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釈放、再会、遺されたもの!

釈放金を償却し終えた俺は、学園を訪れ、魔力抑制魔法の解除をしてもらった。

解除された瞬間。いきなり冷たい空気に囲まれる感じがした。

意識を集中すると、身体に流れ込む体外魔力が感じられる。

前には気づかなかった感覚だ。



一応まだ立場は剣奴隷なので、学園長に挨拶することもできず、そのまま剣闘会にトンボ返りとなった。

アニマとは若干揉めた。


「このまま剣闘士になっちゃえばいいじゃないか!!」



「挨拶しないといけない所とかもあるし、ひとまず帰るよ、落ち着いたら連絡する」



「わかった、でも待ちきれなくなったらあの宿に行くからね!」



「わかったよ!」



荷物をまとめ、会長の部屋に挨拶に行く。



「ずいぶんと早かったな、まだ半年もたっていない」



「十分反省しましたよ!もう剣奴隷にはなれないので、二度と捕まりません」



「はっはっは!悪いことをしない。じゃなく捕まらないか!!リョウらしい。剣闘士になる気になったらいつでも来い、高待遇で迎えてやる」



「15歳になる前に、お世話になるかもしれません」


荷物を背負いなおすと剣闘会の出口を出て、カロナムの街を宿に向けて歩く。


ふと空を見上げると、剣奴隷だった頃もよく見えていた相棒の姿がある。

指笛を吹くとまっすぐに急降下して、左腕に乗った。



「久しぶりだなヒヨコ!元気にしてたか?」


久々にヒヨコに魔力を注ぐ、いまだに首には俺の銀行の指輪がぶら下がっている。



「マスター、マスター ヒサシブリ! コドモウマレタ パパニナッタ サミシカッタ! カマッテ、カマッテ ハラヘッタ」


どうやらこの半年でヒヨコは俺より先に子持ちになってしまった様だ。

学園とアルベルトの家には早めに挨拶に行かないとな……


一通りヒヨコ撫でると、空に飛ばす。嬉しさと不安で入り混じった足で家に帰る。



-----------------------------



入口の前まで着くが、どうも一歩が踏み出せない。どうしようかとモジモジしてると後ろから急に殴られる。



「おかえり、バカ息子」




「か、かーちゃん、ただいま」

色々考えたがどうもお母さんより、かーちゃんなのだ。



不安と緊張で周囲探知を忘れていた。母は強しとはよく言ったものだ、人生で一番痛いげんこつだった。



「全く心配させて!!事情は学園からの連絡で聞いたけど、やる事が無茶すぎる!!」



どこまで聞いているのか知らないが、余計なことまで突っ込まれても困るので、ひたすら謝る。




「リョウが犯罪者になっても、何になってもいい。でも死んじゃうようなことだけはやめないさ!!心配したってしたりないよ全く!!」



「ごめんなさい……」



「まぁ無事に帰ってきたから、小言はこれくらいにするさ。それにアンタに会わせたい人もいるしね!」



「え?まさか……」



「カーチュア―!!リョウが帰ってきたよー!!!」



―――周囲探知にものすごいスピードでこちらに向かってくる反応がある。



「リョウ!!!」




――カチュアだ

転がすわけにもいかないのでとっさに避ける。



「なぜ避ける!!」




「命の危機を感じたからだ!」



「母の仇を討ってくれた恩人にそんなことをするわけないだろ、それに大事な婚約者を殺すか!?」



「は?」



「だから大事な婚約者を殺すわけないだろ?ここは再会を祝して抱き合うシーンだろ?」



「婚約者?だれが?」



「お前以外にだれがいる?」




「あー、うちのかーちゃんから聞いた話だろ?それ勘違いで――」



「これを見ろ!」




【いとしいわが娘へ。運が良ければこの手紙はお前の手に渡るだろう。その時おそらく私はもうこの世にはいない。復讐など考えずに自らの道を進むこと。あなたのために、何も言わずに母娘の縁を切ってごめんなさい。真っ直ぐに罰を受け入れる姿に、あなたのお父さんの血を感じました。情けない母でごめんなさい。……そしてここからが本題です。リョウにあなたの事を任せると伝言を残しました。あなたの目にかなうなら、二度と逃げられないように捕まえなさい。夜這いでもなんでもして、既成事実を作れば勝ちよ!頑張りなさい。世界一可愛いカチュアの母より】




