二人の補佐役!
フォブスリーン家の屋敷から学園に向かい、ヒヨコに頼んでアポを取る。
行き当たりばったりの、知り合いの訪問にヒヨコは便利だ。
【学園の入り口で待っておる】
という返信を受け、ちょっと急いで向かう。
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「学園長先生、お久しぶりです」
「なんじゃ、意外と元気そうじゃな、とりあえず2人きりで話せるところに行こうか」
「あれ?ファラクは?」
「奴なら食事の真っ最中じゃ、この半年でかなり大きくなったぞ……」
学園長が笛のようなものを吹くと、人間一人なら乗れそうなサイズに成長したファラクがやってきた。
「で、デカいですね」
そういいながら魔力を注ぐ。
「ぐるるるるるぁ!」
とてもうれしそうだ。
「ばかもん!餌代がつらすぎるわ!!」
「す、すみません」
「まぁそれ以上の恩恵があるからいいがの!」
「恩恵?」金のたまごでも産むのか?
まぁいろいろな方面での、抑止力的な意味だろうな。
「とりあえず話は儂の部屋に行ってからじゃ」
ファラクとじゃれあいながら、学園長室まで案内される。
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剣奴隷での事や、来月からフォブスリーン家の私設軍の新設にかかわる事を話した。
「ふむ、そうか現状の国についての話は大まか聞いているか……実際学園にもファラクの引き渡し、情報開示要求、さらには戦時の参加要請が来ておる」
「戦争になったら、学園長も出るということですか?」
「戦争には気が進まんが、降り注ぐ火の粉は払わねば生きていけん、攻勢に参加する気はないが、防衛には出ねばなるまい。学園といえども国と民あっての学園じゃ」
確かにその通りだ。
「でもファラクは……」
「譲渡されたといっても、儂はリョウから預かっているというつもりじゃ、戦争に駆り出すつもりはない。しかし……ファラクはいろいろな意味で重要な位置におる。この国を滅ぼす原因であり、この国を繁栄させる鍵でもある」
「わかります、今現時点でファラクを引き取ろうとは思いません。ファラクが最もへ平和に暮らせるのは学園でしょう」
「心苦しいが儂もそう思う」
「学園長になら安心して預けられますよ、ファラクも懐いてますし」
ファラクは学園長に撫でられてうれしそうにしている。
「しかし問題はリョウじゃ、飛龍の生まれにかかわり、その年で高位魔術を使える、国から何か勅命が来る前に、手が打ててよかった」
「え?何かしたんですか?」
学園から何か国に言ったのだろうか?
国からの勅命に対し、国民は逆らう手段はないといっていい。
死ぬか、国外逃亡くらいだろう。
「とりあえずこれを持っていけ」
学園長は引き出しから金の懐中時計を取り出して投げてよこした。
「……これは?」
「儂が第二級特異点に認定されたときに、ペルードから送られてきたものじゃ、儂の身内である証明になる。国から圧力がかかっても、それを見せれば下手な手出しはできん」
「でもこれってかなり貴重なものですよね?俺なんかが……」
「第二級特異点の認定はファラクのおかげでもある、つまりリョウに半分の権利がある、遠慮なく持っていけ」
「でも、今後非正規軍として戦う場合、学園長の身内って……あまりよろしくないですよね?」
俺が戦うということは、第二級特異点を後ろ盾に、戦争をするということになる。
「ばれなきゃいいのじゃ、ばれてもすべて焼き払えばいいのじゃ。それに儂の保護とロンデル伯爵の話はすでに双方で織り込み済みじゃ、こうでもしないとリョウの身が危険ということもあるからの」
ファンキーなじじいだな。
しかし、やっと引っかかっていたものがわかった。
なぜ軍の兵士にわざわざ奴隷を買い上げたのか、伯爵から補佐役をつけないのか、王国の手の者を、軍に入れないようにして、なにかあったらそのまま丸ごと学園の保護下に置くつもりか。
政治的意図もあるだろうが、伯爵と学園長に守られてるのは非常にありがたい。
「たかが俺にここまでしてもらって、感謝の言葉もありません」
