:ハンター編 序章
いっちょまえに『編』なんて付けてますが、大したことはありません。
関西弁が出てくるだけです。
空は厚い雲に覆われ、雨が降っている。
石でできた冷たい部屋の窓の前に椅子に腰掛けるロアは、肘を付きながら、膝で眠るクロードの毛並みを撫で、外をぼんやりと眺めていた。
小雨の音が心地いいのか、目を細め、時々クロードを撫でることを忘れてしまう。吐く息が白くなるのを見つめていた。
「ロア…」
後ろを振り向くと、部屋のドアに寄りかかる一人の青年がいた。
白銀の髪に、黒いニット帽を被っている。装飾が激しいロアと同じ装束を着ていて、見た目は世間から一線外れた様な、所謂不良の様な青年だ。
「なんや、陰気な顔して。物思いに耽るなんて女々しいやないか」
癖のある口調。ロアは肘を解く。
「獅童……。違う、そんなんじゃないよ…。この間、宮路君に会ったから、挨拶してきたんだけど……。なんか、もうちょっと喋っとけばよかったなぁって」
「宮路? ……あぁ、あの野蛮な帝国軍の野郎かぁ。確かあの子て、女の子ちゃうの? なんやロア、今時流行りの『俺っ娘』が好みなんか…?」
「違う。そんなマニアックな趣味はない。というか……」
間を置く。
「この世で一番ゴミな存在を連れてる奴等に、誰が好むって言うの……?」
獅童は何処かロアから感じる威圧に、生唾を飲み込んだ。
「んな冗談マジにするなや。でもロア、お前クロード連れてる時点で、矛盾してるで? 言ってること」
「何言ってんの? クロードは妖玉を直にくらっただけだよ。身体は妖怪になったとしても、力を持つにしても、俺の飼い犬に変わりないんだから、使える物は使うまでだよ……」
「えげつないなぁロアは。なんや、気でも持ってないとすると、あんさん、またワシをコキ使う気かいな……」
「…そうだけど……?」
「堪忍してぇな………」
獅童は腕を組みながら肩を落とす。するとクロードが起きて、獅童の足元で鼻を鳴らしながらくるくると回り、尻尾を嬉しそうに左右に振る。
「代価に、クロードと遊ばせてくれるんか……?」
「…違う……。でもそうだなぁ……。報酬には俺の知り合いの町娘でも紹介しようか……?」
「ワシの性格で女好きなんて、ベタな思考はやめぇよロア。町娘どころか、女にワシは興味あらへんよぉ。報酬はロア一択や…」
ニヤリと笑いながら、クロードを抱え上げる。ロアは息を吐いた。
「同性愛も大概にしてよね……」
「えぇー…。ボケやったんにぃ。冗談やで……。ま、冗談通じないんロアやなきゃ意味ないねんけどなぁ……。まぁ、報酬は解ってると思うけど……?」
「…酷い奴……」
「なんや。誉めてるんか…?」
「違う。でも、弾ませてもらうよ。君の働き次第だけどね……」
椅子から立ち上がると、手元の拳銃を手に取り、ホルスターにしまう。
「始末しに行くよ……。存在否定、始めましょうか……」




