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幼馴染の陽向葵はポジティブがすぎる 〜ネガティブ男子がポジティブな美少女幼馴染を振り向かせるラブコメ〜  作者: 十色
第二章

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第8話 変わっていく葵と僕と

「おっはよー憂くん! 今日も朝から陰気な顔してるねー。あははっ!」


 教室に入るや否や、幼馴染の陽向葵が元気ハツラツな朝の挨拶を口にした。朝からテンションが高いなあ。


「おはよう葵。でもさ、陰気な顔とかほっといてよ! せっかくの清々しい朝が台無しじゃん!」


「あはっ! ごめんごめん。私って正直だからさー」


「正直って……これ、余計に傷付くんですけど」


「いいじゃん別にー」


 言って、葵は笑顔のまま僕の肩をバシバシと叩いた。コイツ、結構力あるな。ちょっと痛いんですけど。


「あー! 葵ちゃんボディタッチしてるー! あの二人、やっぱり絶対怪しいよ」


 恋愛話が好物の竹田さんが、僕達の様子を見てそんなことを口にした。いや、ボディータッチってもっとソフトな感じだと思うんですけど。葵の場合、ほとんど掌底だし。


「だ、だから竹ちゃん。それは二人だけの秘密なんだって。ね、ねえ、憂くん?」


「そ、そうだね」


 僕と葵は何かを確認するように、お互いの顔を見やった。どちらも赤面状態。顔が熱っているのが自分でも分かった。


 学校ではいつもと変わらないように葵と接しようと思ってたのにな。なのに竹田さんが変なことを言うから。嫌でも意識してしまうじゃん。


 でも、こんな小さなことだけでこれだ。葵に対する気持ちがどんどんと大きく膨らんでるからだろう。


「ま、まあ竹田さん。これ以上は葵に突っ込まないであげて」


「えー、つまんないよー」


 あの夜を境に、僕と葵にちょっとした変化があった。


 別に付き合い始めたりしたわけじゃない。言葉にはしないけど、でもお互い、自分自身の心のカタチが少しずつだけど変わっていくのを感じていた。はず。少なくとも僕はそう。


 でも、事実、僕が葵の家に泊まるのは土日限定になったし。理由は二人とも気付いてる。仮に、毎日のように泊まることになったら、僕と葵の関係性が変わる。絶対に。下手をしたら僕達は一線を超えてしまうかもしれない。そうしたらどうなってしまうのか、今の僕には分からない。


 だからこそ、怖いんだ。


 幼馴染として、今まで築き上げた大切なものが全て壊れてしまうのではないかと。


 まるで、積み上げたジェンガが崩れるように。


 結局、臆病者だ。僕も、葵も。


「で、あ、葵。朝から元気そうで何よりだけど、ちゃんと自分でも勉強してる? そろそろ期末テストだからさ」


「えー。なんで朝からそんな現実を突き立てるのー?」


「ううん、大切なことだからさ」


「そうだけど。でも大丈夫! 憂くんが毎日勉強教えてくれてるから! だから全く問題なし!」 


「ま、まあ確かに勉強は教えてるけど……。じゃあさ、この前の小テストの結果を見せてよ。それで大体分かるからさ」


 それと、もうひとつ。変化したこと。クラスの中で、葵が誰かと付き合い始めたんじゃないかっていう噂が飛び交うようになった。


 葵は元々、クラスの中でも目立つ存在だった。だからその変化に皆んなが気付き始めたみたいだ。特に男子から。それだけ、皆んなは葵のことが気になってるんだろう。まあ、葵は可愛いし、性格も魅力的だから何回も告白されたりしてたみたいだし、当然か。


 僕? 全く注目されてない。分かるでしょ? ボッチの僕のことなんか、だーれも気になんかしてくれないって。あるとしても、あくまでも葵のオマケって感じ。某ハンバーガー屋さんのハッピーセットに付いてくる玩具みたいな。


