キツネが売れました!
2回目の実験たまごたちが孵化ををした。2番目のたまごからは雌鶏が生まれた。学園に売却コースである。
次に1番目のたまごが孵化した、拾ってから31日目のだった。
生まれた聖獣は……キツネだった。
買い手希望もないので、しばらくは空いた時間でジンのたまご屋の横で買い手を探してみる事にした。値段は10銀貨である。
3番目のたまごはその3日後に孵化しネズミのような聖獣が生まれた。確認に視てみると……
【ビーバー(聖獣)0歳】
ネズミではなくビーバーだった。
(ビーバーって水辺に棲んで木とかカリカリかじる奴だよな?)
前世が動物学者でもないので詳しいことはよくわからない。
とりあえず特殊な方法で生まれたのでジンにオススメしてみる。
「……ネズミの聖獣?」
「ビーバーだよ?知らないの?」
俺もよく知らない
「……聞いたことあるけど実物を見るのは始めてだよ」
「まぁこないだ生まれたキツネでもいいし次回に期待って手もあるぞ?」
「う~んこの子にするよ。よく見ると可愛いしね!5銀貨でいいんだっけ?」
そういって5銀貨を渡してくる
「毎度あり。餌代だけは気をつけろよ。マジで食うからなこいつら。容赦ないぞ」
「身近で見てるから知ってるよ」
犬とキツネは一緒にまるくなって寝てる。寝てる時はおとなしく可愛いのだ
「しっかしキツネが売れないんだよな~なんでだろ?」
「キツネはもともと人気だからね……そこらで売ってる聖獣じゃないんだよ」
「じゃあジンはキツネを選べばよかったじゃん」
「ダメだよ。また妹が欲しがる」
ジンの妹レイはネコかキツネが欲しいと言っていたのだ。
「育ちざかりの聖獣2匹とか破産するよな?」
「リョウはよく平気だね?」
「ヒヨコが狩りしてくるからな、学園が物の持ち込みが不可って言っても空から降ってくる雨とか肉はどうにもならないだろ?」
「そのうち学園から呼び出されたりして」
「やめろよ!ホントに来たらどうするんだ!!」
「あはは!」
ジンとふざけ合い今日もキツネの買い手探しである。
実はヒヨコは学園の手紙の配達を手伝わせており、その対価に学園外からの獲物の持ち込みを許可してもらってる。ヒヨコの件で呼び出しなどないのだ。
今回の検証でわかったことは高位魔法で体外魔力と体内魔力を融合させて注いでも高位魔力としてではなく別々にカウントがとられるようだ。
高位魔力だけなら1番目のたまごは腐っているはず。生まれた以上仮説通りなら体内+体外の半分づつだったという事だ。
2番目は普通に体外魔力を吸いながら体外+体内の高位魔力を与えられていたので体外比率が高すぎて雌鶏になったのだろう。
3番目は消費媒体が体外魔力とは別扱いという事がわかった。
同じ扱いなら雌鶏が生まれていたはずである。
融合した高位魔力として吸われたのか体外+体内+消費媒体としてカウントされたのか謎であるがまだ検証が必要なようだ。
しかしあまり消費媒体は無駄にできない。ダンジョン踏破用に数を用意しておかないとならない。
毎日注ぎ込むたまごに使うと消費媒体はあっという間になくなってしまう。
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ヒヨコを客寄せに使い、ジンの横で露店をする狐の聖獣特価10銀貨!
触りたいという女子はやたらと来るのだが購入希望はなかなか来ない。
もふりは飼い主の特権だ、冷やかしには触らせません!
