切り札完成!
ダンジョンで狙っていた物は必要数以上に確保できた。500銀貨ほどの予算を使ったが、許容の範囲内だった。
ダンジョンで手に入れた物は、おそらくお金では買えない物だからだ。
ルア・バレンタインを倒す切り札+今まで対応できなかった対多人数戦闘における切り札。
学園長とダンジョンで手に入れたのは"融合魔宝石"である。
斥候役の俺と範囲殲滅役の学園長の2人で現在のダンジョンの地図を買い、最速で40階まで目指す。
40階には周囲探知や潜伏が使えない相手が存在することを知っているので、普段探知している物以外に何か探知できないか練習しながら動き回る。
ルアと違って視界に入れば探知はできるのだ。あいつはそれができなかった。おそらく潜伏以上の効果を持つ魔道具か何かだと思う。敵国に単身で乗り込んでるんだ。何かしらの対策は考えているはずだ。
40階の魔物は瘴気の濃さを意識すると、探知できるようになった。
トラウマレベルのサソリ軍団も、周囲探知で居場所がわかるようになった。
作戦は非常に簡単だった。
40階に降りる階段の前で学園長が範囲魔法の準備をする。
完了したら時間を決めて俺が先に40階に降りて魔物を集め、結界球を使い閉じこもる。
時間になったら学園長が降りてきて範囲魔法で殲滅。
結界球の中にいてもやばいと思うほどの威力で殲滅し、まれに融合魔宝石が手に入る。
予算は学園長の消費媒体の代金と結界球の代金で消えた。
しかしたったの(もう金銭感覚がおかしい)500銀貨で融合魔宝石を5個と普通の魔宝石を持てるだけ手に入れた。
ダンジョン突入から後発部隊の講師チームにも来てもらい、魔物の素材もすべて回収した。
残念ながらたまごは回収してから外まで出る時間もなく、最後の出る際には運悪く見つからなかった。
仮に持ち帰っても何が生まれるかわからないし、戦争までに戦力に計算するには不確定要素すぎる為今回はパスした。
融合魔宝石に関してはセキロムと馬鹿な親父のおかげで入手方法がわかったが、ファラクの件に関しては誰にも言ってないし、謎のままである。
学園長は俺が40階まで来たことがあるのを在園時の指輪で知ってるので、もしかしたら勘付いているかもしれないが、別に何も聞いてこない。
今回学園長には必要経費すべてこちら持ちで、報酬は融合魔宝石1個という条件で手伝ってもらった。。かなりのリーズナブルな身内価格と言える。
しかし40階以降での魔宝石はそれ1個で30銀貨はする。それぞれが学園長の杖と同じサイズかそれ以上のサイズの魔宝石だ。
逆に融合魔宝石は小さい。ダブルの融合魔宝石は小さな魔宝石が2つくっついている。トリプルは三角形に、クアドラプルは四角形。今回最大だったクインタプルは星型に魔宝石がくっついている。ダブルで2倍トリプルで4倍クアドラプルで8倍クインタプルなら16倍の魔力が保存できる。
ダンジョン踏破率80%以降の魔物からの魔宝石はそれ1個で通常の魔宝石の10倍の価値があり、保存できる魔力も約10倍である。
それの16倍のクインタプルは金で買えるものではなく間違いなく国宝級に認定される代物だ。むしろダブルですら10年は遊んで暮らせる。
この融合魔宝石を使って高位魔術用のプログラムではなく体外魔力だけでの発動を可能とした魔法陣のプログラムを組み込むつもりだ。
今回手に入れた融合魔宝石はダブル3つにトリプル1つにクインタプル1つである。
学園長がクインタプルが出てからチラチラとこっちを気にしてるのがわかるが、これだけは譲れない。
「学園長すみませんが……」
「わかっておる、今回はあきらめよう、ダブルで構わん。しかしこの戦争が終わったら儂用に一緒にまた来るのじゃ!!」
「わ、わかりました」
学園長なら俺以外の人を連れてきて作る事も可能だが、副音声で【融合魔宝石の精製に関しては他言せん】と言ってくれている様なので、感謝しながら約束をする。
ダブルの融合魔宝石の中で一番質のいい魔宝石を学園長に渡し、これから実験である。
その前に必要な物をバレスから買いに行く。剣奴隷の時にも使ったことがあるあのブレスレットだ。最高級の物を手に入れるなら知り合いに頼んだ方がいい。
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最高純度の精霊銀のブレスレットを手に入れた。
1個500銀貨というとんでもない金額だったがやむを得ない。
40階で手に入れた魔宝石15個と交換で手に入れた。安くなったのは知り合い価格だろうか?まぁ商会の経営者である以上15個を450銀貨ではなくもっと高く売れる算段があるのだろう。
ブレスレットには本来剣闘士用に先に魔法陣が刻まれている。
共通言語での発動が可能になるようにする魔法陣である。
威力がかなり落ちるのだが、それが剣闘にはうってつけなので使われているようだが、俺は古代言語で使うつもりなのでその魔法陣はいらない。
消費媒体からブレスレットに魔力を移すための方法も聞いた。
これで準備はできた。後は普通の魔宝石で何度か実験をして魔法陣を刻むだけだ。
魔法陣の組み方次第で、体外魔力だけで発動可能な魔法を組むことは可能だった。しかし問題点が2つあった。1つは一度の発動で魔宝石の中の魔力をすべて使い切ってしまう事。そして魔法陣を刻むまでの時間が短い事。
ブレスレットを使い鏡文字で書くのだが、時間をかけすぎると前の文字が消えてしまう。剣闘士のように共通言語でしかも単語だけの鏡文字と違い、文章+模様をよどみなくすらすらと書いて発動し刻み込まないといけない。
しかも一度魔法陣を刻み込んでしまうと上書きも消去もできない。一発勝負だ。
魔宝石はそれなりに値が張る物なので、あまり体外魔力の一発の為にこのような事をする人はいない。
むしろ本来の使い方はダンジョンに潜る際の体外魔力の保存タンクと、見栄え的な問題で持つ飾り的な位置が強い。
普通の高位魔術よりも安易に発動が可能な為、貴族の女性の身を守るお守りとしてもよく使われるが、戦争や実戦で使おうと考えているのはこの国ではおそらく俺だけだろう。
クインタプルには遠距離広範囲爆発型の魔法陣を組んだ。指輪に組み込み、指輪の向きと角度で方向を決める。距離とキーワードを古代言語で発言することで魔法が起動する。
普通の魔宝石でも(40階産なので全然普通じゃない)かなりの威力があり、正直怖いのでクインタプルではまだ未実験だ。本番一発勝負だが仕方ない。本番までに魔宝石に魔力を溜めないといけないという理由もあるからだ。
ダブル2つとトリプル1つには自分の前方に散弾のように爆発する魔弾をばらまく魔法陣を組み込んだ。各中隊長の切り札として持たせるつもりだ。一人だけ融合魔宝石ではないが2つ持たせることでカバーする。
一度だけなら敵の前線の崩壊や、退路の確保に使えるだろう。
間違って発動しないようにキーワードはある程度複雑にする。
1発限りだが、放置して魔宝石に魔力を溜めれば何度でも使えるので非常に便利だ。
残りの魔宝石は実験のせいで数がかなり減り、残り数個なのでとりあえず残しておくことにした。俺の高位魔術はすでに魔宝石をを使うのとほぼ同等の速度で発動できるので高位魔術には必要ないのである。
やっとまともな登場融合魔宝石!