妻という言葉
このお話は、私がとてもお世話になった先生から、
「草食男子の部下が結婚できるようにサポートしてやってほしい」
と依頼を受け、その部下を結婚まで導いたときの出来事をもとに書いたものです。
結婚までの道のりには、本当にいろいろなことがありました。
今思い出しても、私自身とても楽しく、そして不思議なくらい印象に残っている出来事ばかりです。
せっかくなら、この経験を文章として残してみよう。
そう思い、この物語を書いてみることにしました。
ほぼ実話ですので、これから結婚したいと思っている方や、婚活に悩んでいる方にとって、少しでも参考になれば嬉しく思います。
そして何より、この少し変わった婚活サポートの物語を、楽しんで読んでいただけたら幸いです。
Zurai(Iさん)
神様からの婚活指令(婚活のきっかけ編)
「(神部先生)草川、結婚する気はあるのか?」
その一言から、草川さんの人生は少しずつ動き始めました。
この物語は、京都にある会社の総務課長をしている間ことIさんが、超草食男子である草川さんの婚活をサポートして結婚に導いていくお話です。
草川さんの家は、車の販売をしていました。草川さんはそのお店の次男で、お父さんと二人暮らしでした。性格はおっとりしていて、スルースキルの高い40代です。草川さんのお父さんは、よく行く神社の神主である神部先生に、草川さんの結婚について頻繁に相談をしていました。神部先生はお店のお得意様で、神憑りという神聖な儀式ができるため、日頃からいろいろな人の相談にのっており、神部先生のことを草川さんのお父さんは、とても信頼していました。
Iさんの会社の坂東社長も、神部先生にお世話になっている一人で、頻繁に神部先生に会いに行っては、会社のことを相談していました。
Iさんの会社は毎年夏に全国各地でイベントを開催しており、坂東社長は、イベント前に神部先生にイベントの成功祈願をお願いしていました。
会社のイベントが無事に終わり、Iさんと草川さんは会社の代表として神部先生の神社に、お礼と報告を兼ねて、二人で行きました。
神社に到着し、神部先生に会ったIさんと草川さんは、
「(Iさん・草川さん)神部先生いつもありがとうございます。おかげさまでイベントはうまくいきました。」とお礼と報告をしました。
神部先生は独特の言い回しをされる方で「(神部先生)神も良かったと言っていたぞ」と二人に言いました。
「(Iさん)ありがとうございます。」(※Iさんの名字は「間」なので、Iさんは神部先生に「すき間」と呼ばれていました。)
Iさんは、会社内で立場に関係なく、たとえ自分よりも上の立場の相手でも、感じたことを進言していくように、日頃から神部先生に助言されていました。
それについて神部先生が、「(神部先生)すき間、今のままで大丈夫だから、自信を持って会社では、どんどん言いにくいことでも厳しいことでも言っていけ、そのままで大丈夫だ!」と言いました。
続けて、神部先生が草川さんに「(神部先生)ところで、草川、お母さんがたまにワシのところに来て心配してるぞ、家でお父さんとちゃんと会話してるのか?」と不思議なことを言いました。
草川さんのお母さんは、草川さんが学生時代に病気で亡くなっているので、普通に考えるとありえない事なのですが、神部先生の場合、そういったこともあるのかもしれないと、Iさんと草川さんは思いました。
神部先生の質問に対して草川さんは「(草川さん)あっ、えっ、あっ、はっ、はぁ」といった感じでオロオロしてしまい返事らしい返事ができず、それを見たIさんは、横で笑いをこらえていました。
神部先生が続けて「(神部先生)今は家にお父さんと二人だけなんだから、もっとお父さんと喋りなさい。それと、結婚する気はあるのか?」と草川さんに言いました。
実際に家でお父さんとあまり話をすることがなかった草川さんは焦りました。しかも唐突に「結婚する気はあるのか?」と聞かれた草川さんは「(草川さん)あっ、えっ、あっ、はっ、はぁ」とさらにオロオロしてしまい、それを横で見ていたIさんは笑いをこらえるのに必死でした。
草川さんが返事をする間もなく、神部先生が続けて「(神部先生)もうワシも歳だから、助けてやれるのもこれが最後かもしれない、来週までに返事を考えてきなさい。」
そう言われた草川さんはなんとか「(草川さん)あっ、えっ、あっ、はっ、はいぃ」と返事を絞り出しました。そんな草川さんを見かねたIさんが「(Iさん)神部先生、また、私が責任をもって連れてきて、答えさせます!」と神部先生に言いました。
「(神部先生)一週間しっかり考えなさい、じゃあ、すき間、草川のことよろしく頼むぞ。」そう神部先生に言われた、Iさんは「(Iさん)わかりました!」と返事をしました。
その横で草川さんは相変わらずオロオロして「(草川さん)あっ、えっ、あっ、はっ、はい」 となんとか返事をしていました。
Iさんと草川さんは「(Iさんと草川さん)神部先生、ありがとうございました。それでは、失礼いたします。」とお礼を言って神社を後にしました。
Iさんは、運転が苦手で、車があまり好きではないので、車好きな草川さんに運転をいつもお願いしていました。
神社から会社へと帰社する車の中での会話。(※これ以降も草川さんは、ほとんどオロオロしているので、その前提で読んでください。)
神社から会社へ帰社する車の中で、Iさんは草川さんと結婚について話をしました。
「(Iさん)ちなみに、草川さんは結婚する気はありますか? そもそも結婚したいですか?」と率直に尋ねました。
草川さんは、相変わらずオロオロしながら「(草川さん)あっ、えっ、あっ、で、でも僕なんかが結婚なんてできるのか・・・」と言いました。
そんな草川さんに対して、Iさんは「(Iさん)いや、できるかどうかじゃなくて、結婚したいかどうかを聞いているだけで、できるかどうかは、今はどうでもいいので、したいかどうかを答えてください。」と言うと、草川さんは「(草川さん)あっ、えっ、で、でも・・・」となかなか答えないので、Iさんが「(Iさん)でも、じゃなくて、結婚したいかどうかを聞いているだけで、できるかどうかは、今は考えなくていいし、答えは、結婚したい、もしくは、結婚したくない、その2択、それだけです。」
「(草川さん)はっ、はぁ」
「(Iさん)で、どっちですか? 来週には神部先生に返事をすることになりましたが、どうするんですか? もし結婚したくないなら、したくないって言えばいいだけです。」
「(草川さん)えっ、あっ、はぁ」
ハッキリと答えない草川さんに対してIさんは、「(Iさん)ただし、神部先生や、草川さんのお父さん、お母さん、会社の社長たち、みんな草川さんが結婚して幸せになってほしいと思っているはずです。それでも草川さんがどうしても結婚が嫌なら、嫌と言えばいいし、結婚のキッカケが周りの人達の期待に応える意味で結婚してみるのもいいと僕は思いますが、実際のところ、どう考えてるんですか?」
「(草川さん)えっ、まぁ・・・」
「(Iさん)自分に自信がなくて、したいとか以前の問題で、自分なんて結婚できるわけないと逃げているだけなら、心の本音は結婚してみたいと思ってる、ということだと思いますが、どうですか? どちらにしても、来週には神部先生に返事をしないといけないので真剣に考えてください。」
「(草川さん)えっ、あっ、はっ、はぁ」
「(Iさん)僕は、そんなに悩むことではないと思いますが、自分が結婚したいかしたくないか、基本的には、ただそれだけです。ただし、結婚したいと答えるのも、結婚したくないと答えるのも、それなりの覚悟は必要だと思っています。結婚したいなら、それなりにクリアしなければならないことも多いし、逆に結婚したくないと答えるなら、神部先生や草川さんのお父さんやお母さん、社長などの期待を裏切って自分の思いを貫くってことになるので、やはりそれなりの覚悟は必要だと思います。まぁ、どちらにしても、草川さん自身のことなので、決めるのは草川さん自身です。」
「(草川さん)はっ、はぁ・・・、で、でも、僕なんかが結婚なんて・・・」
「(Iさん)だから、できるか、できないかではなく、したいかしたくないかだって! 結婚できるならしてみたい、というなら、したいという答えになるし、そもそも結婚なんてしたくないなら、したくないと答えればいい、それだけです。」
「(草川さん)で、でも、僕なんかが結婚なんて・・・」
「(Iさん)だ・か・ら、できるかどうかじゃなくて、したいかどうかを聞いてるのであって、できるかどうかは、今はどうでもいいんです。このやり取りをいつまで続ける気ですか? 僕なんかが・・・、ってことは内心では、できるなら結婚したいってことじゃないんですか?」
「(草川さん)そ、そうなんですかね?」
「(Iさん)そうなんですかね?って、しらんがな(笑) 誰のこと話してんねん(笑) 客観的に聞いている感じだと、少なくとも結婚したくないと思っているとは思えませんけど、自分のことは自分で決めないと! 申し訳ないですが、そこまでは、僕は決めてあげられないです。でも、今の草川さんの話を聞く限り、僕は周りの人達の期待に応えて、とりあえず神部先生には結婚したいです、と言っておけばいいのでは、と思います。」
草川さんの反応に、Iさんは思わず関西弁で突っ込みました。
「(草川さん)は、はぁ・・・、わかりました。」
結局、草川さんは、答えを出せないまま、神部先生に返事をすると約束をした日がきてしまいました。草川さんとIさんは神部先生の神社に車で向かいました。神社に向かう車の中で、草川さんは相変わらず結婚に対してのイメージが持てないなど、Iさんに話をしていました。
「(草川さん)本当に僕なんかが結婚するなんて、イメージできないですけど・・・」
「(Iさん)イメージできるかどうかなんて、どうでもよくて、今の草川さんは結婚したいかどうかを問われているだけなので、まず、結婚したいです! と神部先生に返答したらいいだけです。」
Iさんの中では、草川さんは結婚するという答えになっていましたが、肝心の草川さんは相変わらずでした。
「(草川さん)は、はぁ・・・」
「(Iさん)草川さんが、結婚したいと意思表示さえしてくれれば、周りもサポートするし、あとは婚活を頑張る、それだけです。」
「(草川さん)は、はぃぃぃ」
「(Iさん)とにかく、ここまで来たら、ごちゃごちゃ考えずに神部先生に結婚したいです、って言うだけ、わかった?」
「(草川)えっ、あっ、は、はい」
Iさんは、草川さんと話をしているうちに、草川さんは自信がないだけで結婚したくない訳ではない。Iさんにはそう見えていたので、ハッキリ答えない草川さんに対して、「結婚したい」と神部先生に言うように話をしていました。
神社に到着すると、神部先生が迎えてくれました。
「(神部先生)おう、ようきたな」
「(Iさん・草川さん)いつもありがとうございます。」
「(神部先生)今日は、どうした?」
「(Iさん)草川さんの結婚についての返事をお伝えに来ました。」
「(神部先生)そうか、で、どうするんだ、草川。」
「(草川さん)えっ、あっ、け、結婚は、し、したいです。」
草川さんは、Iさんの後押しもあり、なんとか勇気を振り絞って結婚したいことを神部先生に伝えることができました。Iさんは黙って草川さんと神部先生のやり取りを見守っていました。
「(神部先生)そうか、わかった! じゃあ、助けてやる。草川のお父さんもお母さんも草川のことを気にかけているんだ、頑張れ! わしも歳だから、助けられるのはこれで最後かもしれない!」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はい」
神部先生は、Iさんに向かって言いました「(神部先生)すき間! 草川のこと助けてやってくれ。」
そう言われたIさんは「(Iさん)もちろんです! 絶対に結婚させます!」と断言しました。
「(神部先生)草川、すき間に助けてもらって、頑張れ! 結婚はさせてやる。すき間、仕事も大変だと思うが、大丈夫だ、思ったようにやりなさい!」
「(Iさん)はい、ありがとうございます。」
「(神部先生)草川、すき間の言うことをよく聞いて頑張りなさい。」
「(草川さん)あっ、あ、は、はい」
「(Iさん・草川さん)それでは、失礼します。ありがとうございました。」
Iさんと草川さんは、神部先生にお礼を言って神社を後にしました。
この日から、Iさんのサポートによる草川さんの婚活が本格的にスタートしました。
独身証明書が取れない男
草川さんの婚活について、Iさんは神部先生からだけではなく、Iさんの会社の社長からも改めて依頼され、会社公認の仕事になりました。
とはいえ、Iさんは草川さんの婚活を会社の業務が終了して社員が帰った後にすることにしました。
会社公認の仕事なので業務中にしてもよかったのですが、会社の周りの人に茶化されると、草川さんのやる気に関わると思ったIさんは、会社の人達には草川さんの婚活のことを秘密にすることにしました。そのため会社の中でも一部の人しか草川さんが婚活をしていることを知りませんでした。
一日の業務が終わり、社員が帰社した後に、Iさんは草川さんを部屋に呼んで婚活の作戦を立てました。
「(Iさん)草川さん、いよいよ婚活スタートですね。ここまで来たら腹をくくってやるだけですよ。」
「(草川さん)えっ、あっ、は、はぁ・・・」
「(Iさん)結婚するには、まず女性に出会わないといけないので、出会いの場をどうするかですね。ナンパとかで出逢えば早いですけど、まぁ、それは無理だと思うので、やはり婚活パーティーがいいと思っています。とりあえず、婚活のサイトを見て、婚活パーティーのことを調べてみることから始めましょう。それと、他の婚活している人たちが、どういうことをしているのか情報収集もしましょう。」と、Iさんは草川さんに情報収集するように指示しました。
草川さんは相変わらず「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぁ」とオロオロしていました。「(Iさん)何をしたらいいか、わからないかもしれませんが、情報収集くらいできますよね? 雑誌を見たり、ネットで調べたりすればいいんですよ。とりあえず、できることから始めましょう。次回の打ち合わせまでに情報収集しておいてください。それが次回までの宿題です。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はい」
Iさんは、草川さんに情報収集の宿題をだして初日は解散しました。
婚活2日目
「(Iさん)草川さん、婚活サイトは調べましたか?」 Iさんは草川さんに尋ねました。
「(草川さん)あっ、えっ、あ」と草川さんは相変わらずの返事でした。
草川さんは面倒なことを後回しにして、結局やらないということが多々あったので、Iさんは、「(Iさん)どうせ、まだ何もしてないんじゃないんですか?」と言うと、図星を突かれた草川さんは「(草川さん)あっ、えっ、あっ、あ」とオロオロするばかりでした。
Iさんにとって今回は草川さんを成長させることよりも、結婚して幸せになってもらうことが第一目的だったので「(Iさん)じゃあ、とりあえず、【Kネット】や【婚活応援センター】などの資料請求をしておいてください。その資料を見ながら一緒に対策を考えてみましょう。」と、Iさんは、あらかじめ調べておいたサイトの資料請求をするように指示しました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ」と相変わらず草川さんはオロオロするばかりでしたが、「(Iさん)それとここ、京都府がやっている仲人協会を調べてください。ここは行政のところだし、きっと費用もそんなに高くなくて、とりあえず登録するにはいいと思うので、調べて、良さそうなら登録しましょう。」と、Iさんは草川さんの反応は気にせずにすすめていきました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ」
