表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/8

第一章:咲けぬ花の化け物

 

 ──この村の人々は狂っている。1人の少年を()()()と称し、何の害もないそれを忌み嫌って生き続けているのだから。


 ◇


 冷たい石が頬をかすめ、土の上に転がった。


「出て行け###め!」

「ここにお前の居場所は無い!」


 大人たちの怒鳴り声が飛び交った。村外れの山腹辺りで、俺はただじっと立ちつくす。


 俺の名前は「()()()」。もちろん、本当の名ではない。ただ、それしか俺を指す言葉が無いだけ。


 俺は、幼い頃から()()()()()()()()()があった。

その影響か、()()()()()()()。母であった人はそれを褒めてくれたが、村の人々はそうではなかった。


「お前がそこに居るだけで、村が不吉に染まる」

「あいつの咲かせる花には毒がある」

「誰も近づくな。関われば、あいつの母と()()()()()()


 同じ目。──俺の母は村長によって殺されてしまった。俺を産んでしまったことを罪として。


「あいつの花に触ってしまうと、同じ呪いにかかってしまう」


 それはただの言い伝え。

 何の根拠もない、ただの迷信。


 俺の咲かせる花は、村に生えているものとなんら変わりはない。


「……もうここには、居られないな」


 山腹にあった小さな小屋が()()しているのを見ながら、そう静かに呟いた。


 ◇


 足が、もう動かない。


 どれほど歩いただろうか。夜も昼も関係なく、ただひたすら前へと歩いて来た。


 食べ物は尽きた。近くには飲む水も無い。

 指先もかじかんで、もう声を出す元気も無い。


 ──それでも、振り返ることはしなかった。戻る場所など、もう何処にも無いのだから。


 ぼんやりと霞む視界の向こう。次の町から少し離れた所に、それはあった。


 静寂に包まれている、小綺麗な神社。

 村を出てから、何処にも人の気配は無かった。

 だが、ここだけは誰か──いや、()()の存在を感じさせる。


 勝手に入るのは良くない。また、追い出されるかもしれない。でも、行くしか選択肢はなかった。


 ──雪が降ってきたのだ。それも、容赦なく俺の身体を冷やし、凍えさせる程に。


 俺は重たい足を引き摺らせながら、ゆっくりと一段、また一段と石段を登っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