電車3
「もしもし、母さん!?」
先の考えだと、母親に大事は無いであろうが、不安は拭えない。
「広也・・・あのね」
広也の心臓が高鳴る。広也に自覚は無いが、緊張のせいで目は見開かれていた。
「おばあちゃんが死んだの。」
「え?」
想定していない、母からの言葉だった。
「おばあちゃん?」
広也は聞き返した。
実は、広也は生まれてから、一度も母方の祖母に会った事が無かった。
母親の田舎というものにも行った事が無い。
だから、おばあちゃんと言われても、自分にもいるだろうなという感覚はあったのだが、亡くなったからと言って、何かピンと来る様な事は無かった。
「急でゴメンね・・・。だからね、お母さんと広也でおばあちゃんの家に行かなきゃいけなくなったの。」
(忌引というやつか。)
「・・・って事は、今から?」
「うん。これからお母さん、仕事終わるから、広也も帰って待ってて。」
「・・・わかった。」
「じゃ、家で待ってて。お願いね。最後に先生に代わって。」
そう言われて、受話器を先生に渡す。きっと、事情を話しているんだ。
(おばあちゃんって言っても会った事も、見たことも無い・・・。おばあちゃんの家って言っても、どこなんだ?)
広也が悩んでいる内に先生は受話器を置いた。
「じゃ、広也君。帰る準備、しようか。」
先生に言われ、広也は職員室を後にした。