「(Iさん)じゃあ、2日後にまた結果を聞くので、それまでに調べておいてくださいね。草川さんは期限をつけないとやれないと思うので」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ(汗)」
Iさんは次回の宿題を草川さんに出して、この日は解散となりました。
草川さんは、Iさんに言われた通りに資料請求をしました。
早速、Iさんは草川さんを部屋に呼んで尋ねました。
「(Iさん)婚活サイトの資料は届きましたか?」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ」
「(Iさん)ちょっと、資料を見せてください。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ、なんか何処も値段とか似たようなことが書いてあるだけで、あんまり参考にならないかもしれません。」と言って草川さんは、Iさんに資料を渡しました。
Iさんは草川さんから資料を受け取って資料を見てみました。
「(Iさん)……確かにそうみたいですね。じゃあ、とりあえず京都府の仲人協会の登録をしてみましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、ここは登録するのに面談があるみたいなんですが…(汗)」と草川さんは躊躇しましたが、Iさんは、草川さんの声に耳を貸さず「(Iさん)じゃあ、面談に行きましょう、早速面談の予約を、今してしまいましょう! 面談の日はいつにしますか?」と躊躇している草川さんを後押ししました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、で、でも…」と草川さんが登録をしようとしないので、Iさんは、「(Iさん)あっ、えっ、でも、じゃなくて、とりあえず軽い気持ちで登録だけしておけばいいじゃないですか。ところでどうやって登録するんですか? 今しましょう。」
Iさんの本心には、本人に任せて見守りたい気持ちもありましたが、それをすると、きっと前に進まないと思っていたので、草川さんの返事を待たずに進めていきました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、で、でも…」と言って、草川さんが登録しようとしないので、「(Iさん)いいから、いいから、はい、京都府の仲人協会のサイト開いて!」と言って、パソコンで京都府の仲人協会のサイトを調べさせました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はい」と躊躇しながらではありましたが、Iさんの圧に押されて、草川さんはサイトを開きました。
「(Iさん)じゃあ、登録をはじめましょう。」と草川さんを促しました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はい、なんか登録するのに独身証明書というのが必要みたいですが…」
「(Iさん)なるほど、じゃあ、まず独身証明書をとってきましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぁ、どうやってとったら…」
「(Iさん)証明書ってことは、住民票みたいに区役所とかでとれるんじゃないですか、どちらにしても調べればわかる事ですので、大丈夫ですよ。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぁ、で、でもなんか恥ずかしくないですか?」といって草川さんは戸惑っていました。
「(Iさん)何が? 恥ずかしい?? 恥ずかしいってどういうことですか? そんな中学生がエッチな本を買いに行くわけじゃあるまいし、恥ずかしいとかないでしょ、区役所の人は、独身証明書を取りに来た人のことなんて何も見てませんて、住民票をとるのと、何ら変わりありませんよ。」とIさんが言うと、今度は「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぁ、でも、いつ取りに行ったら?」と言うので、
「(Iさん)草川さんの婚活は仕事の一環でもあるので、僕が総務課長として、業務中に取りに行くことを許可します。いつも業務として郵便局や銀行に行ってると思うので、そのついでに区役所に行ってきたらいいだけじゃないですか、もしくはお昼休みとか少し使って行くとかしてください。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぁ」
「(Iさん)ちなみに、いつ取りに行きますか? とりあえず5日間あげますから、5日後までに取りに行ってください。」
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、は、はぃ・・・」
とIさんは期限をつけて草川さんに指示しました。草川さんは、何か行動を起こそうとすると、すぐに「でも…」と不安を口にしたので、Iさんは、そのたびに具体的な解決策を提示しながら、半ば強引に前にすすめていきました。
5日後
Iさんは草川さんを部屋に呼んで、「(Iさん)独身証明書は取りに行きましたか?」と確認しました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、ま、まだです。」
「(Iさん)まぁ、そうかなと少し思ってました。動けないなら、とりあえず締め切りを設けるために、京都府の仲人協会の登録申し込みを、あえてしてしまいましょう。サイトを見る限り、候補日を3つ出すみたいですね。とりあえず、今度の土曜の9時と11時、その次の土曜の9時の3つで申し込んでください。」と草川さんに言いました。
「(草川さん)あっ、えっ、あっ、で、でも(汗)」
草川さんが休日は、ほとんど予定をいれずに、特に何もしていないことを知っていたので、次のように言いました。
「(Iさん)でも、じゃなくて申し込みますよ。どうせ空いてるんでしょ。」
「(草川さん)あっ、えっ、ま、まぁ、空いてますけど…」
「(Iさん)じゃあ、いいじゃないですか、申し込みましょ。」
「(草川さん)えっ、あっ、は、はぁ」と、草川さんに申し込みをするように言いました。
「(Iさん)はい、じゃあ進めてください。」
「(草川さん)あっ、ほ、ほんとに申し込みますよ?」
「(Iさん)いいから、はやく申し込んで!」
「(草川さん)あっ、は、はい、も、申し込みました。」
「(Iさん)いいですね。じゃあ、今度こそ、独身証明書を取りに行かないとですね。」
Iさんは、これで草川さんも後に引けなくなったから、取りに行くだろうと思いました。
「(草川さん)あっ、えっ、は、はい」
「(Iさん)今日は、ここまでにしましょう。」
Iさんは、京都府の仲人協会の面談3日前に草川さんを部屋に呼びました。
「(Iさん)ところで、独身証明書は、取りに行きましたか?」
「(草川さん)あっ、えっ、ま、まだです。」
「(Iさん)えっ!? なぜ、取りに行ってないんですか?」
「(草川さん)あっ、えっ、い、いやぁ、独身証明書を取りに行くのが、恥ずかしくて・・・」と言って、まだ独身証明書を取りに行けていませんでした。
「(Iさん)いやいや、恥ずかしいとか意味わかんないし、それに、どうしても恥ずかしいというなら、郵送で取り寄せるとかでもいいと思うし、早くしないと、面談の日が来ますよ。」
「(草川さん)あっ、えっ、ゆ、郵送とかできるんですか?」
「(Iさん)確認はしてませんが、普通はできると思いますよ、気になるなら調べてみなさい。」と言って草川さんに独身証明書請求のことを調べさせました。
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃぃ」
独身証明書請求のサイトを検索して画面を見ながら・・・
「(Iさん)ほら、あるやないか!」と言って独身証明書を取得するように促しました。
「(草川さん)えっ、あっ、ほ、ほんとですね。」
「(Iさん)とにかく、今から急いで郵送の手続きをするか、取りに行くかしないと、面談の日が来てしまいますよ。」
「(草川さん)えっ、あっ、は、はい」
この日も、Iさんは草川さんに独身証明書を取ってくるよう指示して解散しました。
京都府仲人協会の面談前日にIさんは草川さんを部屋に呼んで聞きました。
「(Iさん)独身証明書は、用意できましたか?」
「(草川さん)あっ、えっ、ま、まだです(汗)」
「(「Iさん)なんで、取りに行ってないの?」
「(草川さん)あっ、えっ、い、いやぁ」
「(Iさん)いやぁ…、じゃなくて面談明日でしょ。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)今日の昼休みに取ってきてください、お昼のついでに区役所に行けばいいだけだし」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ」
「(Iさん)まぁ、最悪独身証明書が無くても、あとで渡したらいいだけだと思うけど、時間がもったいないから、お昼に取りに行ってください。少しくらい戻る時間が遅くなっても総務課長の僕が許可します。草川さんの婚活は半分仕事のようなものなので(笑)」
「(草川さん)えっ、あっ、は、はぁ」
「(Iさん)とにかく、もう明日が面談だから、郵送だと間に合わないので、今日の昼休みに取りに行ってください。区役所に行って、申請書を書いて、500円くらい払ってもらうだけでしょ。幼稚園児の初めてのおつかいじゃあるまいし、大丈夫でしょう。」
「(草川さん)えっ、あっ、は、はぃ」
「(Iさん)いよいよ明日が婚活の第一歩ですね。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)休み明けに話を聞くのを楽しみにしてますね。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
ようやくスタート地点に立った気持ちになれたIさんでした。
京都府の仲人協会面談後に草川さんはIさんに報告に行きました。
「(Iさん)京都府の仲人協会どうでしたか?」
「(草川さん)あっ、えっ、そ、それは・・・」
「(Iさん)登録してきたんですよね?」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ」
「(Iさん)どんな感じだったんですか?」
「(草川さん)あっ、えっ、なんか、普通に登録して、お見合いして、のような感じみたいでした。隣の会場のようなところで、やってるみたいでしたけど、ちょっと僕には厳しいかもと思いました。」
「(Iさん)なるほど、わかりました。ところで面談はどうでしたか?」
「(草川さん)と、特に、これと言って・・・、基本的に自分で動かないとダメな感じがしました。」
「(Iさん)そっかぁ、じゃあ入会はもう少し考えましょうか。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ」
「(Iさん)入会は検討するとして、今後の具体的な活動もどうするか考えないといけませんね。まぁ、とりあえず、引きこもりから少し脱却して、登録の面談に行けたのは行動できたってことなので良かったと思います。一歩前進ですね。」と言って、Iさんは、面談に行けた草川さんの成長を感じることができました。
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)さぁ、どうしましょうか? とりあえず結婚相手に出会うことは必須なので、どういう形で出会うかですね。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)草川さんに一番いいのは、僕は婚活パーティーとかだと思うんですけどね、結婚を目的とした人の集まりに行くのが手っ取りばやいと思うので」
「(草川さん)えっ、は、はぁ、で、でも、僕なんかが・・・」
「(Iさん)でも…、じゃなくて女性と出会わなければ結婚なんて不可能なので、何かしらの手段で出会いは必須ですよ。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)婚活パーティーに行って、草川さんが挙動不審になる姿は容易く想像できますけど、とりあえず何度も行って慣れていくのがいいと思いますけどね、もちろん僕もサポートしますし」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)ナンパするとかよりはいいんじゃないですか? 草川さんの場合、極度のコミュ障なので、そこも克服していかないといけないので、同時進行でやっていきます。つまり、婚活パーティーは現場実習で、仕事終わりのこの時間にコミュ障改善プログラムをしていくので、大丈夫です! 安心してください。」
「(草川さん)は、はぁ、全然結婚できるイメージが持てないです。」
「(Iさん)別にイメージできなくてもいいですよ。僕が結婚させるので、草川さんは、今は、僕の言ったとおりにしたらいいだけです。そもそも経験がほぼない草川さんがイメージなんてできるわけないじゃないですか。」
「(草川さん)た、確かにそうですけど…」
「(Iさん)じゃあ、明日からコミュ障改善プログラムもしていきますね、そのカリキュラムがある程度進んだら、婚活パーティーを検討しましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ」と言って、Iさんは今草川さんが出来る事を模索しながら、草川さんが結婚に向けて必要なことを考えていました。
「(Iさん)草川さん、まずどうしたいか決めましょう。理想の結婚とか、結婚後には、こんなことをしたい、とか、どんな人と結婚したいとか、そういったことをまとめてみましょう。それと同時に、婚活パーティーに行って度胸をつけるのもいいと思いますが、まぁ、これはもう少し様子見ということでもいいですが…」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)まずは、情報収集からしましょう。婚活パーティーを調べると、草川さんの年齢、45歳くらいが一つの区切りになっているみたいで、結構きわどいので、あまりゆっくりはしてられないですけどね。」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)じゃあ、とりあえず、自分がどうしたいのか、先ほど言ったことを考えてみてください。これが今回の宿題です。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃぃ」
次の日
「(Iさん)宿題でだした、自分がどうしたいのか、どんな人がいいのか、など考えましたか?」
「(草川さん)あっ、えっ、ま、まだです・・・」
「(Iさん)そんなことだろうと思ってましたけど、草川さんの場合、持ってる情報量が少なすぎて、どんな人がいいかとか、考えられないんだと思います。とりあえず婚活パーティーとか行ってみますか?」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)草川さんがコミュ障なのは、知っているので、とりあえず度胸をつけるために、気軽な気持ちで行くだけです。誰ともしゃべらなくてもいいので、とりあえず、まずは行くだけとか、どうですか?」と草川さんに勧めてみました。
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)何か心配なことでもあるんですか? 具体的に何が婚活パーティーに行くことを止めているのか考えてみましょう。」と聞いてみると、草川さんが言いにくそうに答えました。
