五話
「あの…!」
「ねぇ、…」
この漫画のヒロイン、ミルク・ライナーに…
私の推し、レア・クライスト…
「「隣座ってもいい(ですか!)?」」
どうやら私は意外とモテるようだ(?)
って惚けている場合ではない。
なんでだ?私は何をした??
「俺が先に声掛けたんだけど?」
推しが冷たい表情でヒロインにいう。
あー、やばい。かっこいい…このちょっと冷たい表情…最高。
「わ、私が先に声かけました!?」
ヒロインも対抗して声を上げる。
二人とも睨み合って、最終的にこちらを向く。
「「どっちが先だった!?!?」」
私のために争わないで!と、言いたいところだけど…流石にこの状況ではいえないな…
「えっと、二人とも、座れるんじゃない?」
ベンチのような席なため、詰めればいくらでも座れそうになっている。
真ん中によって、二人の間に座れるようにしたが…
「あのね、さっきのお礼を言いたくって!!助けてくれてありがとう!!私の名前はミルク!あなたの名前は!?」
と、右から叫ばれては…
じーっ、と左から推しに見つめられる始末。
しかも…
「あ、あの…距離近くないですか。」
ヒロインは私に抱きつく勢いで喋りかけてくるし、推しも少し動くだけでぶつかる距離にいるし…
「それで!あなたの名前は!?」
「…ルナフレア、」
「じゃあルナね!私のことはミルクって呼んで!!何回も言うけどさっきはありがとう!」
何回も言い過ぎだよ…
「私、あなたと友達になりたいの!」
私魔族だけどね…
「それで、あなたの名前は?」
ミルクが私の推しに向かって言う。私の時と違い、普通の声の音量で…私の時も普通に喋ってくれ、
「え、」
推しが驚いたように反応する。
いや、まぁ、そりゃね…なんせ、この国の第二王子なんだから…普通は知ってるよね。
「あなたの名前は?」
あなたの名前はbotと化したヒロインに私の推しが答える。
「…レア。」
「素敵な名前だね!」
ミルクが微笑むのに対し、推しは少し嫌そうな顔をしている。
ていうかなんでこんなとこ座りたかったんだろう、私の推しはあんまり女の子と関わるの好きじゃないはずなのに。
推しの方にふと顔を向けると、目が合う。すぐに前を向き直したが、頬が少し熱くなったのを感じた。
やばいやばい!推しに認知されてる!!あー、二次元オタクは一生叶わない夢とか、嘘じゃん!めちゃ認知されてるよ!え、幸せ…
ていうか、この世界なら推しと付き合えるんじゃね?
なんなら、結婚もできるんじゃね??
王族と魔族って関係だけど…それは後から考えればいいし、
私は手に力を入れて、小さくガッツポーズをした。
よし、決めた!私は頑張って推しを落とし、ラブラブ学校ライフを送るぞぉ!!!
「顔赤いぞ?」
推しが私を心配するように頬に触れた…と、同時に、顔全体が熱くなった。多分今私の顔は真っ赤だろう。
「あ、え、えと、だ、大丈夫…です、」
顔を隠すように頭を下げると、彼が不思議そうに言った。
やばい、彼を落とす前に私の体がもたないかも…
「そう?」
「ルナ、大丈夫?」
ミルクにまで心配される始末…
ていうかミルクも顔ほんと可愛いんだよな、この至近距離で見てもツルツルツヤツヤ肌…
うん、可愛い。
推しの方を見てると体がもたないので代わりにミルクの顔を眺めていると、次第に教室に人が集まってきた。
ガヤガヤし始めた頃、先生が入ってきた事により教室が静まる。
「A組の皆さん、こんにちは。今日から一年、あなたたちの担任を務める ミノラ・バラードです。よろしくお願いします。」
少し暗い色をした金髪の先生。綺麗に巻かれた髪は、腰までありそうだ。
「それでは突然ですが、皆さんに自己紹介をしてもらいます!」
やべぇ、自己紹介考えてなかったぁ。
「名前、趣味と他に一言お願いね。ちなみに先生の趣味は音楽を聴く事です!それでは出席番号順に…ルナフレア・アストルムさんから。」
っげ、苗字が“あ”から始まるからか。しまった…
私は立ち上がると、小さく息を吸った。
「ルナフレア・アストルムです。趣味は、」
流石に推しと飼い猫を拝むことなんて言えないし…
「本を読むことです。よろしくお願いします。」
