君を見つけるために。
4話目です。
俺が意識を取り戻したときは、やはりあの椅子に座っていた。家の中は、これといって変化はないようだ。
老人の二の舞は踏みたくないので、早速家の外に出る。ドアを開くとそこは、この家があった狭い開けた場所ではなく、四方八方ビルに囲まれた、まさしく空き地だった。家の周辺に目撃者がいないかを確認するだけの予定だったが、目の前に聳え立っているビルへと目がいってしまう。あまりにも奇抜なデザインとコンクリートや金属などではない素材の質感。やはりここは別の世界だ、そう改めて感じる。
いつまでも景観に見とれているのもなんなので、家に鍵をかけ、早速この世界のオレを探すことにした。
今更になって、なぜ俺が……、なんて思ってしまうが老人の言葉を頭の中で復唱する。「報酬として、君の小説のアイディアをあげるよ」俺は己の足を動かし始めた。
裏口のついているビルが一つある。防犯カメラの有無を確認し、ないようなので扉から入る。
中に入り少し進むと、エントランスに繋がっており、正式な扉から外に出ようとする。
するとここで、懸念していたことが的中した。この世界の住人に見つかってしまった。大きなビルなので、人はいるとは思っていたが、エントランスには受付や警備員もおらず、このまま誰にも会わずに行けると思った矢先のことだったので、ビックリしている。しかし不審に思われてはいけないので、驚きを隠し平然を装う。扉から入ってきた人は、俺を一瞥するやいなや口を開いた。
「やあ、こんにちは。今日も良い天気だね」
俺は驚きのあまり、ああ、としか言えなかった。それを聞いた人は奥の階段まで足を進めていった。
完全に不審者である俺に挨拶をする人、防犯カメラも警備員もいないエントランス。この世界は、不信感というものを抱かないのかもしれない。もしくは犯罪が少ないのか。そう考えると、犯罪を犯したオレがこの世界の警察ではなく、時空警察に捕まったのも納得だ。
だが、今回は時空警察の出番はない。そう、オレを捕まえるのは俺だ。正扉から出、気持ちを入れ替えて、ビルから離れる。老人曰く、オレの居場所はタイムマシンがなんとかしてくれるそうだ。望みを叶えてくれるタイムマシンの使用者は、俺だ。そして俺の望みは、この世界のオレを止めること。今俺がいる場所の近くにオレがいるはずだ。
車のような、四輪車の乗り物が通る道にいる。信号のようなものはなく、お互いが配慮しあって運転しているようだ。
疑うという概念がないこの世界で犯罪を犯したオレを、同じ俺として恥ずかしく思う。
とりあえず通りを見渡すと、幾つか店がある中に本屋を見つけた。老人の話では、俺は本屋に向かったそうだ。タイムマシンを信じ、俺はその本屋に向かう。
ドアはなく開放的で、万引きもないのか、万引き防止の機械も置いていない。こんなところにオレが居るのかという疑問を抱きながら、店内に足を進める。笑顔の店員に一瞥を送り、店内、特に小説のコーナーに目を配る。すると、明らかに不審な行動をする男性がいた。周りの客とは一風変わった服を見にまとい、しきりに左右を見ている。
お金を持っていないのか、本を服の下に隠した。そのまま店を出ようとする。もちろん疑うということしないこの世界の住人は、彼が万引きをしているなんて思っていないだろう。
店を出た彼を追いかける。まだ顔を見てはいないので、断定はできないが、十中八九間違いないだろう。
今いる時間よりも過去から来たのだから、この時代で使用可能なお金を持っていない。周囲の人々とは似ても似つかない服装をしている。そう考えると納得だ。
とりあえず店を出て、彼が曲がり角を曲がった時だ、間違いない。彼は俺だ。そう断言できた。
毎朝鏡で見ているこの顔を間違えるはずがない。
少し歩き続け、オレが周りに人がいない裏路地に入った時、意を決して話しかける。
誤字脱字、指摘、アドバイス、ありましたら教えてください。




