自分のやりたい道が見つかりました!
ダンジョン40階層から奇跡の生還を果たし、久々のベットで眠ると次の日ジンから手紙を受け取った。俺がダンジョンに潜ってる間に届いた手紙のようだ。
差出人はエリーだった。
【リョウへ。学園での生活はどうですか?こちらはお母さんもあたしも元気です。リョウが学園に戻った日、ノーリさんというおばさんがきて、「リョウはどこ?隠してないで出しなさい」と宿の前で騒いでいました。婚約をしていると言っていましたが、ゴレアンさんが「リョウには他に婚約者がいる、それに今は学園だ」と言って揉めてました。落ち着いたら連絡先を送るからリョウに渡してくれと言い帰って行きました。
それと先日ギャリンさんとおじいさんがゴレアンさんを訪ねてきました。なにか真剣な話をしていて、あたしは混ぜてもらえませんでした。でもその間おじいさんとお話をしたのですが、学園でリョウの師匠をしていると聞きました。すごくリョウの事を自慢していました。学園で楽しくやっているようでお姉さんは嬉しいです。そのおじいさんに聞かれたので、ついお姉さんと言ってしまいました。いいよね?
本題ですが、先日カロナムさんと言う商人の方がいらっしゃってリョウを卒業後、ぜひ雇いたい。もしまだ就職先が決まっていないならぜひうちに。と言っていました。リョウはまだ進級するかもしれないけど一応伝えておくね。それでは体に気を付けて。:あなたの姉 エリー】
(ギャリンとじじいがゴレアンさんのところに行った!?)
詳しい日付がないのでじじいが学園を辞める前か後かはわからない。
ただ俺の師匠と言った以上は学園を辞める前だろう……
それにギャリンと一緒という事はおそらくセキロムやガロンの件はギャリンから聞いたんだな……
カロナムという名前には聞き覚えがない。夢庵楼あたりから俺のうわさを聞いたのだろうか?
とりあえず問題はギャリンとじじいだ。ギャリンがゴレアンさんに何を話したか……人払いするほどの重要な話という事はセキロムとガロンの件の可能性が高い。
リョウのせいでうちの娘が奴隷になった責任をとれ。
リョウを殺す、関わるな。
あいつを養子からはずせ。
どれがあってもおかしくない。全部であってもおかしくない。
なぜじじいが一緒にいるのかはわからない、下手すれば今も一緒なのかもしれない。
万年金欠のじじいがさらっと銀貨を返したのも謎だった。
俺がギャリンの話をした後ギャリンと接触し、事の顛末を聞いて金を貰ってギャリンの味方に付いた?
いやそれでも謎が多すぎる、別にじじいにはギャリンの味方に付くメリットなどないのだ。いくら金を積まれても学園の非常勤講師という立場は降りない。あいてが盗賊ならなおさら……
これに答えを出すには何かピースが足りない……
だが間違いなく俺は渦中の1人であり、原因はセキロム殺しに起因する。
卒業までに何とかするか、高等教育に進級して時間を稼ぐしかない。
とりあえず棚に手紙をしまうとなんと棚のたまごが小刻みに震えている。
……ありえない。たまごの採取から数えてもまだ3日である。
だがこれは普通のダンジョンたまごじゃない、ありえないなんてありえないんだ。
そう思うとゾッとした。何が生まれるかもわからないのだ。
たまごを慌てて持つとダンジョンに入り、1階のできるだけ奥で孵化を見守る。ここなら体外魔力があるので自由に高位魔術が使える。
いつでも魔弾を出せるよう準備して見守る。
しばらくするとひびが入り、トカゲのような頭がでてきた。
すぐにその頭を視る
【飛竜(聖獣)0歳】
ひとまず聖獣だという事がわかり安心する。
頭を出したそいつはすぐにたまごを食べ始め、あっという間に食べ終わった。
両手の上に乗るサイズの飛竜はお腹が空いたと言わんばかりにすり寄ってくる。こいつの食う量は半端じゃないと直感した。
学園には雌鶏が大量にいて、たまごは食べる以外にも孵化させて食用のニワトリを増やしている。
学園の鶏舎がある場所へ行き、肉用のニワトリを安く譲ってもらう。
犬の時もこうして安く食料を買っていた。
飛竜は一週間ほどで赤ん坊なら乗れるんじゃないか?というサイズに成長した。名前はファラクと名付けた。本来はヒヨコに付けるはずのよくゲームでペットにつけていた名前だ。
しかし困った事も起きた。たった一週間の間で噂は広まり学園内外からぜひ売ってほしい。という問い合わせが殺到した。
学園は長期休暇中以外、私物の持ち出しはできない。しかし商人などに売る事は可能だ。もちろんお金は持ち込み金に追加される。
学園の購買部などとは別に、許可された商人は販売所というところで商売をしている。
この世界にはドラゴンもいればファラクのような飛竜もいる。しかし圧倒的に強く討伐は国の財政を揺るがすとまで言われる。さらに出産が30~100年に一度の上、その時期は非常に凶暴になるため人に飼いならされたドラゴンは記録上いない。飛竜は繁殖に成功してる国があるが、エギラム換算で1匹最低1000銀貨はする。子供の冗談じゃないのだ。
最低価格1000銀貨、ファラクは聖獣である。値段などつけられない。
王からの献上要請も時間の問題であるとのうわさだ。
ちなみに繁殖している飛竜王国はオスしか売らないのだ。万が一にも他の国で繁殖がされないように……そして知っているのは俺だけだがファラクには立派な棒がない。つまり女の子なのである。価値はさらに上がる。下手すれば国家間の勢力すらも変わる。
しかし俺には売る気もさらさらないし、献上なんてまっぴらごめんだ。
献上要請を断っても罰はないが、要請に従って献上すると、それ相応の褒美が出る。ファラクは価値がとてつもないので、下手しなくても貴族階級になる可能性がある。しかし別に俺は貴族になりたいわけじゃない。ファラクを売って、数えきれないお金を得るよりも、最低限生きていければいいから、一緒に冒険がしたい。
(そうだ!!俺は冒険がしたいんだ!!)
転生する時、祝福を選びながらわくわくしたのは、知らない世界を冒険する期待だったんだ。別になんかの仕事をする道だけじゃない、自由に冒険するって道があるじゃないか!!
卒業したら国を出よう!世界を見るんだ!!
-----------------------------
その日たくさんの問い合わせの手紙の中から一通の手紙を見つけた。
手紙の差出人はオキシーラ商会店主カロナムだった。
他の問い合わせが
いくらでも出すから売ってくれ!
希望金額を書いて返信求む!
ばかりだったのに対し、一度でいいから飛竜を見たい。という手紙に心を動かされ会ってみる事にした。ドラゴンとか飛竜は男の浪漫だろ!!それに外での正確な情勢が知りたいのだ。
会うとは言っても、学園内の一室での面会だが、それでも外の話が聞けるのは嬉しい。
空をヒヨコとともに飛ぶファラクをみてそんなことを思った。
すでにヒヨコと餌を獲りに出る許可が学園から出ているが、すでにこれまでの餌代で破産寸前だった。
そしてやはり森に獲物を獲りに行くファラクを狙うアホもいたが、残念な事にヒヨコにやられてファラクの餌らしい。
「キョウ、ゴニンキタ、ファラク、フタリタベタ、アトニゲタ」
子供のうちなら捕まえられると思ったのだろう。残念だ、ファラクの護衛は俺より強いのだ。




