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入園式!

修正加筆済み 2018/01/08

朝、目が覚めるとアルベルトもジンも寝ていた。


消灯後魔物のうなり声が何度も聞こえ、どちらの声かわからない「ヒィィ!」

というビビリ声がしていたが、気にせず熟睡した。


魔獣や魔物がいる森の中で木の上で寝る事に慣れている俺には、部屋の中なんて安全そのものである。


手早く学生服に着替えると水場に行って洗面と歯磨きをする。

第3号棟は新入生専用の棟らしくこんな朝早い時間には誰もいない。

緊張して眠れなかったのが響いて朝方に熟睡だろう。


森での生活のせいか起床はいつも日の出と一緒だった。

さすがにジンを起こすわけにもいかず、指輪を付け学園貸与のショートソードを持つと周囲索敵と潜伏を使い外に出た。


昨日はナイフがないと怖いな…とビビっていたが、夜中に周囲索敵をしていて夜の見張りの生徒チームと思わしき集団やソロで巡回してる講師や戦っている魔物の魔力を感じたが、森にいた魔物の方がよっぽど強かった。

それでもナイフは無いので麻痺ナイフ投げからの毒ナイフコンボが使えないのでやはり少し怖い。


いざとなれば水をぶっかけて凍らせ、ジャガイモの皮よろしく削り大作戦かヒヨコを呼んで何とかしてもらおう作戦である。


潜伏を使いながらバメロスや見張り番の生徒チームを戦いを見るが、はっきり言って参考にはならなかった。バメロスは強すぎる。両手剣みたいな物を持ちスタスタ歩き魔物を見つけると駆け寄って"ズバン!"一刀両断である。


しかし棟の陰や茂みにいる魔物を素通りしてるあたり、目視での発見方法しかないのだろう。


生徒チームは大体3人1チームだった。最大5人である。6人以上でも可能だがその場合瘴気が吸収されなくなる。指輪同士の共鳴作用だがなんだからしい。


ちなみに1匹の魔物を倒した際100の瘴気があるとすると…


ソロの場合は50

デュオの場合それぞれ30の合計60

トリオの場合それぞれ25の合計75

カルテットの場合それぞれ20の合計80

クインテットの場合それぞれ20の合計100


の吸収量になるらしい。おおよそらしいが…なので4人で行くよりは5人の方がお荷物でもいた方がいいらしい。これがアルバイトの正体である。





見張り番の生徒チームを潜伏で追いかけていると魔物を見つけ攻撃しはじめた。


盾を持った青年が魔物に向かって走って体当たり。そのまま剣をたたきつける。もう一人の青年も両手剣で横から殴りつける。

最後の1人は後方で何やらむにゃむにゃ唱えている。

しばらくすると

「どいてー!!」


その声を合図に青年二人が退くと、魔術師らしき青年の放った火の魔法が魔物に直撃する。ぶつかると爆発し魔物を木端微塵にする。


3人は魔物がいた場所に近寄ると黒い瘴気が指輪に吸い込まれていく。


(なるほどああやって吸い込まれるのか…)


盾を持った青年と両手剣を持った青年はそれぞれ瓶の中の何かを飲みまた歩き出した。魔物は見た所毒持ちの魔物ではなかったからおそらく回復系のポーションだろう。


プロゲーマーとまではいかないが、さまざまなゲームで仮想の狩りを体験した俺から言わせてもらえば穴がありすぎる戦い方だった。実にナンセンスである。


盾は本来タンクと呼ばれるヘイト管理役だろう。しかし両手剣の相手にも攻撃がいっていた以上、腕が悪いとしか言いようがない。まぁこの世界にヘイトがあるのかどうかもわからないが。


両手剣もせっかく盾がダメージを引き受ける役なのだから、自分は可能な限りダメージを受けない場所から盾の邪魔をせず確実にダメージを刻むべきである。ヘイト流れは盾だけでなくダメージディーラーも悪いことがあるのだ。


