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初めての○○!

修正加筆済み 2018/01/08

山の月の上旬のある日、狩りに出ようとした所をギャリンに呼び出され、ギャリンの部屋に行く。



「狩猟班がゴメスの拠点を見つけた」


大雑把な森の地図を指さし、ギャリンはそう言った。

逸る気持ちを抑えギャリンの話を聞く。


「リョウはばれないようにこの拠点の監視をしろ。今年の狙いがわかったらすぐに報告しろ。おそらく奴らの団員のほとんどが山の月の出稼ぎとして街に散らばっている。今拠点を襲っても何も変わらない。ゴメスを含めて拠点にいるのは街に近づけないほど顔の通った盗賊だろう。衛兵に密告もありだが、奴らは森に慣れていない。たどり着くまでに気取られて逃げられるだろう。捕まえて衛兵に放り投げてもいいがスラムのあたしらに報奨金は出ないし、リョウの復讐は果たされないだろう?」


無言でうなずく


「奴らが森に拠点を置いている以上この山の月で必ず動く。日時と場所を調べ、動き出したところを一網打尽にする。この街で押し入り強盗なんてこっちが迷惑なんだよ。日時がわかったらそれはこっちで解決する。拠点にいる奴らはリョウの好きにしな」


「………わかりました」


「リョウがヘマして見つかったり、先走って襲撃したりするとこっちに迷惑がかかる。相手は少人数とはいえ元このスラムの盗賊団だ。森には慣れてる。監視の人数が増えるほどにバレるリスクは高くなる。うちの盗賊団には悔しいがリョウ以上の斥候役はいない。復讐を確実に果たしたければあたしのいう事は守れ。いいな?その場の勢いで飛び出すことはやめろ。万が一ばれる事があったら何を差し置いてもまず逃げろ。いいな?」


「……はい」


「頭は冷静に、心は熱く……だ。動きがあったらすぐに戻って連絡しろ」


「わかりました」


地図の位置は山と森ちょうど中間の洞窟。

冬眠する熊がよくいる洞窟だが、そこを拠点にしているようだ。


逸る気持ちを抑え、周囲索敵と潜伏を使いながら目的地に向かう。



-----------------------------


目的地に着き、確実に見つからない距離から毎日観察を続ける。

洞窟の外には馬が3頭、洞窟には大柄な筋骨隆々な男とひょろくボーっとした男、小柄で周囲をやたらと気にする男がいた。それ以外に女が2人いて片方は明らかに豪華なものを身に付けていた。おそらくガラルの女だろう。もう一人は数日に一度水場に洗濯に行ったりしてる雑用係のようだ。

ガーリーはいなかった。


新しいメンバーが来ると周囲索敵しながら潜伏を使い、洞窟のそばまで近寄って聞き耳をたてるが、たいてい食糧を置いて帰るだけだった。時計もなく時間の感覚がわからないので、あまり時間をおかずに短い睡眠をとり意地と執念だけで監視を続けた。



食糧を持ってくる人間は昼間に来ることが多く、夜には誰もこなかった。

街から半日の距離とはいえ夜の森を歩くのは危険が伴う。



その日、俺は夜中に暗視を使い食糧確保の為狩りに出ていた。

夜に人が来ることもなく、街からの情報がなければこの拠点のメンバーは動かないと思ったからだ。

その狩りの途中、偶然見知った顔を見つけた。


ガーリーだ。



進行方向はあの洞窟の方角である。


潜伏を使いながら慎重に後を追う。

こんな夜中に森に入ってくるのだ、ガーリーはそれなりに自信があるのだろう。



ガーリーは勝手知ったる我が家のように洞窟に入って行った。


(荷物は持っていなかった。間違いなく重要な話がある……)


