学園入園、初めての友達!
修正加筆済み 2018/01/08
空の月11日、誕生日を目前にした俺は着の身着のまま60万エギラムを持って学園の門に並んでいた。
周囲の同級生と思われる子は皆親に連れられ列に並んでいる。
いくつもある受け付けで列は消化されていき、親との涙の別れを経て生徒は門に吸い込まれていく。
やっと俺の番が来た。
受験票と学費をここで出し1、2年分の持ち込み金として20万エギラムを支払う。
「受験番号551番リョウ君ね、えーっと教養に生活魔法の授業免除ね。持ち込み金は1、2年次それぞれ限界の10万エギラム…っと。じゃぁこの受験票を持ってあちらの集団でお待ちください」
受け付けが終わると門をくぐり集団に合流する。50人ほど集まると講師に引率され近くの建物に入る。
ここで身体測定と身体検査を済ませ、学生番号をもらうと学園のルール説明が始まった。
1、教養、歴史、生活魔法の授業は必須で免除者以外は全員参加。遅刻や欠席、素行不良による不合格判定が出た時点で留年確定。
何を差し置いてもこの3つの授業は大事にするように、と何度も言われた。
2、1、2年次は専門授業は最低でも3つ合格が出ないと進級できない為注意すること
3、お金のトラブルにおいては学園は一切関知しない。貸し借り、自己管理は各自でしっかりすること
4、暴力行為は一切禁止。講師立会いの下の決闘は申請制であり、無許可の決闘、暴力行為は無期限の停学処分
5、生徒はみな平等であり、この学園内では貴族平民での差別は一切禁止とする
6、恋愛は自由だが不純異性交遊になったら場合によっては停学、退学もある
7、本学園は向上心があるもの、努力をするものを応援する。邪魔するものは馬に蹴られて死んでしまえ
長々とした説明であったが要約するとこんな感じだった。
「これから各自くじ引きを引く。そこには寮の番号と部屋の番号が書いてある。地図を見て各自夕飯までにたどり着くこと。以上、解散!」
50人程度のグループはくじを引き、ぞろぞろと出口に向かう。
なお今年の新入生は約1000人。2年生もほぼ同数の生徒がおり、高等教育生は1~3年で800人程度。生徒だけで3000人弱の馬鹿でかい学園である。
地図から目算すると約東京ドーム10個分
……いつも思うのだが東京ドーム○○個分とか言われてもさっぱりわからないのだ。
ふざけた電卓には東京ドームという単位があったが舐めてるとしか思えない。
わかりやすく言うと日本国民なら一度は行ったことがあるような無いような日本で一番有名な某ネズミのテーマパーク1個分と考えるとわかりやすいかもしれない。あんまり変な事を言うと深夜に訪問者が来るらしいのでここらで
もちろんくじ引きは男女別である。
残り物には福があるというジンクスの元最後の方に残りくじを引くと……
以外にもたくさんくじは残っていた。
(この後にもまだ来るんだよなそういえば…)
引いたくじをひらいてみると
【第0番寮 第3号棟 103号室】
と書かれていた。
この学園は西側に女子寮、東側に男子寮があるが、唯一例外として0番寮がある。
この第0番寮は学園の北に位置し、なんとこの国で3つか存在しないダンジョンの一つであり学園の生徒の修練場所にもなっている場所のすぐ近くに設置されている。
もともと停学処分中の生徒の謹慎場所で、ダンジョンから湧き出る魔物の討伐という雑務も罰として行っていたのだが、入園生徒が徐々に増え第1~3寮では足りなくなったため、急遽3年前から第0番寮として稼働を始めたいわくつきの寮らしい。
