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戦争の情勢!



空の月48日

忙しかった伯爵からやっと時間ができたと言われ、カロナムの屋敷に向かった。


潜伏を使って夜間飛行だ。

伯爵個人の私設軍の隊長としての立場があるので、あまりカロナムをふらふらしている所を目撃されるのはよくない。




-----------------------------



「ずいぶんと待たせてしまったようだね、それで相談というのは?」




エギラム内で起きた謎の事件からルア・バレンタインとの遭遇のあらましをすべてを説明した。



ルア・バレンタインの名前が出た時に、伯爵の顔が驚愕に変わった。

「相手がそう名乗ったのかい?容姿はどんな感じだった?」




「20代前半の白髪の男で非常に強かったです。あと空を飛びましたね……」




「……まぎれもなく本物だな、その男がこの戦争を"買った"と言ったのかい?」




「はい、相手を……知ってるのですか?」




「……4日ほど前、元エギラムとカナンの国境沿いにあったカナン側の砦がすべて奇襲によって奪われた」





「っ!!!」




「相手は飛竜騎士団をTOPとした飛竜王国の傭兵団。【エギラムの侵略戦争に関してカナン側に助力する。こちらに攻撃してくるならやむなく反撃もする】との通告が来た」




「元カナン国内の兵士達は!!?」




「どちらからも国境を超える事は不可能で、隣国をまたいで帰るにも軍なので通行不可だ……」




「カナン国内のエギラム兵が完全に囲まれたって事ですか?」




「……そう言う事だ」




「国の方針は?」




「飛竜王国に喧嘩を売る訳にはいかない。様子見だそうだ」




「見殺しにするんですか?」




「いや、実は特務部隊を送って飛竜の暗殺に即日出たが、今日の朝方1名の生き残りが【次は敵対行為とみなす】と言うメッセージを持ち、半死状態で帰還した。その生き残りの証言では300名近くの特務部隊はたった1人の男によって壊滅させられ、その男は飛竜第3騎士団副団長ルア・バレンタインと名乗ったらしい。まさか一日も経たぬうちに君からその名前を聞くとは思わなかったが……」





やはり飛竜騎士団か!!!



「国はこのまま兵を見殺しにするのですか?」





「国防の軸である国軍兵士はすべてカナンの中だ、現在飛竜騎士団と兵の返還を求めて交渉しているようだ」




馬鹿としか言いようがない。カナンを侵略して奪っているのだ。

すでに元国境である場所はエギラムにとっては自国内。そこを不法に占拠する他国があるなら潰すしかない。それができないならそもそも侵略戦争なんかしなければいい。



敵対してるカナンに助力する国は敵である。遠慮なく潰せばいい。相手が勝てない相手ならさっさと降伏して領土を返して兵を帰国させればいい。

それもできずに交渉だとかぐだぐだしてる間に挟み撃ちのエギラム国軍はカナンで散り、国防の弱まったエギラムを、怒りを溜めこんだカナンと飛竜騎士団が蹂躙する。



カナンは国が取り戻せる。そしておそらくエギラムの領土も奪える。

飛竜王国は莫大な傭兵費の請求と、謎の飛竜の雌について調べ、場合によっては消し去る事も出来る。


飛竜王国としては単独で侵略戦争をするより、どこかの戦争に乗っかってエギラムを潰す方が好都合なのはちょっと考えればわかる事だ。




「まさか、エギラムの主力を完全に潰すために、あえて首都まで攻めさせた……とか?」





「可能性は非常にあり得る。王族はかなりの初期から身を隠していたし、辺境での抵抗軍の多くはカナンの正規軍の精鋭で、カナン防衛の要として有名な指揮官や魔術師も多くが抵抗軍にいる。資金が尽きる気配もないようだし、そもそも占領した王室の金庫や宝物庫は空っぽだった」




あいつが本業に戻ると言ったのはこのことか。

いや、エギラム国内での猛者や不確定要素を潰したりしていたのも作戦の1つか?

俺を生かしたのは、戦争に影響のない遊び道具って事なのか?



怒りと悔しさがふつふつと湧く。




「俺の予想だとカナン国内の兵士は全滅、その後こちらに逆侵略が来ると思います」




「わたしも同じ考えだ、しかし国の上層部は逆侵攻が始まる前に、飛竜騎士団を金でこちらに引き込む算段でいる。実際に価格交渉までしているようだが……」




それを飛竜王国が受けるわけがない。相手にすればどっちがつぶれたって構わないわけで、唯一雇える目があるとしたらおそらくファラクの引き渡しだろう。だがそれは国の力では無理なのだ。

残された道は一刻も早く侵略戦争を止め、兵を生かして帰国させ国防を維持するか、飛竜騎士団上等で戦争するかの2択だ。問題を先送りにすると間違いなくこの国は滅ぶ。




「非常にまずいですね……」




「さらにまずいことに、カナン側に神武帝国が味方している。つまりエギラムの侵略に正当性がないと神武帝国が認めたことになる。神武帝国には珍しく小隊程度だが出兵もしてるらしい。それぞれが一騎当千と言われる死神の集団だ」




どう見てもエギラム滅亡の流れしか見えない!!

カナンの首都をやすやすと占領できた裏側が見えてきました。

飛竜騎士団と神武帝国の画策により、開戦前から主力や軍本部を辺境に移し、主力を包囲戦で確実に殲滅する手段をとってきましたね。

飛竜王国にしても神武帝国にしてもカナンは自国ではないがゆえにできた作戦ですね。その作戦で主力壊滅後、逆侵攻をするという作戦で両国の弱体化を図る2つの国はやはり曲者の匂いがします。

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