初めての高等魔法!
修正加筆済み 2018/01/08
夢のぶっぱな魔法ゲー頓挫確定にうなだれながら、飛行魔法のコツを学園長に教える。
受験の時に無理しなければ30分と言ったがあれは嘘だ。
その気になれば半日飛んでいられる。学園長の固まった顔が怖くてつい低めに申告したのだ。
じじいが30cmほど浮いてこけるのを1時間見守った後、高位魔術の勉強が始まった。
「……であるからして魔術師は体外魔力が満ちている所であるほど強いのじゃ。わかったかな?」
「はい。体外魔力濃度が濃ければ高位魔術の発動も容易で体内魔力の回復も早いのですね?」
「そうじゃ、そして魔術師最大の弱点は体外魔力がない場所での戦闘じゃ」
「……ダンジョンですね?」
「そうじゃダンジョン以外にも特殊な結界や特殊環境の場所は体外魔力が著しく薄い。ダンジョンでも薄くではあるが、体外魔力はあるので時間はかかるが高位魔術の発動は可能じゃ。しかし相手が待っててくれる保証はない」
「魔術師はダンジョンに入るなって事ですか?」
「いや……そうでもない。ダンジョンには様々な魔物がおり、物理攻撃が効きにくい魔物も多数おる。高位魔法無しで探索するのは愚かと言えよう」
「でもダンジョンでは高位魔術が使いにくいんですよね?」
「そうじゃ。しかし何事にも抜け道はある。主に使われる方法は2つじゃ。1つはあらかじめ魔宝石に体内魔力と体外魔力を混ぜ合わせため込んでおく事」
「なるほど……」
「すでに魔力を溜めこんでおけばキーワードだけで発動可能じゃが、これにはデメリットもある」
「デメリットですか?」
「魔宝石には体内魔力以上の体外魔力は溜められないのじゃ。ダンジョン内では魔法を発動後体内魔力を注ぎ、体外魔力を薄めて長く魔法を行使することも可能じゃが、威力は落ちるし、何より魔宝石が傷む」
「魔宝石が傷む?」
「そうじゃ魔宝石は非常に繊細な物質での。使われない魔力が溜まっているとひびが入ったり割れたりするんじゃ。目安としては3日以上同じ魔力があるのはよくないの」
「でももともと魔宝石って魔物の核ですよね?」
「そうじゃ、宝石というよりは心臓などの方が表現は正しい。魔力が入り出ていくのであれば常に魔力があっても問題ないが、流れのない魔力が溜まり続けるのがよくないのじゃ」
「じゃ、どうやって深いダンジョンで高位魔術を使うんですか?」
「その答えが2つめの方法じゃ。見ておれ」
学園長は懐から水筒のような物を取り出すと数滴手のひらにかけ壁に向ける。
ドゴォォォォォン!!
本日最大の火の玉が壁にぶつかる。
「消費媒体を使った魔力の行使じゃな。これは体内魔力と媒体の魔力を混ぜ合わせ発動する高位魔術じゃ。体外魔力が不要で無詠唱でもこの威力じゃ」
「すっげー」
「しかし消費媒体は魔宝石を介して体内魔力と混ぜる事が不可能だし、消費媒体自体が基本は非常に高価じゃ。まぁ魔術師の切り札と言う奴じゃの」
「それがあれば体外魔力の薄い場所でいつでも高火力の高位魔法が使えるという事ですね!!」
「そうじゃ儂が今使ったのはドラゴンの血を薄めた物じゃ。火魔法との親和性が非常に高く、値段も高価じゃな」
「夢が広がります!」
「ホッホ。頑張るといい、君の人生はまだ始まったばかりじゃ。それではそろそろ実技を始める」
「はい!!」
「まずは体内魔力と体外魔力を混ぜる練習じゃな。指先や手のひらに体内魔力を集め、わずかに放出させながら、体外魔力を感じ取り混ぜ合わせる感じじゃ。混ざり合うと薄い紫色に見える。それを固形化するように」
「できました!」
俺の手には紫をさらに濃くしたような黒っぽい球体が浮かんでいる。
「ほ、本来この過程は非常に難しく魔術師の登竜門と呼ばれるのじゃが……忘れておったお主は規格外じゃったな……」
「これどうしたらいいんですか?」
「壁に向かって飛ばしてみるのじゃ」
ピッチャー振りかぶって第一球……なげた!
