現代知識チート?炸裂!
修正加筆済み 2018/01/08
ヒヨコ誕生から1年が経った。
祭りで買ったダンジョンたまご。
丈夫な雌鶏をゲットして売るはずが、なぜか♂でなぜかワシの聖獣だった。
売り払ってまともな暮らしができるようになりたい。とも考えたが3歳児とまともに取引してくれる商人がいるとも思えないし、コネもないのだ。
鑑定で見えるテイマーの後に俺の名前があるという事は、使役主というか飼い主が俺だという事だろう。
あれからヒヨコは毎日元気にタニシを食べ、冬を超える頃には自力で森に餌を取りに行くようになった。現代からの特技の指笛を吹くとこっちに向かってくる。成長して首から上が白くなったヒヨコは、鉤爪が鋭く頭の帽子に乗るがたまに革を貫通して痛い。
地面には降りないハイソな鳥なのだ。腕にかっこよくとまらせたいが、いかんせんまた腕が細く筋肉もないので、もっぱら着地地点は頭である。
ちなみに名前は【ヒヨコ】である。センスがないのでない。肉屋のおっさんとひよこがどうたらという話を聞いていたヒヨコはそれが自分の名前だと思い込み、他の名前では反応しなくなってしまったのだ。仕方がない奴だ。
話が変わるが、働き始めて分かったことがある。
冬は圧倒的に稼げない。四季がある国なのだが、この世界の冬は雪に閉ざされる国も多く、戦争がなかなか起きず、農業が休みな分、首都には出稼ぎに来る人が多く、余る仕事がない。他の季節に比べあまり物で食べ物がもらえる事も少ないし、スラムにとって冬はまさに厳しい季節だった。
そしてこの冬を超えると俺は5歳になる。女の子グループから別のグループに売りに出される歳だ。
窃盗グループに売りに出されるのは1~3銀貨程度の物と交換。
つまり自分でその金額を出せれば、俺はこのグループに残れるのか?
しかし女の子グループのボスが娼館の経営者である以上、無理をしてこのグループに残っても何かあった時に身の保証はない。
他のグループで仕事をしながら、たまにママンの所に帰って生活を支えるのがベストか?
(そもそも俺はこの世界で何がしたいんだろう?)
まずはスラムから脱した生活がしたい。
ママンに親孝行がしたい。
できれば世界のいろいろなところを見てみたい。
可能ならハー……げふんげふん
とりあえずどの選択肢にしてもお金は必要だ。
何度か奪われそうになった指輪は今はヒヨコの首にかけてる。
ヒヨコは普段放し飼いで、銀行に用事がある時と魔力をあげる時に呼ぶ程度だ。見たところ飢えたところや怪我した事も見たことがないので、近隣の森では強いのだろう。
最近は魔法の特訓の成果で、5分程度なら宙に浮ける。風魔法を使った浮遊なのでバランスを取るのが難しく、落ちて怪我でもしたら仕事ができないので少しづつの練習に留めている。いつかヒヨコと飛び回りたい。
今の問題は冬を乗り切る作戦と貯蓄の増加である。
現在の貯金は1924エギラム。無駄遣いもせずよく貯めたと思う。
万が一があっても貯金を崩せば冬は越せるができれば5歳までに5000エギラムは貯めたい。
…ということは…とうとう現代知識チートを活用する日が来てしまったか!
この冬、俺は新しい商売を始めることにした。
この世界の特徴と冬の街の状況を考え、4歳児の俺でもできる商売を考えた。
必死で考えた。正直現代知識チートでもなんでもないが、ズバリ【足湯屋】である。
桶にお湯をはり、路上で靴磨きよろしくお客を待ち、靴やサンダルを脱いでもらい、桶で足を洗いながらマッサージをして稼ぐのだ。
前の世界よりも圧倒的にはだしの時間が短く、風呂にも入れず、汚れがたまりやすい。使ったお湯は生活魔法で綺麗にすれば再利用できるし、お湯の温度もそこまで桶が大きくなければ自由自在である。
4歳児にしては多い魔力と、マッサージという考えがないこの世界で、今は俺だけの商売である。真似する奴らもすぐ出るだろうが、まずは元祖としてのブランドが大事だ。
真似される前に評判と口コミを広げるようと、無料で足湯屋の開店だ。
一度受ければ、やみつきになるのは間違いないと自負している。
少し熱めのお湯でマッサージを受け、全身ぽかぽかで帰れるのだ。
正規料金は15分100エギラム。少し高い気もするが時間は有限なのだ。1人での接客商売である以上、たくさん売って儲けようは難しい。
代わりに回数券を無料期間中に売る。開店記念で3枚100エギラムである。
単位を落とすとおつりの用意が大変で、治安が悪い以上、おつり用でもあまり現金は持ち歩きたくないからである。
100エギラムの銅貨は一般的によく使われるのでおつりがほぼ不要である。
無料期間が終わっても、回数券使用でしばらくは一回約33エギラムの仕事であるが、サービスという事もあり、知り合いにオススメで1枚あげるなどしてくれるとすぐに広がる…と期待して3枚である。回数券には出店場所と営業時間が書いてある。とりあえず冬の間はほぼ無休でやるつもりだ。
無料期間を5日間と決めさっそく開店する。
料金を書くための看板、お客さん用の椅子にお湯をはる桶とタオル用の布で貯金の500エギラムが消えた。何かを始めるとお金がかかるものだ。
回数券は手書きだが自分の字である。念のためにまとめて自分の魔力を少しだけ染み込ませておく。なんの効果もないが、受け取った時に自分の魔力があるのかどうかの判別は付く。
初日は夕方までに5人のお客さんが来た。みんな満足してくれたが回数券は売れなかった。よかったら明日もぜひ来てくださいとお願いし、店じまい。
「そ、想定の範囲内だもんね。初日なんてこんなもんだもんね!」
自分に言い訳しながら帰って寝る。
次の日には昨日の5人を含め14人も人が来た。順番待ち用に椅子の導入も考えたくらいだ。
時間が空いたときで構わないからと2度受けていく人もいた。
回数券も4セット売れ、素敵な滑り出しである。
次の日には自分の考えの甘さに恥じた。
朝一から行列である。すでに5人並んでいる。
ひたすらにマッサージして気づく。手がつらい。指の力と握力を使うため非常に疲れる。12時からと15時からに休憩を取り必死に頑張る。
回数券もかなり売れ、ホクホクである。
そんなホクホク気分で銀行に預金するために向かっていると、ある看板が目に入った。
【本日の目玉!魔獣に育てられた人間】
よくある見世物小屋である。
≪だれがだすげてぇぇぇええっ≫
普段なら見世物小屋なんて入らないが、この悲鳴を聞き、思わず身体が動き、100エギラム払い中に入る。
聞き覚えのある言葉。ずっと前に使っていた言葉。
……そう間違いなく日本語のそれであった。