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機体撃とはなんぞや?

修正加筆済み 2018/01/08


とうとう機体撃きたいげきの体験講義がやってきた。

去年の受講者は0人だったが…やはり値段の問題だろうか?


武術系の講義は比較的安く、機体撃の5銀貨は群を抜いている。

高位魔法、特殊魔法、ドラゴンテイマー、勇者、騎士この辺が人気で高い講義で、受講料もなかなか高い。

特殊魔法は生まれ持った才能が基本的に必須であるが、後天的に目覚める場合も極低確率だがあるようだ。


期待と不安が入り混じる機体撃の体験講義に参加すると、かなりの人数が集まっている。


「二人一組になって40cm離れ相手をてのひらで押しあえ、ただし押した側が手のひら以外で押したり、手のひら以外を押したら負けとする。一歩でも動いたら負けじゃ。5分以上決着が着かなければ双方負けとする。負けた者は運動場1周走ってくるのじゃ。勝った者はどんどん次の勝負をしていけ。負けた者は走り終わったらすぐに相手を探して戦え。質問は受け付けん。はじめ!」


(完全に手押し相撲じゃねーか…)


前の世界の学生の頃、休み時間によくやった記憶がある。無闇に押すよりも攻撃を受け流したり、攻撃してきた所を強く押して勝つようなゲームだった気がする。


重いものを動かす時のじりじりとした力の入れかたよりも、風船を遠くに押し飛ばすような"瞬発力"が大事だったはずだ。相手の押しもただ避けるだけでなく、触れながらも衝撃を受け流すようにする見極めも必要だった。



手のひらを構えると猪のように突っ込んでくる奴ばかりで連勝を築き上げる。この世界は脳筋が多いのだろうか……

走り込みなんて基礎体力講義で十分なのだ。

完全に罰ゲームくさい走り込みなんぞ遠慮させてもらう。


走り込みから帰ってきた連中はまたすぐに走り込みに行くのが嫌なのか勝負に慎重になる。

それでも残り時間がなくなると焦ってボロを出す。まだまだちょろいのだ。



さすがに1時間もすると走りつかれたのか、体験講座を途中で棄権する人が増え、また一人、また一人と人数が減って行った。

残った人間に猪タイプは少なく、なかなか苦戦する勝負もあったが、押す側が手のひら以外を触れたら負けという事なので遠慮なく汚い手を使う。押してきた相手に対していきなり手の甲を向けて触らせる。ランニングいってらっしゃいである。


結局後半に2度ほど負けて、無敗達成は叶わなかった。


「今年の体験講義は本日のみである。講義参加希望者は5銀貨を払い、次回の講義から参加するように」


潮が引くように生徒たちはぞろぞろと帰って行く。高い受講料の体験講義に出て何かコツでも掴もうと思ったのだろう……


ゾロゾロ引き返す中、唯一俺だけは講師に向かって歩いて行き、質問した。


「先生。機体撃という名前はどういう意味なんですか?」


今日の練習でなんとなく飛行機をぶつけたり飛行機を殴ったりする武術ではないことは察しがついた(この異世界に飛行機なんてないけどね!)


「ふむ…機体撃と言うのは機を誘い、体を崩し、一撃で撃破するという理念の近接格闘術じゃ」


(防衛スタイルからの一撃必殺か…この異世界なのか国なのかはわからないが防御とか防衛というのはあまり人気がない)


「得意武器はナイフなのですが、ナイフについての指導もありますか?」


「ふむ…一応ナイフも使った技もあるのじゃが…どうやら今年も参加者はいないようじゃ。君が参加するなら時間のある時にでも教えよう」


「わかりました。受講します。基礎教育1年第0寮のリョウです」


「ホッホッホ…受講するのか?物好きもおった者じゃ。儂は機体撃師範ヴォルグ・ガシウキじゃ。受講中は気軽にヴォル師範と呼ぶがいい」


「よろしくお願いします…ヴォル師範」


「うむ……1年では機体撃のすべてを学ぶのは無理じゃろうが幸い受講者はお主一人じゃ、贅沢な環境よのぅ」


「まさか一人とは…予想外でした」


「ほっほっほ、この学園で非常勤講師を始めて10年。3人目の生徒じゃ……10年目にして初の合格者が出るのかのぅ?…楽しみじゃ……ホッッホッホ」


「え?」


なんかこのじじい、さらっととんでもないこと言ってないか?