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ、以前した、お見合いのとき、散々だったので、だいたいどんな感じになるか想像つくんです。」
「(Iさん)ちなみに、そのお見合いのとき、散々だったことを具体的に教えてください。問題点は具体的にしましょう。これは仕事でも同じです。問題点が漠然としていると解決できないので」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ、まず、頭が真っ白になって、何をしゃべったらいいのか、わからなくなってしまうことです。」
「(Iさん)なるほど、その点に関しては、一緒に対策をたてるので大丈夫です。話す内容も含めて、あらかじめスクリプトを作りましょう。これで、問題ないですよ。」
「(草川さん)あっ、えっ、で、でも…」
「(Iさん)他にも何か問題があるんですか?」
「(草川さん)あっ、えっ、えーと」と言って考えだしました。
「(Iさん)何かあるなら言ってくださいね。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ、け、結婚式に呼ぶ友達がいないんです…」と言いました。
Iさんは数秒だけ黙った。今、何の話をしているのか、婚活パーティーに行くかどうかの話をしていたはずである。まだ女性とは一人も会っていない、交際どころか、連絡先の交換すらしていない、なのに、草川さんは、もう披露宴の席次表で悩んでいた。
「(Iさん)???、ちょっと待ってください(笑) 結婚式に呼ぶ友達? いや、まだ誰(女性)とも会ってすらいないのに結婚式の心配してどうするんですか?(笑) 今でも連絡をとっている幼馴染とか学生時代の友達とかいないんですか? 京都は地元でしょ?」とIさんは何を言ってるんだろうと不思議に思いつつも聞きました。
「(草川さん)は、はぃ、そ、そうですけど、でもいないんです。」と誰もいないと草川さんは答えました。
「(Iさん)まぁ、それならそれで、僕も含めて、会社の男性社員が、友達として誘ったら来てくれると思いますよ。ということで、これで、その問題も解決ですね。」
「(草川さん)は、はぁ、そ、そうですね。」
「(Iさん)他に、何かありますか?」
「(草川さん)あっ、えっ、い、いや今のところは特にないです。」と草川さんが思っていた問題は解決しました。このとき、Iさんは、草川さんの出来ないという思い込みを何とかしないといけないと強く感じました。
「(Iさん)ね! たいていの場合、漠然とした悩みって、大したことないんですよ、具体的に出してみたら一瞬で解決したじゃないですか(笑) わからないから怖いだけで、わかってしまえば大したことないんですよ。やり過ごすんじゃなくて、問題を感じたら具体的に出していきましょう。じゃあ解決したことだし、今後は婚活パーティーのことを考えてみましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぃ」
また一歩前進した、草川さんでした。
この口コミ、草川さんでは?(結婚相談所との出会い)
Iさんは、草川さんを、どうやって婚活パーティーに行かせるか、頭を悩ませていました。そんなときに、草川さんのお母さん代わりのような存在である、山崎専務がIさんに声をかけてきました。「(山﨑専務)この前、京都の結婚相談所のラジオを聞いたんだけど、草川さんにどうかなと思って」とIさんに結婚相談所の話をしてくれました。
その話を聞いたIさんは、さっそくその結婚相談所について調べてみることにしました。すると、次のような口コミがでてきました。
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「私は、恥ずかしながら女性経験が少なく、どうしたら恋人ができるのか全くわかりませんでした。そこで結婚相談所にお世話になってみようと思いました。というのも、昔からの親友が結婚相談所に相談して見事に婚約したからです。私と同じように女性に苦手意識を持っている友達に勧められては断れないと思い恐る恐る行ってみると、カウンセラーの方がとても気さくに応対してくださりホッとしました。女性経験がほとんどなく緊張してしまうと言うと、無理のない紹介の仕方をしてくださると言ってくださり、メンタル的にも安心できました。お見合いもファーストデートもとても緊張しましたが、その都度相談にのってもらえるところだったので助かりました。おかげさまで結婚できました。」
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Iさんは、この口コミを読んで、これは草川さんのことを書いているような気になりました。早速、草川さんにも読んでもらって、この結婚相談所の無料相談を勧めようと思い、草川さんを部屋に呼んで話をしました。
「(Iさん)草川さん、あれから調子はどうですか?」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
「(Iさん)ところで、結婚相談所のこんな口コミを見つけて読んだんですが、草川さんを連想しました。この口コミのような人が結婚できたなら、この結婚相談所は草川さんにいいと思います。とりあえず、口コミを読んでみてください。」
草川さんはIさんに言われた通り、口コミを読みました。
「(草川さん)……、これ確かに僕みたいですね」
その声は、いつもの感じでしたが、完全に拒否している感じではありませんでした。
「(Iさん)でしょ! ということで、この結婚相談所の無料相談行ってみましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)で、でもじゃないでしょ、じゃあ、婚活パーティーに行く方がいいですか?」
「(草川さん)あっ、えっ、そ、それは・・・」
「(Iさん)まぁ、とりあえず、無料相談行ってみましょうよ、話を聞いてみてダメそうなら断ったらいいだけだし」
「(草川さん)あっ、えっ、えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)だ・か・ら、でもじゃないです。僕がこの結婚相談所に連絡とってみますね、とりあえずメールしてみます。」
「(草川さん)あっ、えっ、えっ」
「(Iさん)とりあえず、連絡とってみますね、どうするかは、連絡取ってみて返事が来たら、また話しましょう。」
「(草川さん)あっ、えっ、は、はぁ」
あなたがIさんですか?(無料相談予約)
草川さんに任せていたら、何も進まないと考えていたIさんは、自ら結婚相談所の日高さん(カウンセラーの方)に連絡を取りました。すると、結婚相談所からIさんに返信がきました。
「(Iさん)草川さん、結婚相談所にメールしたら、電話してくださいと返事がきたので、電話してください。」
「(草川さん)えっ、えっ、本当に連絡したんですか?」
「(Iさん)当たり前じゃないですか、連絡するって言いましたよね。とりあえず、電話してみてください。」
「(草川さん)あっ、えっ、はっ、はぃぃ」
草川さんは諦めて結婚相談所に電話をかけました。
「(草川さん)もしもし、草川と申しますが、日高さんでしょうか?」
「(日高さん)私は結婚相談所の日高です、あなたは、Iさんですか?」
「(草川さん)いえ、私は草川と申します。」
「(日高さん)あぁ、あなたが草川さんですか、Iさん、いらっしゃる?」
「(草川さん)あっ、えっ、はっ、はぃ、・・・なんかIさんに代わってと言われました。」
草川さんはIさんに電話を渡しました。
「(Iさん)はじめまして、間と申します。草川の上司で彼の婚活を手伝っています。先程はご返信いただきありがとうございます。」
「(日高さん)あなたがIさん?、あなたは結婚してらっしゃるの?」
「(Iさん)はい、私は結婚しています。草川の相談にのってあげて欲しいのですが、来週の土曜などいかがでしょうか。メールにも書かせていただきましたが、草川さんは極度の人見知りというか、女性と接するのが苦手ですので、代わりにご連絡させていただきました。」
日高さんと話しているIさんの横で、草川さんが「えっ、あっ、えっ」と焦っていました。
「(日高さん)そうなんですね、来週の土曜日なら大丈夫ですよ、あなたもいらっしゃるの?」
「(Iさん)えっ? は、はい、一緒にお話を聞かせていただきます。どちらに伺えばよろしいですか?」
Iさんは一瞬だけ言葉に詰まりました。まさか結婚相談所の方から、自分の同席を確認されるとは思っていなかったのです。
「(日高さん)では、10:00に長岡天神にある喫茶店に来てください。」
「(Iさん)分かりました。よろしくお願いします。ありがとうございました、失礼いたします。」
「(日高さん)お待ちしています。」
日高さんとの電話を切ったIさんは草川さんに言いました。
「(Iさん)来週の土曜日、10:00に長岡天神の喫茶店です。」
「(草川さん)えっ、えっ、む、無料相談、予約しちゃったんですか!?」
「(Iさん)もちろん、何か問題ありました?」
「(草川さん)えっ、だ、大丈夫ですか(汗)」
「(Iさん)大丈夫も何も話を聞きに行くだけじゃないですか、それに今回は僕も行きますし、大丈夫ですよ。」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)とにかく話を聞けばわかることですよ、ところで長岡天神の喫茶店の場所わかりますか?」
「(草川さん)そ、それは、わかると思いますけど・・・」
「(Iさん)長岡天神のどのあたりですか?」
「(草川さん)おそらく、改札出て少し行った駅の近くのところだと思います。」
「(Iさん)なるほど、じゃあ当日は現地集合しましょう。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
聞き上手という才能
無料相談の当日、Iさんは草川さんとの待ち合わせ時間ギリギリになりそうだったので、草川さんに電話をしました。
「(Iさん)もしもし、草川さんですか、今向かっているんですが、ギリギリになりそうです。もう長岡天神の駅に着いていますか?」
「(草川さん)えっ、は、はぃ、もう着いてます。」
「(Iさん)じゃあ、先に話を聞いておいてください。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ、わかりました。」
Iさんが喫茶店に到着すると、日高さんと草川さんは、すでに話をしていました。いつものように緊張している様子ではありましたが、逃げ出さずにちゃんと向かい合って座っていました。それだけでも、Iさんには前進したように見えました。
「(Iさん)遅くなってすみません。間と申します。」
「(日高さん)こちらへどうぞ、何かお飲みになる?」
「(Iさん)ありがとうございます。では、草川さんと同じで、アイスコーヒーをお願いします。」
といって、Iさんも注文しました。
「(日高さん)草川さんからIさんのお話を少し聞かせてもらっていましたが、草川さんは、Iさんにいただいたメールに書いてあったほど酷くないと思いました。」
「(Iさん)そうですね、私もそう思いますが、彼は極度に自信がなくて、苦戦しています。本人に結婚したい意思はあるようなので、協力していただけたらと思っています。」
「(草川さん)えっ、えっ」
「(日高さん)今日は私の話を聞いていただいて判断してもらえればと思ってますので、申込みはしなくて大丈夫です。」日高さんはそう言って、自身の経歴や過去の結婚相談の話や、結婚した人たちと今でも交流をしている話などを聞かせてくれました。
「(日高さん)私はこんな感じでやっています。それで、具体的な婚活の話をさせていただきますが」と言ってタブレットを見せながら婚活ページを見せてくれました。
「(日高さん)これが私のページですが、このようにプロフィールがあって、この中から相手を選んで、申し込みをしてもらって、相手の方からOKがでたら、実際に会う。という流れになります。」
「(Iさん)なるほど」「(草川さん)……」
「(日高さん)費用は、初回会ったときに10,000円と入会時に5万円だけ、それ以外はいただいていません。」
草川さんは画面を見ながら小さくうなずいていました。
「(日高さん)もし、申し込む気になったら、まず写真を撮ってきてください。私の知っている写真スタジオがありますので、よければ紹介しますよ。その写真と5万円を準備してもらって再度お会いする形になります。」
これまで草川さんは、ずっと「僕なんかが……」という自己否定をしてきましたが、その草川さんに対して、「(日高さん)草川さんは見た目も端正だし、聞き上手な感じがするので、とてもいいと思います。実際に私もこんなに喋ってしまった、人に喋らせる空気感を持っているから、そこは強みになると思います。普通に結婚できると思いますよ。」
そう言われた草川さんは、褒められているのか、注意されているのか、分からないような顔をしていました。ただ、日高さんの言葉を聞いているうちに、いつもより少しだけ背筋が伸びたようにIさんには見えました。
「(日高さん)ただし、基本的には自分で動かないと結婚はできないし、全く喋れないと厳しいと思うので、自信をつけて喋れるようにならないといけないとは思います。それと、女性と会ったときは何でもいいから、まず褒めるのが基本、容姿を褒めることができないなら、持っているものでも、雰囲気でもなんでもいいから、まず褒める。あとは、とにかく自信をつけて、ちゃんと喋れるようになることですね。そのあたりはIさんという良い上司がいるんだから協力してもらいながら克服したらいいと思いますよ。」
「(Iさん)彼には自信をつけてもらって、婚活も仕事も頑張ってもらいたいと思っています。婚活をすることが仕事にも活きてくると思っています。」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)とりあえず、今日、聞かせていただいたお話を草川さんによく考えさせて結論を本人から連絡させるようにします。今日はありがとうございました。」
「(草川さん)あっ、ありがとうございました。」
Iさんと草川さんは日高さんに挨拶して喫茶店を出ました。
「(Iさん)草川さんどうでした? ぼくは良いと思いましたけど、ハッキリと言ってくれて、何よりも結婚後も付き合いが続いてアドバイスをくれるのはいいですね。」
「(草川さん)えっ、そ、そうですね。ぼくもいいと思いました。」
「(Iさん)カウンセラーの日高さんが言っていたように強制ではないので、まずは帰って明日まで、どうするか草川さん自身で考えてみてください。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)じゃあ、明日結果を聞くのを楽しみにしています。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
Iさんと草川さんは喫茶店前で別れて、それぞれ帰りました。
次の日
「(Iさん)結局どうすることにしました? 申し込みしますか? もしするなら早いほうがいいと思いますが」
「(草川さん)えっ、そ、そうですね、どうしましょう?」
「(Iさん)どうしましょう?って(笑) 自分で決めないと、日高さんも言ってたじゃないですか、僕の個人的な意見を言わせてもらうなら、登録したほうが活動しやすいし、結婚の可能性があがると思いました。」
「(草川さん)じゃあ、そうしましょうか?」
