ダンジョンで俺はお荷物?
修正加筆済み 2018/01/08
作戦は前衛にパラル、中衛に俺、後衛にラウリー。
複雑なダンジョン内部では、後ろから魔物が襲ってくる事もある。
オーソドックスだと斥候、罠探知役が先導し、その後ろに魔術師やアーチャーなどの中、遠距離職、最後方に盾や剣士などの物理職である。
後方から攻撃が来ればそのまま対応し前に敵がいる場合は斥候役が気づかれる前に見つけ、盾や剣士が前に出る。
ダンジョンにおいて純粋な魔術師はお荷物になりやすく、大体が罠探知や鍵開けを兼任する。きれいな水やスープの温め程度は剣士程度の生活魔法でも可能である。
なにはともあれ人生初のダンジョンである。
入り口から続く階段を下りると石壁で出来た迷路のような場所に出る。
日の光は入らないはずだがそれなりに明るい。
(異世界だからってなんでもありだと思ってんじゃねーぞこの野郎!)
一応暗い部屋などもあるので、魔力をこめると明かりを灯す魔力灯は持ってきている。
世界中どのダンジョンも地下1階に魔物は多少いるが、降りる階段がなく体外魔力も普通にある。
地下1階には複数の地下2階行き魔法陣があり、中に入り魔力を流すと地下2階に飛ばされる。一度使った魔法陣は消え場所を変えてまだどこかに現れる。
地下2階から1階へは地下2階中央の大きな魔法陣に乗ると自動的に地下1階の出口前に飛ばされる。これがダンジョン外に魔物が出る原因である。
地下1階では宝箱も罠もないのでパラルを先頭にサクサク進む。
途中何度か魔物と遭遇するが、切り捨てごめんよろしくパラルが真っ二つにしていく。
(前に見た寮の近くのPTは低学年だったのかな?)
「リョウ君あんまり気にしないでね。あいつ口は悪いけど剣の腕はホント一流だから。普通だったらこんな浅い階層の魔物でも数人で囲って倒すのが普通なんだけど、僕とかパラルは仲間とよく潜ってるからさ。安心していいよ」
「はい」
(これはガチで幸運だったようだ)
「おいひよっこ!お前まだ合格証持ってないよな?」
「持ってません」
ダンジョンの潜り方と似たような講座は複数あるが、合格基準は皆同じである。中には金に物を言わせて安全に合格証を手に入れ、瘴気も寄生で集め合格認定をさっさともらう貴族もいる。
進級に専門分野での合格が最低3つ必要なだけで、合格はあればあるほど将来に有利なのだ。
「パラルやっぱ優しいねぇ~」
「うっせぇ!ついでだよ!ついで!」
2階に降りられる魔法陣を見つけると改めて作戦会議である。
「いいかひよっこ。2階から1階に戻る魔法陣は常に魔法陣が展開されている。迷った時は魔力の強い方に祈りながら向かえ!万が一パニックになっても俺たちのそばから離れるな!でないと守りきれる自信がねぇ」
「はい」
「リョウ君、浅い階層にはあまりないが転送によっていきなり飛ばされる罠もある。その場合は必ず僕かパラルに捕まるんだ。絶対にはぐれちゃいけない」
「はい」
「一番まずいのはお前がビビって逃げ出すことだ。いいか?どんなに怖くても俺らから絶対に離れるな。はぐれたら死ぬと思え。結界球はお前に渡しておく。万が一はぐれたり俺らに何かあったら即使え、ためらうな。いいな?」
「わかりました」
「大丈夫だよリョウ君。今回はそこまで潜るわけじゃないし、5階程度まで降りていくつか宝箱を開けたら帰ろう」
「はい……って5階まで降りるんですか?」
「僕もパラルも一応高等魔術は使えるしね、二人とも魔法剣を持ってきてるから大丈夫だよ」
「は、はぐれないようについて行きます」
「物音とか魔物の気配がしたら間違ってもいい。なんでもとりあえず言え。直感は大事だ!」
「パラルは野生派だからな」
「お前も似たようなものだぞ!」
「パラルと同じ扱いは心外だな」
「よし行くぞ!まずは3階の合格証が第一目標だ」
作戦会議が終わり魔法陣の上に立つとパラルが魔力を流し魔法陣が光った瞬間、全く別な場所にいた。
「ここからはさっき以上に魔物が出る。ひよっこ…ビビるなよ?」
「はい!」
周囲索敵を行いながらいやーな感じの所はパラルに伝え、迂回したり便利な棒で床をつついたりして罠を避けて3階にたどり着く。
