怒り爆発!オラあいつが許せないだべさ!
修正加筆済み 2018/01/08
闘技祭での騒動が落ち着いた川の月の上旬、学園内に激震が走った。
30階到達済みのパラルのPT全滅の報が流れた。
過去20階以降到達PTの全滅は一度もない。
それほど深く潜れるPTは引き際を誤らない。
むしろ序盤の方が事故は多いくらいだ。
全滅階層は13階、報告したPTは魔物が多すぎて助けられなかった。
自分たちも逃げるのが精一杯だった……そう涙を流したそうだ。
あの口が悪いが優しかったパラル、いつも優しい声をかけてくれたラウリー、あまり接点はなかったがあの日助けてくれたレンにエスメダにガイ。
あの後何度もダンジョンに誘ってくれたが俺は足を引っ張るのが怖くて断っていた。闘技祭の後も何度も学園側に負けの撤回を申し出てくれていたらしい。執行部員だったラウリーも多くの生徒に協力を申し出て嘆願してくれた。
「なんで…13階なんかで!!!」
パウリ―達がダンジョンに潜った日、他に申請して潜って生き残ったPTがいた……
【PTリーダー:セキロム メンバー:ガロン、カチュア 日程:5日 目標階数:20階】
(セキロム……ガロン……?)
「ガロン!!あいつか!!」
闘技祭決勝戦の相手である。
(セキロム……セキロム……)
どこかで聞いた名前だが喉まで出てきたなかなか出ない…
「っ!!!!」
突如閃いた。
ダンジョン申請の紙を過去に向かってさかのぼる……
「やっぱり……」
【PTリーダー:セキロム メンバー:ガロン、カチュア、ルーア、クロウェル、ロキスウェル 日程:2日 目標階数:10階】
俺がソロで入った日の前日、トレインをぶちかましてロキスウェルという犠牲者がでてパラル達の救助PTに救われたPT
「っ!!ルーア……?あいつが?……あのPTに?」
学園中で聞き込みをし、セキロムの情報を探す。
どうやら空の月にいいアルバイトがあるぞ…と宣伝し、足の速い人間と金属鎧を持っている人間を探していたらしい。
何をやっているのかは知らないが瘴気の交換がすさまじく、かなり稼いでいたという事。
さっき運動場で見かけたという話を聞き、急いで向かう。
運動場に着いてそいつを見た瞬間、沸騰寸前になる血と氷より冷たい脳がこいつがセキロムだと叫んでいた。
黒いローブの外側に見せつけるようにぶら下げた2本の剣。その剣はこの学園で唯一尊敬する、偉大な先輩2名の魔法剣に間違いなかった。
そして右手で持つ鞭で叩いている動物は間違いなく俺が大事に持ち歩き、魔力を注ぎ、ふざけた赤とピンクのストライプ女に盗られたあの子犬だった。
「てめぇぇぇぇぇぇ!!!何してる!!!」
「何ってしつけさ、この犬ゆうこと聞かないんだよね。聖獣って聞いてたけど偽物かなぁ?」
「そいつは!そいつは……」
次の句がつながらず感情のままに殴りかかる。
すんでのところで近くにいた基礎体力の講師に押さえつけられる。
「学園内での私的な暴力行為は停学対象だ!!わかっているのか!!!」
「な、なんだよこいついきなり、頭イッてんのかよ?あ~こわ!」
そういいながら子犬の鎖を引っ張り無理やり引きずるようにして去っていく。
「くぉーん。くぉーーーん!!」
「くっそ!!離せ!!離せよ!!!悪いのはあいつなんだ!!離せよぉぉおおおお!!!!」
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それから学園内の部屋に連行され、問題を起こしたのが初めてなのと未遂という理由でお咎めなしだった。
「いきなり殴りかかるなんてもうやめろよ?」
「…はい」
こんなに殺意が湧いたのはガーリー以来だ……
あの頃を思い出す……ナイフを壁に投げ続けた日々。
あそこが俺の本来の生きる場所。
あいつは絶対に許さない。パラル達を殺した、セキロム、ガロン、カチュア
俺の子を痛めつけたセキロム、ルーア。クロウェルとか言う奴はまだわからない。
とりあえずこの4人は有罪セキロムなんか俺裁判で死刑をとっくに飛び越えた。
怒りは見えないように秘め、頭を冷静に働かせる。
(すべての事に意味はある。一見無駄や偶然に見える事も必ず理由がある……)
まずはルーアを捕まえる事にした。あいつのいる場所はわかる。
その前にヒヨコを呼び、学園長に手紙を出す。相互師弟関係の学園長に簡単なお願いだ。
向かう場所は学園依頼が貼り出される職員室前だ!
