第二話予告
――聖剣と魔手とが鎬を削り、はじまりの刃鳴が鳴り響き渡る。
激突した白銀の剣と赤銀の魔手は鍔迫り合いめいて拮抗し、閃姫は射抜くように、殲鬼は焼き殺すように互いの瞳へ己を映す。
――資格なき者は道無き道を歩み、資格ある者は運命の旅路を進む。
最終電車が横切る鉄橋の下。
眼鏡の老紳士は鷹使いのごとく黒曜の機烏を腕に止まらせ、対峙する青年へとにこやかに微笑んだ。
「――あいつら何なんだ?」
秋原が問い、ドクトルは答える。
「……秘密結社、みたいなものですか?」
蓮と薄桃色の髪の女がエレベーターを降りた先は、昼間のように照らされた長い廊下。
彼女らに追随していた赤い輝鳥はひとりでにその骨格を変形させ、手のひら大の円盤型となって女の手へ収まった。
――持たざるものは輝くものに手を伸ばし、驕りを裁かれ打ち捨てられた。
「合唱部はもうコンクールには出られない」
喫茶店のドアに手を掛けながら、バイオリンケースを持ったその少年は無情なる現実を告げた。
鬼であるはずの男を容易く地に投げ倒し、誰かを救える女は彼を見下ろし宣告する。
「あなたのようなモノに、はなから戦う資格など無い」
冷たい視線に乗せて、喉元に突きつけられるのはナイフの刃。魂へ突き立ったは偽りのない気高き言葉。
――それでも立ち上がる。
夕暮れの街。風船じみて膨れ上がったキメラの巨躯は、その膂力にて車両を飴細工のように叩き壊す。
叫び惑い、逃げる人々を掻き分け、逆らい、秋原灯介は鬼へと変わる。
「やるしかねえだろ……イグニッションッ!!」
――それでも戦う。
「諦めませんッ!」
少女のちいさな胸の中には、誰かから貰った勇気が確かに灯っていたから。
――己が行方も知らず、真実も知らず、彼らは歩き出す。今はまだ、その手に何も掴めなくとも。
傷にまみれ、砕けた瓦礫の山に身をもたれ動かない殲鬼を目指し、魔獣はアスファルトに罅を散らしながら猛然と迫る。
すがるように天へと伸ばされた赤銀の腕は、ぱたりと力なく地に落ちた。
第二話「選ばれし者、選ばれざる者」