細心の注意を払い洞窟の陰で耳を澄ます。たいして深くない洞窟なので入口の横にいれば話は聞こえる。



「おい。起きろガラル。今年の獲物が決まった。明後日の夜中2時、香辛料屋のえらむだ」


「う、う~ん……Zzz」


「……置手紙も置いてくから、終わったらここ集合で山分けだ」


「あ、あぁわかったから寝かせてくれ……Zzz」


「いい身分だな…まぁいい」


ガーリーが出口に向かってきた。

足音を立てないように慎重に後を付ける。

このままギャリンの所に報告に行くのが一番だが、どうも引っかかる。話し合いにもならずガーリーが一方的に伝えるだけだった事が…

洞窟に頭目はいないのか?いや、ギャリンはガラルの拠点を見つけたと言っていた。間違いなくあの3人の誰かがガラルだろう。


それに対して一方的に指示をして帰るこのガーリー。やはりただの盗賊じゃない。そもそもこいつをここで見逃してギャリンに報告に行っても、こいつが香辛料屋の襲撃に加わるとは限らないのだ。加わったとしても、もう俺の手の届かない奴隷なり死罪だ。こいつに復讐するなら今しかない……



-----------------------------



ギャリンとの約束が頭をよぎったが、覚悟を決めると麻痺ナイフを取り出し、背中に向けて投げた。





「ッ!!!」


一言も発さずガーリーはうつぶせに倒れた。

駆け寄ると仰向けになるようにひっくり返し、首元にナイフをあてる。


「いいか?許可なくしゃべるな、騒ぐな、指一本でも動かしたら喉を斬る」


目を見たまま膝で腕を抑えマウントポディションをとると、右手でナイフを突きつけたまま解麻痺ポーションを飲ませる。



「っ!お前はリョウ!?なんでこ…」


「許可なくしゃべるなと言ったはずだ!質問に答えろ。全部答えれば生きて帰してやる。1つ、俺の代金50万エギラムをキャリーの元に届けたのは前だな?」


「…そ、そうだゴメスに言われて」


「2つ、その情報をガラルという盗賊に売ったな?」


「お、俺は知らない、そんな名前の奴も、盗賊…」


麻痺ナイフで切りつけると顔面を3発ぶんなぐる。

解麻痺ポーションを使い。もう一度聞く。


「さっきまでお前がどこで誰と会っていたのかを知っている、次に嘘をついた場合は生きては帰れない。言え、ガラルにあのグループの事を売ったな?」


「売った!売った。分け前で半分もらう約束だった。だけど!皆殺しにするなんて聞いてなかったんだ。ほんとだ嘘じゃない!」


「……なんだと?今なんて…」


「俺はあの日まだ夢庵楼にいた。それはお前も知っているだろう?俺は情報を売っただけだ。同じスラムだ、脅し取る事はあっても殺すとは思わなかったんだ!」


「皆殺しって……全員殺したのか!!」


「奴隷商に売って足がついてもまずいし、スラムの人間を襲った事がばれたらスラムにもいられない。だから全員殺したと……ガラルは言っていた。そこまで馬鹿だとその時は知らなかったんだ!!」


「………明後日、香辛料屋を襲うらしいな?止められないのか?」


「もうダメだ……街にいる仲間全員伝えてしまった。俺は襲撃には参加しないから明後日までに全員連絡をするのがまず難しい…」


「わかったよ……ご苦労様」


そのまま麻痺ナイフで斬りつけると左手で毒ナイフを抜き斬りつける。

念のためにガーリーを視てみる。


【ガーリー 37歳 状態異常(麻痺、毒)】


これでこのままでも10分程度で死ぬだろう。

初めての殺人にしてはあっさりしすぎている。躊躇う事もなかった。

手荷物から身分証、銀行の指輪、財布などを抜くと土の生活魔法で穴を掘り、蹴飛ばして落とす。死んだガーリーを魔法で燃やすとそのまま埋めてギャリンの所へ報告に行った。







潜伏を使うのも忘れ、静かに泣きながら帰った。















夜明け前に根城に着くころには頬の涙は乾いていた。

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