「(Iさん)そうしましょうか?って、他人事か!(笑) まぁ僕は、申し込んだほうがいいと思っているので、いいと思いますけどね。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)じゃあ、次は申し込み用の写真を撮りにいかないとですね、いつ行きますか?次の休みには行けそうですか? どちらにしても日高さんに申し込みの意思を伝えといたほうがいいと思いますよ。」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)じゃあ、次の休みに写真を撮りに行って申込みの連絡をしましょう。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
Iさんは、草川さんの婚活が大きく前進した気がしました。
店の前までは行ったんです。(プロフィール写真)
草川さんは、紹介された写真スタジオに行きました。お店はビルの2階にあったのですが、写真スタジオの1階の看板に「美容院」の文字が見えた瞬間に足が止まってしまいました。草川さんは、ここは自分のようなおじさんが入っていい場所なのだろうか? 入った瞬間に店内の人たちが一斉にこちらを見るのではないか? そんなことを考えているうちに、草川さんは何もせずに帰ってきてしまいました。
「(Iさん)写真は撮ってきましたか?」
「(草川さん)えっ、い、いやぁ、お店の前までは行ったんですが、入れませんでした。」
「(Iさん)えっ? 入れなかったってどういうことですか?」
「(草川さん)えっ、い、いやぁ、下が美容院の2階だったので、なんか、男の僕が入っていい感じではなくて…」
「(Iさん)はぁ、それで入れなかったんですか、美容室なんて今どき男でも行くし、僕の子供たちも男の子ですけど、美容室に行ってて、これまで散髪屋に一度も行ったことないですよ、今どき男性でも美容室に行くなんて普通だと思いますよ。」
「(草川さん)えっ、そ、そうなんですか!?」
「(Iさん)まぁ、美容院に入れるかどうかは重要じゃないので、それはいいとして、申し込み用の写真どうするつもりですか?」
「(草川さん)えっ、は、はぁ、す、すみません、昔行ったことのある写真館に行こうと思ってます。」
「(Iさん)それでいいじゃないですか。」Iさんは、少し安心しました。店には入れなかったものの、草川さんが自分で別の方法を考えていたからです。それだけでも
以前よりは、前に進んでいました。
「(Iさん)いや、謝らなくていいですよ(笑) そこ多分僕も知ってるところです、うちの長男の七五三か何かで使ったところだと思います」
「(草川さん)えっ、そ、そうなんですか?」
「(Iさん)じゃあ、そこで写真を撮って申し込みしましょう。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
申込がきたらどうするんですか
「(Iさん)写真撮れました?」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)写真撮れて良かったです。また前進しましたね。ところで申し込みは?」
「(草川さん)えっ、は、はぃ、しました。」
「(Iさん)おぉ! いい感じじゃないですか。どんな感じでした?」
「(草川さん)えっ、ふ、普通に、申し込みしただけです。」
「(Iさん)いやいや、申し込みできたのは、大きな進歩ですよ。」
こうして、草川さんはついに結婚相談所に正式に登録しました。Iさんにとっては、ようやくスタートラインに立った気分でした。
「(Iさん)じゃあ、あのサイトが見られるってことですね。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)とりあえず草川さんのプロフィール見せてもらえますか?」
「(草川さん)えっ、み、見るんですか?」
「(Iさん)もちろんです、これから対策をたてないといけないので」
「(草川さん)えっ、は、はぁ、これです。なんかタバコを吸ってると、申し込みが激減するらしくて、タバコを辞める前提でプロフィールを書きました。」
その言葉を聞いて、Iさんは少し驚きました。草川さんなりに、結婚に向けて変わろうとしている。それは小さなことのようで、Iさんにとっては大きな変化でした。
「(Iさん)なるほど、じゃあ、これで本格的に婚活スタートですね(笑) ここまで来るのに約半年かかりましたけど、急成長ですね(笑) じゃあ、明日から本格的にスタートしましょう!」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
次の日から、登録した結婚相談所のサイトを使いながら本格的にお相手探しがスタートしていきました。
「(Iさん)じゃあ、今日から本格的に婚活スタートですね。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)とりあえず、サイト見せてください。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)このリストから選べばいいんですね。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)この相手からのお気に入りというのは何ですか?」
「(草川さん)えっ、あ、相手からお気に入りされると、ここに出るらしいです。」
「(Iさん)なるほど、早速お気に入りに入ってるじゃないですか、良い感じですね(笑)」
「(草川さん)えっ、そ、そんなんじゃないと思います・・・」
「(Iさん)じゃあ、早速始めましょう。まず、草川さんは今タバコを吸っているので、まず若い人ではなく30代後半38~40代を狙うのがいいと思います、何故かというと子供を望んでいる人はタバコ吸ってると厳しいと思うので」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)それと、近畿圏の人に絞りましょう。京都、滋賀、大阪、兵庫、奈良あたりですかね、もし何か草川さんの要望があれば、言ってくださいね。とりあえず僕の考えを言っているだけなので」
「(草川さん)えっ、は、はぁ、大丈夫です。」
Iさんは、システムで検索し、37歳から45歳で近畿在住の人のリストを出しました。
「(Iさん)この人いいんじゃないですか、とりあえずお気に入りに入れときましょう。」
「(草川さん)えっ、い、いきなり、お気に入りに入れるんですか?」
「(Iさん)あとで選びやすいようにお気に入りに入れて整理するだけなので大丈夫ですよ。」
「(草川さん)えっ、で、でも、相手の人のところに載ってしまいますよ(汗)」
「(Iさん)何か問題でも?」
「(草川さん)えっ、申込が来たらどうするんですか?」
「(Iさん)はぁ? 申し込みが来たらラッキーじゃないですか、っていうか、そう簡単に来ないと思いますけどね、その来たら困るみたいな感じどうにかしてください(笑)」
「(草川さん)えっ、は、はぁ、確かに日高さんからは、何百人お気に入りにいれても、申し込んでみないと意味ないと言われました。」
「(Iさん)だったら、何の問題もないじゃないですか(笑)」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)もう、いいって(笑) とりあえず僕が後で選びやすいようにお気に入りにいれていきますね。」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
この日は、Iさんが、今後申込しやすいように、ひたすらお気に入りに、良さそうな人を入れる作業が続いた。
次の日
「(Iさん)じゃあ、今日も婚活しましょう、サイトを開いてください。」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)あれ、新着ありますね、まず、これ見ましょう。」
「(草川さん)えっ、は、はぃ」
「(Iさん)あれ、申込が来てるじゃないですか、やりましたね!」
「(草川さん)えっ、は、はぁ」
「(Iさん)とりあえず、来るものは拒まずで、OK出しましょう。」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)この人、何か問題でも?」
「(草川さん)えっ、い、いや・・・」
「(Iさん)じゃあ、とにかく会ってみないとわからないし、場数も踏まなきゃいけないので、申し込み受けましょう!」
「(草川さん)えっ、で、でも・・・」
「(Iさん)もう、いいから申し込んでください、別に必ずこの人と結婚しなきゃいけないわけじゃないし、運良くいい人だったらラッキーじゃないですか。ダメだったら断ったらいいだけ、とにかく申し込みましょう。草川さんの場合、慣れが必要なので場数も必要だと思います。一緒に対策立てるから大丈夫です。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)じゃあ、申し込みますよ。」
「(草川さん)えっ、あっ、申し込んじゃった!?」
「(Iさん)大丈夫です! とりあえず当面は僕の言った通りにしたらいいだけです。」
「(草川さん)で、でも、会った時、どうしたらいいかわからないです。」
「(Iさん)大丈夫ですって、今回は、とにかく慣れも含めてお見合いに行って来るだけで大丈夫です。会ってこれたらOKなので、まず行ってみましょう。」
「(草川さん)は、はぁ」
行けただけで大成功
初めてのお見合いの報告を草川さんはIさんにしました。
「(Iさん)お見合いどうでしたか?」
「(草川さん)なんか、うまく話ができずに、場が持ちませんでした。」
「(Iさん)まぁ、今回は、とにかくお見合いに行けたということで、OKです。一歩前進ということにしましょう。今回のお見合いの結果は、相談所の方から返事が来るんですよね。ちなみに草川さんは、その方にまた会いたいと思いましたか?」
「(草川さん)い、いゃ、もういいです」
「(Iさん)わかりました、じゃあ、気を取り直して次ですね。お見合いに行ってみて特に困ったこと、何かありますか?」
「(草川さん)そもそも、緊張して何をしゃべったらいいのかわからなくて、話が出来ませんでした。」
「(Iさん)なるほど、緊張するのは仕方ないですよ。それは何回かお見合いを重ねて慣れていくしかないと思いますが、話す内容については、スクリプトを一緒に作っていきましょう。それ以外に困ったことは、無いですか?」
「(草川さん)そ、そうですね、特には無いです。」
「(Iさん)わかりました、じゃあ、次のお見合いまでにスクリプトを作るとして、次は申し込みをしましょうか。まぁ、申し込んだからと言って必ずお見合いになるとは限らないし、当面は草川さんが女性に慣れていく事が大きな目的なので、気楽に申し込みしましょう。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)次は、受け身ではなく、攻めです。草川さんから申し込みしていきましょう!」
「(Iさん)まず、草川さんはタバコを吸ってるから、子供を望む年齢は、一旦除外しましょう。30代はまだ子供を望んでいる可能性が高いから、申し込みを断られる可能性が高いと思います。なので、今から狙うのは40代以上です。それと、関西、京都、大阪、兵庫あたりの人で、趣味にある程度共通点がある人にしましょう。この人とかどうですか?」
「(草川さん)お、大阪の方ですか?」
「(Iさん)はい、大阪の方は、積極的に話しかけてくれていいかもしれないですよ。もちろん会ってみないとわかりませんが」
「(草川さん)で、でも・・・」
「(Iさん)もし、お見合いが成立したら、このお相手の方に合わせたスクリプトをつくるので、話す内容については安心してください。」
「(草川さん)だ、大丈夫ですか?」
「(Iさん)緊張で、頭が真っ白になって話ができなくなりそうなら、そもそも緊張していることを、あらかじめ伝えたらいいと思いますよ。相手だって初対面で緊張してるかもしれないですし、打ち明けてもらえたら相手も気が楽になると思います。」
「(草川さん)そ、そういうものですかね」
「(Iさん)ちゃんと打ち明けたうえで、それでも話ができそうもないなら、相手に緊張で頭が真っ白になってしまうので、今日は、私のことでお伝えしたい内容と、お聞きしたい内容を紙に書いて準備しているので、こちらを見ながらお話しさせていただくのをお許しくださいなどと、伝えたうえでスクリプトを読むっていうのもありだと思いますし、頭が真っ白になっても、そういうことができると思っておけば、少しは気持ちが楽になると思いますよ。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)じゃぁ、申し込みをしてください。」
「(草川さん) えっ、申し込むんですか?」
「(Iさん)そうですが、この人何かダメな点ありますか。」
「(草川さん) えっ、い、いや・・・」
「(Iさん)じゃあ、いいじゃないですか。」
「(草川さん) で、でも・・・」
「(Iさん)とにかく、申し込みましょう! 今回は自分で申し込みボタンを押してください。」
「(草川さん)は、はぃ、じゃ、じゃあ、も、申込みしますよ。」
「(Iさん)はい、そんなに意気込まなくても大丈夫ですよ、ただ申し込みするだけですから(笑)」
「(草川さん)ほ、本当に申し込みますよ」
「(Iさん)だから、そういうのわかったから(笑) さっさと申し込んでください。」
草川さんの指は、マウスの上で小刻みに震えていました。画面には「申し込む」のボタン。ただのボタンのはずなのに、草川さんには人生を左右する赤いスイッチのようにみえていました。
「(草川さん)も、申し込んじゃいました。」
草川さんは、プルプル震えながらも、なんとか申込ボタンをクリックしました。
「(Iさん)OK、いいですね、じゃぁ、お相手からの返事を待ちましょう。」
お相手からお見合いOKの返事があった。
「(Iさん)草川さん、お相手から返事ありましたか?」
「(草川さん)は、はぃ、お見合いOKの返事が来てしまいました、どうしましょう?」
草川さんは、お見合いが成立して、「どうしましょう?」と慌てた。しかし、Iさんからすると、お見合いが成立したことは大きな前進でした。
「(Iさん)良かったじゃないですか、じゃぁ、このお相手の方に合わせてスクリプトを作りましょう。草川さんの場合、最初の挨拶から、ほぼ読めばOKくらいのものにしておくと安心だと思うので、こんな感じのはどうですか」
婚活にも台本が必要です(お見合いスクリプト)
「【最初の挨拶】はじめまして、草川と申します。よろしくお願いします。
今日は大阪から京都に来ていただきありがとうございます。お会いできてうれしいです。とても緊張しているので、うまく話せず、ぎこちなかったらすみません。
すみませんが、初対面の方だと緊張してしまって頭が真っ白になってしまうので、今日は私のことでお伝えしたい内容と、お聞きしたい内容を紙に書いて準備させていただいているので、こちらを見ながらお話しさせていただくのをお許しください。打ち解けてくれば大丈夫だと思うのですが、何分人見知りで、緊張しやすいもので・・・
【まずはお相手の容姿を褒める】
例)(お相手をほめる場合)優しそうな雰囲気で、少し安心しました。笑顔が柔らかくて話しやすいです。そのバッグ、素敵ですね。など
【お相手の方の出身地の話】
私は大阪は、5年くらい前に友人と梅田に食事に行ったことがあるのですが、おしゃれな街で、食べ物が美味しくていいですよね。食べ歩きがご趣味だったと思うのですが、大阪は美味しいところが多いからいいですよね。よかったら、お勧めのお店なんかを教えていただきたいです。
【お相手の方の仕事の話】
私も事務職で、健康に関する商材を扱っている会社で主に総務と経理をしています。今は、総務経理の部署の係長をしています。〇〇さんは、どういった会社で働かれていますか?
