ダンジョンたまごの秘密に迫る!
空の月25日頃とうとう棚のたまごがコツコツアタックを始めた。
日数的にも聖獣が生まれる事に期待でき、ジンもわくわくしている。
その日の夕方とうとうたまごから足が出た。
薄い茶色と濃い茶色の2色の虎柄の前足で殻を破ると、すぐにたまごから出てきた。
生まれてきたソレはどこからどう見てもネコだった!
(やべぇぇぇ超かわいい!!!!)
元々猫好きなのでテンションはヒートアップである。
「あ…ヤバイ……ネコだ…」
「…ネコだとなんかまずいのか?嫌ならほかの聖獣が生まれた時交換してもいいぞ?」
(欲しい、このネコ欲しい。もふりたい)
「いや…違うんだ。すごく嬉しいんだけどさ…妹に聖獣が生まれそうなたまご買ったって自慢しちゃってさ…ネコかキツネの聖獣が生まれたらあげるって約束しちゃったんだ……」
「あ~あほんとに運がないなジン!」
「まさかほんとにネコの聖獣が生まれるなんて…よし…あげる前に名前を付けて嫌がらせをしよう!リョウなにか名前を付けてよ!!」
「俺が?つけていいのか?」
「嫌がらせをするならリョウの名づけが最適でしょ?」
「ひどく心外だ!謝罪と賠償を要求する!!」
「とりあえずなにか考えよう、ちょっと残念だけどたまご売りで結構稼いでるし、僕はもう一度ジンから買うよ。いい?」
「たまごの状態で売るのは検証のついでのサービスだったからなぁ。聖獣そのものになると5銀貨は最低でも貰うぞ?それでもいいなら売る」
「ヒヨコのおかげでたまごも結構売れてるんだ。今の所売れ残ったのないしね!すぐは無理だけど空の月終わってからでも大丈夫?」
ロスなく売り抜ければ俺より稼げるのだ。
「別にいいぞ。ジン用にとっておきのを用意してやるさ!」
「ありがとう!!…でこの子の名前どうしよう…」
「……らっくってのはどうだ?」
「らっく?」
「ネコは幸運を運んでくるとも言われるし、虎柄のトラの一文字が頭文字だし…」
「うーん」
「ダメか?」
「もっとこう…ゴンザレスとか毛むくじゃらとかそんなのが来るんじゃないかと思ったら意外と普通で困ってる」
「おい、ジン!ちょっと話があるダンジョンまで来いよ!」
「絶対いかないよ!話し合う気ないよねそれ?」
「とりあえず俺からのおススメは[らっく]だな」
「ん~まぁいっかそれで、明日妹に渡してくるよ」
「飯代めちゃめちゃかかると教えておくといいぞ…」
「うん。時間が合えば紹介するんだけどなー」
「あーわりぃ明日はダメだ朝から用事だ」
明日は学園長との今年初の特別講義である。
「そっか…近いうちに紹介するよ!ちょっと生意気だけど可愛い妹なんだ」
「期待してるよ」
その日久々に魔力阻害袋からたまごを出すと紫色になっていた。
腐ってしまったようだ。
1は魔獣が生まれたが危険な魔物も生まれる可能性がある。
2は普通に聖獣が生まれた。
3は腐ってしまった。
去年までの考察と考えるとやや情報が足りないが仮説が成り立った。
1、聖獣の誕生には人の魔力が必要である
2、常に持ち歩く必要はない
3、体外魔力だけもしくは体内魔力だけだとたまごは腐る
4、瘴気を吸うと魔獣か強力な魔物が生まれる
5、瘴気+体外魔力だけだとたまごは腐る
6、瘴気+体外魔力+体内魔力で魔獣や強力な魔物が生まれる
まず気になるのが6…俺のたまごが魔獣で他のたまごが腐ったり強力な魔物だったという事はたまごが腐る=元々腐る流れか雌鶏コース。強力な魔物が生まれたコースは本来聖獣が生まれたコース
つまり体外魔力だけだと腐りコース…瘴気が入っても腐る
未だ仮定だが(ジンのたまごがすべて売れてしまうため)おそらくある一定以下の体内魔力で雌鶏コース…瘴気が入ると腐る
そして一定以上の体内魔力で聖獣コース…これも仮定だが瘴気<体外魔力で強力な魔物コース。瘴気>体外魔力で魔獣コース
これならすべての検証の結果に当てはまる。
(そもそも出現条件が不明の悪魔とか魔族とか言われる奴らってこの強力な魔物が外で生まれちゃったパターンじゃね?)
