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転生したら推しがいる漫画の世界に来てしまったので、本気で推し活します!  作者: こねこのむ
第0章 転生

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1/6

プロローグ&一話

魔法があり、剣があり、竜が空を舞う。


誰かの夢の続きみたいで、どこか懐かしく感じる


そんな世界に私は転生した。


魔族として…




目が覚めたのは薄暗い洞窟の中、トラックに撥ねられて死んだはずの私はいわゆる異世界転生というのをなしとげたらしい。


「にゃ〜?」


目が覚めた時一緒に洞窟にいた黒猫を抱いて、外に出るとあたりは暗く夜のようだった。


全くあかりのない割にはっきりと見える視界に感動する。これがよくある異世界転生かぁ、前世では視力悪くてコンタクトだったから最高!などと呑気なことを思ってるのも束の間、私は湖に映った自分の顔を見て驚愕する。


ホワイトブロンドというやつだろうか、金髪にしては色が薄くピンクがかって見える髪色。宝石のようにキラキラした、エメラルドグリーンの目。

そして、頭から生えた二本のツノ…


私が転生した先は、私が愛読していた異世界系恋愛アクション漫画…そして私は魔王城で魔王直属の部下で幹部の一人、“ルナフレア”の子供姿。

ルナフレアは幹部の中で最年少で、他の幹部が100歳をも超える年齢に対して、主人公より二つ年下の…!


「主人公!!」


そうだ!自分の姿を見るにここは確実に私が愛読してた漫画の世界、つまり私の推しもこの世界にいる!!

作者が未成年淫行で逮捕されてから打ち切りになって、接種不足だった推しが!推しに会える!!!


「こんなところでぼーっとしてる場合じゃない、人間界に行こう。」


こうして、オタクの私の推し活ストーリーが幕を上げた。



ーーーーーーーーーー


「カプッ」


ルナフレア、漫画の世界ではすでに魔王城で幹部として魔王の元で働いていた。この世界では人間や動物でもないような、ツノと尻尾の生えた生き物を一括りに魔族と呼んでいたが…

ファンの間でルナフレアは魔族ではなく吸血鬼って呼ばれてたりもした。理由は単純。


「できた…」


血を共有することで眷属を作れるからだ。


「にゃ〜!」


私が転生してすぐ見つけたのは漫画にも登場した黒猫、名前はビビ。漫画ではルナフレアの唯一大事にされていた眷属だ。確かファンブックに、怪我をして死にそうになってたところを眷属にすることで傷を癒したと書いてあったな。まぁ私はそんな死にかけのところを見るのは嫌なので先に眷属にしたが…


「私の魔力が尽きない限り、眷属は死なない…か、」


これもファンブックに書いてあった。逆に魔力をずっと与えてることになるから眷属を増やしすぎると本人に負担がかかるんだっけ。しかし…


「顔かわいいな、」


湖に移った自分を見つめる。さすが未成年に手を出したロリコン、子供を描くのが上手い。特に童顔なのに鋭い目つきとか、最高。


「はっ!これって推しのショタ見れるってことじゃん!!早く人間界行かないと!!」


人間界、といっても魔王城がある大陸を”魔界“と人間が呼ぶから、逆に別大陸を“人間界”と呼ぶだけで、すぐ近くなんだけど…


「ビビ、行くよ。」


しかしどうやったものか、推しに会うにもツノに尻尾が生えたこの姿じゃまず無理だろう。

漫画では隠して人間界に来るシーンがあるが、打ち切りのせいでどうやったのか解説はされていない。普通に考えて魔法だろうが…てかどうやって魔法使うんだろう?ビビを眷属にしてから魔力らしき何かを感じるけど…


「ルナフレア、」


後ろから聞こえた声に反応して振り向く。


「魔王様…!」








「何をしてるんだ?いつもの洞窟じゃないのか。」


グレイの髪を後ろで結んで、シャツの上からあったかそうなマントを羽織ってる。少しタレ目の、少々情けない顔をしたこの男は…


「魔王様…!」


「うん?魔王だけど、どした?」


えー!?!?嘘嘘嘘!!こんなゆるい感じなの!?いや、まぁ確かに今まで魔王様出てくる回は少なかったけど。え〜、天然お兄様系か…萌だ。


あれ?そういえば…


「魔王様、」


「うん?」


「ツノってどうやって隠してるんですか?」


そう、彼の頭には魔族の証のツノが生えてなかったのだ。


「え?普通に抜いてるけど。」


「???」


「だから、こう、ぐっとひっぱって。」


え、意外と脳筋。魔王様は天然脳筋、と…


「…尻尾は?」


「それもブチっと。」


「…また生えて来ないんですか?