【趣味の話】
映画鑑賞が趣味とのことだったと思いますが、私はドキュメンタリーや歴史の映画が好きなのですが、●●さんはどういった映画がお好きですか?
(相手の話を聞く)
ちなみに、私はドライブも好きなのですが、車でどこか美味しいところに食べに行くとかできたらいいなと思っています。
私は今、父親と二人暮らしで、時々料理を作るのですが、私自身料理が得意というわけではないので、なかなか美味しくできなくて。料理が得意な女性って素敵だなと思ってました。
ちなみに、今は父親と二人暮らしですが、私は次男なので、結婚をしたら新しい生活をきちんと考えようと思っています。
お相手の方がお酒を飲む場合 → 草川さんが飲まないのであれば、あえて自分からはお酒の話題には触れない。
【最後の挨拶】
今日はお時間をいただきありがとうございました。
【もう一度会いたい場合】 → またお会いできると嬉しいです。
【お断りの場合】 → 今日のお話を一度持ち帰って、相談所を通じてご連絡させていただきます。など
Iさんはお相手のプロフィールを見て、このスクリプトを作って草川さんに渡しました。
「(草川さん)あ、ありがとうございます。」
「(Iさん)じゃあ、このスクリプトを持ってお見合いにのぞんでください。」
「(草川さん)は、はぃ、わかりました。」
「(Iさん)お見合いは、お相手の方と自分が合うかどうかの確認の場なので、必ずしもその方と結婚するわけではないし、お互いに結婚したいと思えばそうなるし、どちらかが、いいと思わなければ結婚にならないし、あくまでも、その確認の場です。まだまだ、これからなので、いい人に会えたらラッキーくらいの気持ちで、肩の力を抜いていきましょう。」
「(草川さん)は、はぃ」
まず味噌って何ですか?(2回目のお見合い報告)
「(Iさん)お見合いどうでしたか?」
「(草川さん)や、やっぱりうまく話ができませんでした。」
「(Iさん)お相手の方は、どんな感じの方でしたか?」
「(草川さん)けっこうきつめの方で話をしにくかったのと、格好が普段着のような感じで、僕が思っていたお見合いの雰囲気とは違って…」
草川さんにとっては、少し圧が強く感じられる方だったようで、服装や持ち物も、草川さんが想像していたお見合いの雰囲気とは少し違っていたようでした。
「(Iさん)なるほど」
「(草川さん)それに、ビニールの買い物袋を持って来ていて、その中は手作りの味噌を持って来ていて、ちょっと、ないなって感じでした。」
「(Iさん)手作りの味噌…」、Iさんは思わず復唱しました。お見合いの報告で、味噌という単語が出てくるとは思っていませんでした。しかも、スーパーで買った味噌ではなく、手作りの味噌をビニールの買い物袋に入れて、お見合いの場に持ってきていた!?。
「(Iさん)ちょっと、まってください。なんか、ツッコミどころが多すぎて、整理させてください(笑) まず味噌って何ですか?」
「(草川さん)なんか、どこかからの帰りだったらしくて、買い物袋を持っていたので、気になって中身を聞いたら、手作りの味噌ということでした。」
「(Iさん)かなり、個性的な方だったんですね。」
(草川さん)は、はぃ、あとは格好も、なんだか、ちょっと、という感じでした。」
「(Iさん)わかりました、じゃあ、その方はお断りですよね。」
「(草川さん)は、はい」
「(Iさん)でも草川さん、今回はちゃんと“自分には合わない”って判断できてるじゃないですか。いい感じですね。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)じゃあ、その方は断って、次の方を探しましょう。僕は、草川さんは、母性本能をくすぐるタイプだと思うので、保育士さんとか、学校の先生なんかが良いと思っていますが、どうですか。」
「(草川さん)そ、そうですか、自分ではよくわからないです。」
「(Iさん)じゃぁ、とにかくお見合いをして会わないことには進まないので、次は、保育士さんか先生を探して申し込みをしてみましょう。」
Iさんは草川さんに、そう言って、保育士か学校の先生をしている40代の女性を検索させました。
「(Iさん)この方なんかはどうですか、42歳の保育士さんで、しかも京都の方です。お相手に京都の人希望、趣味ドライブと食べ歩き、京都の人を希望してるとか激熱じゃないですか。見た目も草川さん好みじゃないですか? この方はどうですか。」
「(草川さん)は、はぁ。」
「(Iさん)京都の人で、京都を出たくないと思っている方って、わりと多いと思うので、草川さんの京都という点がメリットになると思いますし、いいと思いますよ、 プロフィールを見る限り、僕は良いと思いますが、草川さん的に嫌な点がないなら申し込みましょう。」
「(草川さん)は、はぃ、特に嫌な点はないので、申し込んでみましょうか。」
「(Iさん)いいですね、申し込みましょう!」
草川さんがお見合いの申込をしたので、Iさんと草川さんはお相手からの返事を待ちました。
Iさんは、そろそろお相手から返事が来ているだろうと思い、草川さんと、お見合いの対策をたてるために部屋に呼びました。
「(Iさん)草川さん、お相手から返事ありましたか?」
「(草川さん)は、はぃ、お見合いOKの返事が来てしまいました、どうしましょう?」
「(Iさん)またですか(笑) OKもらえて良かったじゃないですか、お見合い成立の確率すごいですね。じゃぁ、このお相手の方に合わせてスクリプトを作りましょう。こないだ作成したのを基に、今回の方向けにアレンジしましょう。」
もう一度会うことになってしまいました(まさかのお見合い成功)
お見合い後に、Iさんは草川さんを呼んで、お見合いの報告を聞きました。
「(Iさん)草川さん、お見合いどうでしたか?」
「(草川さん)それが、もう一度会うことになってしまいました。」
「(Iさん)それって、成功したってことですよね。」
「(草川さん)そ、そうなんですけど、どうしましょうか?」
「(Iさん)どうしましょうかって、もう一度会ったらいいだけじゃないですか。」
「(草川さん)会って大丈夫ですかね(汗)」
「(Iさん)大丈夫ですかって、それは大丈夫に決まってるじゃないですか、嫌なんですか?」
「(草川さん)い、嫌とかじゃないんですが」
「(Iさん)次会うときはデートですね。」
「(草川さん)いや、そんなデートと言うか、もう一度会うだけかもしれません。」
「(Iさん)どちらにしても、大きな進歩ですね。おめでとうございます。いい調子です。」
「(草川さん)話とか、どうしたらいいかわからないんですが」
「(Iさん)話って、お見合いの時は、どうだったんですか?」
「(草川さん)お相手の方が、ほとんど話してくれました。」
「(Iさん)じゃぁ、心配いらないじゃないですか。相手が話をしてくれるって、草川さんにとって、とてもいい感じのお相手で良かったじゃないですか。」
「(草川さん)そ、そうなんですけど」
「(Iさん)まぁ、なるようになれですよ、正直、草川さんはとても面白い人ですし、一緒にいて飽きないと思いますよ。いろんな意味でツッコミどころも多いし(笑) もちろん頼りないという見方もできますけど、話を聞いてくれる誠実な人という見方もできると思います。そのお相手の方にとって草川さんは良い面がたくさんあると思いますよ。自信を持ってください。」
「(草川さん)は、はぃ」
1回目のデート後の草川さんの報告をIさんは聞きました。
「(Iさん)デートどうでしたか?」
「(草川さん)駅で待ち合わせをして、純喫茶に行ってお茶してきました。」
「(Iさん)お茶だけですか?」
「(草川さん)はい、お茶だけして、解散しました。」
「(Iさん)お茶だけですか、また大きな進歩ですね。次の約束はしたんですか?」
「(草川さん)はい、彼女が色々と詳しくて、次は美味しい洋食のお店でランチと美術館に行く事になりました。」
「(Iさん)めっちゃ、いい感じじゃないですか、安心しました。」
2回目のデート後、
「(Iさん)2回目のデートどうでした?」
「(草川さん) い、いやぁ、よくわからないです。」
「(Iさん)美味しい洋食の店に行って、美術館に行ったんですよね?」
「(草川さん) そ、それが、そのお店が定休日で、初デートで行った純喫茶に行きました。」
「(Iさん)そうなんですね。まぁ、相手の人が決めたお店だったし、ちょっと抜けたところがあっていい感じじゃないですか、しかも、初デートはお茶だけだったから、純喫茶なら好きなエビフライが食べれたんじゃないですか(笑)」
「(草川さん) は、はぃ」
「(Iさん)美味しかったですか?」
「(草川さん) は、はぃ」
「(Iさん)美術館にも行ったんですよね?」
「(草川さん) そうです。」
「(Iさん)進展があってよかったです。相手の人がいろいろ知ってくれててよかったですね。ちなみに、会話は8:2くらいで相手の人がしゃべるんですか?」
「(草川さん) そうですね」
「(Iさん)本当に、良いかんじですね、ちなみに次回の事は決まってるんですか?」
「(草川さん) は、はぃ、いろいろ提案されています」
「(Iさん)ちなみに、どんな提案ですか?」
「(草川さん) それが、淡路島とか、須磨水族館とか、奈良とか、いろいろです。」
「(Iさん)すごいですね、近場の喫茶店から、一気に飛躍しましたね(笑)」
「(草川さん)そうなんですかね」
「(Iさん)そりゃそうでしょ、どれも1日デートコースな感じじゃないですか、ちなみにいろいろって、他にどんな提案があったんですか?」
「(草川さん)北海道とかです。」
「(Iさん)北海道? めっちゃ積極的ですね、すごいじゃないですか(笑)」
「(草川さん)そんなことないですよ」
「(Iさん)だって、北海道ってことは、日帰りなんて無理だし、泊まりってことじゃないですか。」
「(草川さん)それは大問題です(汗) そ、それはないです。」
「(Iさん)まぁ、いきなり泊まりはハードル高いですね(笑)」
「(草川さん)は、はい」
車高の低い車で行きなさい
「(Iさん)とりあえず淡路島とかがいいんじゃないですか。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)淡路島だったら車ですね、あの車高の低い例の車に乗せるんですか、それとも、家の車で行くんですか?」
「(草川さん)そ、それがですね、車の件で少しプイっとされてまして。。。」
「(Iさん)どういうことですか?」
「(草川さん)そ、それが、彼女が僕の車に乗りたいと言ったんですけど、僕の車は人を乗せられるような車じゃないので・・・と、ごまかそうとしてたら、プイっとされてしまいました。どちらにしても、遠出すると途中で止まってしまうかもしれないくらい古い車なので。。。」
「(Iさん)なるほど、それは挽回しとかないとですね。とりあえず、これからの交際のルールを決めましょう。1つ目は、相手の人に対して、草川さん自身のことをごまかさないこと、2つ目は、自分で自分のことを否定せず、自分自身に対して、そして相手に対しても正直でいること、これは絶対です。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)そうでないと不信感を抱かれてしまいます。結婚するにあたって信頼関係を築いていかなければならない相手に、ごまかすことは絶対にしてはダメです。例えば、車の件も、車高が低いなど、会社で「変だから何とかしたら」、とかいじられてますけど、草川さん自身は、自分の車を変と言ったり思ったりしたらダメです。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)自分が好きでしている事なら、それでいいんです。そうでないなら、なんで乗ってんねん! と突っ込まれますよ。周りにどうのこうの言われようが、自分が好きで乗っているならそれでいいんです。草川さん自身をさらけだして、それで嫌われるなら、そんな人とは結婚しない方がいいです。」
「(草川さん)えっ、は、はい」
「(Iさん)とにかく自分の感情に忠実でいることです。他人の事ばかり気にしていると、自分の感情が分からなくなりますよ、それに相手に誤った判断をさせてしまいます。自分の行動には自信と責任を持ってください。相手を気にしすぎると自分を犠牲にしてしまいます。いくら気を遣ったところで、本質的には、人は自分の事しか考えてないですし、自分の目の前しか見えてないもんです。草川さんだって、そうでしょ、他人の事、そこまで考えてあげてるんですか? 少なくとも僕らのような人種は、そこまで他人の事なんて考えてないはずですよ。自己犠牲してまで、他人に貢献しようなんて人は、ほとんどいないはずです。まぁ、このルールは守って下さい。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)とにかく、すぐに車の件連絡してください。言う内容は「車の件すみません」とまずはあやまる。そして「前回お会いした時には、古い車なので乗り心地等が悪いと思ったのですが、もしよかったら、次回会うときに乗りませんか? 見たら少し驚かれるかもしれませんが、叔父から20年以上前にもらって、メンテナンスしながら大切に乗ってきた愛着のある車なんですが、古くて、遠出すると止まってしまうかもしれないなど問題が少しあるので、遠出の時はレンタカーなど借りて、近場の時がいいとは思いますが?」というのはどうですか?」
「(草川さん)で、でも、プイっとされているのにいいんですかね?」
「(Iさん)それは逆です。プイっとされているからこそです。それをそのままにしてはダメです。怒られたからシュンとしてごまかしていいのは幼稚園児までです。小学生以上は、怒られても、やるべきことをして、逆に挽回するくらいでないとダメです。」