「まぁ大人のエゴも絡んでおるからな、伯爵の直属の国の干渉を受けない軍だ。どうなるかはリョウの腕次第じゃな」
「重圧で死にそうです」
なんか話が想像以上に大きくなってきた。
「リョウを心配する者と同様、おぬしを狙う者もおる。十分に気をつけよ、国にはすでにおぬしが儂の身内と公言しておる。手出しすれば相応の対応をすることもな」
「完璧に脅迫ですよね?」
「される前にしておかんとな。綺麗ごとではこの立場におれんし、学園も守れん」
「確かに……怖い大人の期待に添えられるように、精々頑張ります」
「また何か面白ことをしでかすことと期待しておる」
さまざまな大人のしがらみを考えつつ、俺のために色々動いてくれている伯爵と学園長に感謝しながら家に帰った。
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「伯爵様の私設軍の隊長!!?」
「かーちゃん声がでかいよ、来月からアルフォンでとりあえず年内って約束だけど」
「規格外な子だとは思っていたけど12歳で……まぁ考えても無駄だね、常識で考えるとアタシが馬鹿みたいだ」
「それでお願いがあるんだけど……」
「なんだい?」
「その軍の補佐役にカチュアを誘おうと思うんだ……人手が足りなくなったら困る?」
「え!?あたし??」
隣で呆然としていたカチュアが急に反応する。
「腕っぷしがよくて、人を統率するのも慣れてるし、何せ信頼できる人じゃないとだめだからさ……」
「別にかまいやしないよ、元々旦那が死んでから一人でやってきたし、忙しいときは人を借りることもできるし、なにせ婚約者だしねぇ、一緒にいたほうが色々《・・》と都合がいいだろ?」
にやにやと好奇な笑みを浮かべる。
「だから婚約者じゃないってば!!」
「そうだ!リョウ、決闘だ!!」
馬鹿やめろ思い出すな!!
「で?カチュアはどうする?一緒に来る?」
「もちろん行くに決まっているだろう!!」
「はい、もう言質とったからね、これでカチュアは俺の補佐役だ」
「わかった!構わん。では決闘だ!」
「軍規その1、許可なく私闘をする者は死罪、というわけでその決闘は受けない。また今度ね!!」
「卑怯だぞ貴様!!!!」
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翌日、剣闘会に顔を出し、バレスにアニマを軍に引き抜きたいと頼む。
本来は契約期間なので違約金が発生するのだが、元々剣奴隷で、行くあてのなかったアニマを預かっていた形だったので、快く許可してくれた。代わりに、軍の食料や消耗品の購入に関して、優先交渉権を頼まれた。さすが商人である。交渉権なので、ほかに安いところがあればそっちから買えばいい。しかしある程度大きな商会から、安定して数を確保できるのはこちらも助かる。
バレスとの交渉を終え、アニマの部屋に向かう。
――ノックをする。
「はーい、あいてます、どうぞ~」
「何日かぶり、アニマ」
「リョウ!もう戻ってきたの?早かったね?」
「いや、今日は話があってきたんだ、実は剣闘士に戻ってきたんじゃないんだ」
「え?」
「とある伯爵に雇われて、私設軍の中隊長をやることになったんだ」
「ええええ!!?」
「それで来月からアルフォンで、新設の中隊の訓練を始めることになったんだ。それで――」
「やだ!!アタシもついていく!何でもするから連れてって!!!」
「あ……今何でもするって言った?言ったよね?」
「言った!!絶対ついてく!!」
「むしろ補佐役に誘いに来たんだ、バレスとも話はついてる。剣闘士はやめることになるが構わないか?」
「いい!全然いい!!」
「給料とか細かい打ち合わせは、後日雇い主との契約の時に交渉してくれ。契約の日が決まったら連絡する」
「わかった!!」
ほんとはゴレアンさんとか連れて行きたいですよね!
料理能力とか何かあればルーアもあったかもかもしれません。
バトルロイヤルでの指揮能力、学園での斥候としての能力でカチュア。
槍の扱い、戦闘としての腕でアニマ。
ってかほかにいないですよね!意外と友達が少ない主人公。
ちなみにジンの実家は知らないし、卒業したのかも謎でです。
作者的にはジュリアを連れて行きたかった!