俺の恋人!
【ベストカップル杯】への参加が決まった翌日……
「リョウってのはどっちだ?」
いきなり部屋を蹴破って入ってきた怒り心頭の女の人が、聞いてきた。
俺はその光景にボーっとし、コアルは俺を指差した。
「くっそ!!なんでこんなガキと……ちょっときな、会長のとこいくよ!!」
その女性に何か言う間もなく手首を掴まれ、会長の部屋へ殴り込む。
「会長!聞いてないですよ!!ペアの相手がこんなガキだなんて!」
「"いい男"を見繕うって言っただろ?エントリーはもう締め切ったからな、出るのやめんならキャンセル料おいてけよ」
「ちっ!どうせこんなこったろうと思ったよ!」
「アニマ。おめーとペアを組みたがる奴なんてうちの剣闘会にはいないんだよ。もうちっとこう……おしとやかになれんかね?」
「おしとやかで勝てるなら、考えてやるよ!!」
確かに俺の目から見ても、他人の部屋いきなり殴り込む女性は"おしとやか"には見えなかった。
「まぁそうやけになるな。こいつはおととい新人戦を勝ったんだが、なかなか見込みがあるぞ?」
「おととい?新人戦?馬鹿にしてのかい?そんなひよっこ押し付けて勝てって言うのか?神が逆立ちしたって無理だね!!」
「まぁそう言うなよ、俺はリョウに賭けるつもりだぜ?」
「その話"マジ"か?」
「マジも本気の大真面目さ。俺だけかね?勝てると思ってるのは?」
そう言って俺の方を見る。
「お姉さんのおしとやか次第じゃないですか?」
軽く冗談に付き合う。
どこかで何かの線がキレるような音がした。
「会長、こいつの拘束具解除してくれよ、ちょっくら試合に向けての練習と、先輩に対する態度ってものを教えてくる」
「別にいいが、殺すなよ?」
物騒な事を言いながら、俺の拘束具を解除する。
「保証はできないよ、ついてきなクソガキ」
俺はアニマの後に続いて部屋を出た。
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「リョウ……歳は?」
「11歳です」
「最後の質問だ。何が食べたい?」
剣奴隷が保証されているのは、1日2度の食事だけである。
「え?」
「昼飯おごってやるって言ってんだよ、クソッタレな人生の最後に、何が食いたいかって聞いてんだよ!!」
「できればお肉系を……安くていいので、たくさん食べたいです」
「……変な奴だねまったく」
剣闘技場近くに併設される各剣闘会の施設は、剣奴隷の生活場所と共に、剣闘士の訓練場や食堂などが入っている。チャビリアンのように大手の剣闘会は、登録している剣闘士の数が多いので、食堂のメニューも豊富である。
部屋に殴り込んできたときに気づいたが、アニマは片手にしかブレスレットをしていない。つまり剣闘士である。
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焼肉定食の肉大盛りを頼むと、おごってもらったことに感謝し、かぶりつくように食べる。
あっという間に食べつくすと、食後にもう一度昼食の感謝をする。
「んで、アンタが会長に気に入られてるネタはなんだい?」
「質問はさっきのが最後だったんじゃないですか?」
「言うねぇ、リョウ。まぁ飯をおごったんだ、それくらいいだろ?」
「気に入られてるのかわかりませんが……新人戦で勝ったご褒美で、試合に出たいですって頼んだら、知らない女性がドアを蹴破って入ってきて昼飯をおごってもらいました」
「腐ってもあのたぬきじじいは耄碌しちゃいない、あたしらに賭けるって事は、勝てると思ってるんだろう?」
「一応作戦会議ですし、人の少ない所に行きません?」
「確かにな……10日まで個別練習場を押さえてあるからそこいくぞ」
「はーい」
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「ところでアニマさん【ベストカップル杯】ってなんですか?」
「あー知らないのか。2名のペアで戦う、9チーム総当たりの大会だ」
総当り戦なら持って来いだ……
「ルールとか全く聞いてないんですけど……」
「あたしも初参戦だ、色物試合だからな」
色物試合とは見世物で魔獣と1:1だったり、特殊なルールが追加されている出資者提案のルールだ。貴族や商人は賞金の一部を出すことによって、○○杯などの自分の決めた名前やルールの試合を作れる。
元剣奴隷の成功者は、剣奴隷しか参加不可の高賞金試合などを出したりもする。
「なにか特殊なルールでもあるんですか?」
「お互い片手を2mのロープでつながれて、それ以上離れられない」
2mかそれならあまり不自由はしないな……
「それだけですか?」
「リングアウトでの負けがないのと……ロープが切れたら互いに敵になる」
「へ?」
「ロープが切れたら相方も敵、倒さないと試合は終わらない、ロープが切れた時点で降参は不可能になる、負けた方は素っ裸で退場。勝った方も、その後の総当り戦は一人だ」
「あー、万が一俺らのロープが切れた場合は?」
答えはわかりきっているが、一応聞いてみる。
「もちろんあたしは、遠慮なくリョウをぶっ飛ばす」
「至極まっとうでございます」
「しかもこの試合、実は男同士でも参加ができる」
「へ?」
「試合開始前にカップル同士でキスするんだよ、それができれば男同士でも、女同士でも構わないって大会さ」
男同士とか想像したくないし、見たくない。
「初耳なんですけど……」
「今言った」
「いいんですか?俺なんかとキスして?」
「別にうぶな処女って訳じゃないし、この大会、賞金がおいしいからね。優勝賞金20銀貨、仲間割れが見たいって言う変態貴族提案の大会さ」
「作戦は、弱い相手はロープを残して、強そうな相手はロープを切って、こちらは守り切って数で押す感じですかね?」
「まぁ普通に誰でも考える作戦だね。とりあえずロープを守りながら戦う練習をするよ!リョウ武器はなんだい?」
「ナイフです」
「よりによって射程の一番短い武器かよ……魔法は?」
「保存魔力は多少ありますが、使うつもりはありません」
左手のブレスレットに貯まった、少女の【火球】2発分の魔力しかない。
それでも俺が使えば、放出量が少ないので2発以上は撃てるはずだが。
「完全にお荷物じゃないか……まぁいいとりあえず練習だね」
アニマの武器は槍なので、基本俺が前、後ろにアニマで、ロープを隠すように戦う練習をした。ロープは俺に右手とアニマの左手でロープの守りはアニマに任せる。
アニマからすれば、俺はちょうどいい盾だ。
「なぁリョウ……10日までの練習中は昼飯おごるから……頑張ろうな!」
「やったね!俺頑張るから、後ろからいきなり刺すとかやめてね!」
「努力するよ!」
笑顔のアニマの目は笑っていなかった……




