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伯爵のお願い!

風邪から復帰すると、かーちゃんに出かけてくると伝え、街に出る。まずはアルベルトの実家だ。釈放された日に、ヒヨコに伝言を頼んでおいたのだが、【いつでもいいから顔を見せに来なさい】と返信があったので、遠慮なくアポなしで行く。


城壁内の門で銀時計を見せ、記憶を頼りに屋敷に向かう。迷子になってヒヨコに案内なんてされてない。断じてない!



-----------------------------



「やあ、待たせたね」



案内された応接室で待つと、変わらず壮健な紳士がやってきた。

「お久しぶりです。この度はご迷惑をかけました」



「そんなことはないよ、彼もうちの子と子をなしてくれて、育てるのも任せてくれるという」



「ハクシャク、ゴハンクレル、スキ!ゴハン、コドモ、ヨロコブ」

肉をついばみながらヒヨコはご機嫌だ。


「でもこんな時間に訪ねてしまってすみません。ご在宅で助かりました」



「最近は領内も物騒だしね、とある事情でこっちの屋敷にいる。王宮に行く仕事も年末年始を過ぎると、なかなかないしね。普段は執務室で数字とにらめっこだ!!」




明るく軽やかに笑う。

「それはよかったです。ヒヨコを預かって頂いて、ありがとうございました」



「ふむ、そのお礼の件なのだが……」



「はい」

ある程度は覚悟しているが、ヒヨコをくれとかは無理だ。




「この先何をするのか、決まっているかい?」



これは仕事関係か?

「世界のいろいろな国を見て回りたいので、15までは国の中を見て回ってその後剣闘士で冒険者の資格を取ろうかと……」




「ふむ……1つ君に頼みたいことがある、聞いてくれるかね?」




「……なんでしょう?」



「年の初め、ジュビリー学園の学園長が第二種特異点に認定されたのは知っているね?」



「……はい」



「原因は君の飛竜。君のせいというわけではないが、飛竜王国がその飛竜に関しての情報開示をエギラムに求めた、しかし王権の届かない学園の事だ、相手が納得する答えなんか出せない。表向きに宣戦布告はされていないが、裏で間違いなく動き始めてる」



「俺にできる事って……ないですよ?」

ファラクの入手経路については誰にも言わないつもりだ。



「もちろんわかっている。問題はここからだ、エギラムも近く起こるであろう戦争に向けて、徴兵を行っている、むろん我が領も例外じゃない、領民の徴兵、私設軍の徴発。かつてないほどに今国内は緊張状態だ」



「それで俺にお願いって?」



「フォブスリーン家の新設私設軍で、中隊長として軍を1つ任せたい」



「え?何言ってるんですか?」

ちょっと展開について行けない。



「ここ近年にないほど領内での盗賊の被害が増している。うちの鉱山収入を妬んだ貴族の手先もいるとわたしは思っている。しかし私設軍は国に徴発され、わたしも軍事待機の身で首都から離れる事は出来ない」



「でも、軍どころか戦争経験すらないですよ!」



「一番の問題は最も信頼できるという点さ、アルベルトはまだ学園だ、それにまだ人を率いる器にはまだ育っていないと思う。学園での事件はこちらでも調べさせてもらった。背景も可能な限り調べた。決断力、実行力、社交性、個人の強さ。総合で見ても、現在わたしに頼れる人の中に君以上の人はいない、頼む。君しかいないんだ」




「一応詳細を伺ってもいいですか?」



-----------------------------



いくつかの質問で得られたのは以下の事だ。


1、私設軍は特殊中隊として、俺の上にはロンデル伯爵しかいない。どの軍にも属さない伯爵直属の私設軍。


2、中隊数は200名、全員奴隷で伯爵家で買い上げた15~40までの男性。(亜人含む)


3、年間資金は200銀貨、領内にいくつかある軍用宿舎は自由に使っていい。


4、領内の盗賊の取締り、魔獣などの駆除がメインの仕事で、戦時には伯爵直属軍として出陣する。


5、盗賊の取締りで出た金品に関しては、すべて軍の資金にしてよい。


6、予算の許す範囲内であれば、隊員の増員も許可される。


7、奴隷ではあるが、全員軍に所属する契約書にサインしているので、規律違反の処罰は死刑でも罪に問われない。




(無理だ!戦争をしたことがない俺でも、これは無理だとわかる)




「俺の補佐に付く人は、誰もいないのですか?」




「申し訳ないが、適任がいない。代わりにリョウ君には月24銀貨、君が選ぶ補佐役2名までに月15銀貨の給料を伯爵家から出そう!」



「これ予算って食費から何から込みの金額ですよね?」



「少なすぎるのはわかっている、剣と盾と鉄製の軽鎧は人数分揃っている。他に何か必要であれば、可能な限り用意しよう」



「槍を150本、弓ナイフを人数分、初年度だけでも予算の割り増しが最低限……それと調理施設や訓練場所が併設している町が必要です」



「槍と弓に関しては元私設軍の備蓄がある、矢も可能な限り用意させよう、ナイフは数がないので、余っている剣を鋳造してナイフを用意する、予算はすまないがこれ以上は苦しいので、代わりに備蓄食料を200名1月分出そう。我が領地最大の街アルフォンなら、大人数も賄える調理施設が付いている、それほど広くはないが訓練場も併設されている。領の駐在執務官もその街にいる、何か困ったら相談したまえ」




「なるほど、条件はわかりました。では、謹んでお断りします!」




「そ、そこまで聞いて断るのか!!?」

思わず伯爵はつんのめる。




「軍隊とかよくわからないですし、なにせ怖いです、全員年上ですよね?」



「わたしも年上だが怖くないのか?」



「仮に200人に同時に来られたらどうにもなりませんし、そもそも12歳の子供のいう事を聞くとは思えません」




「とりあえず、年内だけ……というのはどうだ?中隊長となれば女性にモテモテ、アルフォンに私邸も用意するぞ?」



「女性にあまり興味はありません」



「中隊長と言えば、年齢に関係なく冒険ギルドの利用ができるぞ?」



「伯爵直轄の非正規軍ですよね?」



「……頼む、領地のピンチなんだ!この通り!!」

額が机につくほど頭を下げられる。



正直言うとお世話になった人の頼みだ、断りにくい

「わかりました、とりあえず年内という約束でしたら、お引き受けしましょう。ただし奴隷に相応の死者が出ても知りませんよ?」



「そうか!受けてくれるか!!まともに機能する時点で、7割残っていれば上々だ!よろしく頼む」



とんでもないお願いを引き受けて後悔しつつ、補佐役に誘うであろう2名の顔を思い浮かべつつ憂鬱になる。



剣奴隷から一転今度は隊長殿ときた。俺の人生はどこに向かっているのだろう?



空の月にもう一度顔を出し、細かい契約を結ぶ事が決まり、海の月1日から3か月270日にも及ぶ仕事が決まった。



どうしようかと考えながら学園へと足を進めた。

剣奴隷編終了、新章突入、隊長編の開幕です。


ちなみに伯爵はどうにかして、主人公を雇いたかったのが本音です。

中隊長を断られても、何か別な方法で、取り込みにかかっていたでしょう。

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