「……お前夜這いとか既成事実の意味わかってるのか?」




「夜中に決闘したり、決闘で勝つことじゃないのか?」




「そ、その通り……だ?」



「というわけで決闘を申し込む!あたしが勝ったら結婚してもらうぞ?」



「えーっと話が見えません。それにまだ俺12歳――」



「12歳なら十分大人だ!構えろ、あたしはこのままでもいいがな!!」



「と、とりあえず夜這いは夜にしようね、まだ明るし!!」



「む、それもそうだな、では改めて夜にするとしよう!」



とりあえずこの場はしのいだ。

「カチュアって今どこに住んでるの?」



「は?この宿だが?」



おかしいこの宿には、部屋の余裕などないはずだ。

「エリーさんが結婚して旦那の実家に嫁いだから、エリーさんが使ってた部屋で寝泊まりしている。2年のお付き合いでの結婚だそうだ!うらやましいよな」



「あれ?エリーの恋人ってガザルじゃなかったのか?」



「何言ってるんだ、相手は元冒険者でこの宿に泊まっていて、結婚を機に実家の農家を継いだぞ?」



かーちゃんに聞くと俺が学園に戻った後、かーちゃんに相手を紹介し、のちに結婚が決まり、俺の卒業式と同時に結婚のお祝いをしよう。と言う話だったのだが、俺があんなことになったので、エリーが手紙で事情を書いたらしい。その手紙は検閲ではじかれて俺の手にはない。

そりゃぁ俺が知らないわけだべさ。


嫁いでいったエリーと、入れ替わるようにカチュアがやってきて、そのまま住み込みで働くことになったらしい。



「え?俺の部屋は?」




「カチュアと一緒だよ、なんならベットは1つにするかい?」



-----------------------------



部屋に戻ると、出かける用意をする。可能な限り早く、行きたいところがあるのだ。



夜になると、カチュアとかーちゃんに見つからないように窓から出ると、潜伏を使い、久々の風魔法で空を飛び、目的地に向かった。



最初の目的地は元スラムがあった場所、事件から半年近くで既に人が集まり始め、新たなスラムになっている。もともとギャリン盗賊団があった場所はもう影も形もない。すこしその場で目を瞑ると、もう一つの目的地に向かって飛んだ。



ギャリンの手紙に会った["あの"場所を掘れ]それは実の娘カチュアにも残されていないメッセージだった。俺にだけ伝えたい何かがそこにはある。


"あの"場所で思いつくのは3か所、根城、ガーリーを埋めた場所、ガラル達が拠点にしていた場所。


ガーリーを埋めた場所は詳しく言ってないし、俺も正確な場所はあいまいだ。

遺す物である以上根城の近くに埋めることはないと思う。

考えられるのはガラル達が拠点にしていたあの洞窟が一番濃厚だ。2時間程でたどり着くと、洞窟に何もいないのを確認し、中に入る。明かりがなくても暗視のおかげでよく見える。



地面を丁寧に確認すると、地面の色がやや違うところがある。



(ここだ!)



土の生活魔法で掘ると、中から金属製の箱が出てきた。

恐る恐る中を開けると……











――大量のエギラム銀貨のと宝石が入っていた





小さな紙がふたの裏についている



【リョウへ、自分以外の為に自由に使え。ここには盗賊行為で得た金は一切入っていない、カチュアを嫁にするなら自由に使え:ギャリン】



20cm四方の箱にかなりの量の銀貨が詰まっている。掘り出すと高さは30cmはある。ふたを丁寧に閉じると、穴を深く掘り、もう一度埋めなおした。





いつの間にか小雨が降りだした中、空を飛びながら家に向かい、誰にも聞こえない空で泣いた。



もしかしたらギャリンが生きてるかもしれない。都合よくそんな希望を持ったりもしていた。でも今、ギャリンが生きていない証拠を見つけてしまった。


ギャリンへの最後の言葉は、ギャリンをくそったれ扱いした言葉だ。

時は戻らない、死者蘇らない。異世界だけど、魔法があるけど、ここはゲームじゃない。








冷たい雨にうたれて戻った次の日、この世界で初めて風邪をひき寝込んだ。

カチュアは一般的な性知識は持っていますが、母の影響で夜這い=夜中に戦う事という思い込みをしています。

ギャリン「昨日も夜這い(暗殺者)が来た、返り討ちにしてやったけどね!」

子分「さすがっすねぇ……」



ギャリンが生きていたならリョウ宛ての手紙はゴレアンから回収するはず、万が一街に近寄れない状況でも洞窟には行ける。銀貨を持って行く、置いていくに関係なく、生きていればあの箱にメッセージがあるはず。

結果ギャリンの生存が否定された瞬間でした。

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