馬子にも衣装?
夢庵楼から帰るとゴレアンの所へ行く。
「ゴレアンさんこれ・・・」
そういって銀貨20枚を渡す。
「なんだいこれは?」
「学園でいろいろあって稼いだお金です、家のお金にしてください」
「馬鹿言ってんじゃないよ!リョウが稼いだお金だろ?養ってもらうのは働けなくなってからで十分だよ!自分で持っときな。口座はあるんだろう?」
「でも・・・」
「宿の手伝いをさせても働きに出すほどうちは困っちゃいないよ。将来の為に貯めておきな」
「じゃあ半分預けてきます。半分はお、お母さんが持っててください」
「・・・。わかった、預かっておく。いいかい?預かるだけだからね?」
「何に使っても文句なんてありませんよ!」
「・・・。もっとズル賢いイメージもあったんだけどね。エリーといいなんだか毒気が抜かれるね」
「銀貨20枚を見せつつ実はもっと隠してるかもしれませんよ!?」
「隠してたらそんなこともいちいち言わないがね。まぁそう思わせるためかもしれないが疑っちゃキリがない、夕飯ができてるよ暖かいうちに食べな!!」
「はい」
犬の食費もあるのだ。あいつの食費は結構馬鹿にならない・・・。
そろそろヒヨコに鹿でも狩って来てもらいたいものだ!(小鹿程度ならたまに狩ってくる)
「そう言えばリョウ、学園から手紙が来てるよ」
ゴレアンから手紙を渡される。
(カチュアの自首からすでに動きが来た?)
覚悟を決め手紙を開ける
【親愛なる我が友へ。住所がわからないので学園経由で送らせてもらった。山の月90日に我が屋敷で新年のお祝いを開催する。先日サラマンダ―が覚醒しお父様もお母様もとても喜んでくれた。友人と紹介したいのでぜひ参加してほしい。ジークフリートは亡くなった事にしてある、さすがにお母様に頼んで買って頂いたものをあげたとは言えなかった。すまない、話を合わせておいてくれ。この招待状はジンにも送ってある、それなりに人が来るので正装で来てほしい。正装がなければ昼前に来てくれ、俺のを貸そう。参加が難しい時は直接でも学園経由でも構わない手紙をくれ、10歳のうちに会えることを楽しみにしている:アルベルト・フォン・フォブスリーン】
サインが入った山の月90日の城壁内の通行証と地図が同封されていた。
夢庵楼よりもかなり中心部に近い
伯爵ってどれくらい偉いんだっけ・・・?伯爵と男爵は聞いたことある。でも後・・・ガロンが公爵だっけ。公爵御用達って言ってたから公爵は平均よりも高い位置なんだろうな。後はドラキュラ伯爵と男爵イモしかわかんない。
考えてもわからない事は忘れよう。早めに行ってアルベルトにでも聞こう。
「正装かぁ・・・」
「どうしたんだい?」
「学園で友達になった貴族から山の月90日にお祝いに招待されたんだ。正装で来てほしいとはあるけど、なければ貸してくれるって」
「借りちゃいなさいよ。どうせすぐ大きくなるんだから!」
「あたしゃ買った方がいいと思うね。折角だし余所行き用の立派な服が合ってもいいだろう?卒業式でも使えそうだしね!」
「いいなーリョウは新しい服~」
「エリー、明日は一日休んでいいよ。リョウを連れて服を買ってきな。貴族様になめられない服をね!エリーも好きな服を買っておいで」
そう言って銀貨3枚を出す。服代にしてはなかなかぶっ飛んだ金額だ
「え!?いいの!!やったゴレアンさん大好き!!」
エリーが銀貨を受け取る隙にゴレアンからウインクが飛ぶ。
妙に慣れたウインクなのが気になる所だが。
「まずはリョウのが先だからね!貴族に間違われるくらいの服を作ってもらいな!」
この世界では高い服は皆オーダーメイドである。高価な服をサイズ豊富に常に用意する方が難しいのだ。
「もちろんだよ!・・・欲しかったあの服が買える・・・あのスカートも」
「浮かれるのもいいけどそろそろ紹介しなよ!!?」
「えっ!?」
「え?・・・じゃないよ、ばれてないと思ってたのかい?あたしが何年女やってると思うんだい。匂いでわかるよ、匂いで」
「ち、近いうちに紹介します」
さて・・・ガザルはハイパー女将に気に入られるだろうか?
明確な情報のやり取りなく想像で結論付けると勘違いが多くなると後悔で学ぶのはもう少し先の話である。
翌日買い物に行くとホントにたいへんな金額がかかった。
絹のような手触りの生地で執事服のような服になりそうだ。
その他小物や靴にオーデコロンのような香水のような香りを付ける為の物も買った。柑橘系だが甘く粉っぽく無いいい香りのを選んだ。
正装には家の紋章を入れたりするのだが紋章なんて貴族しか持ってないので何も入れないことにした。
占めて合計25000エギラム!
服は仮縫いなどで後数度来ることが決まり、料金は前払いだった。
買った小物や靴も含めてすべて完成後にまとめて届けてもらうことにした。
さて・・・ここからは乙女タイムである。わずかなミスも失敗も命とりである。
恋人だろうが兄弟だろうが親だろうが子だろうが女の買い物に男はついて行けないのだ。
幸い今回は欲しい物が決まっておりそこをめぐるだけであったが。
それでも女性専門店でひたすらに迷うエリーがいた。そんなに迷うなら両方買ってしまえと言いたくなるほど悩むのが女性である。
「エリーねぇ俺も少し出すよ!俺の服であんなにかかっちゃったし」
「いーの元々リョウのかっこいい服を買うのが目当てなんだから!」
「学園でそれなりに稼いできたしさ・・・ほら恋人とのデートの為にズバッといい物買っちゃおう!そうしよう」
そう言って銀貨を2枚出す。銀行が空の月1日で手数料を取るために10銀貨は持っていたのだ。怖い部分もあるが周囲索敵は使ってるし気を付けてるつもりだ。
「っ!こんなに・・ダメだよ大事にしないと」
「別に全財産を出してるわけじゃないさ。今までエリーねぇにお礼らしいこともできてないし・・・・。これで恩を返したって訳じゃないけど少しくらいいいでしょ?」
「・・・。そ、そうねこれでお互い同じ金額の服を買うことになるし・・・」
乙女と姉の威厳は複雑なバランスを経て乙女の勝利のようだ。
その後2銀貨を出したことを後悔するほどの「ねぇ、どっちが似合ってる?」という2択や3択を乗り越えて家に帰った。
どっちが似合ってるって聞く時はたいていもう自分の中で決まっているのだ。それを後押ししてほしいだけと昔誰かに聞いた。選択をミスると決定は先送りされまた別な選択を迫られる。適切な感想を述べなければふて腐れる。非常に可愛いが容赦のない生き物である。
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(それにしても学園から手紙が来た時は多少動揺した。ばれる可能性があると自分でも自覚してるんだな)
因果応報、人を呪わば穴二つ。それは誰にでも公平でなにかが起きたあとよく使われる。
(神がいるのは知ってるが、一人一人に罰を与えるほど暇じゃないと思うんだよね・・・)
((意外と暇だよ!!))
((いきなり出てくんなよ!!))
作者は「ねだるな!勝ち取れ!」は中右左派です。
「人に答えを求めるな!」はハサミか順押し派です。
こないだ「人に答えを求めるな!」で25セット残して閉店でした(涙)
センスは0なので女性の服選びは必中で外します。裏を読んでも外します(震え声