お辞儀をしてから座ると、拍手が送られる。
うぅぅ、一番目の人ってこんな辛かったのか…
「では次に…」
それから二十三人の自己紹介を聞いた。
「レア・クライストです、趣味は読書です。よろしくお願いします。」
あー、なんか前世では趣味が本を読むことの男子って ザ・陰キャってイメージあったけどそんなことないわ、ごめんなさい読書好きの男性様。本好き男子はどうやらイケメンらしいです。
「俺は モブロウ・デスヨロ!趣味は強い奴と戦うこと!よろしく!!」
うっわ、でたよ。いっちゃんイタい厨二病タイプ…
「み、ミルク・ライナーです!えっと、趣味は手芸です!!よろしくお願います!!!」
大きくお辞儀をした後私の方を見て言った。
「噛んじゃった…」
確か漫画では噛んじゃったことを口には出さないが…まぁ、色々変わってしまってるんだろう。私が隣に座っているせいで。
自己紹介が終わった後に校内をまた見て周り、なんやかんや終わった後だ。先生の他生徒会の人がやってきたのは。
副会長の一人である アスタさん、そして同じ学年で書記をやってる ハナさん。
ハナさんはアスタさんに想いを寄せている。負けヒロインとでも言えばいいか…漫画ではまだ振られたりしたわけではないが、公式要素的にアスタさんとくっつくのはミルクだろうし…
二人が一通り挨拶を終えた後、先生宅地を開く。
「では、お二人にはこの学校にある“レベル”というものについて説明してもらいます。」
ハナさんが黒板に文字を書き始める。アスタさんは教卓の前に移動すると口を開いた。
「他国も含む世界中の王立、または国立高校では、”レベル“というものが存在します。」
ハナさんが黒板に描いたのは0から13の数字だった。
「今ここにいるみなさんはレベル0ですね。先ほど皆さんが受けた試験に応じた先生方の評価と、明日行う実力テスト、そして皆さんの中学の時の単位や推薦などによって来週にはレベルが決まります。」
やっべ、中学通ってないから単位もクソもないぞ。
「他にも日頃の行いや、テストの点数などでも順位が上がったりします。ただ基本は、明日あるような実力テストや、毎年恒例の学校行事が一番上げてくれますね。文化祭や体育祭など!」
アスタさんが話してるうちに、ハナさんが黒板に描いた数字をいろんな色のチョークで囲ってる。0、1、2が赤色のチョーク、3、4が黄色、5、6が緑で7、8が青だ。
9から13が何も描かれていない。
「卒業単位としては、レベル8は必要ですね。一年の間でも最低レベル2、二年生では4、三年で6、四年で8を達成するのが理想的です。」
一年で約2レベルずつ上げれば卒業できる感じか…
「あなたたちの学年の水準を上回るレベルを得ると、生徒会から声がけをさせてもらったり。レベルが標準的でも活躍を評価されると、とある部活に加入可能になったりしますよ。」
アスタさんの言葉を聞いて、隣からミルクが話しかけてくる。
「とある部活ってなんだろうね?」
私は知らない体を装って肩を持ち上げる。
学活が評価され招待状が来ないと入れない部活、魔王討伐パーティ育成部だ。活動内容は魔族の研究、または将来的に魔王を倒せるほどの強さを持つものを育成すること。育成といってもとある先生の指導下で修行したりする感じだけど…
私は転生者だから知っているが、新入生がこの部活の詳細を知っているのはおかしいので今は黙っておこう。
「レベルは上がる分、態度によっては下がるのでご注意を。僕からは以上です。」
アスタさんはお辞儀をし、私たちは拍手を送る。
「何か質問のある方はいらっしゃいますか?」
先生が付け足すと、私たちより二つ前に座ってたモブロウが手を上げた。
「先輩方は〜、何レベなんですか〜??」
相手を舐め切った口、相変わらず感じ悪いなぁ。
「僕は今レベル8だ、」
どの学年も実力テストは明日だから、3年生の彼にとって2年生の終わりにはすでにレベル8だったことになるな。
周りが少々ざわつく、まぁ卒業に必要な単位の一つをもうすでにとっているのだからそりゃ凄いだろう。
ミルクは目を輝かせ、レアは小さなため息をついた。
そしてモブロウは相変わらず舐めるような笑顔で席に座り直した。




