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:西の偽善者と光明戦線説

「まず聞いてくれ。俺は女の子は大好きだよ。ただ何故か近寄られると駄目なんだよ。所謂俺は女性恐怖症ってヤツなんだ。それでも下着の種類は網羅済みだし、近々慣れてきてはいるんだが、どうも首を縦に振れないんだ。俺が何したってんだよ! なんでこうなったんだよ! 何が招いた結果なんだ! 解ったよ神様、あんた俺が嫌いなんだろ!? こんな残酷な現実を突き付けてくんなら、いっそ殺してくれよ! 俺をこんなにして、何が楽しいってんだ!? 早く殺せよ! 頼むから殺せよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



−−−ガンッ!!



「言いてぇ事はそれだけか、あんコラ?」

「ち、ちょっとお嬢様!!」

とある北国の宿屋の一室で、ギド・ディス・エースは、腕組みをした二階堂宮路のウエスタンブーツの踵で、頭を踏み潰されていた。

「俺への苦情は以上と捉えていいんだよなぁ…? もうてめぇのキャラも設定も聞き飽きてんだよ。次は銃口向けるから覚悟しろよ、似非変態野郎」

「宮路はトランクスだろ?」

「お嬢様!! 全装備(オールスタンバイ)はお止めください!! 気持ちは解りますが!!」

「ざっけんのも大概にしろよ、のっやろぉぉぉぉぉ!!」

宮路は冥利の止めもあって銃を捨てると、ギドの胸ぐらを掴み、身体を軽々と乱暴に持ち上げる。

「確かに俺ぁ、性別なんてティッシュにくるんで捨てたようなモンだけどなぁ。そんな最深部まで手ぇ出しちゃねぇよ!!」

「でも宮路姐さん、レースの施されたブラじゃ無くてサラシなんでしょ?」

「経費削減だよ! つかなんで知ってんだよ、あの変態本家からの情報かあ゛ぁ!?」

「いや、これは俺の単独」

「尚更殴っていい理由が増えて何よりだぜぇ……!!!?」

首を絞め上げると、ギドの顔の血色が悪くなっていく。が、宮路は顔をしかめると、ギドを少し下ろす。

「つかお前、俺とかなり至近距離にいるけど、平気なのか…?」

「あぁ、平気だ」

「なんでだよ!! 少し傷付いたぞ!!」

「なんだろうな、親近感が……」

「知りたくねぇ事実!!」

「でしたら言葉遣いを正した方がいいのではないですか?」

冥利のその発言に、宮路は一旦落ち着く。すると、ギドの後頭部を従者である煉影が見事な平手打ちを食らわす。

「なにしやがるレン!」

「私にも喋らせて下さい!!」

「いや何の嫉妬!!?」

宮路がつっこむ。姉の言動に冥利はポカンと口を開けていた。

「つかこのネタ、解る奴には解っちまうぞ!!? 大丈夫なのか!?」

「私久しぶりの登場なんですよ!?」

「それは皆同じだよ!?」

「メタ発言でもいいから喋らせて下さい!!」

「うん、充分だからもうやめよ!!? ね!?」

半ばストッパー役の冥利が姉を沈めにかかる。

「いやぁ、なんでだろう全然平気だ。だが俺は抵抗できないどうする?」

宮路の脳内でプチッと音がしたかと思うと、宮路はギドの手を掴むと、自分の胸に運ぶ。突如ギドの手に、程よく柔らかい感覚が生まれた。反射的にその塊を掴み、更に宮路がその感覚を解らせようと、ギドの手を押し付ける。冥利と煉影は言葉を失う。

「…!? ………!!?」

「どうだ? 正真正銘、女の胸だぞ?」

「…G……?」

「正解だよこれは褒美だ受け取れぇ!!!」

右頬に拳が叩き込まれ、ギドはそのまま失神した。




大国に来て、早三日が経っている。ここにハンターがいるという情報部からの連絡から、大国内を捜索していたが、あまり収穫がないのが現実である。

逆に宮路が潜伏中だった強盗犯と窃盗犯を捕まえてしまい、すっかり大国の平和を守るポリスマンと顔馴染みになってしまう結果となってしまった。

「今日も収穫はなかったねミヤちゃん」

「あぁ、今日も馬鹿を殴って終わりになっちまったなぁ……」

尻目にギドを睨む宮路。ギドはヘアバンドを外し、冥利から治療を受けていた。

「いや、今日もって、今日初めて殴られたんだけど……いっつ! 冥利、荒治療は勘弁してくれ!!」

「いけません、動いては! …ってうわ!?」

ギドが動くと、包帯を巻いていた手元が狂い、ギドに倒れ込んだ。

「冥利! 主人は女性恐怖症だけど、そっち系ではないと思う!!」

「誤解です姉上! 事故です!」

「あれだろ? 少女漫画によくある『とんでもなく都合のいい事故(笑)兼彼女の初期最高スキル、その名もドジ』だろ?」

「合ってますけどやっぱり傷付きますね」

「そうかぁ。冥利君は今時の女子が喜ぶ、異常恋愛傾向に走り出してしまったのねぇ。お嬢様は少し引いたな」

「ですから違いますよ! って!?」

冥利の身体が、がくりと肘が曲がると、ギドの腕の中にすっぽりと収まる。

「お、抱き心地はいいな」

「ぎ、ギド様!!? 何をするのですか!!?」

「冥利ぃ……」

「はぁ…、ぅん……あ…。お、お止めくださ、ん……。ギド様……」

耳の裏を嗅がれる感覚に、背筋がぞくりと反応する。

「ミヤちゃん、これは売れるかもしれないよ…!?」

「おやおや、冥利君はそんな可愛らしい声が出るのか。幸い二人とも顔立ちが綺麗寄りでよかったな。…レン、カメラ」

「これで当分は食べる物に困らなくて済むね!!」

「お待ちください! 話をきい…!?」




「茶番はここまでだ。ボケ倒す奴は容赦なくぶち殺すからそのつもりでいろ」

「でしたらカメラのデータを消してくださいね?」

宮路はカメラを煉影に預けると話し始める。

「ここまで調べてるんだ、おそらく向こうは気付いてるはずに違いない。が、俺達はまだ何も掴めず終いだ。何か効率のいい探し方はねぇのか……?」

「ミヤちゃんは何かある?」

「恥ずかしながら何も思いつかねぇ。というか、もう虱潰しでよくね? にまで来ちまったからな…」

「じゃ、それでよくね?」

「よし、それで行くか!」

「先程までの下りは何処へ!?」

「今回は単独だ。おめぇもレンも、四方向に散って情報収集だ。…ただし!」

ガンッと机に踵を叩きつけると、机に皹が入る。

「奴等はそこを狙ってくると俺は読んでる。俺達が散ったそん時だ。多分合流する手立ても踏まれる。だからサシだ。…くれぐれも頼むぞ……」


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