2時間ほど待つとルーアは学園依頼の掲示板の前に来た。
湧き上がる怒りを抑え込み、にこやかに話しかける。
「あれ?ルーア……なにしてんの?」
「っ!出たわね。パンツ魔!!仕事探してんの!し・ご・と!あんたと違って裕福じゃないからこちとら大変なの!!」
「へぇ…俺は昨日ダンジョンで魔宝石拾ってさ、このくらいなんだけど価値がわからなくてさ、先生に聞きに来たんだ!」
そういってピンポン玉サイズの大きさを指で作る。
「っ!!!しょ、職員に見せたら学園価格で買い取られるわよ!それよりも魔宝石を欲しがってる貴族を紹介してあげるわ!……ちょ、ちょっと見せて」
「寮の先輩が持ち歩くの危ないぞって言ってるから、金庫の中なんだ見に来る?」
「今から!!?いく!!いくわ」
(……釣れた)
魔宝石を欲しがってる貴族は人見知りで、あまり他の人に会いたがらない寮の先輩だから、あたしが買い取って売ってきてあげるなどどうでもいい話をしながら、常勤講師の寮の横に来ると胸倉を掴み壁に押し当てる。
常勤講師は10日に1日休みで、その1日も交代制の休みである。
寝る以外に戻らないこの常勤講師の寮は明るい時間は無人なのだ。
場所的にもほぼ人は通らない。
「動くな、許可なくしゃべるな、余計な事をしたら殺す」
「目を見ろ!俺は……本気だ!わかったら小さくうなずけ!」
コクッ
「お前ルゥリはどうした?」
大きく目が見開かれる。
「…借金の利子にと…セキロムに持ってかれました」
「嘘は必ずばれる。嘘をついていた場合その場でなくても、いつか必ず探し出して死ぬよりつらい目に遭わせる。確認する。売ったんじゃないんだな?」
「売るわけないじゃない!!!」
掴んでいる右手をそのまま強く壁に押し付ける
「叫ぶな、しゃべれなくても意思疎通の方法はあるぞ?まだ歌を歌いたいだろう?」
「……っ!ゲフッ」
「次の質問だセキロム、ガロン、カチュア、クロウェル、ロキスウェル。こいつらとダンジョンの中で何をしていた?」
「あ、あたしがダンジョンを走り回って敵を集めて、ガロンとクロウェルがそれを足止めして、セキロムとロキスウェルが魔法でまとめて倒してた……」
「ロキスウェルが死んだのはなぜだ?」
「……あたしが魔物を集めてる最中にロキスウェルが別な魔物を襲われて逃げ出して……セキロムが結界球を使って閉じこもったわ。中に入れたのはガロンとカチュアだけクロムウェルはその場で食われて、ロキスウェルは逃げ出したわ。あたしはセキロムから渡されていた結界球で……身を守ったの」
「…セキロムがなぜおまえに結界球を渡していた?」
「あたしはセキロムのお父さんに借金があるから。学園内でこき使ってもいいが、絶対に殺すなって言われてるらしいの……」
「救出に来たPTとは何かあったか?」
「男の人4人と女の人が助けに来てくれて、もう二度とダンジョンに入るなと言われたわ、セキロムは魔法剣を持った二人に事情を話して、ぼこぼこにされてた。帰り道あたしが背負っていたけどずっと殺す、殺すってつぶいやてた」
「………最後の質問だ。…お前あの犬をどうする?」
「どうするも何も取られちゃったんだもん!借金はまだ70万もあるし…でもでも…ルゥリはあたしの家族なの!!」
「お前の家族じゃない。俺の物だ!お前が勝手に盗んだだけだ!!いいか?あれは、お前の、家族じゃ!ない!!!」
「いいじゃない!!!お金持ってるんでしょ?いい生まれなんでしょ!!!犬の一匹や二匹くれたっていいじゃない!!!あたしには!!!もう両親もいないのよ!!!!」
「自分だけが不幸だと思うな。そんな話、道端のそこらにいくらでも転がってる。自分で何もしてないくせにわめくなよ、耳障りだ」
「アンタなんかに!!あんたなんかにあたしの何がわかるって言うのよ!!!何も!!!何も知らないくせに!!!!」
「あぁそうさ……お前の事なんか知らない。でもいいか?お前も、俺の事を、何も知らないだろう!!!生まれた時から父親なんかいねぇよ!お前以上の借金だって背負ったことあるし、母親だって殺された!!これもどこにでも転がってるありふれた話だ!!!!…だがなぁ……俺は!!家族が奪われて指をくわえてわめいてるような生き方はできない!!」
「っ!!」
「応援するよ。その情けない生き方を。一生そこでうずくまってわめいてろ。あの犬の分、ぶん殴ってやろうと思ったが、もうどうでもいい。あの犬も嫌がってなかったから無理やり取り返さなかったけど、アンタを買い被ってたよ。もういいよ。用はすんだ、じゃあな!」
「ま、まってよ!あ、あだし助けだい、家族を、ルゥリを取りもどしだい!!」
「助けたい…じゃねーだろ。しかもお前の家族じゃねーし」
「お、お願いです。助けるのに協力します。なんでもしますから……」
「あ……今なんでもしますって言った?言ったよね?聞いたよ?」
「う……うん」