クビになりました!
修正加筆済み 2018/01/08
緊急報告なので夜明け間だが見張りに伝えて、ギャリンの寝室をノックする。
「誰だい?こんな時間に」
「リョウです。ガラル達に動きがありました」
「ちょっと待ちな」
5分ほどすると内側から鍵が外され、ローブを羽織ったギャリンに部屋に招き入れられる。
「それでどんな感じだい?」
「洞窟にガーリーが来て襲撃の場所と日時を伝えていきました。
場所は香辛料屋えらむ、明後日の夜中2時と言っていましたが、日付が変わる前なのでおそらく今日の日付変更後2時のようです。」
「もう24時間ないって事か……その後のガーリーは?」
財布と指輪と身分証を投げて渡し目を伏せた。
「リョウ!お前……」
「殺す前に確認はとりました。すでに街の中にいる仲間には伝えてあって自分は不参加の予定だったそうです」
「結果的にはよかったが、一歩間違えれば街に潜んでいる盗賊をみすみす逃がすところだったぞ!!」
「……ごめんなさい」
なぜか皆殺しという単語が頭をよぎり、刺さる鼻の奥を理性で押さえ込む。
「……過ぎたことはもういい。他に何か情報は?」
「襲われたグループは皆殺しに遭ったそうです。証拠を残さないために全員殺したと……」
「……リョウはもう休みな。これからすぐにガラルの拠点に向かわないとあいつらと入れ違いになる。奴らは絶対に逃がすわけにはいかないから討伐班を組んで確実に仕留める。」
「っ!俺も行きます。行かせてください大丈夫です!」
「行けるかどうかは聞いてないよ!結果として問題はなかったが約束を破ったんだ。相応のペナルティは覚悟してもらう」
「でも殺したのはあいつらだ!!」
「リョウはもうガーリーを殺しただろう?……ガラルを殺したいのがおまえだけなんて思うな。同じスラムの子供を殺され、あたしらもはらわたが煮えくり返ってる」
ひさびさにギャリンの獰猛な笑みを見た。
「安心しな、生きて衛兵につきだす真似なんかしない。生まれたことを後悔するほどの地獄を見せてから殺してやる」
目に光る炎は地獄ですら燃やす尽くしそうだ。
その後、俺は団員2名の監視の元、半軟禁状態で翌日の朝まで過ごした。
その後ギャリンが香辛料屋に密告し、そのまま護衛を買って出る。
侵入してきた所を全員捕らえた。抵抗激しくやむなくその場で殺したり、逆にギャリン盗賊団からも死傷者が出たが、逃がした奴はいないようだった。
ガラル達は街に向かおうと洞窟を出たところを捕まり、ここに書けない目に遭い、死んだと聞いた。
ガラルの盗賊団はやはり3年前からガーリーが指揮をし、さまざまな指示を与えていたようだ。山の月はカンナムで強盗をし、他の月は街道で商人を襲ったりしていたらしい。
襲った商人をガーリーを含めた何人かで助け、恩を売りその店で働き、情報を得ていた事もわかった。
さらに3年前に女の子グループを襲った際は、半分近くを攫い奴隷商に売ろうとしていたが、若い女に夢中のガラルに嫉妬したガラルの女が夜中に皆殺しにしたらしい。どう転んでも救われない話だ。
ガラルの女は当然の事、他の2名と雑用係だったらしき女も全員埋められたそうだ。
捕らえられた賊は香辛料屋の手によって衛兵に突き出され、ギャリンは少なくない報酬をもらったらしい。
その後獄中で何者かと揉め、その賊の一味は全員死んだらしい。
-----------------------------
数日たってもう20日ほどで山の月が終わろうとしているある日、ギャリンに呼び出された。
コンコン
「リョウです。入ります」
返事も聞かずに部屋に入ると、ギャリンの向かい側に座る。
「リョウの納得いく形ではなかったかもしれないが、復讐は終わったかぃ?」
「………」
「これからどうするんだい?」
「どうするも何も……何もないです」
「約束は覚えてるか?」
「…はい」
別に奴隷になれとか、一生この盗賊団にいろとか言われてもどうでもよかった。
「これは今回のリョウの働きの報酬だ」
軽くはない袋を渡された。
「別に……いいです。使うあてもないですから」
「必要になるから持っておきな。それとあたしからの願い事だ。ゴレアンの所に顔をだせ、行けばわかる」
「……?冒険宿のゴレアンさんですか?」
「あぁそうだよ。なんの因果か知らないがお前をこっちに寄越せと言ってきた。街の顔役だし借りも結構ある……願い事一つでしばらくリョウを振り回して遊べると思ったんだがね……」
「ならどうして報酬を?」
「仕事をした奴には報酬を出す。これはうちのルールだ。うちから追い出すにしたってそれは変わらない」
「追い出す?」
「そーさ。リョウお前は破門だよ。約束は破るし団員の財布はスルし。どこへでも好きなところに行きな。じゃぁね」
そういって俺を掴むと部屋から投げ出す。
「おい!誰か!部外者が入ってきてるぞ!つまみだぜ」
今日まで仲間だった団員に担がれると、そのまま外に放り出された。
「2度と帰ってくるんじゃないよ!」
2階の窓からそう叫ぶギャリンの声は気のせいか鼻声だった。
「短い間ですが、お世話になりました!」
そう叫び頭を下げると、ゴレアンの宿屋に向けて走り出す。
残酷な世界だが、たまにはこんな優しい?人もいるのだ。