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Witch encounter  作者: 九夜
2/2

復讐の種火 前編

 少女はウトウトしていた。

 のどかな昼下がり、差し込む日差しが暖かく、食後となれば否が応でも眠気は来るもの。

 ソファで横になり今日という日を待ち遠しく思っていた。

 

「んー…。」


 一回背伸びをしてみたら、体中から力が抜けてさらに眠くなってくる。


「リリィ!お母さんちょっと出かけてくるわよー!」

「あぁ~ぃ」


 でも今日は少女、リリィ・サリオの誕生日、きっと何かくれるだろうとワクワクしながら家で待機することにする。

 きっとお兄ちゃんとお父さんからもなにかくれるに決まっている。皆優しいから。

 

「いってらっしゃーいぃ」


 ガチャ、と扉の閉まる音がした、瞬間少女も深い眠りの世界へ落ちていった。


________________________________________________________________________ 

 昼下がりの店先で一人の青年がアクセサリーを物色していた。

 ペンダント、ネックレス、ブレスレットと視線を移していく。

 青年ルクセリオ・サリオは妹の誕生日に何がぴったりか、猟を早めに切り上げ思想にふけっていた。

 あの金髪の髪には緑色のブローチが似合うだろうか。いやいやこっちの赤いリボンの方が似合うだろう。違うってこのハトが刻印された髪飾りのほうが__

「ふっふふ...」

 妹が自分の選んだアクセサリーをつけているさまを思い描きなんとも気色悪い笑い声が響く。

「あのー」

「はいっ!?」

「異性へのプレゼントを探してますか?恋人ですか?」

「あぁ、いえ。い、妹の...」

「妹さんのプレゼントですか!素敵ですねぇ~。歳は?」

「今日で11です」

 唸ってるルクセリオを見かねて妙齢の女性が話しかけてきた。ビックリした。

 せっかくなのでアドバイスでも貰おうか。

「でしたら、こちらのハトを象ったブローチなんてどうでしょう。これが胸元にあれば落ち着いた蒼で見るものの心を落ち着かせるでしょう。」

 と思った矢先一つの商品をおすすめしてくれた。

 っていうかブローチって服につけるものだったのか...なんともおしゃれに疎い兄である。

 確かにこれは目を引かれる逸品だとルクセリオは思ったのであろう。

「あぁ~、いいですね!これ!買います!」

 と値段を見ずに即決した。

「はい。ありがとうございます。お値段は・・・」


 ルクセリオは暫くの間博打が出来なくなったとボヤきながら帰路につく。

 ここで逆に博打で稼ごうとしないあたり、堅実な兄であった。



 石造りの家をぬけてちょっと小高い丘にある自宅を目指す。

 が、行き交う人々の様子がちょっとおかしい。

 まず、普通なら猟や畑仕事をしてるはずの男どもがいつもと比べて多い。

 そして店に並んでる麦や果実が異様に少ない。もともと多くはなかったけれど。

 さらに風呂敷を抱えた人たちが数名、村の外へ向かっていっている。

 異変でも起きたのか?と、近くの知り合いのおっさんに話しかけてみる。

「なんだ、これは何事だい?」

「あぁん?あぁ、サリオの兄ちゃんか。」

 と気の知れたおっさんは誰かを確かめると。

「なんでも、今朝方村についた商人がとなり町の宿で此処に向かうっていう騎士団の一行がいたってんで、この騒ぎよ。どうやら異端審問らしいってな。」

「なんだって!?」

 異端審問会、それは文字通り異端を審問する会。魔女を捕まえて魔女裁判に掛けてみたり処刑してみたりする魔女としては恐怖の団体だ。

「じゃあ、この村は異端審問の名のもとに好き勝手やられちまうってことかい!?」

「その一行が本当に異端審問の魔女狩りを目的としてるならな。悪いことは言わねぇ、早く逃げる準備をするんだ。幸い、その騎士団が来る前にこうして来ることがわかってんだからな・・・。お前さんも魔女だろう?」

「・・・」

 この時代の魔女は一種の恐怖の象徴だった。愚衆が騒げば愚王が討伐隊を出すほどの。

「おっさん知ってたのかい。俺ら兄弟が魔女だということ...」

「あぁ、知ってたとも。なぜならお前さんたちは・・・、いや、そんなことは今はどうでもいい。水に沈められちまう前にさっさと逃げろ、ほら、早く。俺らは大丈夫だから。」

 ちなみに男性の魔法使いのことも魔女と呼ぶことがある。

「・・・ありがとう。」

 おっさんがいいかけたことも気になったが、ルクセリオは走りだした。生き残るために。


「気ぃ付けてな」





 この村はとなり町まで行くのに半日かかる。馬に乗るなら話は別だが。

 その商人が3時課の鐘がなる頃その宿を発ったとしたら、着くのは一時間前位、ちょうど9時課の鐘がなった時である。とすると騎士団の行動開始時間にもよるが、騎士団の連中ももうすぐそこに来てるのではないか。

 魔女狩りを目的とした訪問は、例外なく残虐な行為があたり構わず行われる。

 それは風が運んでくるうわさだけだったが彼はこれを100%信じられる。

 それは彼の魔女たる所以であろう。

 彼は魔法によって本当に風に乗って聞こえてくる遠くの人々の会話が聴ける。自然魔法を得意とするルクセリオだからこそできる芸当だった。

 その聞こえてくる魔女狩りの会話は凄惨なものだったの一言に尽きる。

 手当たり次第、捕まえられる。魔女でないものは捕虜、魔女はその場で殺されるか、魔女裁判行き。建物の大半は燃やされるらしい。

 そしてその後村は腐臭が漂い、盗賊のすみかになり、死体は烏についばまれる。これは誰の会話だったか、斥候兵だったかな。

 

「我らはレイス王の命により首都ライトフルトより参った!!」

「!?」

 

 考えたそばからこれかよ!?

 間が悪いにも程が有ると思う。

「これより、王の書状を読み上げる!!____」

 

 

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