:西の偽善者と感情論2
極めて偽善者さんは、変態ということを、分かっていただきたい。
「血肉だぁ!? ふざけんな! 登場して早々に殺されてたまっか!!」
「主人! 冒頭から生々しい話しないで下さい!!」
「煉影。とりあえずそこどけ! 死ぬ…! 色んな意味で……!!」
「どく前に殺してやらぁぁぁぁ!!!」
青年が飛びかかってくる。爪をギドの頭に降り下ろすその時、煉影は鎖鎌でその攻撃を止める。僅かに火花が確認できた。
「すごく苛々してますが、私の主人に手を出すやつは、容赦しません!!」
その細い両腕に力を込め、自分の倍以上の身体をもつ青年を、斬撃で弾き返す。青年は、器用に地面に着地し、四本足でブレーキをかける。
「……この力。同類かい、お嬢ちゃん」
「あんたみたいな、下劣そうな駄犬と一緒にしないで下さい!」「大口叩くと、痛い目見るぜぇ!!?」
青年は再び戦闘体制に入ると、煉影に飛び掛かる。その時、煉影はすっと立ち上がり、その場で構える。が、下にいたギドの言葉で、その集中力は冷める。
「……白………」
「んな………!?」
瞬時にギドの顎に、煉影のブーツの爪先がクリティカルヒットし、飛び掛かかってくる青年にぶつかり、ギドはその場で伸びた。
「変っっっ態!! 最っっっ低!! どこ見てんですか!! 私、主人の好きなロリじゃありませんよ!!」
「おい、待て! 何とんでもねぇ事言ってんだ!! 俺はロリコンじゃねぇよ! 俺は15歳以上の女の子限定の足フェチだ!!」
「主人! さり気なく、自分の中でシークレットであっただろう趣味を暴露してますけど!!?」
「だから、お前の美脚には正直惚れている!!」
「善処します、考えて出来れば、答えは『いいえ』でなく、『死ね』に持っていくよう頑張ります!!」
「人の思いを死ね呼ばわりかよ!! お兄ちゃん泣くぞ!!?」
「誰がお兄ちゃんじゃぁぁぁぁ!!!!!」
今度は煉影が飛び掛かってくる。鎖鎌の先端が、曇天の空の下、鈍い光る。ギドは顔を真っ青にし、下敷きになっている青年の上体を起こさせ、盾にする。
「おいお前…! なにやって…ぐわっ!!?」
青年の腹に、鎌の峰が入ると、煉影はその腹を蹴り、宙返りをすると、音もなく着地する。
「げほっ、ごほっ。なにをする貴様!」
「…なぁワン公。人生にはさ、たまたまとか、偶然はつきものだよなぁ。いつ起こるか解らないアクシデントに、あんなに腹立ててたら、切りねぇよなぁ?」
「…確かにそうだな。起こる前に、まずあんな丈が短いスカートをどうにかすべきじゃ…。スパッツ穿くとか……」
と、青年もなにやら乗り気である。
「生足も素敵だがな。ニーソでもいいと思うぞ?」
「いや、なら俺は、オーバーニーがいいな」
「ガーターストッキングも捨てがたい……」
「いや、ガーターに合う容姿ではないな煉影は。ガーターはロリか、妖艶な女性に似合う。あいつの属性は、クーデレだから、オーバーニーだな……」
「なに? 旅の者。お前そういう趣味か…?」
「お前こそガーターを出してくるとは、なかなかだな」
「ちょっと主人!! なに意気投合してんですか!!?」
煉影は鎌を下ろす。二人はと言うと、煉影の足を見つつ、背を向けて話し合っている。煉影のツッコミから三分。二人は立ち上がり、煉影の方を見た。
「よし、煉影! 決まったぞ! お前には黒のオーバーニーソックスがにあ…」
「待ってた三分返せぇぇぇぇぇ!!!」
鎌を振り上げ、それをギドに投げつける。ギドは、ニヤリと口の端を上げて笑うと、青年の背中を蹴り、鎖の餌食とする。瞬く間に青年は、腕と銅を締め上げられた。
「………!!?」
「ていうか主人! 貴方とことん最低ですね!!」
「当たり前だろ? 俺いい人じゃねぇもん。さて……」
ギドは、青年の前に立つ。
「ごめんなワン公。…俺こう見えてヘタレだからさぁ。君みたいな奴は、お肌に悪い。まぁ、それに似合わず、俺も物騒な護身用の武器持ってるんだが……」
「………!!?」
「おっと、怖い顔をしないでいただきたい。大丈夫。君をここで殺そうとは思ってない。安心しろ。俺は東に行った奴みたいに、嘘はつけないんだ。……あぁ、こっちの話だ。気にしないでほしい。とにかく、まずは話し合いでもしようじゃないかワン公。その後だったら、乱闘大歓迎だぜ? どうする? 鎖を解かれたくば、話し合いに応じろ。君の自由が返ってくる条件は、たったのそれだけだ……」
青年は、ギドの口達者振りに冷め、間をおいて、ゆっくりと首を縦に振る。それをみたギドは右手をあげ、煉影は鎖を解いた。膝を落とすと青年は、人間の姿に戻った。
「…話し合い……って。内容は……?」
「君の体質の話が主な内容だが、まずは親睦を深めるために、うちの従者の下着についてでも……ね?」