エピローグ
アイミーにも、ルーベルトにも、エリーにも、元の日常がやって来ました。
これからというもの、この日以来、端目には相変わらずに見えるものの、彼らの仲は、思いの他深まったのでした。
街を駆けていたおじさんはというと、よく交番で、見かけるようにはなったのですが、まるで表情は硬く、もうあの夜のように、笑顔を見せることはなかったのでした。
アイミーとルーベルトの間に、少し友情が芽生えたのもそうですが、アイミーとエリー、ルーベルトとチェノゥラの間柄が、友だち以上になりつつあるのも、また、あの夜がもたらしたことでした。
チェノゥラはと言いますと、あれ以来とても元気になりまして、あの数ヵ月後に、また学校に通い始められるようになったのでした。
ちなみに不良のような青年たちは、あの警官が苦手になって、とてもおとなしくなっていき、例の酒場に出入りすることもなくなったのでした。
あの後アイミーは確認しに行ったのですが、酒場の看板には、ただ“Cat and Fiddle”と、どこにでもあるような名前が、書かれているだけでした。
この街では、中々雪が降りません。
あの夜を歩いた子どもたちは、また雪が降って積もらないものかと、心待ちにしました。
そうすればまた、あの賑やかなスノウ・マンたちに出会えて、静かで明るい夜の街“Snow Wonderland”を、歩き回れたりするのです。
ですから子どもたちは、冬が来るたびに、雪が降り積もることを、願うのでした。
そして数年後、その日は来ました。
「雪だ、」
アイミーは相変わらず元気な男の子だったので、夕飯時に関わらず、雪が降るなりそう叫びました。
アイミーは待ちきれない様子で、みんなが寝静まるまで待ちます。
こうしている間にも、スノウ・マンは路地から生えるように現れて、あの日のように歩き回っていたり、“Sleigh Bells”の酒場で騒いだりしているのかもしれないのです。
やがて夜中になると、アイミーは棚から“S.W.”の金刺繍の入ったあの長靴を取り出しますと、玄関で履こうとします。
「あれ、」
しかし、長靴が入りません。
アイミーは気付きました。
アイミーは数年の間に、成長してしまい、もう長靴が入らなくなっていたのです。
アイミーはふと、自分が手にしている長靴を、小さく感じました。
雪が降った日の、この街の夜は、この長靴を履かないで、出歩くことができません。
そうしてふと外に耳を澄ましますと、アイミーよりももっと小さな子どもが、はしゃぎ回る声が聞こえたりするのです。
最後までお付き合いいただきありがとうございました*
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