そして魔術師…かなりの威力で止めを刺すのはいいのだが、外した場合非常に危険である。必中の腕があるならファーストアタックで使えばいい。

ヘイトがあり、一発でヘイトが流れるなら魔術師はちまちま削るべきだし、ヘイトがないなら最初に一発ぶつけて盾が守りながら押し切るべきである。


前衛2後衛1のバランスのいい構成ではあるが、この戦い方はボスや大型種との戦い方である。間違っても見た目は可愛いくらいの豚のような魔物との戦い方ではない。戦闘中どの状況においても他の魔物に奇襲された場合、どうなるかは火を見るより明らかである。


何年生の生徒かはわからないが、この世界のPTにおける戦い方の1つを見れて満足したので潜伏を使いながらこそこそと帰る。

途中魔物を見かけたが、潜伏をしたまま素通りしてきた。

朝、出口をでたら絶対に勝てない魔物とかが出てしまったらどうしよう…とか考えていた自分が急に間抜けに見えてきた。


緊張も大事だがある程度のゆとりがないといざというときに動けないのだ。



-----------------------------


部屋に戻るとジンが起きてた。


「あれ?リョウどこに行ってたの?いないから心配しちゃった。」


「あ~朝の運動にちょっとジョギングにな」


「うへぇ…外行ったの?夜中あんなに唸り声してたのに…」


「棟の周りをぐるっと走っただけさ。一応武器も持って行っけど魔物を見かけて全力で逃げてきた」


「うわぁ…怖いなぁ…僕はそんな勇気ないよ…」


「逃げ足には自信があるからな!」


「そう言えば脚早かったもんね~。ズルされなくても僕より早かったと思うよ」


「そろそろ朝食だぜ?準備してさっさと行こうぜ!」


「アルベルト……様はどうする?」


「別に朝起こしてくれと頼まれたわけじゃないし、王侯貴族様の朝の準備は時間かかりそうだからな。飯がなくなる前に行こうぜ!」


「う、うん!」


朝食と夕飯は各寮の食堂で出る。バイキング形式の早い者勝ちである。

成長期の奪い合いなので、時間内に食堂に行ってもすでに何もないなんてザラである。


昼食は有料で学園内の食堂で食べるか、学園内の販売所で何か買って食べるかである。


生徒の自由な時間はかなりあり、個人や仲間で弁当屋をやっている所もあればダンジョンに潜り、金策に走る生徒もいる。

新入生がいきなりダンジョンに潜り危険な目に遭わないように1年次は闘技祭以降でないと指輪の販売が許可されない。指輪無しでもダンジョンには潜れるが魔物からのドロップや宝箱でも見つけて開けないと利益にはならない。



まだ余裕があるバイキングから栄養バランスを考えて色々とると、席についてペロッと食べきった。


昼食は有料だし、朝食は1日のエネルギー源なのだ。



ボタンの位置が一つづつずれてる制服を着たアルベルトは椅子に座ったまま朝食が来るのを待っているようだ。王侯貴族様にバイキングというのは難しかったのだろうか?残りもほとんどないバイキングのカウンターを見ながらジンと共に入園式へ向かった。


結論から言おう……地獄であった。



入園式とは言っても始業式のようなもので、学園の闘技場に総勢3000人近くの人間が集まった。

寮ごとに席が決められており、生徒は観客席に座り闘技場の中心で講師の挨拶があった。

まずは高等教育の生徒会兼風紀委員的なポジションの執行部の歓迎の言葉。副学園長からの学園のルールの説明、注意事項。

さらに常勤講師の自己紹介とあいさつ。さらにさらに今年から新しく務める非常勤講師のアピールタイム。ここまでおよそ3時間。


ここで副学園長再登場である。

新入生には期待してるとか、貴族様方はけがにお気を付け下さいとか、去年こんな事件があって心が痛い今年は無いように…とか終わらない話のループが続く。30分ほどすると学園長の「うぉっほん!!」というわざとらしい咳払いに気づきそそくさと壇上を降りる。