しばらくすると見覚えのある真紅の髪の女子がやってきた。
「よっ!ジンにリョウ。商売は繁盛してるかね?」
「ぼちぼちかなぁ……」
「こっちはさっぱりだ」
「うへ~キツネが10銀貨かぁ……貴族でもなきゃ買わないね!」
「わかってんだけどな~これ以上安くするのもなぁ……」
友人価格で5銀貨で売ってるのだ。最低でもそれ以上は欲しい。
「あたしが買える値段なら買うんだけどね~」
「……いくらだよ?交渉くらい応じるぞ?」
「1000エギラム?」
「話にならん!帰れ!!」
「冗談だって……限界でも1銀貨だけど無理なのもわかってるんだよね」
「……本気でほしいと思うならアルバイトするか?」
「アルバイト?」
聖獣がなかなか売れない以上別の金策も必要だ。餌代だってヒヨコの狩りでも限界がある。
「あぁダンジョンに一緒に来ないか?」
「ダンジョンか~たまご探し?」
「いや探索と素材探し」
「浅い階層じゃ利益薄いよー最低でも10回は降りないと……」
「だから10階以降にいくんだよ」
「え?マジ?正気?10階より先って高等教育生と行くんでしょ?そんなコネあるの?」
高等教育生は10階到達が大体の卒業までの目安である。
基礎教育生は3階である。ダンジョンで稼いでいるのはもっぱら高等教育生で基礎教育生はそれについて行く生活魔法係や荷物持ちだ。
「コネなんかないぞ?」
「基礎教育生だけでいくの?……まぁ6人PTなら10階まで何とかなるかな……あたし得意武器が槍だから前衛は難しいけど、しっかりした盾がいるなら考えるわ」
「6人もいないぞ?俺とジュリアだけだ。それに戦わなくていい、食糧の運搬と素材、戦利品の持ち帰りをお願いしたいんだ」
「基礎教育2人で10階なんて無理だよ!魔物にあったらどうするの?」
「企業秘密だが可能な限り魔物を避けて進めるし、遭遇してもナイフと魔法で倒せる」
「それは0寮近辺の話でしょ?リョウが高位魔術を使えるのは知ってるけど……」
去年の闘技祭で高位魔術使用で失格になったのはなかなか有名だ。
「俺消費媒体持ってるんだ。実際13階まで到達してるしな」
そう言って指輪を見せる。
「うげ!まじだ……うーん、報酬は?」
「キツネの値下げ+先渡し、持ち帰った物の販売利益の3分の1、持ち込む物は、食費以外は自分持ち」
「うーん悪くないわね……瘴気の取り分は?」
「請求しない、戦闘は全部任せてくれていい。万が一の為に結界球を預けるし、使っても請求はしない。ただし使わなかったら返してくれ」
「悪くない条件ね……でもあたし探索とか鍵開けとかできないよ?」
「去年受講済みだ。実戦でも開けてる、問題ない」
「……リョウ一人でも潜れるんじゃない?」
「一人で潜って獲ってきたのがそこのたまごだよ。でも素材とか宝箱からの装備になるとちょっと荷物が持ちきれない」
身軽さを基本に持ち物を決めているので荷物が増えすぎるとつらいし取捨選択も大変なのだ
「完全な荷物持ちって事ね!いいよ……でこの子はいくらで売ってくれるの?」
「5銀貨」
「ボス!もうちっと安くならんですかね?平民の身には高いであります!」
「ジンにも5銀貨で売ってるし、簡単に値下げしたら―――」
「ぼ、僕はどっちでも……」
(っち!ちょっと黙ってろよキノコヘッド!!)
「ジンは良いって……値段は誰にも言わないから!ね?お願いっ!」
両手を顔の前で合わせると片目だけ上目づかいでこっちを見る。
「わかったよ、45000エギラムな。それ以上は無理だ」
「やったね!さすがボスどこまでもついて行きやす!」
「……どこまでもついてこいよ?」
俺は何階層に行くなんて言ってないのだ。
「な~んか嫌な予感がするんだけど……どころでいつ行くの?」
「明後日の生活魔法を極めるの講義が終わったら俺時間が結構できるからその日から5日くらいかな……」
「あーあたし5日後に教養と騎乗槍の講義がある。ダンジョンにいられるのは3日だね」
「3日で帰還か……2日潜って探索して1日で帰還だな」
「そうだねー食糧はどうする?」
「好き嫌いはないからそっちに任す。念のため5日分持ち込んで帰りに邪魔だったらおいてくる。後で金額だけ教えてくれ」
「水増し請求するかもよ~?」
「そしたらジュリアの飯はスモークたまごだけな」
「ごめんなさい」
学園で飼育している雌鶏が多いためチキンとたまごは非常に安い。
学園でたまごと言えば平民のおやつだが保存用に作られたスモークたまごは独特の味と香りであまり人気ではない。安いし保存がきくのでダンジョンに潜る際は持ち込むことが多い食材だ。
「リョウ、持ち帰ったアイテムよかったら僕に売ってよ」
「別にいいけど売れるのか?」
「たまごの販売で貴族にコネも結構できたし、空の月の後は金属武器ブームだからね!!」
「なるほど了解。ジンは意外と商人とかに向いてるかもな……問題は算数だな」
「意外と物を売るって楽しいんだ。お釣りの計算もできるようになったし!」
……お釣りの計算ってたまごは500エギラムだ……計算も何も……
まぁいい聞かなかったことにしておこう。
「まかせろジンあたしがたくさん持ち帰ってくる!」
「任せたぜお荷物役さん」
「……なんかひどく心外だが適切な表現でもある。言い返せないのが悔しい」