「(草川さん) で、でも」
「(Iさん)でも、じゃなくて、連絡してください。草川さんは、僕の婚活シミュレーションゲームのキャラクターだと思って、僕の操作通り動いてください。そうすれば、ハッピーエンディングの結婚まで、僕が必ず持って行きますから、僕の敷いたレールにちゃんと乗ってさえくれれば、必ず、幸せになる結婚をさせますから、安心してください。」
「(草川さん) は、はぁ」
「(Iさん)とりあえず、連絡しましょう。あと、淡路島デートで心配なことありますか。」
「(草川さん)え、えーと、僕、淡路島まで行って帰ってこれますかね。バスや電車で行った方がいいですかね。」
「(Iさん)はぁ? 帰ってこれますかねって、帰ってこれるかの心配してるってことは、淡路島には行けてる前提なんですね、行けるなら帰ってこれるでしょ(笑) バスや電車では淡路島は行きにくいし、淡路島での移動を考えるなら断然車がいいと思いますよ。それに、車で行く道も簡単ですよ、高速に乗って、ほぼ真っ直ぐです。」
「(草川さん) は、はぁ、でも僕ですよ、大丈夫ですかね(汗)」
「(Iさん)僕ですよって(笑) 大丈夫ですって、何年車に乗ってるんですか、それに多少道間違っても、それも含めて、後々いい思い出になりますって(笑) じゃあ、車で行くとして、ルートは、高槻あたりで新名神に乗り換えて、宝塚のサービスエリアで休憩してください、そして淡路島の大きなサービスエリアでお昼を食べましょう。まぁ、これは成行でどこでもいいですけど、そのあとはイングランドの丘とかがいいんじゃないですか。 まぁ、彼女さんが行きたいところがあるかもしれないので、基本的にはそれに合わせるのがいいと思います。とはいえ草川さん自身が何も考えてないと言うのは問題だと思うので、」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)まだ何かあるんですか?」
「(草川さん)いや、方向音痴なので道が心配で」
「(Iさん)仕事でもプライベートでも車で大阪とか行ってるじゃないですか、それは大丈夫ですよね。」
「(草川さん)それは大丈夫です。」
「(Iさん)じゃあ、その途中の高槻で、新名神の方向に行けば、あとは真っ直ぐ行けますよ、それにナビもあるし、看板だってあるのに間違えようがないですよ。まぁ、間違ったってデートなんだから楽しんだらいいだけですよ。」
「(草川さん)あぁ、高槻のあっちですね、それなら行けそうな気がしてきました。」
「(Iさん)それならよかった。相手の人が喋ってくれるみたいだし、車ならラジオとかつけとけば話題にも困らないじゃないですか。バスとかだったら、ずっと二人ですよ。そういう意味でも車の方が絶対いいと思いますけど。」
「(草川さん)そうですね。」
「(Iさん)まぁ、今のところ順調みたいだし大丈夫ですよ、楽しんできてください。」
淡路島デートの後に草川さんがIさんのところに来て、「(草川さん)これ気持ちです。」
と言って、淡路島のお土産(玉ねぎせんべい)を持ってきました。
草川さんがくれた玉ねぎせんべいを見て、Iさんは少しうれしくなりました。これは、ただのお土産ではなく、草川さんが、ちゃんと淡路島まで行って帰ってきた証拠でした。
「(Iさん)おぉ、ありがとうございます。ところで淡路島どうでしたか、よかったですか?」
草川さんが軽くうなずきながら「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)それはよかった、また業務後に詳しく聞きますね。」
業務後に草川さんがIさんのところに来て淡路島でのことを報告してくれました。
「(Iさん)淡路島の事、詳しく報告してください。車は例の車高の低いあの車で行ったんですか?」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)何事もなく無事でしたか?」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)それは良かった。朝、彼女を車で迎えに行って、車で高速乗って、いいですね。ところで新名神の宝塚サービスエリア行けました? そんなに大きなサービスエリアじゃないですが、いい感じじゃないですか?」
「(草川さん)は、はぃ、よかったです。」
「(Iさん)淡路島はイングランドの丘とか行ったんですか?」
「(草川さん)それが、淡路島は、たこせんべいの所に行って、はなさじきというお花畑に行きました。」
「(Iさん)お花畑、いい感じですね。順調そのものですね。」
「(草川さん)い、いやぁ、よくわからないですね。」
「(Iさん)まぁ、よくわからないなら、いいですよ。どちらにしても、草川さんは、当面僕の敷いたレールに乗ってればそれでいいので、そのあたりは深く考えなくていいですから。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)ちなみに夜はどうしたんですか?」
「(草川さん)夕方ごろ戻ってきて、解散しました。」
「(Iさん)まぁ、OKです。1回目は純喫茶でお茶、2回目はランチして美術館。3回目でドライブデートで淡路島。とても順調ですね。これは、結婚間違いなしですね。」
「(草川さん)い、いやぁ、まだわからないですよ。」
「(Iさん)安心してください、僕が絶対結婚させてみせますから」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)僕には草川さんが11月に入籍する未来が見えてますから、11月に答えを出さなければならなくなった頃、草川さんが僕に「本当に結婚しちゃいますよ・・・」とか言って、僕が「だから結婚するって言ってるやん、っていうか、この婚活プロジェクトは、草川さんの意思だけじゃなくて半分は仕事だから、結婚しないという選択肢はない。」みたいなやり取りまで今からイメージできてますよ(笑) 11月後半か12月には、今の彼女と同居してるんです。草川さんはお父さんと一緒にお母さんに報告がてらお墓参りも決まってますよ。まぁ、見ててください」と、Iさんは草川さんに自信を持って言いました。
「(草川さん)え、えぇ(汗) まだ、わからないですよ」
「(Iさん)でも、考えてみてください、この11月の結婚については、去年の年末くらいから、11月に結婚ですって、と言ってきてて、実現しそうじゃないですか。今の僕は、神がかってますから、自分でも怖いですが、きっと僕の言ったとおりになりますって」
「(草川さん)じゃあ、結婚しちゃうじゃないですか。」
「(Iさん)そりゃそうでしょ、何のための婚活なんですか(笑)」
「(草川さん)まぁ、それはそうですが。」
「(Iさん)とりあえず、草川さんは僕の敷いたレールに乗っていれば大丈夫です。僕のリアル婚活シミュレーションゲーム、いや、もはや趣味レーションゲームかもですが、そのキャラクターとして、勝手な動きはしないでくださいね(笑)」
「(草川さん)は、はぁ」
Iさんは、草川さんが結婚することに対して微塵も疑いをもっておらず、必ず結婚すると確信していました。
結婚しちゃうじゃないですか
「(Iさん)あれから彼女とはどうですか、順調ですか?」
「(草川さん)い、いやぁ、よく分からないですね。ただ、結婚相談所の日高さんと話して真剣交際というのになりました。」
「(Iさん)真剣交際?、めっちゃ順調じゃないですか、すごい!」
「(草川さん)い、いやぁ、よくわからないです。」
「(Iさん)ところで、真剣交際って、今までと何が違うんですか?」
「(草川さん)し、真剣交際になると、こちらからの申込もできなくなりますし、申し込みも受けられなくなる状態です。」
「(Iさん)なるほど、じゃあ、これからは、結婚に向けてまっしぐらですね(笑)」
「(草川さん)そ、そうなんですけど、本当に大丈夫ですかね。」
「(Iさん)何がですか?」
「(草川さん)い、いやぁ、結婚するイメージがわかないですし、よくわからないんです。」
「(Iさん)何が分からないんですか?」
「(草川さん)僕、結婚して大丈夫ですかね?」
「(Iさん)ここにきて、マリッジブルー(笑)」
「(草川さん)い、いやぁ、そんなんじゃないです。」
「(Iさん)いや、客観的に聞いて、模範解答のようなマリッジブルーだと思いますけど(笑) 結婚の現実味がわいて、不安になってきたってことじゃないんですか、そういうのをマリッジブルーと言うんだと、僕は思いますけど…」
「(草川さん)そうなんですかね。」
「(Iさん)じゃあ、何が不安なのか言ってみてください。」
「(草川さん)そ、それは…、一緒に住むんですよ?」
「(Iさん)それは、そうでしょ。そんなの婚活する時にわかってたことじゃないんですか。今もお父さんと一緒に住んでるし、同じようなもんですよ。」
「(草川さん)そうですかね。」
「(Iさん)それに、彼女さんの、何か嫌なところってあるんですか?」
「(草川さん)それは、無いですが。自分が結婚できるのか分からなくて。」
「(Iさん)じゃあ、いいじゃないですか。それに、結婚できるかじゃなくて、するんです。そんなこと気にせず、僕の敷いたレールに乗っといてください。このマリッジブルーカウンセリングも僕の計画の中にはありました。想定内です(笑)」
「(草川さん)い、いや、わからないですよ。僕といても面白くないですから」
「(Iさん)何を言ってんですか、草川さんは、はっきり言って結婚は向いてると思いますよ。恋愛だったら飽きられて捨てられるとか考えられるかもしれないですけど、面白さなんて求められてないんですよ、結婚で求められるのは安心感だと思います。それなら、草川さんは既に持ってますよ。」
「(草川さん)は、はぁ」
聞いてみると、どれも草川さんらしい不安でした。
「(Iさん)ギャンブルにはまる心配もないし、女遊びもしないだろうし、暴力も振るわないだろうし、結婚という観点なら、いいスペック持ってるんですよ。」
「(草川さん)いや、わからないですよ、僕はイメージできません。」
「(Iさん)恋愛の経験値もほとんどない草川さんに、結婚のイメージなんてできるわけないじゃないですか。結婚なんて、最初はよくわからなかったけど、3年、5年と一緒にいて、その時になって、一緒にいてよかったなぁと思えるような感じだと僕は思っています。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)草川さんが、自分はダメだと思うのであれば、そんな自分と一緒にいてくれる彼女に感謝し続けてください。その感謝を持ち続けることが出来れば、間違いなく結婚生活は上手くいきます。僕が保証します。」
「(草川さん)で、でも」
「(Iさん)でも、じゃなくて、大丈夫です! 仮に失敗してもバツが付くだけで特に何にもないですよ。むしろ今の草川さんの年齢でバツなしの方が問題なくらいですよ。でも、草川さん側に問題があって離婚になることは、まず無いと僕は思いますよ。草川さんが結婚したら離婚することなんてまずないですって、もっと気楽に考えてください。」
「(草川さん)そうなんですかね。」
「(Iさん)考えてみてください。草川さんが結婚することは、昨年末くらいから11月に結婚すると言い続けてましたよね、今年の僕の言葉は神がかってますから結婚は確定事項です(笑)」
「(草川さん)じゃあ、結婚しちゃうじゃないですか(汗)」
「(Iさん)結婚に向けて、1年以上頑張ってきたのに、何か問題があるんですか?(笑) それに、草川さんは確実に成長してます。昨年の9月頃、出会いどうしようと言ってた時と比べてみてください、普通に交際して毎週のようにデートしてるじゃないですか。そんなの、数か月前の草川さんでは想像もできませんでしたよ。でも僕は、8月か9月ころから交際して、11月に結婚すると信じて疑わなかったですし、今でも微塵も疑ってません。草川さん一人の不安くらいでは覆せませんよ(笑)」
「(草川さん)え、えぇ~(汗) じゃあ、決まったようなもんじゃないですか」
「(Iさん)だ・か・ら、決まってるって言い続けてるじゃないですか、草川さんが彼女と交際が続いているのも成長したからですよ。僕は草川さんが交際を続けることができてるのは、隠しごとしたり、ごまかしたりするのをしないこと、つまり自分のしていることに自信を持つことだと思っています。その勇気をもって、彼女に自分の車を見せれたじゃないですか。これも以前の草川さんでは、ありえなかったことですよ。それをクリアしたから交際になってるんです。そこをクリアできてなかったら、今の彼女と交際にはなってないはずです。自分では気づいてないかもしれないですけど、草川さんは確実に成長してるんですよ。」
「(草川さん)そ、そんなに褒めても、何も出ないですよ。」
「(Iさん)結婚してくれること以外は何も求めてませんて(笑) ただ、草川さんの婚活プロジェクトを草川さんの結婚というハッピーエンディングにしてくれたらそれでいいです。」
「(草川さん)そうなんですか」
「(Iさん)それに、自分のために何かしてもらってると思わなくていいです。これは僕がしたくてしてることですから、とにかく結婚は150%確定事項です。この婚活を通じて、信じて疑わず言い続けたら叶うんだと、言霊ってあるんだと信じることができるようになりましたし、ある意味では、僕にとっても自信になった部分があります。まぁ、これからも、マリッジブルーになったら、引き戻して僕が必ず結婚させますから、安心してください(笑)」
「(草川さん)は、はぁ」
Iさんのマリッジブルー・カウンセリング1回目が終わりました。
「(Iさん)草川さん、彼女とは順調ですか? 結婚もうすぐですね。少しは具体的な話をしていってるんですか?」