「魔力で、抜いたところを無理やり肌で覆い隠してるからね。まぁ生やそうと思えば生やせるよ?」


え、こわっ。


「痛くないんですか?」


「美しいものは痛みを伴うのさ。」


つまり痛いと。


「激痛だよ。」


激痛…え、嫌なんだけど。


「どうして?ツノ、やっぱ寝る時に邪魔なのかい?」


やっぱってことは魔王様も邪魔だと思ってたのか…まぁ確かに寝にくいよな。


「けど尻尾も取りたいんだよね?何か他に理由が?」


「人間界に行きたいんです。」


「…何で?」


推しに会いたいし、認知されたいし、観察したい…なんて言えないしな。


「学校に通ってみたいです。」


「…?」


「青春したいです。」


「せい…しゅ、ん?ルナフレアは面白い子だな。」


多分あなたよりは面白くない。私は至って真面目だ。


「そうだな。まぁ、ルナフレアは強いしいいんじゃない?正直僕の下で働いて欲しかったんだけど…」


いいんだ…


「そんで人間に紛れれるようにツノを抜きたいのか。」


「はい、手伝ってください。」


少し引いた顔をして魔王様がいう。


「痛いよ?」


「一思いにグイッと。」


「…」




「本当に!?本当にいいんだね!?!?」


「早くして…」


怖気ついてると急に頭が引っ張られる感覚がする…のも束の間、頭の中からカチ割れるような痛みと共にツノが抜けた。傷口に触れるとドロっと血がついたが、すぐに塞がる。


「じゃあ次に尻尾お願いします。」


「えぇ…」


魔王様の苦笑いと共に私のツノと尻尾は消えた。






「い〜い?人間界では今みたいに魔力を制御するんだよ?」


「はい」


そこら辺にあった丸太に座って、私は魔王様に髪を結ってもらっている。


「ビビに餌もやるんだよ?眷属にしても空腹を魔力で紛らわすことはできないからね?」


「はい」


「幹部で暇してる誰か適当に向かわせるから、お家とかはその人らに任せて。それまでは宿に泊まるんだよ。」


「はい」


「お金はいる?」


「さっきのツノと尻尾売るので大丈夫です。」


流石にそろそろ相槌を打つのもめんどくさくなる。いやまぁ、過保護お兄様キャラも尊いけどさ…

ていうか大分潔く行かせてくれるんだな…




『最後に、』


声のトーンが変わったのを感じ、背筋に寒気が走る。


『人間を無闇に殺さないこと。』


あぁ、これは破ったらまずいやつだ。彼の声色から察する。さすが伊達にも魔王を務めてるだけあって圧がすごい。実際に今私は無意識に手汗をかいてる、怖いんだ。


「わかった?」


「はい…」


そうすると彼は満面に笑みで言った。いつのまにか髪はツインテールになっていた。


「いってらっしゃい!」




それから魔王様が空を飛んで大陸の端まで見送ってくれた。見よう見まねで私も空を飛んだ。魔力の感じからして、下に放出してる感じ(?)。いや、どちらかというと持ち上げてるのか…

まだ魔法の使い方を理解していないが、どうやら体が覚えているようで何とかなっている。


「にゃむ、」


「見えてきたね、人間界。」


人気のない森に降りると、ビビが少し楽しそうに私の腕から降りて地面の匂いを嗅ぎ始めた。


たどり着いたのは国家クライストの城下町。

そう、何を隠そう私の推しはこの漫画の王子様で主人公!…ではなく、その弟だ。まぁいわゆる第二王子だな。


先に生まれたというだけで王になることは当たり前とされ、期待されていた主人公。第二王子がどれだけすごいことを成し遂げようとも、みんなやんちゃな主人公ばかりに注目をして、誰も彼のことを見向きもしない。唯一褒めてくれたメイド達も、第一王子を褒めるときは目の輝きが違った。

まだ幼い頃からすぐに、自分の存在価値は兄に劣る、そう気づいてしまった彼。漫画では第一王子と敵対する位置にいる。闇落ちとでも言ったらわかりやすいだろうか。

学園生活が中心のこの漫画では主人公をよく思わない貴族達と一緒に兄を馬鹿にし、時にはいじめのような行動をとる。

ただし、第一王子のことをよく思わない輩は基本、第二王子の立場である私の推しのこともよく思わなかった。だんだんと付け込まれていき、後戻りできない段階まで行きそうになってた頃…主人公が貴族達を懲らしめ、彼の居場所はなくなり、そこから推しがどういうふうに転がるか…が見どころで打ち切りに…

主人公だけは弟を見てる、“お前はよくやってる”。みたいな王道展開もありだけど、今度は逆にさらに闇落ちして戻れないとこまで…ってのも…あ、推しって尊。好き♡



とまぁ、少し話がそびれたが、結論としては私の推しはこの国の第二王子で主人公の弟。そして、この街にいる…!


さぁこうなったらいてもらってもいられない。早く人里の方へ行こう。


私はビビを抱っこし直し、歩き始める。


いざ、推しのショタを拝みに!





「そういえば…」


ツノと尻尾を抜く時、魔王様は“美しいものは痛みを伴うのさ”と言った。


「美しいもの、か。」


漫画では、ツノに飾りをつけたりしてる魔族も多かった、尻尾にもリボンを巻いたりなど。そういうとこを見ると、魔族はツノや尻尾を魔族の証として誇りに思っているんだと考察していたんだけど…

魔王様にとって、人間の姿が美しいのか?


「にゅ〜、」


「どうしたの、ビビ?」


「にゃあぁ、」


大きなあくびと共に私の方を見るビビ。


「あぁ、そうだね。飼い猫ってわかるように首輪を買おうか。」


「にゃぉぉ!」


「ふふっ、違った?」


きっと、漫画のルナフレアらしくない表情で、私は笑った。


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