 って、いやいや見てるわ。教室のぐるりを見渡すと、皆んなで僕のことを。まあ葵絡みだもんなあ。考えてみたら当たり前か。嫉妬心ってやつだね。


 うん。気にしないようにしよう。


「えーっと……こ、これが小テストの結果です」


「どれどれ。……って、ええ!? な、何これ!? 十一点!? ど、どうして? 僕が毎日勉強を教えてるはずなのに」


「え、えーっとですね。ごめんね憂くん。最近、全く集中できなくなっちゃって。憂くんに教えてもらっても、右の耳から右の耳へ抜けていっちゃって」


 右の耳から右の耳って……。それ、抜けていってないし。右の耳で止まっちゃってるし。


「でも大丈夫! これをひっくり返したらー!」


「いや、葵さん? 『11』をひっくり返しても同じだから。『11』のままだから」


「あ……」


 膝からがくりと崩れ落ちた葵である。なんか新鮮だな、葵がここまでダメージを受けてる姿を見るのが。僕の性格が伝染っちゃった? ネガティブな葵なんか見たくないけど。


「で、でもさ。期末テストが終わったらご褒美があるじゃん! だから、これからちゃんと頑張るから!」


「ご褒美? そんなのあったっけ?」


「あるよ! 夏休み! あー、海に行きたいなあ。連れて行ってよ憂くん?」


 連れて行ってと言われてもなあ。


「んー。非常に言いにくいんだけど。たぶん葵は、このままだと補習組に入るだろうから、遊ぶ暇なんてないと思うよ? それに加えて夏休みの宿題もあるし」


「……え? ほ、補習組?」


「うん、そうみたい。図書室で他の人達が話してたのが聞こえたんだけど、あるらしいよ? 赤点取った生徒達は毎日学校まで行って、ずっと勉強させられるんだってさ」


「う、嘘!? 本当に? 本当に夏休みになっても、私は学校に行かなきゃいけないの? 拷問を毎日受けなきゃいけないの?」


「拷問って……。もしかして、僕が勉強を教えてる時もそう感じてたの?」


 そこで、葵は頭を振った。


「ううん、それはないよ? だって、ほとんどの時間は人生のお勉強しかしてないし。だから拷問とか思ったことないかな? いやー、大切だよねえー。人生のお勉強って。毎日成長してるのが分かるの。さすがは私!」


 そう、頭を掻きながら笑顔で言った葵だけど、ダメだこの子。


 うーん……一体、どうしたらいいんだろ? 何か方法はないかな? 葵にやる気を出させるための。考えろ。考えろ、僕。幼馴染で長い付き合いだから、それも思い出そう。一回くらいは勉強にやる気を出したことがあるはずだし。


 そして、僕は一休さんのようにして頭に指を当てながら考えた。


 ――あ。あった。葵にやる気を出させたこと。あの時もそうだったはず。


「ねえ葵? ちょっと提案なんだけどさ。期末テストで全部の科目が赤点じゃなかったら海に連れていってあげる」


「え! 本当! 私を海に連れてってくれるの?」


 そう。思い出したんだ。たった一回だったけど、葵が勉強に精を出した時のことを。この高校に入るために、葵は受験勉強にやる気を出したんだった。


 確か当時、葵に同じようなことを言った。『受験に合格したら遊園地に連れていってあげる』と。今回は内容は全く違うけど。


 でもちょっと思った。そんなことで勉強嫌いな葵が勉強を頑張ったりするか?


 もしかしたら本当は、全く違う理由なのかもしれない。


「うん、約束するよ」


「よーし! じゃあ頑張る! 海のために勉強頑張る! だから憂くんもこれからも毎日、一生懸命私に勉強を教えてね!」


「いや、これまでもずっと毎日勉強を教えてきたんですけど……」


 でも、僕は知ってた。本当のところ、僕がこんな提案をしなくても、葵は懸命に勉強するはずだから。


 あの日の夜、葵は言ってた。


『少しでも変われるように頑張るから。だから、もう少しだけ待ってて』


 その言葉が、僕の脳裏に焼き付いている。


 葵は、変わろうとしてるんだ。


 だから、僕も変わる。変わってみせる。このジメジメとした暗い性格も少しでも直せるように頑張る。


 だって、葵も自分を変えるために頑張ってるんだから。


 だったら僕も負けてられないじゃないか。


「憂くん。葵を海に連れてって!」


「どうして某野球漫画のヒロインみたいなセリフを言っちゃうかな……」


『第8話 変わっていく葵と僕と』

 終わり

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