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あなたと会えてオメデトウ  作者: あんだるしあ
5/6

16歳の誕生日

 来ないわねー、アイツ。


 別に待ってるわけじゃないわよ。

 お客人をもてなすのは王女としての嗜みだから、わざわざ訪れたらすぐ分かるバルコニーにいてあげてるの。


 ……でも、失礼を詫びなきゃいけないことも事実。


 あれから親書に書き添えさえしなかった。どうせあと一年残ってんだから、まあいい。そんな気分でズルズル来ちゃった。


 早く来なさいよ。こっちのメンタル、思った以上に切迫してんだから。

 今年が約束の十六年目。予想以上に精神にキタのよ。


「王女様、お誕生日祝いの品が届いております」

「今行きます」


 侍従に答えてバルコニーから部屋に入って、届け物をまとめて保管する部屋まで行く。いい気分転換よ。


 しかしまあ、例年だけど多いわね。軽く山よ。箱から袋からよりどりみどり。ここにない分だと馬や彫像なんかがある。


 ん、これ、バラの花束かしら。両手に抱えきれない。サマースノーの花束なんて、アタシの温室とお揃いね。気の利いたマネする……


 違う。

 あそこには彼以外の王子なんて入れてない!


 偶然、にしてはピンポイントに狙いすぎだわ。白いバラが世の中たくさん存在する中で、何でサマースノーなのかしら。


 ――来ないつもり?

 これって彼の「来ない代わりに贈ったプレゼント」なんて意味じゃないわよね!?


 そんなわけないわよ。だって、毎年来てくれた。

 せめてメッセージカード。お願いだから別の誰かであって!


 花の中に手を突っ込んで、手探りでカードか何かを探す。手はもうトゲだらけで痛い。


 何も見つからない。これは彼の贈り物なの? 別の誰かのものなの?

 侍女たちが傷だらけになった手を心配して声をかけてくる。トゲの処理もしてないなんて、贈り主の気遣いのなさが知れる。


 おかしいわね、目眩がする。立ってられない。あんまり眠れなかったからかしら。


 腕からサマースノーの花束が落ちる。

 白い花びらは、アタシの血でかすかに赤い。


 それより、頭が回ってるの。倒れちゃう。

 目の前には血を流す手と、白いサマースノー。


 ……ああ、そういうことだったの。今時、バラのトゲに毒とか。呪いはどこ行った、呪いは。


「きゃあああ! 王女様!」


 騒がしいわね。最後くらい浸らせてよ。


 本格的に罰が当たったなあ。来年でもいいじゃん、なんて思ってるから彼に謝りそびれるのよ。


 ほんっと滑稽ね。これじゃどっかの夢見る町娘の思考じゃない。このタイミングで眠りにつくのは偶然で、アタシが彼を邪見にしたこととの因果関係はないじゃない。


 大体、何で今年は遅いのよ、アンタ。毎年毎年飽きもせず、アタシに『おめでとう』言うために来るくせに、後味悪いったらありゃしない。


 早く来なさいよ――このアタシが、直々、に――…

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