「(草川さん)い、いえ、特には・・・」
「(Iさん)まぁ、結婚は決まっているので、焦らなくてもいいと思いますけど」
「(草川さん)だ、大丈夫ですかね?」
「(Iさん)大丈夫ですって! たとえ大丈夫じゃなくても結婚は決まってるので、諦めてください(笑) 草川さんの意思は3割くらいしか反映されませんので、僕や周りが手伝っている仕事として4割、親孝行3割なので、結婚は決まってるんです。もう後戻りはできません。昨年9月に草川さん自身で結婚したいと言った時点で、この結婚は決まってたんです。」
「(草川さん)ま、まだ大どんでん返しがあるかもしれませんよ。」
「(Iさん)大どんでん返しって(笑) なんで、結婚する当事者が大どんでん返しって言ってるんですか(笑) 大どんでん返しなんてありませんよ。僕が結婚させるんですから、僕が、草川さんが入籍するまで最善を尽くしますから、不安要素を出来る限り排除して、僕が草川さんを結婚させるので、大どんでん返しはあり得ません(笑) そもそも真剣交際になった時点で婚約したも同然ですよ。」
「(草川さん)そ、そんなことは。そんな重たい雰囲気じゃなかったですけど。」
「(Iさん)何を言ってるんですか、婚活している人が、自分が申し込みできなくなって、相手からの申し込みもなくなる状態って、いわば草川さんが彼女にプロポーズしたようなものじゃないですか。」
「(草川さん)え、えっ!?」
「(Iさん)だ・か・ら、結婚は確定事項で、今は、結婚に向けての準備期間ですよ、例えば、親との顔合わせとか、どこに住むかを決めるかとか、結婚式はどうするかとか、入籍は? とか、そういったことを話し合う期間ですよ。」
「(草川さん)じゃ、じゃあ、結婚しちゃうじゃないですか(汗)」
「(Iさん)だから、結婚するんだって言ってるじゃないですか、受験勉強頑張って、入試に合格しそうなときに、「合格しちゃうじゃないですか」とか言ってたら、おかしいじゃないですか、結婚目指して1年間頑張ってきて、結婚がほぼ確定して結婚しちゃうじゃないですかって、おかしいでしょ(笑) 模範解答のようなマリッジブルーですね(笑)」
「(草川さん)だ、だって、僕ですよ、面白くないし…」
「(Iさん)だから、面白さとか求められてないって言ってるじゃないですか、それにそう思うなら、そんな自分と結婚してくれる人に感謝してれば、結婚生活は絶対にうまくいきますよ。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)こんな自分と結婚してくれてありがとうと思い続けることができて、相手に対して誠実で変なごまかしや隠しごとさえしなければ、結婚生活は絶対にうまくいきますって、そして、10年後20年後に、一緒にいることができて良かったと思う日が来ますって、それは、その時にならないとわかりません。草川さんの結婚観は、きっとそういうやつです。恋愛経験皆無の草川さんが、いきなり結婚後のイメージばっちりだったらおかしいでしょ、今言った二つを肝に銘じて、あとはそのままで大丈夫ですって。なんか、結婚前夜のしずかちゃんのお父さんのような感じになってきてるじゃないですか(笑)」
「(草川さん)で、でも本当にイメージできないんです」
「(Iさん)分からない人だなぁ、イメージなんてできるわけがないんですよ。僕だって、今結婚10年目ですけど、結婚当初に10年一緒にいることなんてイメージできてませんでしたよ、何気ない日々の積み重ねで結果10年たったんです。最初からイメージなんて誰にもできませんよ。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)それに最初から、好きすぎると、後々失敗しますよ、特に草川さんのように思い込みの激しい人は(笑) だから、今のような気持で結婚するのが正解だと僕は思います。相手の人の何か嫌なところでもあるんですか?」
「(草川さん)い、嫌なところはないですけど…」
「(Iさん)でしょ、それが答えですよ、単に、結婚という人生の中での大きな変化に対して不安になってるだけじゃないですか。結婚前夜のしずかちゃんが、私このままのび太さんと結婚していいのか悩んでるのと対して変わらないでしょ。僕がしずかちゃんのお父さんのように、君が選んだのび太くんは…、のように、話してる感じじゃないですか(笑)」
「(草川さん)そ、そうかもしれません。」
「(Iさん)何に対して不安か具体的に出してみたら、いつも大したことなかったでしょ(笑) 分からないことに不安になって、そこから逃げるから、その不安が大きくなっていってるだけですよ。」
「(草川さん)は、はい」
「(Iさん)今回もその不安から逃げたら、一生付きまとわれますよ、それよりも勇気をもって不安に立ち向かっていった方が、あとあと気持ちの部分で楽ですし、それが成長というやつです。逃げたらだめです。っていうか、結婚に関しては僕が逃がしませんけどね、このマリッジブルーも僕の計画の想定内ですから(笑)」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)もちろん、草川さんが本当に嫌なら止めます。でも、その不安は、結婚後のことがイメージできなくて、怖いだけに見えるんです。」
「(草川さん)は、はい」
「(Iさん)ということで、マリッジブルーのカウンセリングが草川さんの結婚までの僕の最後の大仕事ですから(笑) もんもんとしているなら、逆に、ゴールを決めていったらどうですか、入籍日とか。そういえば、11月の大安の日は・・・」
そう言って、Iさんは、11月の大安の日を調べてみました。草川さんはIさんの圧に押されて、相変わらずオロオロしていました。
「(草川さん) え、えっ」
11月22日に入籍しなさい
「(Iさん)あっ、11月22日(日)大安ですよ、いい夫婦の日で大安、しかも日曜日って、もうこの日に決定ですね。さすが草川さん、神がかってますね。いい夫婦の日で日曜日で大安って最高の日じゃないですか、この日なら結婚記念日を忘れることないですね。じゃあ、入籍日はこの日で決定ということで、彼女と話してみてください(笑)」
「(草川さん)え、えっ」
「(Iさん)草川さんの目標は、次に彼女に会うときに、この入籍日を提案してみる事です、「入籍の事なんですけど、11月22日が大安でいい夫婦の日なのでいいと思うんですが、どうですか?」みたいに言うこと。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)それと、お父さんに結婚のこと伝えたんですか?」
「(草川さん)え、えっ、い、いやまだです(汗)」
「(Iさん)じゃあ、そろそろお父さんにも教えてあげてください。絶対に喜びますから、草川さんのペースですすめたら、入籍後に伝えるとかありそうですよね(笑)「(草川さん)じ、実は、結婚したんだ・・・」「(父)だ、誰が?」「(草川さん)ぼ、僕が」
「(父)え、えぇ~!?」的なやりとりになりそう(笑)。」
「(草川さん)た、たしかに」
「(Iさん)い、いや、たしかにじゃないでしょ!(笑) お父さん心臓強くないんじゃなかったでしたっけ、こんなやり取りじゃ心臓に悪いですよ(笑) お父さんは以前、草川さんにお見合いを持ちかけてたってことは結婚して欲しいってことじゃないですか、絶対に喜びますから、一世一代の親孝行だと思って頑張って下さい。喜んで、きっと元気になりますよ。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)じゃあ、そういうことで、いろいろあると思いますが頑張って下さい」
Iさんは草川さんに入籍日を彼女に提案することと、草川さんのお父さんに結婚報告をすることを伝えてこの日の婚活を終わりにしました。
「(Iさん)草川さん、ところで、彼女とは結婚に向けての具体的な話とかはしてますか?」
「(草川さん)い、いやぁ、どこに住むとか、戸建てがいいかマンションがいいかとかです。」
「(Iさん)なるほど。」
「(草川さん)マンションなんて買えるんですかね?」
「(Iさん)別に無理に買わなくたって、賃貸でもいいじゃないですか。それは彼女と二人で話し合えばいいと思いますけど。」
「(草川さん)家賃って10万くらいですか?」
「(Iさん)そんなにしないと思いますけど、何を優先するかですね。例えば、家の広さなのか、駅近なのか、新しさなのかとか、それこそ値段なのか、などです。何かを妥協すれば安くできると思いますよ。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)他には、何か結婚に向けた具体的な話はないんですか?」
「(草川さん)と、特にないですね」
「(Iさん)彼女は、草川さんから、結婚に向けた具体的な話をしてくれるのを待ってるんじゃないですか?」
「(草川さん)そ、それは、どうなんですかね」
「(Iさん)どちらにしても、とりあえず、次、彼女に会うときに結婚について具体的に話してきてください、「真剣に結婚を考えてるので、そろそろ具体的な話がしたいんですが、ご両親にご挨拶に行ったり、入籍日など…」という感じで、このあたりは草川さんから、話を持っていった方がいいと思います。」
「(草川さん)え、えっ(汗)」
次のデート後
「(Iさん)彼女と結婚のこと話出来ました?」
「(草川さん)い、いやぁ、そ、それが・・・(汗)」
「(Iさん)出来なかったってことですね。」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)仕方ないですね、じゃあ、僕がLINEの文章考えるので、送って下さい。草川さんは僕の文章を確認して、送信ボタンを押すだけです、それならできますよね。」
「(草川さん)え、えっ、そ、それは」
「(Iさん)11月22日には入籍予定なので、そろそろ動き出さないと、僕のカレンダーや手帳の11月22日のところには、すでに草川さんの入籍日って書いてあるんですから(笑)」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)このまま放置は良くないので、LINEを送りましょう。」
「(草川さん)そ、それは大丈夫です。」
「(Iさん)何が大丈夫なんですか?」
「(草川さん)つ、次に会ったときには言えそうな気がしてるので」
「(Iさん)わかりました、じゃあ信じます」
草川さんが自分の意思で次に会ったときに言うということなので、Iさんは信じることにしました。
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)じゃあ、とりあえず次回まで待ちます。ただし、次回言えなかったら、僕が草川さんのスマホを借りて彼女とやり取りしますからね(笑)」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)草川さんの結婚は、草川さんの問題だけではなくて、僕や周りの人の意思がはいってますから(笑) 逃れられない運命ってやつです。」
「(草川さん)え、えっ」
草川さんが次回こそ、入籍の話をすると決意をしてくれたので、Iさんは次回のデート後を待つことにして、この日は解散しました。
デート後
「(Iさん)草川さん、彼女に言えましたか?」
「(草川さん)は、はぃ、少しは・・・」
「(Iさん)おぉ、言えたんですね。良かった。自ら言えそうって言ったくらいだから、何かが憑依してたんですかね(笑)、とにかく言えてよかったです。ちなみに、何か具体的な話は進んだんですか?」
「(草川さん)そ、それは、まだ…」
「(Iさん)とりあえず、結婚を真剣に考えてることと、結婚に向けた具体的な話がしたいってことを伝えたってことですよね、また前進したじゃないですか。」
「(草川さん)そ、そうですね」
「(Iさん)それで、相手からの反応は何もなしですか?」
「(草川さん)と、特には・・・」
「(Iさん)何にもなかったんですか? じゃあ、次回から話が展開されていくってことですね。とにかく言えてよかったです。」
「(草川さん)そ、そうですかね」
「(Iさん)ところで、次はいつ会うんですか?」
「(草川さん)つ、次の日曜日です。順番がおかしいんですが、家電を見に行くことになりました。」
「(Iさん)か、家電!? そ、それは想定外ですね。家電って(笑) すごいですね。どこに住むかとか、家電とかって、もはや草川さんと一緒に住むところをイメージしてるってことじゃないですか(笑)」
「(草川さん)そ、そうなんですかね」
「(Iさん)そりゃそうでしょ、入籍とか顔合わせとかは当然として、もはや草川さんとどんな部屋に住もうかということを楽しんでる感じじゃないですか。これなら、入籍日を来月の11月22日のいい夫婦の日とか言えば、普通にOKなんじゃないですか。彼女に言ったら入籍日とかのことは任せますくらい言われそうな気がしますけど(笑)」
「(草川さん) え、えっ(汗)」
「(Iさん)彼女の中では、もはや入籍は通過点で、一緒に住むところの話になってるんですよ。彼女には結婚したらこんな部屋に住みたいという憧れとかがあるんじゃないですか、きっと。それが叶いそうで楽しんでるんですよ、だから草川さんが顔合わせのこととか、入籍のこととか、現実的な話をすすめてあげないとダメってことですよ。草川さんが彼女のスピード感についてけてない感じですね(笑)」
「(草川さん)そ、そうなんです。」
「(Iさん)お互いの年齢的に、きっと相手のご両親はきっとウェルカムだと思いますし、普通に挨拶も歓迎な感じなんじゃないですか。日程とか早く決めてあげたらどうですか。」
「(草川さん)そ、それが、彼女は自分のお母さんに逐一報告してるみたいで筒抜けなんです。」
