ゴルスーイ盗賊団!
訓練開始から70日が経ち、兵士の顔も皆たくましくなってきた。
そろそろ基礎訓練の仕上げと川の月からの計画をしなければいけない。
猛禽類班はすでに3班に分けて領内の情報収集に散らばらせた。一日2度の定期報告義務付け、海の月85日に帰還する予定だ。
訓練兵は4班が休暇、2班がサバイバル、残り20班は2つに分かれてカチュアVSアニマの模擬戦闘である。
手の空いた俺は、今のうちに俺なりにの情報収集をしようと思う。
猛禽類班は、盗賊とはできるだけ接触しないように、町や村での被害情報や目撃情報などを集めさせた。
俺はまずアルフォンの近くで、一番大きい盗賊団に行くことにした。
今の衛兵たちは何もしないし、過去の私設軍も何もしていない。
構成人数はおおよそでも200名以上、しかし商人などを襲ったという被害報告もなく、むしろ拠点近辺はそこらの村や町より安全という噂だ。
この国では、税金を払わず一定の縄張りを持って者や、ならず者の集団は全部盗賊団というくくりに入るらしい。
とりあえず朝から堂々と、拠点があると言われる場所に向かっていく。
山に入ると人が頻繁に通る跡がいくつもあったので、それを辿って奥に入る。
周囲探知に人の気配が引っかかるが、無視して突き進む。
「とまれ小僧、この山は危険だぞ!迷子……じゃなさそうだな」
平気な顔して山をスタスタ歩く子供は、さすがに迷子には見えなかったようだ。
「フォブスリーン家の使いです、この山近辺のボスをして言える方に話があってきました。ご案内いただけますか?」
「……ちょっとここで待ってろ、お前一人か?」
「えぇ1人です、では取次ぎよろしくお願いします」
そう頼むと近くの木のそばに腰を下ろした。
2人1組だった片方は、監視の為かこっちを見ている。
とりあえず、いきなり攻撃や脅されない所を見ると、想像以上に統率のとれたまともな組織のようだ。
30分ほどすると別な人間を一人連れて戻ってきた。
「フォブスリーン家の使者と証明する物は?」
腰から一本のナイフを抜き、柄の紋章を見せる。
60日の定期連絡の返信で来た、【エッグノック】の紋章が刻まれたナイフだ。90日までに身分証として全員分作るそうだ。
30日から作っていたが、俺とカチュア、アニマ用に先に3本送ってくれた。念のため【ホーク】と【コンドル】の班長に持たせてある。【ファルコン】のまるちゃんはアルフォンでの調査なので実質いらない。
「ちょっと違うが確かに私設軍の紋章だ、何者だ?」
「今年新設された私設軍からの者です。紋章が違うのはそのためです」
「まぁいい、とりあえず親分が連れてこいと言ってるから、案内する。なめた口きいてぶっ殺されないようにな!」
それから10分ほど歩いて山城の様な場所に案内された。周囲を柵で囲い、柵の中には畑や家畜もいる。門番もしっかりいるし、家も何でできてるかわからないが、しっかりしたものだ。
一番奥の大きい屋敷に案内される。
下手すりゃ洞窟とかに住んでると思ったのに、舐めすぎてた。
入り口で武器を預けるようにと言われるが、武器になる物はナイフ1本しかない。それも身分証明を兼ねているので、持っていることが許可された。
「親分連れてきました」
「おうはいれ!」
部屋の中に入るとそこは寝室で、ベットの上には綺麗な女性が裸で寝そべっていた。
ガタイがよく毛が濃いおっさんが、上半身裸で近くのソファーに座ってる。
「なんだ、ガキじゃねぇか!!まぁいいそこ座れ、さっきまでちょっとお楽しみ中だったんでな。で?要件はなんだ?」
「フォブスリーン家の新設私設軍の代表としてあいさつに参りました、リョウです」
「ほぅ……おれはジェイキスラ。要件はそれだけか?」
「来月のはじめから私設軍は盗賊の討伐と魔獣の駆逐に乗り出します。その事でお話に参りました。重要なお話になるのですが、他の方がいらっしゃっても大丈夫でしょうか?」
そう言ってベットの上の方を見る。
「……問題はない、話せ」
「ジェイキスラさんには聞いてませんよ、ベットの上女性に尋ねています」
ベットに寝そべりながら手で髪をすいていた手が止まる。
ベットから上体を起こすと、こちらを向き女性が尋ねる
「……なぜそう思う」
「さっきまで情事にふけっていたというのが嘘だからですよ。なのにそんな嘘をついてまで女性を同伴させるのは、護衛役か女性に話を聞かせるくらいしか思いつきませんでした。護衛役なら裸でいる必要はないし、武器の類も隠してないようですしね」
この部屋に入った時スティールで武器の有無は確認済みだ。
「なら女性は話を聞く立場でしょう。少なくともジェイキスラさんは自分が親分だと名乗ってませんし、この部屋に親分がいなくても、少なくともジェイキスラさんより貴女の方が立場は上でしょう」
「なぜ情事がなかったと言える?」
「これでも娼館で下働きをした経験がありましてね、匂いでわかるんですよ」
「こんなならず者の親分が女だと思うか?」
「エギラム最大の街で、盗賊団の頭目をしていた女性を知っていましてね」
「……ジェイキスラ席を外せ、こいつは予想以上にキレる隊長さんのようだ」
ありゃま、ばれてる!
「素敵な情報網をお持ちのようですね」
「そうでもなきゃ食っていけないからね、改めて自己紹介をしようゴルスーイ盗賊団3代目頭目ケアニーだ」
「フォブスリーン伯爵直属私設軍中隊【エッグノック】の中隊長のリョウです」
「今月からアルフォンで、妙な軍の訓練が行われてると聞いて多少調べさせてもらったが、12歳の子供が中隊長と聞いて鼻で笑ったもんだが、どうやら子供のお遊びじゃ無いようだね?」
「お褒めに預かり光栄です」
「それで本題はなんだい?」
「最近この領内で、無法をしてる馬鹿の情報を聞きに来ました」
「……何か知ってるのかい?」
「伯爵様の推察ですよ、私設軍が徴発され、国から派遣された衛兵は役立たず、それに呼応するように増える被害、伯爵を妬む他の貴族。どうも話が出来すぎじゃないですか」
「確かにここ最近、今まで聞いたこともないような連中が、領内で色々やっているようだ。でもこっちにもいろいろルールがあってね。そう簡単に情報を渡すわけにもいかないんだよ」
「もちろん相応のメリットもだしますよ」
「拒否したら?」
「やむなく戦う事も致し方ないでしょう」
「ナイフ一本でここから逃げ切れると思ってるのか?」
「そうでなきゃ一人でふらふら来ませんよ」
部屋の中の空気が緊迫する。
「お互いがお互いの事をよく知りませんからね、まずは簡単な約束をしましょう、我々は川の月の間は決してゴルスーイ盗賊団には手出ししません。代わりに、対立している盗賊団でもよそ者の盗賊団でも構いません、情報を下さい。できれば領民に危害を加えるような盗賊団がいいです。ここのように善良な盗賊団が相手だと、話し合い次第で手を組むことになるかもしれませんよ」
「……口だけなのかどうか見てやろう、海の月中に使いを出す。結果がどうなろうと必ず報告しろ」
「互いにいい関係を築けることを願っています」
山城の門まで送ってもらうと、追手がいない事を確認し、宿舎に帰った。
ファーストコンタクトとしては上々だ、しかし親分と呼ばれていた頭目がまさか女だったとは……。
ギャリンを少し思い出して、胸が締め付けられた。




