表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/112

好事魔が多すぎる異世界

修正加筆済み 2018/01/08

この冬、カンナムでは足をお湯で洗うブームが起きた。

街の至る所で様々な足湯屋が出ていた。

一回10~20分で10~50エギラム。


俺は15分100エギラムを貫き通し、それでも朝から行列ができ、午後も予約で半分が埋まっていた。


しかしトラブルにも何度も遭った。

まずは税金の問題。

エギラムでは人頭税と職業税だが人頭税は10歳以上15歳未満は年間2エギラム銀貨。15歳以上は年間5エギラム銀貨を支払わないと王国での自由人としての身分が保証されない。即奴隷落ちなどという事はないが軽犯罪などで捕まっても奴隷落ちだし、正業に就くのが難しい。固定の住居に住んでる場合は立ち退き、家の没収もあるので、放浪者やスラムの住人以外は支払っている。


農業は畑の大きさにより、商業、工業は国直轄のギルドに登録し許可証を毎年更新、冒険者は素材の買い取りや達成時に税が引かれている。


祭りの時の露店は税金免除である。しかし通常時の露店に関しては商業ギルドの許可証を買い、それが税金になるのだが、占いや芸、見世物小屋などは基本税金が定められていない。しかしあまりにも乱立し、回数券を売っていた事により商業ギルドから待ったがかかった。


税金は空の月に商業ギルドに4エギラム銀貨を支払う許可制になった。

許可証なしでの営業は即違法である。


今一日に20~30人程度のお客さんの相手をしているので、約16日分で一年の税金税金が支払える。

他の足湯屋は平均30エギラムで一日10人程度の集客なので、彼らに比べればかなり買いやすい許可証だが空の月以降はまだ未定なのである。


そしてもう一つの大きな問題はスラムの問題である。

営業中はほとんどないが、営業終了後や銀行、そして家に帰る途中にやたらと狙われる。そりゃ4歳児が一人でやっている店が一日に2000エギラム以上も稼げば狙われて当然である。範囲探知、潜伏、飛行を駆使しているが、いつ捕まってもおかしくないほどに追う人は日々増える。


そして5歳になる俺の引き取り先をさまざまなグループが希望している。

半ば脅してくるグループもあり、面倒な騒ぎになっている。

この冬で貯金は15万エギラムを超えた。借家なら壁内にも借りられる。



ちなみにスラムは壁外と言われる街の一番外の地域である。

そこから中心部に向かって平民などがすむ壁内、さらにそこから中心部に城壁内という裕福な平民や貴族が住む場所があり、そこからさらに中央が王宮である。


壁内までは誰でも入れるが深夜の見回りがきついので、スラムの人間が不法に住むことは難しい。城壁内は衛兵による身分の確認などが行われ、不許可侵入は一発逮捕である。


女の子グループのリーダーにも貯金をみんなで山分けしようと何度も迫られているが、”緊急時以外の助け合い以外は個人の収入は個人の物”がこのグループのルールである。


-----------------------------


とうとう空の月1日が明日に迫る日、俺は娼館のボスに呼び出され人生で初めて城壁内に入った。できるだけ身ぎれいな格好をし、娼館の従業員と共に城壁内の門をくぐった。


娼館のボスは恰幅のいいというかまさにデブの脂ぎったおっさんだった。




「君がリョウ君だね?この山の月で面白い商売を始めたそうじゃないか。ぜひ体験させてほしい」


ゴメスと名乗ったおっさんにいつもより丁寧に時間をかけて足湯のマッサージをする。タオルも普段使っている布よりも数段質のいいものだった。


ここで気に入られればママンと同じグループのまま生活ができるかもしれない。許可証を買ってゴメスに上納金が必要でも食べていける自信はあった。


「ふむ・・・これは噂道理だな。リョウ、お前金の計算はできるのか?」


「簡単な足し算や引き算はできます。」


「この足湯は一回100エギラムといったな80エギラムにして13人の客の相手をしたらいくらになる?」


「1040エギラムです」

テラ即答


「ほう・・・掛け算もできるのか。どこで習った?」


「お客さんと雑談しているときに商人の方に習いました。」


「低めに計算しても10万エギラム近く溜めこんでいるようだがどこに隠している?」


「銀行に預けています。指輪の場所は僕しか知りません。それに10万エギラムもないです。」


「ふむ…まぁそれはいいか無理にどうこうするよりも自分から差し出すだろうしな…。よしガーリー!こいつを買うぞ!言い値で構わん。払ってやれ」


「かしこまりました」


ここまで案内してくれた従業員はお辞儀すると部屋の外に行った。


「え・・・?買うってどういう事ですか?」


「キャリーからお前を買ってくれと言われたんだ。5歳の男を売りたいとは何事かと思ったが、これならいい買い物だな」


キャリーとは女の子グループのボスである。


「え?ちょっと待ってください。僕ここで働く気は」


「ここに来た時点ですでにお前の自由はない。生かすも殺すもすでに俺の手だ、自由民でないお前はこの城壁内から出る事も不可能だ。すでにガーリーが手をまわしている」


余りの急展開に思考がフリーズする


「何、問題はない。奴隷と違って仕事以外の時間は娼館から自由に出ても構わん。お前の購入費にちょっと色を付けた金額を完済すればすぐに自由だ」


「僕の購入費って・・・いくらで僕は売られたんですか!!?」


「50万エギラム。お前には100万エギラムで返してもらう。才能があるから15までには終わるんじゃないか?10年で自由だ悪くないだろ?」


ちょっとまてちょっとまてちょっとまて


「そんなの無理です帰して下さい!」


「馬鹿を言うな。あのグループに生まれた以上すべては俺のものだ。もともとお前に自由などないのだよ。あのままあそこにいてもスラムで襲われて死ぬか窃盗団に入って捕まって剣奴隷が関の山だ。むしろ金さえ払えば自由になれることを感謝してほしい。お前の預金に関しては手を出さないと約束しよう。好きなときに支払いに充てろ」


「城壁内から逃げ出したらどうなりますか?」


「お前がそういうなら何かしらの方法があるのだと思うが、もちろん重罪だ。死んだ方がましだという目に遭ってみたいなら好きにすればいい。ちなみにお前の家族が不慮の事故に遭っても俺は知らない。よく考える事だな」


つまりママンの命が惜しければ100万エギラム払って出て行けという事か…



「これでも俺は良心的な人間で通ってるんだ。給料はしっかり出すし、そのうち10パーセントは直接支払おう。残りは借金の返済だ。しばらくの間仕事は客への足湯サービス、丁稚達への足湯の教育、商品へのご機嫌取りも忘れるな。借金を増やそうとは思わないが脱走やひどいミスが出た場合、ペナルティとして借金が増える事もあるからな!仕事は9日働いて1日休み。客からのチップは半分店に入れろ隠したら許さん。何年で支払いが終わるか楽しみにしてる。仕事は明日からだ。今日は宴会だ楽しめ。おい!誰か!」


「はい、ただいま」


「こいつはリョウだ。今日からうちの従業員だ。部屋の場所とうちのルールを今日中に叩き込め、明日から仕事だ。仕事内容は本人に任せていい。リョウ、15時までは足湯を丁稚に教え込め。15時以降客が来たら入り口で客に足湯サービスだ。一人10分で終わらせろ」


「……がんばります」


「よし、ライター連れていけ、明日から新年だ稼ぐぞ」


「かしこまりました。リョウ案内するついてこい」


「…はい」








気分はドナドナ。ひたすら長い廊下を歩きながら突然の事に呆然としていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