れっつごーダンジョン!
修正加筆済み 2018/01/08
「脇があまぁぁぁぁい!」
バタン!
「後ろへ退くな!相手の攻撃タイミングで前に出よ!!」
バタン!
「拳は握るな!しかし指は守れ!!」
ぐりっ……バタン!
(ぽいぽいぶん投げやがってこの糞じじいが!!)
「さぁどんどんかかってこい!」
「ヴォル師範…あのぅ……?」
「なんじゃ?もう泣きごとか?」
「いえ…機体撃とは機を誘って体を崩すんですよね?」
「そうじゃ!」
「さっきから"かかってこい"ばかりでヴォル師範が機体撃の練習をしているだけのような……」
「仕方がないのじゃ。機体撃には型がない。身体で覚えるしかないのじゃ。しかも儂は自分から攻撃するのが圧倒的に下手じゃ!!」
「……これ相手が攻撃してこない場合はどうするんです?」
「馬鹿じゃな……いいかよく聞け。これは機体撃の奥義にも伝わる基礎中の基礎じゃが…"魔術師と逃げれる相手からはさっさと逃げろ"これに限る」
「は…はぁ」
「基本は身を守るための武術じゃ。相手がどんな攻撃をするかわからない以上、まずは逃走、次に可能な限り素早くぶっ殺す。両方無理なら諦めろ……じゃ」
「あ、あきらめるんですか……」
「人間一人の力などたかが知れてるからの。100戦1勝99引き分けでも100戦無敗じゃ。いくら天下無敵の人間でも一度のミスで死ねば"元天下無敵"…じゃ」
「は、はい」
「しかしお主が受けの練習をできんのも確かに困るな。どこか他の武術講義に殴りこむかの……」
「なんかさらっと物騒な事言ってません?」
「今度貴族御用達の王宮流剣術にでも邪魔するかの…どれ少し技を見てやる。かかってこい」
「はい!」
「手首は片手で極められるようになれ!相手の踏みこみの足を踏め!」
「1:1の際は半身に構えろ弱点を相手に向けるな!」
「武器を持った猿は武器でしか攻撃してこない!剣持ちながら蹴りを出す奴からは逃げろ!」
「違う!そこは踏みこみながら"肩で殴れ"回避と攻撃を一体化させるのじゃ!」
「掴まずに投げよ!掴むときは極める時と折るときじゃ!」
「ダメじゃダメじゃ!なっとらぁぁん!才能がかけらもなぁぁい!!」
「はぁはぁ…」
「今日はこれまで!基礎体力をつける事とイメージでの練習は続ける事。次回から他の武術に殴り込みをかけるかもしれん。用意しておけ」
「用意?回復ポーションですか?」
「ばっかもーん!!!他の武術に回復ポーションが必要な遅れをとったら儂自らぼっこぼこにしてやる。用意とは相手を倒す覚悟じゃ。お主にはちと覇気が足りんからの」
「……わかりました」
ヴォルじじいに挨拶をすると、何度目かになるダンジョンの潜り方の講義に出る。
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「…であるからして魔物にも魔法に弱い、強いがある。学園のダンジョンは5階まではすべて剣で倒せる。基礎教育生諸君は高等魔法が使えないので、くれぐれも引率無しで踏みこまないように。次回ダンジョンにおける注意事項及び罠の危険性を説明する。次々回、実際にダンジョンへ潜る。それまでに指輪の無い生徒は購入しておくように。なくても参加は可能だが瘴気の吸収はない。ちなみにこのダンジョンへ潜るのはバメロス講師の剣術講義と合同なので、両講義に参加しているものはその事を両講師に報告すること」
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「それじゃぁくじ引きで剣術生3人ダンジョン生2名の5人編成で集まれ。メンバーがそろったところからミーティング開始。20分後から順番にダンジョンに入ってもらう。基礎教育生がダンジョン生にいるのであまり深く潜らない事。万が一の際は結界球を使い、助けを待つ事。以上」
結界球とは投げて割ると半径3mほどの半円のドーム型結界が形成され約24時間、形成時の内部と外部を遮断する。中心の結界球のコアを破壊しない限り結界は壊れず、魔法も一切通らない。しかし1個3銀貨するので気軽に使えるものではない。これも学園ならではの価格で普通だともっと高い。
剣術の講義はバメロス寮監以外の講師も行っており、今回の合同参加者は高等教育生の希望者のみ30名程度である。
ダンジョンの潜り方も名前を変えて似たような無料、有料講義が多数あり、この講義の生徒は40名程度。半数以上が新入生なので今回の合同参加者は約20名である。
学園内での死亡事故の原因はほぼすべてと言ってもいいほどダンジョンの中で起きていて、この国のダンジョンだけで年間約100人が命を落とす。子供にダンジョンだけは何があっても入っちゃダメと言う親は多い。ゲームよろしく転送帰還アイテムや魔法、ボスを倒すと帰還ワープなんてものはない。行きだけでなく帰りも大事なのだ。誰かが言っていた【"まだいける"は"もういけない"】だと
今回のような講義の参加は任意であり、不参加だからと言って減点になったりはしない。
合格基準の合格証だって山の月の頃に上級生によるツアーが開催され、格安で安全に取りに行けるのだ。
くじを引くと…【0】
「おぉ……ジーザス」
どこかで見たような数字である。
ダンジョンに向かって西から番号が低い順と言っていた。一番西に着くとバメロス、剣士×2がいた。
「ここが……0番ですか?」
「っち!新入生のはずれかよ」
「ここが人数合わせの寄せ集め、第0番だよ!」
「ガッハッハ第0寮生が0番のくじを引くとは、貴様ら幸運だな!!」
「せんせー、幸運も何も参加者の剣士はみんな第0番寮じゃねーか」
よく見渡してみると確かに見たことある顔が多い。
「そう言えば君食堂で見たことあるよ。第0番寮だったんだね。僕は高等3年ラウリーだ。よろしく」
「っち!同じく3年パラルだ!」
「基礎教育1年リョウです。よろしくお願いします。ラウリー先輩、パラル先輩」
「ガッハッハ!リョウ、こう見えてこの二人はうちの講義のTOP1、2だぞ。なかなか運がいいな!」
「寮監は誰にでもTOP1と言いますからね」
「ちがいねぇ…」
「念のため0番チームには緊急時以外手助け無しでついて行こうと思ったのだが、これならいらないな!!」
「どーせ瘴気吸っても酒に変わるだけだろ?いいよ俺とラウリーだけでも5階まで目ぇつぶっても行けるぜ」
「慢心は行けませんよ、パラル。今回は基礎教育の子もいるのですから」
「てめぇ足引っ張ったらおいていくかんな!」
「大丈夫ですよリョウ、こう見えてパラルは意外と面倒見がいいのです」
「うっせぇ!」
「がっはっは!では第0番チームがダンジョン乗り込み一番手だ。日没までには戻る事、それ以降は救助班が結成され救助金がかかる。我が講義は護衛対象のいる戦闘練習が目的だ。無理はしないように危険を感じたら真っ先に逃げる事!!それでは検討を祈る」
こうして人生初のリアルダンジョン潜入である。
えー今回は0~10番のランダム関数で運命を決めました。
0以外の場合ダンジョンの話は適当にカットしていつかやる時までダンジョンの冒険話は出ない予定でしたが彼はホントに0に愛されているようです。
苦難の話ですが10分の1を引いて出番が来たキャラがいるので頑張ります。