パコン!
爆発することもなく壁にぶつかって消えた。
「それが高位魔法の基礎練習じゃ、半年はひたすらにそれを繰り返すのじゃ。慣れてきたら両手で作り出したり、自分は動かずに球だけを動かしたりする練習もしてみるのじゃ」
「はい!」
「さて次は……飛行の練習の再開じゃ!」
あっという間の一時間であった。
学園長に昼食をご馳走になり、昼休憩をとると16時まで特別授業は続いた。
特別授業が終わると運動場へ行き、今日の基礎体力のノルマをこなし、出席をもらうと今日の講義は終わりだ。
あれから毎日、寝る前と起床後は寮の裏で高位魔法の練習をした。
周囲索敵を使い、誰か来ると隠れ、魔物が来ると練習台にする日々が始まった。
空の月はビーストテイマーの受講もまだ始まらず、歴史と基礎体力とダンジョンの潜り方に機体撃。これが今の参加講義である。
他の生徒に比べ圧倒的に自由時間が多く、そのほとんどの時間を図書館で魔法の調べものに充てた。
一人で万の軍勢を止めた魔術師の生まれとその生涯をつづった冒険譚。
さまざまな魔法における威力とその効果の説明書。
効率のいい魔力の鍛え方など、魔法に書かかわる本を片っ端から読んだ。
この異世界の魔術師は頭が固いのか、火は爆発、水は衝撃、風は斬撃、土は貫通という属性を使うことが多い。
戦場で花形となるのはやはり火の爆発系魔術師だった。
有名な物語の主人公的魔術師はみな揃ったかのように火、火、火である。
水や土はたまに出てくるが風は全く見ない。
大型の生物には爆発、衝撃、貫通がいいらしく斬撃は固い皮膚に防がれ、なかなかダメージが通らないらしい。
しかも魔術師というのは広範囲における攻撃や防衛がメインであり、城壁を貫通させたり、防壁から大量の水で守ったりするのに比べれば斬撃は地味らしい。
(風魔法で爆発や衝撃や貫通させればいいのに)
魔術は先人の教えをなぞる者が多く、あまりオリジナルの開発や新しい使われ方はしない。闇魔法と勘違いされてなかなか発展しない側面もあるようだ。
本を戻しながら色々な本のタイトルを流し見して"ピン"と来るものを探す。前の世界の漫画喫茶に行っても直感で好みの本を探していた。あれに似ている。
しばらくすると気になる本が見つかった。
ボロっちいその本のタイトルは【ダンジョンの謎と聖獣の関係性】
パラパラとめくると
1、ダンジョンは何者かの意思が宿っている。
2、猫耳は正義である。
3、魔物と聖獣は同一のものである。
4、聖獣の素材は瘴気を魔力に変えるものがある。
5、ダンジョンの核には姫が眠る。
6、魔物は瘴気から魔力を生み出し魔法を使う。
7、ダンジョンは滅びた旧文明の宝物庫である。
都市伝説のような眉唾物の話ばっかりだ。ちなみに2や5はいたずら書きである。
本を元の位置に戻すと新しい知識を求め図書館の徘徊を再開した。
この物語では
魔法とは・・・魔力を使って起こす現象
魔術とは・・・魔法を目的の為に制御すること
例としてはリョウが発生させた黒っぽい球体が魔法で
それを目的の為に移動や変化させることが魔術です
わかりにくかったらすみません。よくわからなくても問題ないです
(俺が一番チンプンカンプンかも…)




