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オフィーリアとコンラッド

「キスって場所によって意味が違うのね」


 日本人だった【私】には馴染みない文化を学ぶのは常のことだ。だけど、口づけに関しては意味合い的には欧州と変わらないように思う。家族や親しい友人らに挨拶代わりにするのだ。

 突然の発言に、その場にいた教育係が全身で震え始めた。


「……ダメです」


 絞り出すように言われた言葉の意味がわからずに首を傾げると再度「ダメです!!」と絶叫された。


「リアは! リアはそのままでいてください!! ずっと私たちと生きていけばいいんです! 他の男の家族になどならなくていいんですーー!!」


 いい歳をした貴公子(公子ではないが)と言って差支えのない美男子が、ムンクの叫びのように両手を頬に当てて絶望の表情で打ち震えている。あまり好まない光景に呆れながら救ってやるとする。


「恋人なんて考えていないわよ。ただこの前本を読んで知っただけ」


 言うや否や、ぴたりと震えが止まったコンラッドはにっこりと意味深に微笑んだ。


「そうですか、では……」


 するりと伸ばされた手はオフィーリアの頭に触れ、撫でられるのかなと思っているとそのままコンラッドの動きは途切れることなくその上半身も続いた。距離が近くなるにつれ、軽くオフィーリアの目が見開かれる。

 ふわりと海の香りが鼻を擽る。コンラッドの匂いだ。

 チュッとリップ音が耳の上で鳴る。意図を理解して、ため息がこぼれる。それを見て、コンラッドは楽しそうに笑った。


「馬の骨にこんなことをされたら、すぐに私に言うのですよ? いいですね」


 こんな娘莫迦の男のもとに妃殿下が来てくださるのか――割と本気で心配してしまった。

オフィーリアがコンラッドに冗談混じりに髪に思慕のキスをされるところを書きます。http://shindanmaker.com/257927

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