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一次試験面接!

修正加筆済み 2018/01/08


ギャリンはゆっくりと窓に近寄ると窓辺に腰かけた。



「ご褒美だぼうや。いいことを教えてあげよう」


窓辺に座られては窓からの脱出は不可能だ。

ドアから逃げても、鍵を開けるタイムロスで味方を呼ばれたら終わりだろう。

逃げる機会をうかがいながら話を聞く。


「まず3年前の事件。あれはあたし達じゃない。そして確証はないが犯人の心当たりもある」


「誰が!誰が犯人だ!」


「口のきき方に気をつけな。アンタは今自分の思い込みであたし達を犯人だと思い込みここまで来たわけだ。こっちからしてみればいい迷惑だよ。」


「……すみません」


「まぁ今まであたし達がやってきた事がやってきた事だがね……それにしても同じスラムのガキにナイフを突きつけられるとは思わなかった。これでもスラムのガキ達は可愛がってたつもりなんだが」


「俺はこの3年間娼館で働いていた。だから最近のスラムは知らない……」


「ふーん……なるほどね色々話の裏が見えてきたようだ。いいかい坊や。この街では3年前から妙な事件が続いているんだ」


「妙な事件?」


「銀行ってのはあくどい所でねぇ空の月になると手数料が引かれる。それを見越して山の月には引き出しの際に手数料が引かれる」


「………知ってます」


「賢いねぼーや。じゃぁ問題だ。金を持ってる商人は手数料が払いたくなかったらどうする?」


「銀行にお金を預けない」


「半分正解。商人のやつらは川の月に金を引き出し山の月は自分の蔵で護衛を雇い空の月になるとまた預金するんだよ。つまりそれがどう言う事かわかる?」


「山の月は店にたくさんのお金がある……」


「その通り。普段より警備は厳しいし、山の月限定で護衛も雇う。3年前からだ。そんな手数料目当てで財産を自己管理する商家が襲われるようになったのは」


「あんたらはそーゆー所を狙ってるわけだ」


「勘違いはいい加減にやめな。ここのスラムが根城な以上、同じ街で盗賊やってたら今頃あたし達は生きちゃいないよ。この国には盗賊団がいくつもある。山の月になると大きな町の周辺で商人を襲う盗賊が増えるんだ」


「心当たりってのはその山の月になると暴れ出す盗賊団って事?」


「話は最後まで聞きなよ。問題は3年前から襲われてる商家は全部銀行の手数料目当てで金を隠し持ってる連中だった。しかも元からどこに金があるかわかっているかのような手際だ」


「それって……」


「街サイドに内通者がいる+頭のいい盗賊団って事だ。ただ頭のいい盗賊団ってのはあまりふらふらしないものだ。どこかに拠点を置き、生かさず殺さず安定した収入を持つものだ。ここで一つの不思議な盗賊団がある」


「不思議な盗賊団?」


「3年前ある男が盗賊団に入った。たった1年でボスの右腕になり、その盗賊団は荒稼ぎしてるって話だ。この盗賊団は山の月になると決まってこの街の近くに拠点を作る。そして空の月になる前にまたどこかへ行く」


「別に不思議でもなんでもない気がするんですが」


「この街はあたしらの根城だ。盗賊だけじゃ食っていけない。狩りもして生活を支えている。もちろん他の盗賊団の拠点があるなら偵察だって行く。だけどな……不思議なんだ。この盗賊団は大きいはずなのに拠点には3~4人しかいない。しかしある日忽然と消え、街では商家が襲われる。」


「3~4人で押し入り強盗してるって事ですか?」


「いや違う。知り合いの商人の話では少なくとも30人以上の賊の痕跡があるようだ」


「それって……」


「多分ぼうやが考えている通りさ。この盗賊団は賢い。盗賊をしてるのが不自然なほどに。しかし、一つのピースがハマると非常に納得できる答えがある。」


「……この街に詳しい人間が盗賊団にいる」


「盗賊団の名前は知らない。頭目はガラル、あたしが殺した先代の部下だった男。ここのスラムの生まれだが頭は別によくない。街の地理には詳しくても情勢までは知らないはずだ……」


「その盗賊団にガーリーという名前の男はいないか?」


「っ!!!!ガーリーだって!?」


「知っているのか!!?」


「知ってるも何もこのスラムで一緒に育ったガキ仲間さ。へまをしたガラルに足を引っ張られて、逆に捕まって奴隷に落ちた男さ」


「そいつは3年前まで城壁内の夢庵楼という娼館で働いていた。襲われたグループのボスの店だ……俺が売られたのは50万エギル。その金があの日あの場所にあることを知っていたのは娼館のボスと俺と襲われたグループのリーダーと………ガーリーだけだ。襲われた空の月にガーリーは夢庵楼を辞めている」


「なるほどねぇ、話はつながる。3年前という時期もあう。ガラルも自分の代わりに捕まったガーリーに負い目があったのだろう。ガーリーは昔からずる賢い奴だった」


「犯人がわかればぶっ殺すだけだ」


「ぼうや一人で何をする気だい?こんなか弱い乙女にいいように組み敷かれちゃうのに」


「さっきとは違う。最初から殺す気で行けば……」


「あんまり簡単に殺すとか強い言葉を使うなよ……子供に見えるぞ。あぁすまない子供だったね」


「それでも俺は復讐を果たす。やれるかやれないかじゃない。"やる"んだ」


「ふぅん…面白い…その年で覚悟ができてて明確な目標もある。ナイフの腕も悪くなかったしね。妙な魔法も使えるし……うん。ぼうや、名前は?」


「………リョウ」


「よし、リョウ交渉だ。…1年。1年でリョウに復讐が可能なだけの技術を叩き込んでやる。代わりにうちの盗賊団に入れ」


「いやだ」

襲ったのがここの盗賊団じゃないにしても盗賊団は盗賊団だ。


「別に一生じゃない。とりあえずリョウの目的を果たすまでだ。それまではうちのルールに従って貰うだけだ。目的を果たした後は好きに知ればいい。ただし、あたしの願いを一つ叶えてもらう」


「だからいやだ」


「ここであたしが仲間を呼べば逃げ道はないよ?捕まって無理やり言わされるか、奴隷商に売られるかする前に素直な返事が聞きたいねぇ」


本日2度目の獰猛な笑み。やると言ったらほんとにやる。そう感じさせる迫力だった。


「仲間を呼ばれる前にアンタを殺して、その窓から逃げる」


「リョウには無理だね。うちに入るのが嫌なんじゃなくて、盗賊団に入るのが嫌なんだろ?そのリョウがあたしを殺して逃げるなんてそんな盗賊以下・・・・な事するわけないじゃないか。それに"やる"なら言わずにやってるさ」


「……条件は?」


「賢い子だ。本来うちの盗賊団は12歳からだ。得た金、獲物は全部盗賊団の物。分配はあたしが決める。スリでもかっぱらいでもなんでもいいから稼げ。それだけだ。」


「俺に教えてくれる技術って言うのは?」


「それは入団してからのお楽しみだ。明日団員に紹介させる。明日から数えて10日以内に団員の財布を誰のでもいいから持って来い。頼んで借りたり、金で買うのは禁止だ。あくまで盗ってこい。最低一つでも盗ってくるのが正式入団の最低条件だ」





本日三度目の獰猛な笑みである。慣れてきたが実に怖い。

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