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閑話 私の役目

こんばんは。少し短いですがよろしくお願いします。

 私はローラ。ただの島民。


 私の使命は海竜様の生贄になること。


 島の昔からの掟。

 津波から島を守る為に、漁が上手くいくように。

 海竜様に若い女の子を差し出せば半年間全てが上 手く回るらしい。

 私は静かに島長のお言葉を頂いた。

 島の端で1人で暮らし、海竜様が現れるまで待てと。

 海竜様が現れたら有難くその身を捧げなさいと。

 私は何も言わない。

 それがこの島の掟だから。

 それで島の皆が幸せになるなら私は本望。

 そうして島の端での生活が始まった。


 生活自体は何とかなった。

 ここに来る前に色々渡されたから。

 食料や生活用品。

 全てが揃っていて私が用意するものはこの体だけ。

 全てが完璧で後は海竜様を待つだけ。

 そうして何日間か浜辺の古い船着場で毎日待った。

 けれど一向に海竜様が現れない。

 島長はこの時期に現れると言っていたけれど、本当かどうかわからない。

 その日以降、私は釣りを始めることにした。

 毎日何もせずただ海を眺め立っているだけならと 持たされた荷物から釣竿を取り出した。

 なんで釣竿が入っているのか分からないけど、丁度良かった。



◇◇◇◇



 釣竿を持ち海まで来た。

 相変わらず海龍様は現れない。

 生贄になることは別に構わない。

 けれどこの待つ時間だけは私を退屈にさせる。


 ザァーザァーと波の音が聞こえる。

 今日も雲一つない青空に眩しい程照り輝く太陽。

 初めての釣りをするのにぴったりな日だ。


 でも私釣りしたことないんだよな。


 お父さんや島の男の人達が使ってるのを見ていただけで実際に使った事はなかった。

 糸の通し方は何となく理解は出来た。

 そして遂に釣りが出来るように釣竿が完成した。


 よし。これで後は海に投げるだけだよね。


 勢いよく釣竿を後ろに振りかぶり「えいっ!」と前方向に針のついた先を海に投げつける。


 「ポチャン」と気持ちのいい音を立て海の中へと消えていった。


 やった成功。後は魚が食いついてくれるのを待つだけ。


 私は魚がかかるまで待った。

 すると数分後、早速引っ張られる感触が伝わってきた。


 えっ?もう?


 私は1匹釣れたら大成功と思って気長に待つつもりだったけど、まさかこんなに早く来るなんて思わなかった。

 私は魚が逃げないうちに急いで竿を引き上げた。


 海面に魚影が見えてきて、本当にかかってる…と嬉しさと驚きで困惑しながら地面へと魚を移動させる。


 これって島の皆がよく食べるブルーフィッシュだよね。


 地面でピチピチと跳ねる魚の正体は島の皆の主食にもなってる銀色の体に真ん中に青い線が入ったブルーフィッシュだった。


 ブルーフィッシュ自体はそれほど珍しいものじゃない、お父さんや島の男の人達が毎日何百、何千と捕まえていたもの。

 だけど。


 私が釣ったんだよね…。


 いつも食べていたものを自分で捕まえるなんてしたことがなかった私には小さな出来事が特別なことに思えた。


 早く持って帰って朝ご飯にしよう。


 ローラの足取りが微かに弾んでるように見えた。



◇◇◇◇



 今日も朝から釣りに来た。

 ここ最近釣りをするのが私の日課になっていた。

 あれから毎日海に来ては釣りをする日々を送っている。


 今日は何が釣れるかなー。

 またブルーフィッシュかな?ほかの魚もいると思うんだけどなー。


 私が釣りを始めて1週間近く経つ。

 一日一匹は必ず釣れるが、全部ブルーフィッシュだった。

 個体数が多くてよく釣れるのは知っているけれど他の魚がいないわけじゃないのになんでだろうと最近の私の悩み。


 それでも釣りは楽しいので今日も私は釣り糸をセットして海へと投げつける。


 ふと空を見上げると雨雲が空を覆っていた。


 今日は少し天気が悪そうだし釣れたら早めに帰ろうかな。


 ずっと晴れの日が続いていたのに今日に限って曇り空になっていた事に少し悶々としていた。


 ゴゴゴゴゴ


 わっ、急に何っ


 すると突然海面が揺れ、波が激しく水しぶきを上げ始める。


 目の前の海面から突如突起のような形で海が押し出されてきてその巨大な姿を現した。


 か、海龍様…。


 目の前に現れたのは私の身長と変わらない程大きな顔をした海龍様。


 その姿は凄まじい迫力と威厳があり、思わず後ずさってしまう。


 この時私は思い出した。

 釣りをして毎日を過ごしていた私に突きつけられた現実。


 そうだ、私は【生贄】だったんだ…。


 忘れていた。私のここでの役目を。私を縛る掟を。


 最初は生贄になることなんて当たり前の事だと思っていたはずなのに、私はいつからこんなふうになっちゃったんだろう。


 目の前の海龍を見た瞬間体が硬直して動けない。


 あー、楽しかったな。

 もっと早くこの気持ちに気づいていたら

 逃げ出せていたのかな。

 でももう遅いよね。

 自分の役目も忘れて毎日を過ごした私は


ーーーー

ーーー

ーー


 『愚か』だ。


 目の前まで迫ってきていた海龍の口の中へと私は姿を消した。


ご覧いただきありがとうございます。

これで1ヶ月前の書き溜分の投稿は終わりです。

マジで新規エピソード書いてないのでこんな短いやつを見てくれてありがとうございました。

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