魔法無双の始まり・・?
修正加筆済み 2018/01/08
きたる空の月23日……
そう運命の日がやってきた……
「ここから俺の魔法無双の日々が開幕する!!」
朝からテンションMAXな俺は、日課になった潜伏見回りをすると朝食をモリモリ食べ、学園へ向かう。
事前に調べておいた学園長室へ向かうと深呼吸をしノックする。
コンコン
「はいりたまえ」
「失礼します」
「ふむ…入学式ぶりじゃな。この時期はなかなか忙しく時間が取れんが、今日は丸1日時間がある。では行くぞ」
学園長が本棚の所で何やらごそごそとすると、本棚が横にスライドし、ぽっかりと入り口が顔を出す。
「ついておいで」
学園長の後をついて階段を下りる。学園長室の高さから比べると明らかに地下まで降りている。
「ここは学園の地下にあたる修練場じゃ、本来正式な入口があるのじゃが、今日は儂の修練の為、丸1日立ち入り禁止じゃ。本来は高等教育の高位魔法術の実技授業場所じゃ。基礎教育でここに入ったのはリョウがおそらく初じゃな。」
縦横50mはある部屋で天井は10m近くある。
「この学園は街の高位魔法検知結界の指定外でな、自由に高位魔法が使える。さらにここは学園の中でもっとも頑丈にできておってな」
『ファイヤーボール』
ドガァァァン!
派手な音がして壁に火の玉がぶつかり爆発するが傷一つない。
「すでに失われた技術で作られたものじゃ。初代学園長の時代から傷一つない。遠慮なく魔法がぶっ放せるぞ!!」
嬉々とした学園長の目を見て気づいた、この人も魔法中毒者だ!
「それでは第一回の授業を始める!」
「「よろしくおねがいします!」」
「……」
「……」
「リョウ始めんか!儂は力ずくでなく風魔法で飛び回りたいんのじゃ!」
「え?いや…学園長が高位魔術を教えてくれるのでは?」
「ばかもん!儂に教えるのが先じゃろう!」
「でも高位魔術を教えていただいてからの方が新しい発想が出るかもしれません!」
「ぐぬぬ、では1時間交代で教え合おう、それでよいな?」
「はい!」
「時間がもったいないので儂からじゃ。ざっと説明するがよく聞け。まずさっき儂が放った魔法の呪文を聞き取れたか?」
「はい…古代言語でファイヤーボールと聞こえました。」
「ふむ…そうじゃでは生活魔法と高位魔法の違いは分かるか?」
「えーっと体内魔力だけを使うのと体外魔力や他の媒体を使うのが高位魔法ですか?」
「その通りじゃ、体内魔力は自分の身体から離れると威力が激減する。使えて範囲2mじゃな。それに引き替え体外魔力や魔力媒体を用いた高位魔法は遠距離攻撃、範囲攻撃が可能となる。ただし生活魔法のように細かい操作は非常に難しい」
「なるほど……」
「高位魔術の発動は大きく分けて2種類じゃ。先ほど儂がやったように杖に魔力をこめキーワードを発する『ファイヤーボール』」
ドガァァァン!
本日2発目の火の玉が壁にぶつかる。
「誤発動防止に古代語を使っておるが、自分が決めた呪文で発動させるのが一般的じゃな。」
「ふむふむ…」
「指輪や杖にある魔宝石に体内魔力を集め、キーワードと共に体外魔力と混ぜ合わせ魔法が発動する」
「先生!俺でも好きな属性の魔法を使えるのですか?」
「火、水、土、風の基本4属性は誰でも使える。治癒魔法、重力魔法、空間魔法などは生まれ持った才能か、あるいは長年の努力で目覚めるかもしれぬ。例外として闇と称される魔法もあるがオススメせん」
「闇…?ですか?」
「中途半端な興味で手を出すのは危険じゃから言っておく。あれは外道の法じゃ、幻惑や精神を汚すような魔法攻撃、死体を生きたように操り、他人の魔力を奪う。魔術師の中でも最も忌避される存在であり、全世界共通で闇魔法の研究、行使は禁止じゃ。もちろんこの学園内でもじゃ」
「なるほど…」
「話を戻そうかの、4属性が使えるとは言ってもやはり得て不得手はある。自分で色々やってみて性に合うのを鍛えることをオススメする。ちなみに儂は火じゃ」
「俺が学園長の杖を借りて魔法を使うことも可能なのですか?」
「古代語が使えるしの……可能は可能じゃが……まぁやってみるがいい」
学園長から杖を受け取るとドキドキしながら魔力をこめる。
杖の先には10cmほどの魔宝石と思われる物が付いていた。
『ファイヤーボール』
ビー玉サイズの火の玉が出ると壁まで届かずに消える。
「まぁ火の玉が出るだけマシじゃの。普通は儂の杖で魔法の発動すら無理じゃ」
「その杖は学園長専用という事ですか?」
「いやいや、魔法の発動には2種類あると言ったじゃろ?見ておれ」
杖を持たないまま片手をあげると前触れもなく火の玉が壁に向かって飛んでいく。
ドガァン!
俺のより全然大きいが最初のに比べると明らかに小さい。
「これが無詠唱と呼ばれるもう一つの方法じゃ。魔宝石を付けた杖や指輪をつけながらイメージし、キーワードを使い、何度も使う事で魔宝石にその魔法のイメージとキーワードを刻み込むのじゃ」
「でも無詠唱でもできるならそっちの方がいいのでは?」
「魔宝石を介さず体外魔力と混ぜるには必要な体内魔力が膨大になる。さらに威力も落ちるし、イメージする集中力が必要なのじゃ。魔術師はあまり近接での戦闘はないからの……無詠唱の不意打ちより魔力消費、威力減退の方が死活問題なのじゃ」
「それじゃ俺が使うと威力が低いのは……?」
「儂とリョウのイメージの違いじゃな」
「なるほど…」
「さっきから気になっていたのだが、リョウお主ちょっとその杖に全力で魔力をこめてみるのじゃ」
「はい……っおりゃ!」
「ファイヤーボールを使ってみろ」
『ファイヤボール!』
ペチン!
今度は何とか壁まで届いた。
「同じ威力で後何発撃てそうじゃ?」
「午前中なら撃ち続けても平気です」
「魔力保有量はかなりあるようじゃな…しかし…」
「しかし……?…え?」
「魔力放出量が少なすぎる。長距離や広範囲の魔法は使えないかもしれぬのぅ」
「これから鍛える事は出来るんですよね?」
「保有量は鍛える事である程度伸びるが、一度に放出できる量はほとんど生まれ持った才能じゃの……」
「え?……って事は…?」
「儂のような広範囲、高火力の魔法は無理じゃ!」
「えぇぇぇぇぇぇぇぇ」




