は契約術を使って遠距離から攻撃なんてこともプラーナがあれば出来るの。ちなみに私は、自分のことを後衛向きだと自負しています」

「ふむ。つまりはパーティには後衛もいた方がいいってことでオッケー?」

 

 カリーさんの話をどこまで理解したのか分からないが、駆くんの心は彼女の言葉によって簡単にに動かされていた。

それにしても、傷の手当なんてものまで出来るのか。プラーナの扱い方を覚えれば、かなり色々なことができそうだ。 


「前衛と後衛、両方の足が揃って初めて一つのパーティが歩きだせるものよ」

「そっかそっか! わかったよカリーさん。俺たち六人全員で一つのパーティなんだな」


 満足そうに頷く駆くん。心配していたことが解決できたようでなにより。


「そのとおり。ということで、まず初めにキミたち六人がすることは、それぞれの役割を決めること。誰が前衛で誰が後衛をするのか相談してね」  


 うまい具合に話をまとめたカリーさんは、学校の先生のように一つの班である俺たちに指示を出す。


「ハッ、そんなの相談するまでもねえ! 男三人が前衛! そんでもって女三人が後衛! これで決まりっしょ! な?」


駆くんが突然、両隣に座る俺と武くんの肩をぐいっと抱き寄せ、声高らかにそう宣言。 

 相談するどころか碌に考える暇すら与えない、恐ろしいほどの見事な先走りだった。


「はーい。私はそれでかまわないわよー」


 駆くんの早駆けに律子さんが便乗。


「他の皆さんが良いなら私もそれでかまいません」

「わ、私も」


 続いて凛さんと有紗ちゃんも飛び乗った。

 この時点で既に後衛は三人。定員いっぱいだ。


「武も前衛の方がいいよな?」


 肩をぽんぽんと叩きながら駆くんが問う。


「う、うん。そうだよね?」


 話を振られ、目をしばたかせる武くん。

 彼は、駆からの突然の確認に驚いたのか、頷きながらも疑問が残った様子だった。


「お前もそうだろ?」

 俺の方にも話が振られるだろうと予測はできたが、「お前」ではなく出来れば俊と呼んで欲しかった。駆くんとは馬が合わなそうだ。


「ああその方がよさそうだね」


 本音を言えば後衛の方をやりたかったが、このメンバーのなかでそれを希望するのは申し訳ない気がしたので、届かぬ想いは心の中にしまっておくことにした。

「おおまかな役割も決まったみたいだし、キミたちに教えておくべきことを伝えておくわね」

 

それからカリーさんの話が続き、エインガードとして登録することで得られる数々の特典やサービスなどを教えてもらった。あとは街の施設についてのおおまかな説明もあり、話の最後に支度金としてそれぞれ十万ゴルほどの硬貨を受け取った。この世界のお金の単位はゴルというらしい。


「とまあ、まず伝えておかなきゃいけないのはこんなところかな。もし生活する上で何か聞きたいことや困った事があったら、いつでも私に聞いてね。たいていはこのエインガード助成協会支部に居ると思うから」


 もちろん仕事でやっている面もあるのだろうが、カリーさんのこの親切さには感謝しなければと思う。


「で、ここからいきなりエインガードとして頑張ってくださいと言われても困るだろうから、みんなにはこれから三日の間、それぞれの役割に応じた、初歩的な技術を習得してもらうことになります」

 

エインガード助成協会という名前は伊達じゃないらしく、何も分からない俺たちに必要と思われる講習みたいなものまで用意してくれているらしい。


「おっし、まかせろ!」


 駆くんが元気に返事をし、俺を含めた他五人が後に続く。意思の確認を終えたカリーさんは、六人それぞれに紙を配った。

配布された紙に目を落とす。すると、見たこともない不思議な文字なはずなのに、何が書いてあるか分かるという不思議な現象が起きた。

 言葉についてもだが、文字の識別すらも俺たちはこの世界に対応しているらしい。

 なぜだろうかという疑問が沸きあがり、思考の海に沈みそうになったが、今はこの紙に書いてある文字を読むことが大切であると思い直した。


「さっき前衛と後衛で役割が違うって説明したけど、同じ前と後ろでも何をするかでさらに細かく出来ることが分けられるのよ。今配った紙に詳しく書いてあるから読んでみて」 


 カリーさんの言うとおりに書いてある文字をに意識を集中させる。前衛の者へという見出しを発見、着目してさらに字を追っていく。


いわく、前衛とは前にでて敵と直接対峙する役割を担うものであり、近接戦闘をパーティの為に仕掛ける者を示す。

 近距離での戦闘においてまず必要なのは、己に合った武器である。 

扱う武器の種類によって立ち振る舞い方が変わることからも、まず初めにどのような武器を己の得物とするのか決めるべきである。


いくつかの箇条書きに続いて、技術習得出来る武器の候補が幾つも書いてあった。

 片手剣 両手剣 拳 盾 斧 槍 短剣 昆 ハンマー 鞭 刀などなどなど。

 ここまで武器の種類が多くて意味があるのか甚だ疑問だ。同じ武器を皆で扱った方が使いまわしが利くし何かと便利のような気がするのだが。

しかしながら文字を読み進めていくうちに、プラーナを駆使することを前提とした武器の扱い方は、俺たちの世界のものと大きく変わる。個人のフィーリングが特に大切であるという説明書きを読んで一応は納得をした。

 書いてあることを頭の中に落とし込み、俺は自分にどんな武器が合っているか考え始めた。


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