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夢の同居生活の始まり!


「なぁ、リョウ1つゲームをしないか?」



「ゲーム?」



剣闘会タッグマッチの試合の控え室でそう聞かれた。



「リングに上がったら獲物を決める、決めた獲物を先に倒した方が勝ち」



剣闘会タッグマッチは全32チームによるトーナメント制。

会場を2つに分けて1日で消化される。



「獲物を決める条件で、かなり優劣出るじゃないか」



「んじゃ先にリングに上がった方がリョウ、後からリングに上がった方があたしだ」



「完全に前衛を俺に任せようとしてるよね?」



「そんなんじゃないさ、別に前の試合で勝った方が先に上がった奴でもいい」



「ふーん……で、もちろん何か賭けるんでしょ?」



「相手の言う事をなんでもひとつ聞く権利」



「乗った!それ!!」



「なんか嫌な予感がするな、勝ったら何を言うつもりだ?」



「アニマに釈放分の消費媒――」



「まて、ダメだそれは、もっと、こう男らしく裸が見たいとか触ってみたいとかないのか!!」



「そんな事より自由が先です」



「あたしの身体を美しいと言ったのは嘘か!!騙したのか!!」



「ちなみにアニマさんが勝ったら何言うつもりですか?」

華麗にスルーする。


「そ、それは言えん!!」



「まぁいいですよ、負ける気ないですし、じゃあ勝ったら伝言を頼めますか?」



「伝言?家族にか?カロナムの中ならいいぞ?」



剣奴隷は手紙の受け取りや、出すことが許可されていない。

剣闘士などに伝言を頼むことは可能だが、大抵がぼったくりで貴重な私物などと引き換えで、しかもしっかり伝言されてない事も多い。


「カロナムの東の冒険者宿のゴレアンって人に、伝言をお願いしたいんです」



「いいよ、あたしが負けたらね!」



こうして約2名だけ別ゲームの、タッグマッチが幕を開けた。



-----------------------------



「おい!アニマそっちの獲物こっちに寄越すなよ!」



「仕方ないだろ!そっちに行っちまうんだ!わざとじゃない!!」



「【狂気のアマゾネス】の二つ名はどこ行ったんだよ!くっそ、アニマ【風刃】で俺ごとやっちまえ!」



「いいね!好きだよそーゆーの!!…………発動!!」



―――遠慮なく【風刃】が飛んでくる。



俺に取り付いていた2人が回避する。俺はもちろん遠慮なく吸収する。



「あーリョウ!てめぇ!卑怯だぞ!!」



「え?わかってて撃ったんじゃないの?とりあえず今度こそ、そっちはよろしく!!」



ゴチャゴチャしたが何とか勝った。



-----------------------------



「負けそうになるからってこっちに敵まわすなよ、卑怯者!!」



「ち、違うんだ、わざとじゃないんだ!!」



「俺ごと嬉々として魔法で吹き飛ばそうとしやがって!!」



「あ、あれはリョウの指示だろ?吸収だってあるし……」



「吸収したとき[卑怯だ!!]とか叫んでたじゃないか!!」



「あ、あれはノリだよ!」



「次にこっちに敵寄こしたら、後で他人に言えない事するからな!!覚えとけよ!!」



「い、言えない事。そ、そんなダメだ、あぁでも!」



1人妄想の海にダイブした馬鹿をほっといて、次の試合に臨む。

危惧してた[アニマがゲームの為に邪魔をする]こともなく、淡々と決勝戦まで勝ちあがった。


ここまでの内訳は俺の3勝、アニマの1勝。すでに俺の勝ちが決まっている。


「なぁ、リョウ。もうあたしの負けは変わらない、伝言も必ずする、だからお願いがあるんだ」



「なに?」



「その……もし次の試合であたしが勝ったら……あたしの願いを叶えてくれないか?」



「いや……それを受ける意味がないだろ?」



「う~」



「受けないってなら降参するとか言うなら、勝手にしろよ。俺は一人でも行くし、勝ってくる」



「ち、違うんだ!その……じゃあ、この大会で優勝したら一緒に住まないか!?」





「……は?」





「あたしは元々剣奴隷だ、帰る場所もなく、この剣闘会の中に住む場所を提供されている。剣奴隷の部屋よりもはるかに広いし……」



「いや、俺と住むメリットがアニマにはないだろ?」



「わからない奴だな!!!……好きなんだ!!今までいろんな奴が身体目当てに迫ってきた。あたしは剣闘以外にできることはないし、住むところだって剣闘会の中だ。生きるために卑怯な事もした。勝たないと生きていけないんだ……そんなあたしの身体を美しいと、綺麗だと、最高だと言ってくれた。それから、毎日夢を見る。12歳の子供の夢をだ!頭から離れない、リョウにとっては、いまより部屋も大きくなる、悪い話じゃないだろ?」




あれ?美しいとは言ったけど、あれ?

