旨い話には裏がある!
1年間着慣れた学生服に袖を通すと意気揚々と第0学寮に向かう。
今年分の持ち込み金10銀貨と、新しい部屋の番号とメンバー表、今年の講義の一覧を貰った。
今年の部屋は第2号棟、101号室だ・・・メンバーは何故かジンにアルベルト。ジンはわかる。基礎教育の場合、寮を変更しないとルームメイトは同じになるからだ。それを含めたジンの[ね~リョー来年はどこの寮にするの?]という問いかけだったのだ。第1寮に行くはずのアルベルトの名前がそこにはあった。
学園のミスかアルベルトが第0寮に残ると決めたのか?。
どっちでもいい、入園式までには分かる。
学園内は長期期間中に帰らない生徒(家が遠すぎる等)も結構いるのであまり変わらない。講義がないのと施設の一部が使用禁止な程度で通常運転だ。
ダンジョンは閉鎖されていたが今日から生徒の入場が許可される。
学園と王国の合同調査団はかなり長い日数をかけたが、死亡者もなく43階までの到達となり、調査の結果異常なし。とのことになった。
今年の目標はまず聖獣について調べる事。ビーストテイマーの講義ではもう合格認定はもらえないし、講師も育成や世話には詳しいが生態や生まれる条件に関しては詳しくなかった。これは図書館で少ない資料を漁るしかない。
検証結果の聖獣は早い時期から売りに乗り出せばなかなか売れると思うし。
ちなみにこの世界で聖獣は賢いペットで、覚醒すると片言だが会話が可能で、まれにいる強力な個体だと戦闘や魔法が使えるといった程度だ、しかしやはり貴族の間では人気が高い。特に犬、猫、狐系は女性貴族に非常に人気がある。
それに今年は実際に休暇中であるがアルベルトに売ったトカゲが覚醒してるのだ。
アルベルトの知り合い経由をすれば売れそうだ。
金儲けの側面はあるが個人的な興味が優先だ。ヒヨコの羽もそうだが、もっと情報が集まって法則が見つかれば今後の生活も戦闘もぐっと楽になる。
そして大事な2つ目、高位魔術をもっと実用化すること。
放出魔力が少ない以上、大規模な魔法の発動には時間がかかる。
なら低コストで殺傷性の高い攻撃の"数"で押し切るしかない。
複数の魔弾(仮名)のコントロールと可能な限りの短時間での発動。
目指すは全方位攻撃だ!!あれ?これなんていうチート?
最後の3つ目は自己満足だがパラル達のPTの階層を抜きたい。
去年13階層の魔物と戦ったが魔法が自由に使えれば余裕であった。
油断は禁物だが30階も不可能ではないと思う。学生記録更新をしてみたいものだ。
今の持ち金は17銀貨。講義には苦労しないだろう。基礎体力とじじいズ講義は確定である。
機体撃は絶対にはずそうと去年心に誓ったが、ギャリンの事を聞きたいし、体験講義では聞いてもスルーされるだろう。ならば最初から講義を受けてさりげなく聞いた方が情報は得やすい。弱点でも弱みでも何かあればもうけものだ。元スラムのおじいさんというのがヴォル師範の可能性は非常に高い。
今年はダンジョンに潜るつもりなので基礎体力に参加できる時間が少なくなるのと、じじいズの講義は合格判定があいまいなので保険として残り12銀貨で有用な講義と無料講義で簡単そうな講義を探す。
とりあえずピックアップしたのが無料講義の【投擲術】と銀貨2枚の【生活魔法を極める】である。他はゆっくり考えよう。一年生が来るのは11日で入園式は12日だ。最初の講義の提出は13日だからまだ時間はある。
やばそうだったら学園長に懇願して・・・いや・・・講義の前に合格認定を貰ってしまえばいいのか。じゃないと教えない・・・とか!そうだこれで行こう。
投擲術はナイフ投げで自信がある。生活魔法を極めるは自信というよりも生活魔法の可能性が見たい。
学園長の講義では自分の周囲2m範囲なら体内魔力だけで十分使えるのだ。
2mの間合いって近接戦闘だとかなりの優位だ。
ヒヨコから消費媒体が取れるとは言っても有限だ。ダンジョン内で2mとはいえ攻撃魔法が使えるならそれに越したことはない。
パラパラと流し読みしていると部屋がノックされる。
「はーい」
「俺だギリアンだ。ちょっと話がある。時間あるか?」
ガチャ「なんですか?」
「リョウお前いい所に帰ってきたな!ダンジョンいかないか?」
「へ?」
「しばらくダンジョンが立ち入り禁止だったのと学園と王国の合同調査のせいで今年用のダンジョンたまごが在庫不足だとよ!」
学園マークのダンジョンたまごは長期休暇終わり頃等に講師や生徒がまとめてとってくる。
普段は講師がとってきたものだけに学園スタンプが押されるが、ダンジョン内に他PTがいない事、ダンジョンに入る者の持ち物、身体検査が行われての持ち帰りに限り、生徒のたまごもマークが押され学園が800エギラムで買い取ってくれる。持ち物検査の際、たまごはもちろんの事ニワトリや他の鳥類も持ち込み禁止である。(誰が持ち込むか!!