魔物の討伐は生徒の任意で、常に講師が見張りにいるが、討伐した魔物の数によって学園から報奨金がでるし、ドロップ物は討伐した者の所有物になる。
お金がない生徒が稼ぎに行き、年間数人だが死者も出ているというあまり好んで住みたい寮ではないのだ。
しかし他の寮と違い建物は新しく、他が6人部屋当たり前なのに対してこちらは3人部屋である。それなりに長く暮らす寮なので広いのは嬉しいが、深夜に魔物のうなり声がするのは勘弁である……。
女子は西、男子は東に向かう中、とぼとぼと学園の中央の道を進む……
心なしか周りからの目が憐れみに満ちている……気がする。
学園は西に女子寮、東に男子寮、北にダンジョンと第0寮中央に学園の建物。
南に運動場や闘技場である。
講師は非常勤は通勤で、常勤は全員学園内で生活している。各寮に複数の講師、それ以外は学園と第0寮の間にある講師用の寮で寝泊まりしている。
第0寮以外の寮には畑や果樹園があり、そこの管理も生徒の仕事である。
ダンジョンのすぐ横だがそんな雑務がないことを考えると意外とラッキーなのかもしれない。……まぁそんなわけはなかったのだが。
学園の建物を横から眺めながら北へ北へと歩いていく。
この世界の建築技術は知らないが、それなりにでかい建物だ。
普通に城以上の高さはある。空を見上げると城の上空にヒヨコが飛んでる。
文字だけ読むと頭がおかしくなった子に見えるからあ〜ら不思議。
あの距離から俺がわかるのだろうか、上空で長い事くーるくーると旋回すると森の方へ飛んで行った。
「おぉぉぉい待ってよーそこの君~」
「ん?」
振り返ると茶髪のマッシュルームカットの少年が走ってくる。
「はぁはぁ…やっと見つけた。ここに来るまで僕一人だったんだ。君も0番寮……だよ…ね?」
「あぁ……幸か不幸か素敵な第0番寮のくじを引いてしまったさ、同志よ」
「あはは。僕と一緒だね。…あっ自己紹介が遅れたね。僕はジン。苗字はないんだ。ただのジンさよろしく!」
「こちらこそよろしく。俺はリョウ。俺も苗字がないただのリョウさ」
「そっか~リョウ君も平民かぁ~、なんか怖い顔して歩いてるから貴族様だったらどうしようかと思っちゃったよ」
「同い年だしリョウでいいよ。俺もジンって呼んでいいか?」
「いいよ!リョウが学園で初めての友達だ!」
「俺も学園に知り合いとか友達がいなかったから友達第一号だ!いや第0号……か」
「なるほど……第0号だね!そういえば僕は幼馴染が一緒に入園してるんだ。今度紹介するよ!」
「楽しみにしてるよ。俺も今度相棒を紹介するよ!」
「相棒?」
「あぁ、ヒヨコって名前の相棒がいるんだ」
「へぇ…そういえば、リョウの部屋は何号室?」
「えーっと第3号棟の103号室だな」
「うわ~、僕と一緒だ!!初めての友達がルームメイトだ!」
「すごい偶然だな……って言うか第0寮って人数少ないからかもしれないな」
「そうだね~高等教育から第0寮に移る人は多くても、基礎教育で第0寮になる人は少ないみたいだからね~」
「まぁ運がいいのか悪いのか……」
「僕は嬉しいよ。畑仕事とかの仕事がなくて、先輩たちと一緒に魔物を狩って報奨金が入るんだもん。うちさ……結構貧乏でさ…学費だけで精一杯なんだ。僕がここでたくさん稼げば、来年妹も入園できるかもしれないし!」
「そっか……俺も魔物とか狩ってみたいし、一緒に頑張ろうぜ!」
「うん!」
久々の同世代との会話を楽しんでいると、あっという間に第0寮に着いた。
0、1,1,1,2,2,2,3,3,3をランダム関数で選び寮に配属の予定でした。0以外を引いた場合第0寮の存在は消える予定でしたが。運命は0を選んだ。0を見た瞬間思わず固まりました。