「(Iさん)そりゃそうでしょ、自分も嬉しくて、相手も喜ぶ話なんだから普通は話すると思いますよ。草川さんみたいに、お父さんに話せない方が変わってるんだと思いますよ(笑)」
「(草川さん)そ、それは、そうかもしれませんね。」
「(Iさん)彼女が家で話してくれてるんなら話は早いじゃないですか。11月22日に入籍と家族で顔合わせってのがいいんじゃないですか。もちろん草川さんはその前に彼女のご両親に挨拶に行かないとダメですけど、話を聞く限り、いい感じだし、普通に歓迎されるんじゃないですか、僕の妄想がめっちゃ膨らみます(笑)」
「(草川さん)は、はぁ、本当に結婚しちゃっていいんですかね。」
「(Iさん)まだ、そんなこと言ってるんですか、結婚しちゃっていいかじゃなくて、結婚しなければならないんです。半分は仕事ですから(笑) ここまで協力させといて、今更結婚しないなんて許されないところまで来てますから、その考えがそもそもおかしいですよ(笑)」
「(草川さん)は、はい(汗)」
「(Iさん) それに草川さんは結婚した方がいいですって、もともと休みの日の予定とか聞いても、いつも何にも無いって言ってたじゃないですか。それが見てください、今は毎週のように彼女とデートしてるじゃないですか、めっちゃリア充になってるじゃないかって話です。自分の時間が欲しいとしても、今までのような感じだと時間を無駄に持て余してしまうだけですよ。彼女と一緒にいるからこそ、自分一人の時間の大切さもわかるんじゃないですか。つまり結婚した方が充実した時間が過ごせるってことです。草川さんは、絶対結婚した方がいいです。」
「(草川さん)そ、そうかもしれませんね。」
「(Iさん)彼女には、理想の家の感じがあるのかもしれないですから、自分の部屋が欲しいことだけは伝えといたほうがいいんじゃないですか。そうすれば好きなゴッドファーザー風の部屋とかできるじゃないですか(笑)」
「(草川さん)そ、そうですね。」
「(Iさん)とにかく、彼女は僕のイメージの更に先の一緒に住んだ時の部屋のイメージにまで進んでるので、草川さんが、今、現実にしなければならないことを進めてあげてください。親への挨拶とか、入籍とか、顔合わせとか、そういったことは草川さんがすすめるんですよ」
「(草川さん)は、はぁ」
「(Iさん)まぁ、そのうち日高さんが痺れを切らせて、聞いてくると思いますけどね、とにかく、順調で安心しました。」
父に言う前に社長が言った(お父さんへの結婚報告)
「(Iさん)草川さん、あれから結婚の話は進みましたか?」
「(草川さん)は、はぃ、入籍の話はできました。」
「(Iさん)よかったです。おめでとうございます! 本当に良かった。草川さんのお父さんにも報告したんですか?」
「(草川さん)ま、まだです。」
「(Iさん)いや、まだって(笑) 早く報告してあげてください。すごく喜ぶと思いますよ。」
「(草川さん)そうなんですけど…」
草川さんにとって、父親に結婚を報告することは、彼女に入籍の話をするのと同じくらい大きな壁でした。喜んでくれることは、なんとなく分かっていましたが、それでも、いざ口に出そうとすると、言葉が出てきませんでした。それからも草川さんは自分の父親に報告できずにいると、会社の社長に呼ばれて草川さんの婚活の状況を聞かれました。
「(社長)結婚の話どうなってるのかな?」
「(Iさん)また、ご報告しようと思っていたのですが、結婚が決まり入籍することになりました。お相手のご両親との顔合わせも終わっています。」
「(社長)おぉ、それはおめでとう草川くん、お父さん喜んだだろう。」
「(草川さん)そ、それが、まだ言ってなくて…」
「(社長)えっ、それは、また何故?」
「(Iさん)なぜだかわかりませんが、言いづらいようで・・・」
「(社長)そうなのか、じゃあ、代わりに連絡してあげよう。」
「(Iさん・草川さん)えっ!?」
二人は「本当にかけるんですか?」と言いたかったのですが、社長はすでに、草川さんのお父さんに電話をして、話し始めました。
【電話での会話】
「(社長)ご無沙汰してます。草川さんのお父さんですか?」
「(草川さんの父)お久しぶりです。」
「(社長)息子さん結婚が決まったそうですね。」
「(草川さんの父)えっ? 結婚ですか? 知りませんが・・・」
「(社長)神部先生のすすめで、うちの総務課長が婚活サポートをしていたのですが、ようやく結婚が決まって入籍日も決まったようですよ。」
「(草川さんの父)えぇぇ、そうなんですか、家では何も言わないので知りませんでした。ぜひ、その方にお礼を言わせてください。」
「(社長)もちろん、じゃあ、来られた時に紹介しますよ。」
「(草川さんの父)よろしくお願いします。では、また伺います。」
電話を終えた社長が草川さんに「(社長)伝えといたから、すごく喜んでいたよ。一度会社に来て、Iさんに会って、お礼を言いたいそうだ。」
「(草川さん)は、はぃ」
「(Iさん)わかりました。」
二人は、社長室を出て話をしました。
「(Iさん)草川さんがなかなか言わないから社長に言われちゃったじゃないですか(笑)」
「(草川さん)は、はぃ、どうしましょう」
「(Iさん)どうしましょうって、自分で言わないから、こんなことになったんじゃないですか、代わりに言った社長も社長ですけど、本当は草川さん自身でお父さんに伝えるべきだったと思いますが、伝わったものは仕方ないですし、悪いことじゃないので、いいんじゃないですか。とても喜んでくれているようですし、結果オーライって事にしておきましょう。これもまぁ、草川さんらしいとも思いますし」
「(草川さん)はぃ」
後日、草川さんのお父さんがIさんに会いに会社に来ました。
「(社長)ご無沙汰しております。こちらが、総務課長のIさんです」
「(草川さんの父)息子がお世話になっております。この度は本当にありがとうございました。まさか、息子が結婚するなど思ってもみなかったので、本当に驚きました。結婚してくれて、もういつ死んでもいいと思えるくらいです。」
草川さんのお父さんは、何度も頭を下げました。Iさんは少しだけ、照れくさくなりました。
「(Iさん)いえ、そこまでのことはしてないですが、喜んでいただけたようで良かったです。」
「(草川さんの父)本当にありがとうございました。これはつまらない物ですが、」
そう言って、お父さんは菓子折りを差し出しました。
「(Iさん)気を遣わせてしまって、すみません、ありがとうございます。」
もともとは、神部先生に「草川を頼む」と言われて始まった婚活サポートでしたが、それが今、草川さんのお父さんの深い安心にもつながっていて、Iさんは、ようやくこの婚活プロジェクトが本当に人の人生を動かしたのだと実感しました。
妻という言葉
草川さんの婚活もいよいよ終盤を迎えます。
両家の挨拶も終わり、草川さんと彼女が一緒に住む部屋も決まりました。
あとは入籍を待つばかりです。
そんなある日、草川さんからIさんに結婚の報告がありました。
「(草川さん)これからは妻と一緒に頑張っていきます。未熟な二人ですが、これからもご指導よろしくお願いします。」
草川さんの口から妻という言葉を聞いて、Iさんは思わず笑ってしまいました。
「(Iさん)草川さんの口から、“妻”という言葉を聞く日が来るとは思いませんでした(笑)」
あの、独身証明書を取りに行くのをためらっていた草川さんが…。
写真館の前で引き返してきた草川さんが…。
申し込みボタンを押すだけで震えていた草川さんが…。
お見合いOKの返事に「どうしましょう」と慌てていた草川さんが…。
マリッジブルーになって「結婚しちゃうじゃないですか」と言っていた草川さんが…。
今、自分の奥さんのことを「妻」と呼んでいる。
「(Iさん)草川さんならきっと、幸せな結婚生活を送れると思います。本当におめでとうございます。」
予定通り、ハッピーエンドを迎えることができてホッとしたIさんでした。
草川さん結婚計画の主要メンバー
間 直樹/通称:Iさん
42歳男性。草川さんの婚活をサポートする職場の上司。
神奈川県出身。関西の国立大学卒。仕事は営業企画と総務。
いつも冷静で、その場の空気を察知し、失敗はなかなかしないタイプ。自己意識が強いため、人とは違った視点で物事をとらえる個性的な面を持っており、他人には理解され難い人で、常軌を逸している。よき部下や後輩を従えることを大事に思っている。合理性に基づいて行動し、他人に対してはあまり情で判断せず、とにかく結果主義。独創的な発想を持ち、人と同じでは満足しない。他人には理解できないような行動をとるが、人の予想の斜め45度上の結果を出す。
責任感が強く、自分の信念に従って行動するが、押す時と引く時がはっきりしている。草川さんの婚活では異常なまでのサポート力を発揮する。
好きな食べ物は冷ご飯とトムヤムラーメン。シュールなものが好きで、好きな漫画は「伝染るんです」。
草川 肇/通称:草川さん
45歳男性。京都出身、京都育ち。関西の難関私立大学法学部卒。仕事は総務経理。
超草食男子で、極度のコミュ障。苦手なことは意思表示。スルースキルは高め。
見た目は眼鏡をかけた誠実でまじめな男性。本人はいたって普通だと思っているが、周囲から見るとかなり個性的。
好きな食べ物はエビフライ。ただし、ポテトサラダが付いていないと納得できない。
好きな映画は「ゴッドファーザー」。その影響でヨーロッパ調のアンティークが好きで、部屋はこだわりのゴッドファーザー風。
愛車はシャコタンのマークⅡで、20年以上乗り続けている。好きなものは車とコーヒー。趣味は釣りと車いじり。好きな音楽は井上陽水とテレサ・テン。
坂東社長
草川さんが勤務する会社の社長。草川さんにとって父親代わりのような存在。
鈍感力が高く、斜め上の考えを持つが、とてもいい人。草川さんの婚活を会社公認のプロジェクトにする。
山崎専務
草川さんにとってお母さん代わりのような存在。
会社の専務で、カリスマ性のある裏番長的存在。会社内では最強キャラ。
神部先生
坂東社長と山崎専務が崇拝する神社の神主。
神憑りの儀式ができる不思議な人物。草川さんのお父さんから相談を受けており、実質的に草川さんを婚活へ向かわせた張本人。
日高さん
婚活カウンセラーのおばちゃん。
草川さんの結婚相談所での活動を支える人物。草川さんの弱点だけでなく、聞き上手な面や誠実さを見抜く。
草川さんのお父さん
健在。軽く心臓に持病がある。
草川さんの結婚を心配し、神部先生にも相談していた。息子の結婚を心から喜ぶ。
草川さんのお母さん
草川さんが学生の頃に亡くなっている。
神部先生の言葉を通して、草川さんを見守っているような存在として描かれる。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
この物語は、草食男子であり、超コミュ障でもあった草川さんが、周囲の人たちに背中を押されながら、少しずつ婚活を進め、結婚にたどり着くまでのお話です。
最初は、結婚する気があるのかどうかを聞かれても、はっきり答えることすらできなかった草川さんでした。
資料請求、独身証明書、結婚相談所への申し込み、プロフィール写真、お見合い、デート、真剣交際、そして入籍。
普通の人にとっては何でもない一歩でも、草川さんにとっては大きな壁でした。
それでも、ひとつずつ前に進んでいけば、人生は本当に変わっていくのだと思います。
この物語を書きながら、私自身もあらためて感じたことがあります。
それは、人は自分一人の力だけで変わる必要はない、ということです。
誰かに背中を押してもらってもいい。
誰かに道を作ってもらってもいい。
ときには、半ば強引に前へ進められることがあってもいい。
大切なのは、最後に自分の足でその道を歩いていくことなのだと思います。
草川さんは、決して器用な人ではありませんでした。
自信もなく、すぐに「でも……」と言ってしまう人でした。
けれど、誠実で、真面目で、相手を大切にできる人でした。
婚活において大切なのは、完璧な会話力や華やかな魅力だけではないと思います。
不器用でも、誠実であること。
相手に感謝できること。
そして、逃げずに一歩を踏み出すこと。
それが、草川さんの結婚につながったのだと思います。
このお話は、ほぼ実話をもとにしています。
もちろん、読みやすくするために一部表現を整えたり、登場人物の名前などを変えたりしていますが、草川さんが結婚に向かって少しずつ変わっていった姿は、今でもとても印象に残っています。
もし今、婚活に悩んでいる方がいるなら、どうか「自分なんか無理だ」と決めつけないでほしいです。
できるかどうかではなく、まずは自分がどうしたいのか。
そこから始めてもいいのだと思います。
そして、もし身近に婚活で悩んでいる人がいるなら、無理に変えようとするのではなく、その人に合った一歩を一緒に探してあげることが、大きな力になるかもしれません。
草川さんの婚活は、本人だけの力で進んだものではありません。
神部先生、坂東社長、山崎専務、日高さん、草川さんのお父さん、そして彼を見守ってくれた多くの人たちがいました。
人は、人との縁の中で変わっていくのだと思います。
最後に、草川さんの口から「妻」という言葉を聞いたとき、私は本当に不思議な気持ちになりました。
あの草川さんが、結婚する。
あの草川さんが、自分の奥さんのことを「妻」と呼ぶ。
その言葉を聞いた瞬間、この婚活サポートは本当に終わったのだと感じました。
草川さんの人生が、これからも穏やかで幸せなものでありますように。
そして、この物語を読んでくださったあなたの人生にも、素敵なご縁と、あたたかい一歩がありますように。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
Zurai(Iさん)