空の月は毎年恒例聖獣くじびき祭りなのでたまごはびっくりするほど売れる。一般の生徒も1個くらいは運だめしに買い、たいてい腐らせる。
祭りの恩恵かこの学園での食事のとりにくとたまご率は異常である。
「ダンジョンにいってたまごを集めようと?」
「そうだ!行こうぜ!」
今までたまごを見かけなかったわけじゃない。そこそこ落ちている。しかし湧きたてのたまごで、すぐに魔力阻害の魔法か特殊な袋に入れる必要がある。そんな袋は持ってないのだ。しかし今年は自分で獲って孵化させ販売するつもりでいたので、ついでだからついて行くことにした。
孵化で約30日かかるとして今日からで空の月30日。
売れない時の食費で破産するのもアホらしいのでスライド制に次々と孵化はしないが検証には十分だろう。
「わかりました、お供します」
ギリアンから1銀貨で貸し出される魔力阻害袋を断り、ダンジョン前の講師から2銀貨で買う。どう見ても5個程度しか入らないのだ。借りた金額のだと13個はないと元は取れない。そんなアホな手には乗ってあげないのだ。
俺が魔力阻害袋を2銀貨で買うのを見るとギリアンは急用ができたと言い、寮に戻って行った。別にいいのだ、次の獲物を探して来い。
ナイフやヒヨコの羽あの時のあまりの結界球などをポーチに入れると身体検査と持ち物検査を受けダンジョンに入る。日程は1日、目標階層はたまごと書いておいた。この程度のおふざけで文句をいう学園ではないのだ。
たまごが湧くのは基本2階以降。まれに外にも湧くが白いのは沸かない。
たまご探しの人と遭遇することが多く徐々に下がり5階で探すことに落ち着いた。
いつぞやの剣で殴って魔法で蹴散らすPTに比べればナイフでちゃんと刺す、斬るができる俺は物理がしっかり効くこの辺の階では余裕だ。
人間と違うが、機を誘い躱して高速水流で削るのでもなかなか行ける。
周囲探知で、できるだけ魔物を避け便利棒で罠をつぶし風魔法で追い風にしながら走り回る。あっという間にたまご5個を集め外に出る。
たまごは全部売り、3つ買い戻した。その3つには番号を書いた。
今回1番はポーチの中で魔力を注ぐ、2番は棚に置き毎日魔力を注ぐ、3番は魔力阻害袋に入れたまま手を突っ込み魔力を注ぐ。
明日以降間違われないように一度ダンジョンたまごを売り学園スタンプを押してもらい買い戻したのだ。明日以降もダンジョンに潜りたいので、こうしないとたまごを持ち込めない。
学園マークのあるたまごなら、ダンジョンに持ち込んでもいいのだ。
ふつうそんな事する馬鹿はいないのだが。
たまご5個を売って4000エギラム。3個買い戻して3000エギラム
差し引き1000エギラムである。自分用に確保しなければ4000エギラム。5周したら銀貨2枚。確かにこれはおいしいアルバイトだ。
たまごは一定数買い取ると中止になるので、夕飯の時間まで何度かもぐりなおした。一度に4個までしか持ち帰れないが、新しい阻害袋を買ってまで所持量を増やすのもあれなので4個往復にした。
入る際ポーチの中にたまごをみられ、そのままだと瘴気を吸って魔物になるぞ?と注意されたが、魔物になったら責任を持って殺しますと伝え説得した。
その日の夕方には学園から買い取り中止が発表されてちょっとの間のゴールドラッシュは終わった。
(買い戻して・・・スタンプも押してもらった意味!!・・でもその後潜れたからいいのか・・・)
結果4往復で売ったたまごは16個。最初の1000エギラムと合わせて13800エギラム。やはり簡単にうまくいくようにはできていない。
でも魔力阻害袋は役に立つし別に損はしていない。
ギリアンの餌食になった奴は目も当てられないな・・・。