ある日街で突然強力な魔法を使う魔族が現れた伝説もいくつかある。
普通は一度持ち帰ったたまごをダンジョンには持ち込まないし、試してみたが、少しグレーになったたまごに魔力を注ごうとしても入らなかった。
瘴気と体内魔力両方を吸わせるには、先に体内魔力を注がないとダメなのだ。
何かしらの要因で体内魔力をたまごが吸い、その後そのたまごをたまたま持ち歩き阻害袋に入れるのも忘れダンジョンで瘴気を吸わせてしまうと災厄の種になる。ただ瘴気が濃すぎると魔獣になる。仮定としてはこんなところか・・・。
次の実験は高位魔法を発動するときの魔力をそのまま与えてみる作戦である。今回の1番目は高位魔力だけを注ぎ魔力阻害袋で持ち歩く。2番目は棚に置き高位魔力を注ぐ、そして3番目は棚に置き、ヒヨコの羽の消費媒体を使った高位魔力を注ぐ。
ヒヨコの羽は自然に落ちた物かヒヨコに頼んで貰いダンジョンで瘴気を吸わせると魔力に変わり羽に溜まる。
羽から魔力を少しづつ引き出して使えるが使い切るとボロボロになってしまうし使った魔力を再補充はできない。
ダンジョンでの生命線になるのでできるだけ大事にしたい。
次回は高位魔力を使ってるだけあって期待ができる。
――そして翌日
「おそいぞリョウ!さっさとはじめるぞ!長い事特訓ができなかったからな!」
「がくえんちょーその前に合格認定下さい。じゃないと俺にメリットないじゃないですか!!」
「ばっかもん去年盗難届の日付を誤魔化してやったりしただろう!」
「それはそれ、これはこれですよ」
「…仕方ないどうせ今年中には飛べるようになる。しかし合格認定したからと言って講義に来なくなったら停学じゃ」
「それなんていうか知ってますか?」
「職権乱用かの?」
「わかってるなら結構です。まぁちゃんと来ますが…ところで聞きたいことがあるのですが」
「なんじゃ?」
「消費媒体でふと気づいたのですが、高位魔法って自分の魔力と別な魔力を混ぜる事ですよね?」
「そうじゃ」
「それって別の人間との高位魔法も可能って事ですか?」
「可能じゃが混ぜ合わせる感覚、タイミング、術のイメージが完璧に一致しないと無理じゃ。まぁ違う方法で使う事はあるがの」
「違う方法?」
「魔法陣を使った高位魔術でな、消費媒体などで書いた魔法陣に複数の魔術師が魔力をこめ制御役がどかーんとぶっ放すのじゃ」
「学園長はその制御役だと?」
「ばっかもん!!儂はひとりで発動が可能だから第三級特異点なのじゃ!」
「おぉー!!」
「制御役は緻密な魔力コントロールが必要でな、誰でもできるというわけではないが…リョウならあっさりできるじゃろ」
「え?」
「生活魔法をこのレベルでコントロールし、高位魔法を即日できるようになったからの……異常じゃ。魔力のコントロールだけなら第二級特異点並みの才能じゃ」
「おぉ……」
「まぁ放出量は平均以下じゃがの!」
「でも制御役ならできるんですね!」
「主に戦争での攻城攻撃戦だがの…あれはつらいぞ?」
「え?」
「自分の魔法で万の敵兵を討つ、戦争とはいえなかなかつらい物じゃ…それに」
「それに?」
「敵も必死で制御役を殺しに来る。制御ができる魔術師の死因の一位が戦争、二位が暗殺と言われるくらいじゃ」
「お、覚えておきます…」
「では今日も飛行の特訓じゃ!!」