実戦訓練!
ゴルスーイ盗賊団からすぐに使いが来た。
アルフォンの近くで商人や旅人を襲っている30~50人程度のよそ者の盗賊団。拠点がなく転々と場所を移す為、なかなか居場所を掴みにくいらしい。
ゴルスーイ盗賊団の縄張りの中だが、あちらこちらで襲い、拠点も掴めず一網打尽にするのが困難なようだ。
完全に便利屋扱いされそうだが、まずはこいつらを訓練の成果を試すのに利用させてもらうと思う。
ケアニーからの情報と、ファルコン班からの情報をすり合わせ、予測地域を6か所に絞り、猛禽類3班を索敵に出す。
それぞれの班長、副班長をリーダーとした3人1組の6組を作り、怪しい奴を探させ、見つけたら監視して拠点まで追跡する。
人数が少なければ捕獲してほしいが、3人で何とかなる人数で、商人を襲ったりしないだろう。
海の月85日、とうとうコンドル班の副班長が率いる組が、目標と思われる盗賊団を見つけた。商人を夜襲した直後で、現在監視中とのこと。
アニマとカチュアをたたき起こす。寝ぼけた二人を放置し、新人宿舎に向かい緊急集合をかける。
時間は夜中の1時だ。
「緊急集合!全員訓練場に集合、点呼、装備確認ののち全員待機」
夜中の緊急集合は、訓練で何度もやっていた。
ヒヨコに他5組み宛ての命令を預け、訓練場で整列を待つ。
「全員注目!現時点より実戦訓練を始める。内容は実戦での盗賊駆逐である。【1班アルファ】から【10班ジュリエット】まではカチュア小隊に、【11班キロ】から【20班タンゴ】まではアルマ小隊に【21班ユニフォーム】から【26班ズール】までは俺の小隊だ。ズールを先頭に最後方にアルファとする。遅れずついてくるように。それでは5分間の準備時間の後出発する」
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商人襲撃のあった場所の近くまで来ると、コンドル班の1名がこちらに向かってくる。
「報告します、現在商人を襲った盗賊8名は現在襲撃場所にて野営をしております。見張りは2名づつの交代制、襲撃を受けた商人側は全員殺害されております」
「襲撃前後に盗賊の人数の変化はなかったか?」
「襲撃前から8人である事を確認しております、伝令、連絡その他の動きは確認できませんでした」
「わかった、アニマ小隊での円陣包囲、俺の小隊で突入する、全員生かして捕らえるぞ、カチュア小隊は周囲の警戒と、アニマ小隊のバックアップだ。アニマ小隊の包囲完了と同時に投入する。ズール班副班長はカチュアに伝令、お前はそのままアニマへの伝令に走れ。小隊準備完了まで確認し、報告に戻れ!では行動開始!」
6班のメンバーを率いると、監視を続けているコンドル班の2名に合流する。
「状況は?」
「今の所目立った動きはありません。交代制で2名の見張りがいますが、居眠りしています。どうしますか?」
「全員生かして捕らえる。静かに見張り役を捕縛後そのまま突入する、1名に対し1班で事にあたれ、盾と数で押しつぶせ、多少のけがは構わん、生きていればそれでいい」
「カチュア小隊周囲の警戒、およびバックアップの準備整いました」
「アニマ小隊円陣包囲完了です」
「では、前哨戦を始めるぞ、慌てて転んでけがをしないように。各自行動開始!」
俺が麻痺ナイフを使うと訓練も何もないので、手を出さずに見守るだけにする。
見張り役の2名を押さえ捕縛すると、騒ぎを聞きつけ寝ていた奴らが商人の馬車から出てくる。
「盗賊に告ぐ、周囲は完全に包囲されている、抵抗しなければ命の保証はしよう。抵抗する場合はやむなく殺す場合もある」
盗賊はこちらの人数を見るとあっさり降伏した。
「全員別々に分けて監視しろ、構成人数や拠点を聞き出す」
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「この8人のリーダーは誰だ?言えないなら自分ではないと言え、嘘をついた場合指を1本切る」
3名が同一の人物の名前をあげ、その名前の本人は完全な黙秘だった。
残りの7人を一か所にまとめ、リーダーと目の届く位置に置く。
「これからお前らの盗賊団について質問する。より有益な情報を出した方には伯爵に頼み減刑を願うと約束しよう。なお、何も言わない場合は、最近ここらで頻発している襲撃の罪が、すべての君らの罪になるのでよく考えて発言するように」
「拠点の場所言います!!」「ボスの名前知ってます!!」「おめぇら!吐くんじゃねぇ!殺すぞ!!」
「素直な部下をお持ちでうらやましい。コンドル班!情報を聞いてまとめろ、ユニフォーム班はカチュア小隊とアニマ小隊に伝令、各自見張りを立て、休息。夜明け前に情報をまとめて出れる準備を。ビクターからズールまでは被害者の身元の確認と遺品の整理、盗賊の強奪物は隊の所有物となる、整理しろ。遺体はファルコン、ホーク、コンドル集合後、戦利品と共に街に持ち帰る。猛禽班が到着までユニフォームからズールまではここで索敵と待機。合流後猛禽班の指示に従い街に帰還、以後別命あるまで猛禽班の指示に従え、では各自行動開始!」
盗賊の証言の元、先に合流したホーク班を斥候に出す。
1時間ほど後、ヒヨコを使った連絡で30名ほどの野営の場所を確認。
カチュア小隊、アニマ小隊で指揮は2名に任せ、できるだけ殺さずに生け捕りにしろと指示を出し、その場を離れる。
俺の小隊の指揮権は猛禽班に任せた。後は見守る。
訓練後は中隊規模でなく小隊規模で動いてもらう予定なので、小隊長と猛禽班での状況把握と作戦立案、行動ができるようになってもらう。