「え?あの……ちょっと気持ちの整理が……」




「まずは優勝しよう!話はそれからだ!」




とりあえず危ないひとの香りがする。

一度思い込んだら一直線。そんな人間はたまにいる。



「そうだな、とりあえずは優勝だな!」




-----------------------------


決勝戦の相手はこれまでの1:1を2つやる作戦は通用しなかった。吸収対策に2種の魔法を同時に撃ってくるコンビネーション。別々にならず、攻撃と防御を分担する連携。



「アニマダメだ、分断できない!挟撃するぞ!」



「あたしに回り込む速さはないよ!!後ろとって!」



「了解!アニマの槍の癖は知ってるから、遠慮なく貫いてこい!」



「わかった!!」



身体強化で大きく跳ぶと、相手の背後に付き、隙をうかがい、ナイフで牽制する。槍で突かれバランスを崩した瞬間前に出る。

自分のタイミングで振れなかった剣は空を切り、持ち主は宙に舞う。

鋭く早く床にたたきつけられた相手は、しばらく目を覚まさなかった。



こうして決勝戦も勝ち見事に優勝した。



-----------------------------


「よく勝ったな!ちょっとやばいと思ったが、賭けておいて正解だった」



「あれ?今回やばかったんですか?」

バレスが賭けなかったのは、スパーバトルロイヤルの時だけだ。



「お前等の決勝の相手、剣闘会ガルバスの長年の名コンビだからな、フリーランクでかなり上位の二人だぜ?キスって条件がなけりゃ【ベストカップル杯】にも出てきただろうよ」



「へーなるほど」

そりゃ好き好んで男とする趣味を持つ者は少ない。


「そういやアニマが、お前と一緒に住むって言いふらしてたぞ、本気か?」



「本気か?って何かあるんですか?ってか答えすらしてないですよ!!」



「こっちは少しでも剣奴隷の部屋が空けば申請もできるし、役得なんだが、あれだアニマにはあんまりよくない噂があってな……」



「手癖が悪いとか男癖が悪いとかですか?」

簡単に思いつくことを言ってみる。




「いやいや、なんというか……あいつと一緒に暮らした男って大抵死んじまうのよ、まぁほとんど試合中の事故だけどな、妙な曰くというかなんというか……」




「え?やですよ、そんなの、俺は自分の部屋から動きませんよ!!」

(ほとんどってなんだ、ほとんどって!!それ以外は!!)



「……すまん。さっきアニマが来て、リョウの許可済みだと言っていたからサインしちまった。荷物もアニマが運び出すと言ってたぞ」




「うそだぁぁぁぁ、取り消してください!!」



「まぁいいじゃねぇーか、ただの噂だし、お前も広い部屋の方がいいだろ?」



と、とりあえず最悪の状況でもないし、いいか。一緒に住んでれば伝言も頼みやすいかもしれないしな。

「……わかりました、せいぜい物騒なジンクスの通りにならないように、気をつけます」



「そう言えば消費媒体はどうする?」



「全部左手で。左手の分は、そのまま全部清算してください」

これまでずっと貯めてた分があるのでそれなりの金額になるだろう。




「わかった。明日までに吸い出して、今日の賞金と合わせて残りの金額を伝える」


消費媒体の注入、吸出しは中立である運営本部の仕事だ。

それぞれの剣闘会は運営が決めた金額の範囲でしか剣闘士、剣奴隷に売る事を許可されていない。



「早ければ今月中には出れるかもな、そういえばリョウ、ここを出たらどうするんだ?」



「冒険者になりたいけどまだ無理だし、学校は中退だからまだ検討中ですね」



冒険者になるためには、自由身分以上の証明と基礎教育以上の卒業がないとなれない。しかし15歳以上でランクB以上の剣闘士であれば、申請だけで冒険者になれる。もちろん国の戦時には、兵士として扱われるのだが。



「冒険者になりたいなら戻ってこい。高待遇で迎えるぞ!」



雇われている剣闘士は賞金の他に契約期間の給料もでる。代わりに一定数以上の参加、勝率が契約に含まれる。

1戦だけの参加の契約も可能だが、賞金の半分近くが剣闘会の取り分になる。



「前向きに検討しておきますよ」



国からの冒険者の認定を受けるためには、剣闘士でランクBになるしか道はないのだが。



やや沈んだ気持ちで、アニマの部屋に向かう。

タッグマッチは本来タッチでの交代制の2:2ですが、2:2をわかりやすくするためにタッグマッチと書かせていただきました。

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