:西の偽善者と退化論3
西の空は曇っていた。
……なぁんて、続きがくると思った? 悪いね。期待を裏切らせてもらうよ。
あぁ、失礼。わかってると思うけど、僕は東神君でもなければ、ギド君でもないよ。じゃぁ誰だって? 誰だと思う? これまた失礼。じゃ、自己紹介をさせて戴くよ。
僕の名前は、安芸乃須木暁。東神君達と同じ、『Record』の記録師さ。仕事場は、南の地だね。従者の名前は、凩って言うんだ。これがまた、異国の将軍口調でお堅いんだ。主人の僕に逆らうなんて、従者の風上におけないどころか、論外だよね。。きっと反抗期なんだね。まったく、難しい年頃だねぇ。僕より年上だけど……さ……?
で、乱入してきたわけだけど。え? 従者の凩がツッコミを入れてくると思ったって? 悪いけど、今回は僕しか出てこないよ。ごめんね。
話を戻そう。そうだね…。たまには裏切ってもいいかな、っていう情にかられてね。まぁ、いいだろう。というか、理由はそれだけ。
しかし、東神君が羨ましいなぁ。男の子とはいえ、漸君みたいな可愛い従者をもって。あの鈍感ぶりと、錯夜君への忠誠と愛情はもはや罪だよ。九尾の狐モフモフ……。彼ね、僕の膝にも寝てくれるんだ。また一緒に寝てくれないかな。
でも、煉影ちゃんも捨てがたいね。彼女のツッコミはキレがあって、僕が一層ボケやすくなる。足は細くて綺麗だし。美人だし。下着の色は無難に白だし。……なんでもないよ。問題ない。でも、この間、水色だった様な気が……。おっと鼻血が……。大丈夫。問題ない。てかギド君さ、女性恐怖症のくせに、女の子が従者って、ストレス溜まらないのかね。そこが心配なんだけど……。
でも僕、錯夜君もギド君も美味しそうで。錯夜君とかあれ、可愛いでしょ、クーデレなところが。ギド君はツンデレだしさ。まったく。僕の同僚はある意味の全身凶器が多いったらないよ。見えない彼等の刃で、僕の身体はズタズタさ。
さぁてと。は…? 他に自己紹介ないのって、いつの話だい? 小説のあらすじ読んだのかい? 僕は秘密主義者だよ…? 僕の立場上、情報収集が楽しくてね。この間も、どっかのカッコいいお兄ちゃんに、従者の弱点教えたし。
『情報は話して、己は黙る』
僕の持論。生まれてこの方、本名はじめ、生年月日も、生まれも、育ちも、歳も、身長も、体重も、一切語った事はないね。
どうでもいいじゃないか。そんなん知ってどうするの? 人間、名前だけでも、立派な個人情報だ。落として放っておいた名札からも、辿れば全てバレる。名前は全ての情報の心臓部分。それだけ知ってればいいんだよ。
……おっと、長話が過ぎたようだね。僕はそろそろ行かないと、凩が五月蝿いからね。先に、おいとまさせて戴くよ。
ではまた、新章で会いましょう。