「最後に学園長からのあいさつです。全員起立!」


司会役の執行部の生徒がいうと新入生以外は一糸乱れず立ち上がる。

新入生も慌てて立ち上がる。


「よい、長話で疲れておるじゃろう。座りたまえ」


拡声器もマイクもないのに静かな声が闘技場に響く。

ほとんどの生徒が座ったが立ったままの生徒もちらほらいる。


「ふむ…起立したまま拝聴してくれる生徒諸君の為に簡潔に終わらせようかの」


スーッと息を吸うと、とんでもない大声で怒鳴り始めた。



「常勤講師!!非常勤講師を下に見るような言動は許さん!発覚すれば減給!!」


「非常勤講師!!我が学園の生徒に悪影響をもたらすことは許さん!!発覚すれば即刻クビ!!」


「高等教育生!君たちには何も言う事がないが、自らの名に恥じぬ行いを心がけよ!!」


「基礎教育2年次!!悪しき風習はそなたたちの代で食い止めよ!!よき風習を築く代となれ!!」


「新入生!!驕り高ぶる貴族は馬のエサにする。礼儀のなってない平民は豚のエサにする!!」


「少年、青年達よ!!目的に向かって努力を続けたまえ!理不尽な障害は学園が責任を持って取り除こう!!」


「少女、淑女達よ!!女性が強い国は滅びない!学園長の名において許可する!!むかつく男は学園の外まで殴り飛ばしてやれ!!」


「副学園長!!貴様はいちいち話が長い。だからいつまでたっても副学園長なのだ!!いい加減に学べ!!」


そういうと学園長は壇上から宙に浮いた。


固まる講師や驚嘆の声があちらこちらから聞こえる。


「生徒諸君!魔法と同じく君たちは様々な可能性を秘めている!!今年の1年も新たな可能性を魅せてくれることを期待しておる!!以上、解散!!」



「リョウ…すごかったね…学園長……」


「あぁ…かなりファンキーなじじいだな」


「え……そこなの?僕はあの宙に浮かんだ魔法がすごいと思ったんだ」


「でも学園長って第三級特異点の魔術師だろ?空くらい飛べるんじゃね?」


「学園長は広範囲、高火力の火魔法のプロフェッショナルだよ!重力魔法も使えるなんて初めて聞いたなぁ…しかも詠唱してる所なんて全然わからなかった」


「じゅ、じゅうりょくまほう…ねぇ……」


周囲の驚きや驚嘆の声から風の生活魔法で空を飛ぶのはしばらく自重した方がよさそうだ。こんな特異扱いされる事だとは思わなかった(汗


常勤講師の体験講義以外は何もない予定なので、ジンと一緒に第0寮に帰る。

帰り道の途中呼んでもないのにヒヨコがこちらに飛んできた。

周囲探知をしていたから気づいたのだ。


ありったけの魔力で左腕を強化するとそこにヒヨコはとまった。

危うくスプラッタになるところだった。

ヒヨコの爪は腕に止まってるのでなく、完全に腕を掴んでいる。

大きさは羽ばたけば空の旅に連れてかれるんじゃないかと思うサイズである。



「リョウ!リョウ!大丈夫?」


ジンがかなり逃げながら聞いてくる。


「大丈夫だよジン。魔物じゃないから。こいつがヒヨコ。ワシの聖獣で俺の相棒さ」


「え?これがヒヨコなの?……イメージとなんだが違うんだけど…」


「そこは激しく同意する、だが俺に責任はない」


ヒヨコは右足をあげると頭をつつく。


「ん?」


ヒヨコの右足には何か紙が縛ってある。


【ジュビリーからリョウへ。最初の授業は23日の朝8時からじゃ。遅刻の無いようにな。明日の入園式ではあっと驚かせてやるぞ!しかし、この聖獣は非常に賢いな。今後の連絡は彼を介して取りあおうと思う。PSヒヨコって名前のセンスはありえんな】


(うるせぇ!勝手に人の聖獣をパシリにしやがって……)


ヒヨコに魔力をいくらか流すと、ヒヨコは飛び立って行った。


「うわぁ…すごいねかっこいい!!」


「かっこいいだけじゃなくめちゃめちゃ強いぞ。何年か前、熊の魔獣を風の魔法で真っ二つにしたからな」


「うわぁーお、なにそれワシじゃない…」


「とりあえず帰ろうぜ、講義の申請を寮監に出さないといけないしな!」


「そうだね行こう!」




明日からは楽しい学園生活だ!

主人公がルームメイトと絡んでるところが書いてて楽しい。

勝手に喋ってくれて助かる。

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