敵はすべてパラルとラウリーの一刀両断である。
3階も2階同様サクサク進むが、2度ほど挟み撃ちを受けた。
一本道だったので避けられなかったが、事前に前後に魔物の気配がすると言っていたのでパラルとラウリーがそれぞれ一刀両断して終わった。
(俺、やる事なんもねーマジ寄生)
4階へ降りる階段の横に白いカードが複数置かれているテーブルがあった。
「これが合格証だ。1枚持って行け」
「はい」
1枚手に取るとすぐに真っ赤に変わった。カードをポーチにしまい階段近辺で少し休憩になった。
「しかしリョウ君はすごいね。魔物がくるタイミングもわかるし、ここまで罠に一度もかかってないよ。いつものPTでももう少し時間がかかるし、罠にかかったりもするのにな」
「そんなことないです。魔物は全部倒してもらってますし、足引っ張っててすみません」
「おぅ!リョウ!お前なかなかやるぞ!お荷物だと思ってたが、度胸もあるしその変な棒のおかげで罠にもかからないしな!見くびってたわすまん」
「そうだよリョウ君。魔物を倒すだけが大事じゃないんだ。罠を見つけたり先に魔物を見つけたりすることでPTの安全度はかなり上がる。こうして温かいスープを飲めるのも君の生活魔法のおかげじゃないか。僕たちは魔法剣だから魔力は温存しないといけないしね」
「そう言ってもらえると気が楽になります」
ダンジョンに実際に潜ってる人に褒められて実際、かなり嬉しかった。
「さって、ここからが本番だ。魔物の強さも上がるし、罠も増える。油断しないようにいくぞ!!」
「はい!」
階段を降りると同じように魔物を察知し、先制攻撃し、最終的に5階まで行き3つの宝箱を開けるとダンジョンの外に出た。帰りは来た道をマッピングしてきた道を戻りあっという間にダンジョンの外だった。
「がっはっは、第0チームが最終組だな!どこまでいったんだ?」
「5階の途中までです。宝箱が3つと魔物からのドロップの素材数点ですね」
「基礎教育生がいる3人PTが一番深い所までいったか。さすが第0寮生だながっはっは!」
「リョウ!魔物からのドロップは俺とラウリーで半分にする文句はないな?」
「はい、俺は1匹も倒してないですから」
「代わりに宝箱から出た物はお前に全部やる。溶かして何か自分の装備でも作れ!」
「い、いいんですか?」
「もらっておきなよリョウ君。君はちゃんと仕事をしたさ。それにそのショートソードは学園貸与の武器だろ?せっかくだから自分用の武器とか作ってもらいなよ」
宝箱から出てきたのは刃の欠けたロングソードとボロボロの鉄製の丸い楯に新品に近い革の鎧だった。
「俺らはもっと深い階でいい物狙えるからな!そのくらいリョウにくれてやる!!」
「素直じゃないなぁ…ごめんねリョウ君。口は悪いが悪気はないんだ」
「大丈夫です。パラル先輩が優しいのは今日でだいぶわかりましたら」
いつの間にか呼び名が"ひよっこ"から"リョウ"になっていたのだ。
「…っち!!じゃぁな!」
ダンジョンの潜り方の講師に報告して合格証を渡し、学園内の鍛冶屋を探した。せっかくもらった装備だが鎧以外使用は難しいし、武器はやはりナイフがいいので鋳造しなおしてくれる所を探した。
2時間ほどうろつき、革と金属の両方の加工をしてくれる生徒を見つけ、ナイフ3本と革製の鞘、デザインは糞神にもらったナイフとほぼ一緒の20cmほどの両刃のナイフにしてもらい少し厚めにしてもらった。残りの革がだいぶ余るので左手用の篭手も作ってもらう事にし、余った材料はそのまま引き取ってもらい、制作料で5000エギラムを支払った。
これで所持金は残り2銀貨である。
毎日の日課基礎体力の講義に出ると夕飯を食べ、高位魔法の練習をしてジンとたわいもない話を楽しみ、ベットに潜る。
ダンジョンでの事を何度も思い出しなかなか眠れなかった。
ふと指輪を付けたままだという事に気づき、外して金庫にしまおうとするとふと表面のざらつきに気付いた。
【5】
しばらく考えたが、昨日まではなかったはずだ…
おそらく潜ったことのある最下層が刻まれるのだろう。
ラウリーやパウルが戦っていた魔物や宝箱を見つけた瞬間を思い出しながらベットに戻る。
(またいきたいなぁ…)