とりあえず聞かなかったことにして次の講義に出よう…


ヴォルじじいに挨拶をすると今日もう一つある体験講義に向かった。


-----------------------------



「この講義は学園内のダンジョンだけでなく、世界中のダンジョン共通の基礎知識と基礎技術を学ぶ講義である。本日は体験講義なので実技はない。座学のみだ。この講義は約90日で全過程を終了する。年間3回行われてるので欠席があった場合の穴は友人に聞くなり、再参加するなり各自で解決しなさい。なお合格の目安はダンジョンの3階にある合格証を持ち帰る事と、一定以上の瘴気の換金である。なお合格証は最初に触れた者の魔力波形を記録するので無闇に複数触ったりしない事。赤い合格証はすでに波形記憶済みなので白い合格証を手に入れ戻る事。それでは基礎知識の座学を始める!」


ポンコツでもわかる異世界ダンジョンの基礎知識編

1、ダンジョンはドラゴンや巨大魔法生物の死後、その場所に発生することが多い。

2、内部は瘴気で満ちており、魔力がほとんどないため魔力の自然回復がほとんどない。

3、ダンジョンにはたまごが湧き、吸収した瘴気の濃さによって強さの違う魔物が生まれる。

4、ダンジョンはすべて地下に向かって伸びており広さはそれぞれ違う、数年に一度入り口を閉ざす期間がありその際に内部の構造が変わる。

5、まれに魔獣が入り込み、巣を形成している場合もある。魔物と魔獣は互いに攻撃しない。

6、ダンジョンには宝箱が湧く、たいてい鍵がかかっているが開けるとアイテムや亡くなった冒険者の装備が入っている。

7、深い階層ほど魔物は強くなるが、ある一定以上の魔物は極低確率で魔宝石と言う核を残す。この魔宝石を介すると体外魔力と体内魔力の親和性が非常に上がるので高値で取引される。

8、最下層にはダンジョンの広さに応じた大きさの魔宝石があり純度が非常に高い。この魔宝石を破壊、あるいは持ち出すと、以後そのダンジョンはただの洞窟になる。


「ここで注意事項だが、いまだにこの学園のダンジョンは未踏破であり、最下層が何階かもわからない。大事な事だが魔物を倒してドロップした魔宝石以外は破壊、持ち出しが禁止である。まぁ学園の講師陣が挑んでも最下層にはたどり着けないので諸君らにはいささか難しいと思われるがな!基礎教育生の卒業までの目安は基礎教育生のみで3階の制覇。高等教育生は10階が目安である。なお生徒歴代の最高は35階、生徒以外での最高は48階である。諸君らも死なない程度に挑戦してみたまえ。本日はこれまで。次回から鍵開けの実技を始める為、鍵開けツールが必要だ。のちにダンジョンへ潜ることを考えている者は購入しておくことをオススメする。購入できないものは学園の物を貸与するが、教室からは持ち出せないので注意すること。ではまた次回!」


きりーっつ!れ~いという学校テンプレな挨拶の後教室から出た。


「鍵開けツールか…」


開錠の祝福からをもらった俺からするとこの世界の鍵は非常に簡単な構造をしている。前の世界のチャリの鍵の方がいくらか難しいかもしれない。


ただ魔力波形の金庫だけは開けるのはほぼ不可能であり、持ち主がなくなった場合や盗んだ場合は金庫をぶっ壊すらしい。

完全に不可能でなくほぼ不可能と言ったのはエルフの上位種のハイエルフや始祖エルフなどは魔力の波形が目に見えるらしく、疑似的に自分の波形をそれに合わせる事が可能らしい。しかし上位種になればなるほど人間を嫌う傾向にあるので彼らが魔力金庫にかかわることなどないだろう。


そういえばダンジョンで出る宝箱って鍵がかかってるらしいけど本来の開錠する鍵ってどこにあるんだろ ……?

考えても答えが出ない事はさくっと忘れよう。


閑話休題それはさておき


鍵開け道具は学園の露店や販売所、購買部でも色々な種類があった。

感性にピンときた物を数点購入し次の目的の物を探した。


ダンジョンで罠と言えばあの棒…である。

知ってる人も知らない人もいるだろうが、漢がダンジョンに入るには必須な棒があるのだ。これがなければダンジョンは始まらないと言っても過言ではない。


邪魔にならないようあまり太くなく、長さは2~3mが理想

釣竿のような中空の伸縮棒が頭に浮かんだが、押したり突いたりする使用法なためあまり望ましくはない。

かといって魔物との戦闘があるダンジョンで常に棒を持ち歩くのも不安ではある。


一応この世界にはネジの理論はあるのでネジのオスとメスによる組み立て式の棒にした。60cm程度の棒を3本用意しネジでの着脱式にして腰からぶら下げる大作戦だ。これ以上長くすると地面にあたるし4本になると組み立てが面倒だ。

3本なら両端をオスにして片側にぶら下げ中央を両端メスにし反対側にぶら下げれば目をつぶっていても組み立て可能だ。

2m弱だが必要に応じてまた作り直せばいいのだ。


木工ができる鍛冶講義合格済みの生徒に説明し制作を依頼する。

前金で半分渡し、完成は2日後のようだ。

他にも安く売りに出ていたポーチや保存食、回復ポーションなどを買い、5000エギラムが旅立った。気分はすでにダンジョンに向かう冒険者である。

ダンジョンの講義効果恐るべし……

寮に帰ってから気づいたが。


(保存食とかダンジョンに行く前でいいじゃん…)


普段使わない分、何かを買うとついつい余計な散財をしてしまう典型的なチェイン体質であった。


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